東方書迷録   作:SunoA

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今回はちょっと長めです。





第4話〜お前が言うな〜

「あー頭いてぇ……」

 

カウンターでコーヒーを飲みながらそんな言葉が出た。あの後結局飲み過ぎて絶賛2日酔い中。色々愚痴ってると何故かお酒の進みが早いんだよね。俺も知らず知らずにストレスとか溜まってるのかな。

 

「強くないのにあんなに飲むからだよー」

 

「俺も疲れてんだよ」

 

てかなんでまた朝っぱらから萃香がいるんだよ。昨日一緒に飲んだばっかなのにまた飲んでるし。最早病気だなこれは。永遠亭いってきたら?

 

「私にとってはこれが普通だからいいの」

 

「さいですか…」

 

これが普通とかどんだけだよ。本当鬼ってどんな体質してんだよ。いや、鬼以前にこいつがやばい気がする。勇儀もよく飲む奴だけどここまでではなかったし。

 

「まぁ私は酒呑童子だからね」

 

「そういうもんかね」

 

「そういうもんだよ」

 

そういって笑いながら答える。まぁそうなら突っ込んでもしょうがないか?幻想郷では常識にとらわれた時点で負けだ。

 

そんな会話をしてるとカランカランという音と共にドアが開いた。

 

「じゃまするわよー」

 

軽い挨拶と共に入ってきたのは自称楽園の素敵な巫女さんこと博麗霊夢だった。まーためんどくさいのがきたよ。

 

「何よその嫌そうな顔は」

 

どうやら顔にでてたみたいだ。だってどうせろくでもない理由できたんだろうし。顔に出てしまうのもしょうがないと思う。

 

「あんた今ヒマ?」

 

「見ての通り仕事中だけど?」

 

「こんな客のいない店で?」

 

「うっせ、お前が言うな」

 

自分の事を物凄い棚に上げて凄え失礼なことを言われた。確かにお客さんは少ないけどお前に言われたくない。お前の神社だっていつも客いなくて暇じゃんかよ。

 

「ふふん、それはどうかしら?」

 

うわすっごいドヤ顔。なにかいいことでもあったの?

 

「今日は何月何日かわかる?」

 

「今日?確か12月30日だけど……あっ」

 

なるほど、もう年末か。いくら普段客足のない神社とはいえ、年末年始となれば話は変わってくる。初詣にくるお客さんでいっぱいになるはずだ。

 

「そう!年末年始!1年で1番の稼ぎ時なのよ!」

 

めちゃくちゃ目を輝かせながら言ってくる。まぁ当然といえば当然なんだが。でもそれと俺になんの関係が?

 

「つまりどういうこと?」

 

「その準備を手伝いなさい」

 

「は?」

 

なんで俺が?てかそもそも俺は店の仕事があるし。急にそんなこと言われても困る。少しはこっちの予定も考えて欲しい。

 

「1日2日閉めたところで売れ行きなんて変わんないわよ」

 

「余計なお世話だ」

 

確かにそんな変わんないと思うけどそんな言い方しなくてもいいんじゃない?割と傷付いたよ?ていうかどう考えても人に物を頼む態度ではないよね。もうちょっと言いようがあるんじゃない?

 

「そんな訳だから私もすぐに戻らないといけないから。あなたも早くきなさい」

 

いやまだ行くなんて言ってないんだけど。

 

「てかそれならそこの萃香連れてったら?暇してるみたいだぞ?」

 

「わかったわ、なら萃香も手伝いなさい」

 

「え、なんで私まで…」

 

普段邪魔ばっかしてるんだからこんな時くらい役に立って下さい。あと俺も行くことには変わらないんだね。拒否権を下さい。

 

「そんなものあると思う?」

 

ですよねー。知ってましたわかってましたよ畜生。なんで俺ばっかこんな目に合うんだよ。現実はいつだって非情だ。

 

「じゃあ私は先戻ってるから。準備が出来次第きなさい」

 

そう言って霊夢は出て言った。折角開店したのにもう閉じなければいけなくなるとは。これじゃ本当に潰れたみたいじゃんか。

 

「もう涼の所為でとばっちり受けたじゃんかー」

 

むくれた萃香が気怠げに言う。

 

「お前はどうせ暇なんだからいいだろ」

 

「涼だって暇じゃん」

 

「お前と一緒にすんな」

 

確かに暇だけど。お前みたいに好きで暇してる訳じゃないんだよ。お客さんこないから暇なんだよ。

 

「暇なことには変わらないじゃん」

 

まぁそうなんだけどさぁ。お前と一緒にされるのはなんか納得出来ない。

 

「まぁいいよそんなことは。早く用意しなよ」

 

「そうだな……」

 

これ以上話していても拉致があかないので用意に移る。とはいえまだ開けたばっかだからそんなすることもないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「なんだよ他にも手伝いの人いるんじゃん」

 

神社に着くと村の人達と河童達が作業をしていた。主に屋台や出店の準備、階段や境内の掃除など。こんだけ人がいるんだったらわざわざ俺がこなくてもよかったんじゃないか?見た所人手が足りないとかそんな感じは無さそうだし。

 

「お、2人も手伝いにきたのかい?」

 

「霊夢に無理矢理駆り出されたんだよ」

 

「はっはっはっ!キミも大変だねぇ!」

 

そう言って笑っているのは通称谷カッパのにとり?だっけ?忘れた。こと河城にとりだった。

 

「にとりも霊夢に駆り出されたのか?」

 

「いや、私は自分の意思できたんだよ。私達にとっても年末年始は稼ぎ時だからね」

 

そういって建設中の屋台の方を指差す。そーいや河童って興業みたいなこともしてるんだっけか。それならこの屋台や出店も興業の一環なのかな。

 

「まぁそんな所だね。オマケするから明日は是非買ってよね〜」

 

「ん、了解。なんか買いにくるよ」

 

屋台なんて久々だから楽しみだ。やっぱこういった催しってのは楽しくなる。

 

「今月はピンチじゃな「はいストップそれ以上言うな」……………ごめん」

 

折角楽しもうというのに萎える様なこと言うなよ。てか今月ピンチなのは昨日君と飲みにいったのが原因でもあるからね?

