らき☆すた ~幸せのレシピ~   作:四時

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味勝負!! ~ゆうや特製ラザニア~

 ゆうやに案内されてたどり着いた場所は台所だった。

 

 いや、これは台所と言うよりは厨房だ。レストランのそれと比較しても遜色のない設備が揃っている。

 

「さぁーて、おっぱじめるとすっか!」

 

 ゆうやは拳と手のひらを叩き合わせながら言った。

 

「で、何を作るの?」

 

「そうだな……」

 

 ゆうやは巨大な業務用冷蔵庫を開け、その中をマジマジと見つめた。

 

 俺も扉の隙間から中を覗き見る。一通りの食材は揃っているし、どれも美味そうだ。

 

「さすがジジイだな。どの食材も一級品だ」

 

「源三郎さん、料理が好きなの?」

 

「ああ。美味(うま)し会の会長をしているだけあって、食うのも作るのも大好きだ」

 

 美味(うま)し会。聞いた事がある。

 

 一流の料理人だけが入会できる団体で、会員になるのは料理人にとって最高の栄誉とされているとか何とか……。

 

「そんな凄い人を満足させる料理をゆうやは作れるのか?」

 

「俺だってこの1年遊んでたわけじゃねーよ。和洋中と、色んな料理を学んだんだ。今こそ、その腕を見せるときだぜ!」

 

 ゆうやは冷蔵庫から野菜や牛肉、チーズ等の食材を取り出し、それを机の上に置いていく。

 

「決めたぜ、俺が作る料理は……ラザニアだ!」

 

「ラザニアか。確かミートソースやホワイトソースなんかの上にチーズを重ねてオーブンで焼く、イタリアの料理だろ? でも、なんでラザニアなんだ?」

 

「んなもん決まってらぁ、俺の好物だからだよ」

 

「いいのか? そんな適当な理由で選んで」

 

「適当じゃねーよ。好物って事は、今までに何回も作って研究を重ねてるって事だ。つまり、ラザニアは俺の得意料理の一つでもあるんだ」

 

 なるほど、そう言われてみると説得力がある。

 

「よし、ゆうや。俺にも何か手伝える事があったら言ってくれ」

 

 両親が留守にしがちだった為、俺はよく自炊をしていたのだ。

 

 我流だから本職の料理人と比べたらお粗末かもしれないが、それでも人並みの料理を作れると自負している。

 

「ありがとよ! じゃあ、この牛肉をひき肉にしといてくれ。俺はソースを作るからよ」

 

「任せてくれ」

 

 俺は腕まくりをして手を洗い、ロース肉をまな板の上に載せた。

 

 包丁を取り出した俺は、まず肉を細切りにしていく。

 

 次は細切りにした肉を端から細かく切っていき、肉を一か所に集めて包丁で叩き続けた。

 

 刻みの良い音が厨房内に響く。

 

 俺の手元で出来上がっていくひき肉を見て、ゆうやはにやりと笑った。

 

「中々手際がいいじゃねーか」

 

「まっ、これくらいはな」

 

「俺も負けてらんねーな! いっくぜー!」

 

 ゆうやは目の前の人参と玉ねぎをひっつかむと、目の色を変えて一心不乱に包丁を動かし始めた。

 

 速い。さすが料理の勉強をしていただけの事はある。野菜があっという間にみじん切りになっていく様を見て、俺は感心していた。

 

 ゆうやはフライパンを火にかけた後、そこにオリーブオイルを注ぎ、続いて先ほどみじん切りにした具材を投入した。

 

「ひき肉!」

 

 ゆうやの一声で、俺はまな板ごとひき肉をゆうやに渡した。

 

 それをフライパンの中に放り込んだゆうやは、ジャカジャカとフライパンやヘラを振って、具材を美味い具合に炒めていく。

 

「よし、お次はこいつだ」

 

 ゆうやは何かのボトルを手に取ると、コルクを歯で噛んで栓を引き抜き、その中身をフライパンの中に注ぎ込んだ。

 

「ゆうや、それは?」

 

「赤ワインだ。ん~~良い香りだぜ」

 

その後、トマトやケッチャプ等の調味料を加えたゆうやは、スプーンでフライパン内のソースをすくって味見をした。

 

