天才科学者と超能力者の妹は平凡な人間でした。 作:えすぷれっそ
休み時間、私はよく照橋さんと一緒にいる。
…ぼっちではない。断じて。
暫く話していると、お互いの兄弟の話になった。
「へえ、照橋さんも兄がいるの?」
「うん。…えっと、誰にも言わないでね?実はうちの兄…俳優の六神通なの。」
六神通?…ええっと、どこかで聞いたことがあるような。とおる…あ!
「えっ!?あの!?」
「うん、あの。」
確か正月のバラエティー番組に出ていた。何故か楠兄にチャンネルを変えられたが。
「ふふっ。兄妹で人気者だね。」
「やめてよ、もうっ。お兄ちゃんの方が絶対すごいもの。」
その言葉で、くー兄の事を思い出した。
_兄より優れた弟(妹)など存在しない、か。
「_ちゃん?紅葉ちゃん?」
「…あ、ごめん。ちょっとうちの兄達の事を考えてて。」
「そうなの?じゃぁ、次は紅葉ちゃんのお兄さん達のお話が聞きたいな。」
「えーっとね。うちは兄が2人いるんだけど。あ、上が19で下が17ね。」
…あれ?うちのお兄ちゃん達の事って、ほとんど人に言えなくない?
くー兄のことはともかく、楠兄の事なんか言える訳がない。まず信じて貰えないだろうけど。
「えーっと、これは自慢なんだけど…上の方の兄、ケンブリッジに通ってるんだよね。」
「…えっ!?」
「凄いね!…でも、海外だと中々会えないんじゃない?」
「うん。本当に数えられるぐらいしか会えないよ。…まぁ、その分帰ってくる度に構ってくれるけどね。」
「へぇ…凄く仲が良いんだ。」
「いや、兄達は仲悪いよ?」
「え?」
楠兄と私では「構ってくれる」の意味が違うからね。
_とまぁ、照橋さんに2人の兄のことを説明すると…
「うーん…確かに私も負けず嫌いだったら嫌いになっちゃうかもね…」
「でもね、それでも挑み続けるのがケンブリッジなんだよ。」
「嫌いなのに?…あとその呼び方はやめてあげて。」
「あ、そうそう。この間は凄かったんだよ。」
_時は1週刊程遡る。くー兄が楠兄に内緒で帰って来ていたのだ。確実にばれないよう、夜中に。何故が大きなバッグを持って。
そして楠兄の部屋に入ったと思ったら、5分程度で出て来た。
そして夜食を食べて、直ぐにロンドンに帰ってしまった。
翌朝、4時に起床し、楠兄の部屋を覗いた。
「__っ!?」
ベッドの周りに、ビニール袋らしきものに入った這いよる混沌、またの名をGともいう。
しかもその真上の天井には、10匹ほどの這いよる混沌がセロテープで貼り付けられていた。しかも生きたまま。
泣き叫びそうになった。
恐怖で眠れず、部屋でカタカタと震えていた。
くー兄、いくら弟が憎いからってそこまでするのか。
数時間後、楠兄が目の前に現れて『お前か』と本当に殺しそうな勢いで掴みかかってきた。
即座に否定してくー兄だと説明すると、ロンドンまで(瞬間移動で)殴り込みに行った。
私は楠兄に触れていたので一緒にテレポートした。
視界の隅で2人が殺し合いをしていたのは見なかった事にした。
_というような事を照橋さんに話した。勿論超能力云々は除外して。
「ろ、ロンドンまで殴り込み…」
流石に照橋さんも驚いた。だろうね。
「でも…いつか会ってみたいな。」
もう会ってるよ、とは言えないので、「私も照橋さんのお兄さんに会ってみたいな。」と返した。
_ちなみに、あの一件以来楠兄はくー兄をガン無視している。
くー兄は「楠雄が勝負してくれない…」なんて珍しく落ち込んでいる。
ーー
「って事があって。」
「た、大変だったね…」