周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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ギャグ成分が入れられなかった…


帝国英雄伝説⑩ ひとつの国の終わり(前篇)

 帝国歴196年、大陸にある国家の多くは希望に満ちた新年を迎えていた。

 

~バハルス帝国 帝都アーウィンタール~

 

 バハルス帝国の帝都アーウィンタールでは、帝城の庭園が解放され、ジルクニフに拝顔の栄に浴する事を望む多くの民衆が、一般参賀へ訪れた。バルコニーに立ったジルクニフから臣民へ齎された言葉の数々は、帝国臣民に希望・感嘆を感じさせる内容だった。拡大する版図、優秀な臣下の存在、人類の脅威に立ち向かう精強な軍、豊かになる生活…帝国の、自分達の未来は明るいと、全ての臣民が心から信じている。

 

「親愛なる帝国臣民の諸君、余ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは、ここに宣言する。バハルス帝国の益々の安寧と発展を諸君に約束すると!」

 

「「「「「ジーク・マイン・カイザー!」」」」」

 

「「「「「ジーク・カイザー・ジルクニフ!」」」」」

 

 ジルクニフは確信する。今年も帝国の版図は増えるだろう。帝国にはまだ多くの優秀な人材がいるはずだ。帝国軍はより精強になる。そして帝国は益々栄えるのだ!

 

~竜王国 王城~

 

 竜王国の若き(ドラゴン基準)女王ドラウディロン・オーリウクルスは久々に、いや生れて初めて迎える希望に満ちた新年を心から喜んでいた。今までの竜王国はビーストマンの脅威に晒され続け、国民の生命と財産を磨り潰しながら、辛うじて存続している状態だった。

 

 それが数年前から少しずつ良い方向へ変わり始めた。それまではスレイン法国に決して少なくない金銭を支払う事で、竜王国が持ちこたえられるギリギリの援軍を派遣してもらっていたのだ。バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国は互いに争っており、竜王国の惨状を看過し続けていた。僅かばかりの金銭や物資を、恩着せがましく送ってくるだけだった。

 

 自らの曽祖父である『ブライトネス・ドラゴンロード』も、曽祖父の友人である『プラチナム・ドラゴンロード』も、「世界のルール」を題目に、その強大な力を振るってくれる事はなかった。自分にも備わる竜王の力を振るえば、ビーストマンどもに大打撃を与えること可能だった。しかしその為には大き過ぎる代償が必要になる…100万の民の命という代償が…しかし2年前に当時のリ・エスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフが、竜王国へ来た時から事態は変わり始めたのだ。

 

 今の竜王国には「バ竜安全保障条約」に基づいて、三万五千の帝国軍が駐屯して、ビーストマン国との国境を守っている。それに加えて「竜王国自衛隊」を発足する事も出来た。竜王国自衛隊は他国を攻めるのではなく、専守防衛に専念する、国土と国民を守る為に存在する軍隊だ。

 

 ドラウディロンは感謝する。竜王国の民が未来に希望を持てるようになった事に、自分がロリコン共の欲望を満たす生贄に捧げられる心配が無くなった事に…

 

~スレイン法国 神都~

 

 スレイン法国最高神官長を頂点とした、十二名で構成される法国の最高執行機関。その新年最初の会合で、彼らは嘗て法国の礎になった六大神に感謝の祈りを捧げた。

 

「今年もまた脅威に晒される我ら人類が、無事に新年を迎えられた事を感謝いたします。」

 

 周辺国家の民は意識していないが、この大陸に生きる人類の状況は極めて危険なのだ。生物として人間より遥かに強大な亜人種、モンスターの脅威から人類を守って来たスレイン法国、特に上層部の危機感は大きかった。六大神が失われて数百年、それ以来、新たな神が法国に降臨する事を祈り続けていた。失われつつある神々の遺したアイテム、徐々に薄まる神の血、この恐るべき現実を知らずに人間同士で争う愚かな国。今こそ人類は団結せねば為らないのに!!

 

 だがギリギリで間に合った!六大神ゆかりの聖地ヴェルザスカルを、不当に占拠していたリ・エスティーゼ王国は遠くない未来に大陸から消える。今年こそ聖地ヴェルザスカルを奪還し、いずれ王国が消えた後は、安全な地で怠惰を貪っていた背教者共を、人類存続の使命に奉仕させるのだ!

 

 己の野望に邁進していた不遜な皇帝は悔い改め、人類を守る使命に目覚めた。その切っ掛けとなった勇者を法国に迎えられなかった事は残念だが、彼の者の血を引く子が法国に数多く生れている。子供達が長ずれば、何れも優秀な神の戦士として人類の為に戦うだろう。

 

 彼らは安堵する。人類はきっと大丈夫だ。いずれ新たな神が降臨するその日まで、人類は生き延びる事が出来る!

 

~リ・エスティーゼ王国 王都~

 

 新年を祝うリ・エスティーゼ王国宮廷晩餐会は、現実を直視出来ない王国貴族達が放蕩無頼の限りを尽くしていた。

 

「なぜ周辺国の奴らは我らの要請に応えぬのだ!奴らは偉大なリ・エスティーゼ王国の為に、あの邪悪な侵略国家と戦う義務があるはずではないか!?」

 

「下賤な商人どもは何故言われたとおりに税を納めぬのだ!我らが享受するべき利益を掠め取りおってからに!!」

 

「忌々しい鮮血帝め!若造の分際で神聖不可侵な王国領土を不当に占拠するとは!」

 

「陛下はいつまで帝国の跳梁跋扈を許しておるのだ!先祖代々、王家に忠誠を尽くしてきた我が一族が困窮しているというのに!今こそこれまでの忠勤に報いる時ではないのか?」

 

 彼らは激昂する。何故、自分達のような高貴で敬われるべき存在が、不当に貶められるのか!自分達の意に反する存在が許されると思っているのか!

 

 

 この様に帝国歴196年の幕開けは、概ね希望に満ちたものだった。だがこの年、一つの国家が人類の歴史から消える事になるのを知る者は少なかった。

 

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