「よし、このまましばらく煮込めばトマトソースは完成だ。ところでたくと、お前手先は器用か?」

 

「まあ、それなりに」

 

「よし。俺はこれからホワイトソースを作るから、お前はチーズをこいつで包んでおいてくれ」

 

 ゆうやが渡してきた物を見て、俺は思わず眉をひそめてしまった。

 

「はぁ? でもゆうや……これは」

 

「対ジジイ用の秘密兵器だ。そうそう、包み終わったら先にジジイのとこに行っててくれや、こっから先は俺一人で十分だからよ」

 

 そう言うと、ゆうやは俺に背中を向けてホワイトソース作りを始めてしまった。

 

 それにしても、ラザニアはイタリア料理だろ? なんでこんなものを使うんだ?

 

 いや、今はゆうやを信じよう。あいつが試行錯誤の末に編み出したレシピなんだ。きっと美味いはずだ。

 

 俺はゆうやに言われた通りの作業を終えた後、

 

「終わったぞ。じゃあ俺、源三郎さんのところに……」

 

 そう言いかけて、俺は口をつぐんだ。

 

 ゆうやは真剣なまなざしでフライパンの中を見つめている。

 

 凄いな。おそらく、俺の声が聞こえないくらい集中しているのだろう。

 

「後は頼んだぞ、ゆうや」

 

 俺はゆうやに全てを託し、台所をあとにした。

 

 

***

 

 何度か道に迷いながらも部屋へと戻った俺は襖を開けた。

 すると、そこには私服姿のみゆきと、みゆきによく似た女性が源三郎さんと向き合うようにして正座をしている姿があった。

 

 俺はみゆきへと歩み寄りながら、

 

「みゆき」

 

「たくとさん! あひぇ? ひゃぁー!」

 

 俺に気が付いたみゆきは立ち上がろうとするが、足が痺れたのか、フラフラとバランスを崩して倒れそうになる。

 

 俺はとっさにみゆきの腕と腰に手をまわして引き寄せた。

 

「みゆき、お前どうしてここに?」

 

「た、たくとさん……そ、その……助けていただいたのはうれしいのですが……その」

 

「ん?」

 

「ち……近いです」

 

 まるで社交ダンスをするかのように、俺達の体は密着していた。

 

 俺は気にならないが、みゆきは年頃の娘だ。俺の様な異性と体を密着させるのを快く思わなくて当然だろう。

 

「すまない……とっさの事とはいえ、配慮にかけていた」

 

 俺はゆっくりとみゆきを畳の上におろしてから謝罪した。

 

「い、いえ……嫌だったわけではないです……ただ、びっくりしてしまいまして……その」

 

 カシャ。

 

 アタフタしているみゆきの声に交じって、カメラのシャッター音が聞こえてくる。

 

 ふと横をみると、みゆきによく似た女性が携帯電話のカメラレンズをこちらにむけてニコニコしていた。

 

「うふふー、いいものみーちゃった」

 

「お、お母さんっ、もう! 写真なんて撮らないでください!」

 

 なるほど、この人がみゆきの母親か。確かに似ている。

 

 みゆきの母は俺の方を見ると、ペコリと頭を下げてから、

 

「はじめまして~、みゆきの母の、高良ゆかりです。たくとちゃんの事はみゆきからよ~~っく聞いてるわぁ、うふふ」

 

「こちらこそはじめまして。みゆき……さんの友達の、水瀬たくとです」

 

 こういう時、友人を呼び捨てで呼びにくいのは何故だろう。

 

「あらあらいいのよ~、遠慮しないで『みゆき』って呼んであげてちょうだい。その方が、この子も喜ぶだろうし」

 

「お母さん! もぅ! もぅ!」

 

「それにしてもみゆき、お前どうしてここに居るんだ?」

 

 顔を真っ赤にしたみゆきに問いかける。

 

「それは……たくとさんがこの場所に向かっているだろうと思ったからです」

 

「俺がここに向かっていたとして、なんでみゆきがここに来る必要があったんだ?」

 

「そ……それは……その……」

 

 みゆきは両手を絡み合わせながら、モジモジと体を動かす。

 

「おばあちゃまのお店を残すために、たくとちゃんが無茶をしないか心配だったのよね~?」

 

「もぅ! お母さんは黙っていてください!」

 