 

「金欠は相変わらずなんだね」

 

そういってにとりがクスクス笑う。もうその話やめない?

 

「あ、こんなとこにいた。遅いわよあんた達」

 

そうこうしてると霊夢に声をかけられた。そういや霊夢の手伝いできたんだったね。あとナイスタイミング。いい助け船になりました。

 

「悪い悪い、でもこれだけ人がいるんなら俺達が来る必要なかったんじゃないか?」

 

「外の仕事ならね。あんた達には納屋の片付けを手伝って欲しいのよ」

 

納屋って言うとあの神社の裏にある倉庫みたいな奴か。そいや俺もまだあそこには入ったことなかったな。てかそもそも機能してることに驚きだったり。使ってるとこみたことなかったもん。

 

「ここ数年使ってなかったんだけど、神酒が閉まってあることを思い出してね。折角だから飾っておこうかと思ったのよ」

 

あっ、やっぱりぜんぜん使ってなかったのね。そりゃ使ってるとこなんてみないはずだ。てか神酒をそんな全く使ってないようなとこに閉まっておくなよ。バチ当たるぞ。

 

「てかこの神社って何を祀ってるんだ?」

 

そういえば今まで聞いた事もなかった。神社である限り何かしらを祀ってはいるはずだけど。

 

「さぁ?」

 

「え、知らないの?」

 

さぁ?って。自分の神社で何を祀ってるのかも知らない奴が巫女やってていいのかよ。てかそれくらい把握しときなさいよ。今まで気にならなかったのかよ。

 

「そんな事言われても知らないもんは知らないわよ。昔からここにいるけど聞いたこともないわ」

 

それでいいのかよ。随分と適当だな。萃香の方を見ると知らないと首を振った。古参の萃香も知らないってなるともう殆どの奴が知らないんじゃないか?紫辺りなら知ってると思うけど。今度聞いてみるか。てか霊夢に教えとけよそれくらい。

 

「まぁなんでもいいわよ。そんな訳で手伝って貰うからついてきなさい」

 

「はいはい。そんな訳だからまた後でなにとり」

 

「はいよー。頑張ってきなよー」

 

軽く手を振ってにとりと別れる。それにしても数年手をつけてない納屋か。聞いただけで嫌な予感しかしないが……。

 

 

 

 

 

---------------

 

「うん、まぁ予想通りだったよ…………」

 

「凄いことになってるね…………」

 

納屋の中をみて俺と萃香が肩を落とす。大量のよくわからないものが積み重ねられていて、その上には埃が被っていて蜘蛛の巣だらけ。最早廃墟といってもいいような散らかり具合。よくここまでになるまで放置したもんだ。

 

「特に用もなかったから放置してたらこうなってたのよ」

 

「いや放置すんなよ」

 

用がなくても定期的に掃除くらいしときなさいよ。それくらいできるでしょ基本暇人なんだから。

 

「嫌よめんどくさい」

 

もう駄目だこの巫女。そんなんだから参拝客がこないんだよ。

 

「あぁもううるさいわね!こうなっちゃったもんはしょうがないじゃない!早くやるわよ!」

 

なんで逆ギレしてんのこの巫女。どう考えても自業自得だよね。

 

「もう早く終わらせようよ……」

 

げんなりした様子の萃香が言う。まぁそうだな。文句を言っても終わらないし。

 

「じゃあやるか……」

 

さてどんだけかかるのか…………。

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「もう夕方になっちゃったね〜」

 

膝に座ってる萃香が呟く。あれから作業にかかるも思いの外時間がかかってしまい気がついたらもうこんな時間になってしまった。色々変なものが出てきたりもしたがその辺りは割愛。

 

「お疲れ様。2人のお陰で助かったわ」

 

萃香と休んでると霊夢がお茶を入れた湯呑みを持ってきてくれた。そういえばずっと片付けてて何も飲んだなかったな。

 

「ん、ありがと」

 

お礼を言って貰うと一気に飲み干す。冷えた麦茶が疲れた体に染み渡る。普段あまりお茶は飲まないんだけどたまにはいいかもしれないね。

 

「じゃあ今日はもう終わりってことでいいのかな?」

 

「そうね、他ももうみんな終わってるし今日は解散よ」

 

「やっと終わりかぁ………疲れたぁ…………」

 

ようやく終わりかぁ。やっと一息つける。萃香も珍しくよく頑張ってたね。まぁ霊夢の手前ってのがあったんだろうけど。サボったらお札やら針やら飛んできそうだし。

 

「じゃあ俺はもう帰るよ、お疲れ様」

 

まだ重い腰を上げて立ち上がる。もう今日は疲れた。さっさと帰って寝たい。

 

「あ、待って。今日のお礼。夕飯食べてきなさいよ」

 

唐突なお誘い。んー帰って寝たいんだけどここで無下に断るのも失礼だよね。折角誘ってくれたんだ。ここはお言葉に甘えよう。

 

「そういうことならお言葉に甘えさせて貰うよ」

 

「そう、よかったわ。なら今から調理するから手伝ってね」

 

あっ俺も手伝うの?作ってくれるとかそういうのじゃないんだ。ちょっと残念。

 

結局この日帰路についたのは日付が変わる頃になった。

 

 

 

 




今回は霊夢とにとりに登場して貰いました。
次回は年越しになるのかな?

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