lost days-失われた日常-   作:AZΣ

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はい、かなり遅れましたが、皆様、明けましておめでとうございます。書こうとは思っていたんですが……活動報告の通りでして……
それではどうぞ。


10話-針金

箱の中に死体を詰め終わって歩き出した時、僕はさっきすれ違った、喰種の事を考えていた。

(あの人……絶対に普通の喰種じゃない。レベルが違い過ぎる。あの数の白鳩を一人で殺したんだから……それにさっき僕が見た映像を信じるのなら、恐らく彼は僕や霞、そして朧を喰種に変えた奴と知り合いだろう……)

そんな事を考えていたら、いつの間にか町まで戻って来てしまっていた。

「あっちゃ~、自転車、取りに戻らないと……」

僕は近道をするために、普段は絶対に通らない路地に入った。入らない理由は、昔から狭くて暗い場所が苦手だからだ。

そして、僕が通った路地には一つのマンホールがあった。この時、僕はそれに気付かずに通ったが、足元に注意を払っていたら気付けただろう、そのマンホールがそっと音を立てないように開いた事を。

「えっ!?何でマンホールが突然開いて……うわぁぁぁぁ!?」

僕はマンホールから下水道に真っ逆さまに落ちた。

「ててて……ここは……下水道…だよな。うわ!酷い匂いだ」

喰種の五感は極めて鋭敏だ。黒坂さんによると、鋭敏さは喰種によって違うらしいが、僕には下水道(ここ)はキツい。

「早く出ないと……ん?足が動かない!?」

よく見ると僕の足に、とても細い、糸のようなものが巻き付いているのが見えた。試しに触ってみると、触った僕の指から血が玉のように出て来た。

(喰種の身体を傷つけられるのは赫子か、捜査官の持つクインケだけ……こんなに細いクインケは多分ないだろうから、これは……)

「赫子……?」

こんなに細い赫子は見た事がない。しかし僕が立とうとするのを邪魔する力があるんだから、やっぱり赫子なんだろう。

すると突然、その赫子がプツンッ、と音を立てて切れた。そしてその伸びていた赫子は下水道の奥深くへ戻っていった。

僕は立てるようになったが、どうにもあの赫子が気になった。僕は好奇心に負け、危険も承知であの赫子を追ってみる事にした。しかし赫子は戻るのが早く、追う事はとても大変だった。

そして20~30分は追っただろうか。とうとう赫子を出していた喰種がすぐそこにいる場所までたどり着いた。その喰種は目立たない為か、フードのある服を着て、顔にはやはり仮面を着けていた。

数分の間、そいつは食事をしていたが、それが終わるとすぐに僕の存在に気付いて攻撃してきた。僕はそいつの姿を見たが暗くてよく見えなかった。しかし、体型から見て、恐らくは女性だろう。

彼女はその細い赫子で、僕の身体を瞬く間に縛りあげた。

(こんな所で死ぬ訳にはいかない……僕は……やる!)

彼女が僕を縛りあげて、僕を食べようとした時、僕は逆に彼女の赫子に噛みついた。

「っ!?」

彼女は予想外の事で戸惑っていたが、すぐに平静を取り戻し、僕を叩き潰そうと赫子を集束し始めた。僕の身体を縛っていた赫子も僕から離れ、彼女の頭上に集まっていった。

(ああ……不味い。でも、これで……!)