 みゆきは怒っているのだろうが、全然迫力がない。

 

「ゆかりさんや、あまりみゆきをいじめるでない」

 

「はぁ~い、源三郎おじいちゃま、うふふ」

 

「して、たくと君。ゆうやの様子はどうじゃ?」

 

「もの凄く真剣に料理をしています。俺の言葉も聞こえないくらい、集中していますよ」

 

「ふむ……そうか」

 

 それっきり、源三郎さんは腕を組んで黙ってしまった。

 

「成り行きは源三郎お爺様から聞きました。それで……お兄さんに勝算はあるのでしょうか?」

 

「分からない。だが、あいつの料理に対する情熱は本物だ。今は信じて待つしかない」

 

「そうですか。……お兄さん、頑張ってください」

 

 みゆきは祈るように胸の前で手を組んで俯く。そんなみゆきの想いに呼応するかのように、部屋の襖が開かれた。

 

「ジジイーーーー~~~~~っ!」

 

 ゆうやは開口一番そう叫ぶと、ズカズカと部屋の中に入ってきた。

 

 両手でしっかりとトレイを持ち、その上に載せられた角形のグラタン皿からは蒸気が立ち昇っている。

 

「みゆきとゆかりさんも来てたのか、丁度いい、ここに居る皆で味わってくれ! これが、ゆうや特製ラザニアだっ!」

 

 源三郎さんの前に置かれたお膳の上に、ゆうやが作ったラザニアが舞い降りた。

 

 その瞬間、チーズとトマトソースの何とも言えない香りが広がり、口の中に涎が溢れてくる。

 

 ゆかりさんはパシャパシャと携帯のカメラで料理を撮影しながら、

 

「すご~~い! これゆうやちゃんが作ったの~!? しんじらんな~い!」

 

「お兄さん、凄いです! とても美味しそうです!」

 

「美味しそうじゃなくて、美味しいんだなこれがっ! はーっはっはっは!」

 

 ゆうやは持っていたナイフでラザニアを切り分け、俺達全員にフォークを配った。

 

「さぁジジイ、冷めないうちに食え!」

 

「うむ……では、いただきます」

 

 源三郎さんは手を合わせて一礼した後、ラザニアにフォークを刺し、それを口へと運ぶ。

 

「んっ! なんとっ!? これは……これはぁあああああ!」

 

 ラザニア一切れを一口で平らげた源三郎さんは、目を見開いてブルブルと体を震わせると、

 

「美味しっ! まっこと、美味しぃいいいいいい!」

 

 急に立ち上がり、袴をたくし上げて自らの右足を露出させた。

 

 なんだ……いったい何がどうなっているんだ?

 

「でました! 源三郎お爺様の十八番、うまし体現術!」

 

「なんだそれ」

 

 興奮気味に叫ぶみゆきに、俺は問いかける。

 

「源三郎おじいちゃまは、美味しい料理を口にした時、料理の美味しさや感動を自らの体を使って体現させる術を身に着けているのよ! それこそが!」

 

 

『うまし体現術!!!』

 

 

 みゆきとゆかりさんの声がハモる。つまり、リアクション芸って事か? そういう事なんだな?

 

「あの突き出した足……あれは……どこかで見た事があります。ラザニアはイタリア料理……そして足……分かりました! あの足はイタリアを表しているんです!」

 

「なるほどねぇ~、確かに地図でみるとイタリアって足みたいな形をしているものね!」

 

 みゆきとゆかりさんは解説を進めるが、この状況に慣れているのだろうか? 俺には、ただの奇行にしか見えない。

 

「このラザニア、ひき肉のうまみが溢れたトマトソースと、クリーミーなホワイトソースがあうあう! そのハーモニーが素晴らしい! だが、この美味さにはまだ秘密がある……その秘密はこれじゃあ!!」

 

 源三郎さんは皿のラザニアにフォークを突き刺し、それを持ち上げて見せた。そこには先ほど俺がチーズを包んでおいた『ある物』が突き刺さっている。

 

「このパリッとした食感の包みの中から、じゅんじゅわぁ~んぬと流れ出してくるチーズが、このラザニアの味を引き立てておる! これは……この包みは……そうか! わかった、わかったぞぉおおおお!」

 

 源三郎さんは両手を頭の上で合わせて叫んだ。

 

「ああ! 見てください、源三郎お爺様の腕の形を! あれはまさしく!」

 

 

『夏の大三角形!!』

 

 

 またもやみゆきとゆかりさんがハモった。

 

 いや……まあ三角形には見えるが、どうしてそこから夏の大三角形になるんだ? 分からん。

 

 みゆきはまるで数学の難問を解くかのような目つきでブツブツと何かを呟いている。

 

「夏の大三角形と言えば星座……せいざ……セイザ……ギイザ……ぎょうざ……餃子!? ま、まさか!」

 

「そのとおおおおおおおり!! これは、チーズを餃子の皮で包み込み、カラっと油で揚げておるのじゃあああああ!」

 

 みゆき。包みの正体を当てたのは凄いが、その変換にはいささか無理があると思うぞ。

 

「源三郎お爺様の右足がイタリアで、あの三角形が餃子だとすると……わかりました! これはイタリアと中華を融合させた料理だということですね!」

 

「その通り! 和洋折中! これぞまさに、異文化こみゅにけぇしょんじゃあああああ!」

 

 いや、和はないだろう。洋と中だけだ。……っと突っ込みたかったがやめておいた。

 

「やったな、ゆうや」

 

 俺は笑顔を浮かべながらゆうやに向かって親指を立てる。そんな俺に対して、ゆうやは白い歯を見せながらニカっと笑って見せた。

 

「みゆき、私たちもいただきましょう」

 

「はい。お兄さん、いただきます」

 

 ゆかりさんとみゆきがラザニアに手をつける。

 

「あらあらまあまあ……美味しいわぁ~」

 

「本当、こんなに美味しいラザニアを食べたのは初めてです!」

 

「たくと、お前も食ってくれよ」

 

「ああ、いただくよ」

 

 俺はゆうやに促され、ラザニアを口に運んだ。

 

 ……確かに美味い。しかし、源三郎さんのリアクションは少々オーバー過ぎないだろうか?

 

「馳走になった」

 

 いつの間にか座っていた源三郎さんは、両手を胸の前で合わせて一礼した。

 

 こうして見ると威厳のある人にしかみえないんだが……人は見かけによらないもんだな。

 

「さあジジイ、これで文句はねーな! 第1の課題はクリアだ!」

 

「……ふむ」

 

 しばらくの沈黙の後、源三郎さんはゆっくりと口を開くと、

 

 

「不合格っ!」

 

 

 そう言い放った。

 

 まずい。直感的にそう感じ取った俺は、考えるより先にゆうやの体を抑えつけた。

 

「ジジイぃーーー~~~!!」

 

 どうやら俺の判断は正しかったようだ。あと一秒でも抑えるのが遅かったら、ゆうやは間違いなく源三郎さんへと飛びかかっていただろう。

 

 ゆうやは俺の手を振りほどこうともがく。

 

「おいこらジジイ! 不合格とはどういうことだ!!」

 

「なんじゃ、不服か?」

 

「ああ不服だね! てめぇ、俺の料理を美味いとぬかしやがったじゃねーか! えぇ!?」

 

「ああ。確かに美味かった」

 

「なら、なんで不合格なんだ!」

 

「お前の作った料理が課題の合格基準に満たなかった。ただそれだけの話じゃ」

 

「て……めぇ」

 

 やばい。ゆうやの奴、完全に切れてる。

 

 俺はゆうやを抑えながら、

 

「ゆうやダメだ……やめろっ」

 

「そうですお兄さん、暴力はいけません! ここは落ち着いて」

 

「離せ! 落ち着いてられるか! こいつは……このジジイは最初っから俺に店を継がせる気なんかなかったんだ! 課題だ何だと適当な事を言って、俺達が必死こいている姿を見てあざ笑ってんだ! そうに違いねぇ!」

 

 

「たわけがぁああああ!」

 

 

 源三郎さんの一喝。そのあまりにも凄まじい気迫に、ゆうやを含むその場にいる全員が固まった。

 

「この高良源三郎、誓ってそのような浅ましい真似はせぬ。……しかし、このラザニアが美味かったのは事実。それに免じて、もう一度だけチャンスをやろう」

 

 源三郎さんはゆっくりと立ち上がり、ゆうやに鋭い眼差しを向ける。

 