「あああああ……!!!」

僕が背中に意識を集中させると、背中から赫子が出て来た。肩甲骨辺りから生えた二本の甲赫は、僕の両腕に巻き付き、腰辺りには同じく二本の鱗赫が(うごめ)いていた。

(やっぱり、輝影が僕の身体で出している赫子よりは小さいし、(もろ)いな…でも、少しは太刀打ち出来そうだ…)

そして僕は彼女の赫子に真っ正面から突っ込んでいった。

彼女は集束させた赫子を僕に向かって降り下ろしたが、さっきの針金程は速くない。僕はすぐにその場から離れたが、やはり完全に避けきる事は出来ず、左腕が折れてしまった。

「ぐうぅぅぅぅ!!!」

腕が折れた事にも構わず、僕は彼女の元へ走った。彼女は集束状態の赫子では、僕を捉えきれない事が分かると、すぐに赫子を一本一本の針金にほどき、僕の身体を貫こうとしてきた。僕は避ける事が出来ないのが分かって甲赫で身を守って、ダメージを最小限にしようとした。しかし、彼女の針金は僕の甲赫を易々と貫き、僕の身体まで届く。

(守ってたんじゃ駄目だ!こっちから攻めないと!)

僕は鱗赫で、彼女の針金状態の赫子を弾き、彼女へ向かって再び走り出した。やっとの思いで、彼女の(ふところ)に入り込んで蹴りを繰り出した。しかし、その瞬間、彼女の赫子が編み込まれ、帷子(かたびら)のような盾になって僕の蹴りを防いだ。

(くっそ…なんて早さだ…やっぱり……)

僕はさらに彼女の赫子を引きちぎって食べた。段々と赫子が治っていくのが分かる。そして、身体を少しずつ快楽が巡っていく事も。

(喰種は人の快楽は得られない。でも代わりにこの食事という行為が彼等の快楽なんだ……食べる為だけに人を殺し続ける喰種がいるっていうけど…こういう訳か…)

彼女の赫子も再生しているが、僕が食べ続けるペースに追い付いていない。その為、僕は赫子を食い破り、とうとう彼女の前に立つ事が出来た。彼女の赫子の再生速度が徐々に衰えてきている為、そろそろ限界なのだろう。

彼女もそれが分かっている為、僕に殴り掛かって来たが、本来はこんな肉弾戦なんてせずに、この非常に強力な赫子に頼って戦っているのだろう、立ち回りから、僕にすら素人だという事が分かった。

僕は彼女をすぐに組み伏せ、彼女の顔から仮面を外した。その仮面の奥にあった顔は僕の知り合いのものだった。

「栞!?」

「し、時雨!?」

相手が誰かと分かった僕達はお互いに赫子をしまった。そして彼女の事を改めて見た。

赤咲 栞(あかさき しおり)。外見はまさしく大和撫子(やまとなでしこ)というに相応しい美少女で、実は僕の幼なじみである。彼女の家は資産家で、昔は僕も遊びに行った事がある。しかし、中学一年の時、彼女の一家は突然引っ越して、その後は会ってもいなかった。栞が喰種だと分かった今では、彼女の一家が何故突然、引っ越したのかがよく分かった。

「栞、喰種だったんだね……」

「うん……でも時雨は……人間…だったよね?どうして喰種に…」

僕は今までに起こった事を全て栞に話した。話が終わった時、彼女は泣いていた。

「何で…栞が泣くんだ…?」

「だって……辛かったでしょう……?」

「うん……」

本当に辛かった。今でもまだ人間だと自分では思う。でも、智哉や智乃ちゃん、そして……美晴には受け入れてはもらえないだろう。僕だったら、いつ自分を食べるかもしれない怪物を受け入れる事なんて絶対に出来ない。出来るはずがない。

「くっ…うっ…うっ…うっ……」

僕も栞と一緒に泣いてしまった。不思議と僕はこの時、いつもだったら恥ずかしいと思うのに、思わなかった。僕達二人は自然に涙が止まるまで泣き続けた。

こうして僕は思わぬ場所で、思わぬ友人と再開したのだった。しかしこの時の僕は、この後すぐに起こった事を死ぬまでずっと、永遠に悔やみ続けるの事をまだ知るよしもなかった……




お久しぶりですね、皆様。バトルが難しいですね……臨場感のあるバトルをいつか書いてみたいのですが、まだまだ経験が足りないのでしょう、これからも努力していきたいです。
読んで頂き、ありがとうございました!
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