「明日の夕食時まで待ってやる。それまでに、ワシを『納得』させる味の料理を用意せい。場所は……そうじゃな、件の店『らきぃ☆すたぁ』よかろう」

 

 畳に拳を叩きつけたゆうやは、源三郎さんを睨みつけた。

 

「ああそうかい。なら今度こそ用意しといてやろうじゃねーか! あんたを納得させる味の料理をなっ!」

 

「課題の意味を理解しろ。答えはそこにある」

 

「あんだと?」

 

「よーく頭を冷やすことじゃな」

 

 そう言って、源三郎さんは部屋の出口へと歩き出した。

 

 源三郎さんは確かに美味いと言った。しかし、ゆうやは不合格だった。

 

 つまり、課題の合格基準は美味さとは違う他のモノなのか?

 

「……」

 

 ダメだ、分からない。

 

 今の俺にはそれが何なのか、見当もつかなかった。

 

 

 

****

 

 

 

 ゆうやの運転する軽トラで泉家へと送ってもらえることになった俺は、助手席から見えるネオンライトの光をぼんやりと眺めていた。

 

「……わるかったな」

 

 ゆうやは唐突に謝ってきた。

 

「見苦しいところをみせちまってよ。昔っから頭に血が上ると、我を忘れちまうんだ」

 

「そんな事、5年前にとっくに分かっていたさ。それより明日の課題、勝算はあるのか?」

 

「分からねぇ……が、やるだけやってみらぁ。お前を送ったらばーちゃんの店に泊まり込んで、課題用のメニューを考える」

 

 そう言って、ゆうやはハンドルを強く握りしめる。

 

 ほどなくして、車は泉家の前に停車した。

 

 時刻は午後10時。随分と遅くなってしまったな。

 

 荷台から自転車を下ろしていると、泉家の玄関からこなたが出てきた。

 

 こなたはやけにニヤニヤしながら俺へと近づいてくる。

 

「んっふふ、夜遊びとはたくともやるねぇ」

 

「何のことだ」

 

「隠さなくってもいいんだよ。5年前に別れた女の子と再会して、夜のドライブを楽しんでたんでしょ?」

 

「していない」

 

「どれどれ、たくとのガールフレンドを拝ませてもらおうかなー」

 

 軽トラの荷台をのぞき込んだこなたは、

 

「おーいたくと、自転車どこに置けばいいんだ? って、なんだこの子」

 

「男ですとぉぉおおお!?」

 

 ズザザっと後ずさりすると、血の気の引いた顔で俺たちの事を交互に見つめる。

 

「ままま、まさかたくとにそっちの気があったなんて……!」

 

「お前、何か勘違いしているだろう。こいつは5年前に九喜商店街の飲食店で知り合った友人で……」

 

「ウッス! 俺、ゆうや。らっきぃ☆すたぁって店を継ぐ事になるから、今度是非食べに来てくれ。よろしくな!」

 

 まだ店を継げると決まったわけではないのだが……、まあいいか。

 

「あーあのお店かぁ。高校生になってからは一度も顔を出せてないけど、中学生の頃はよく利用してたよ」

 

 意外なことに、こなたはばーちゃんの店を知っていた。

 

「当時通ってた塾が九喜駅にあってね。塾帰りに小腹が空いた時には、よく寄ってたんだよ」

 

「意外だな。店の見た目的に女子が一人で入るような店ではないと思うのだが」

 

「いやぁ……あの頃は『孤独なグルメ』にはまっててね。ふと、ああいった感じのお店に立ち寄ってみたくなったのだよ」

 

 昔から漫画やドラマに影響されやすい奴だったが、その性格は今でも変わっていないらしい。

 

「ん? 中学生の頃って事は……お前高校生なのか!?」

 

「そだよー」

 

「ありえねぇえええーーー~~~~!!」

 

 ゆうやの叫びが夜の町内に木霊する。ご近所の皆さん、ごめんなさい。

 

 その後、ゆうやは軽トラでばーちゃんの店に向かい、俺は納豆ご飯と野菜炒めを食べて寝た。

 

 

 

 

 

 

 






一話2000~3000文字の読みやすい文章を心掛けていますが
話しが区切れない時は5000~7000になってしまう事もあります。

よしなに。
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