「おかえりなさいませ戦士長さま♪」
「キャー♪戦士長さまステキー♪」
「ムヒョー♪くるしゅうないくるしゅうない♪」
先日、卒業式をすませた俺は、ヒルマの店の常連になっていた。最初こそ不幸な行き違いがあって、色々と誤解があったが、ヒルマはガゼフJrのデビュー戦の相手として申し分なかった。なにせこの身は人間種として最強のスペックである。当然アッチのほうも最強だったのだ。デビュー戦をダイジェストで表すなら…
「八本指のヒルマは絶対にガゼフJrになんて屈したりはしない(キリッ)!」
↓
「ガゼフJrには勝てませんでした~♡」
…という感じだ。なにせガゼフJrは
疲労が無くなる『活力の籠手(ガントレット・オブ・ヴァイタリティ)』
癒しの効果がある『不滅の護符(アミュレット・オブ・イモータル)』
最高の硬度を誇る『守護の鎧(ガーディアン)』
を装備してるからな(笑)おかげでその日の料金は、時間無制限フルオプション完備にもかかわらず十割引きという破格のサービス。それ以降も週7日ペースで通っている。金は足りるかって?ツケですよ!ツケ!さすが王国戦士長というべきか、信用度はトリプルSの最高ランク!支払プランも無利子無期限無返済コースというらくらくプランだ。
「大丈夫なんですかガゼフ様?こんな毎日、遊び呆けちゃって…それに王国戦士長が八本指関連の店に入り浸ってるのは、王宮的にマズイと思いますけどね。貴族派閥の連中が何を言ってくるか…」
「全く問題ない。本日の勤務は終了しているし、王国戦士長としての任務は全て順調にこなしている。八本指という犯罪組織についても、王から特に何かをするように言われてはいないし、王党派と貴族派の対立についても、シビリアンコントロールの管理下にある王国戦士団の団長に政治的判断は不要だ。仮に犯罪組織への捜査が必要だとしても、それは王都の治安を維持するべき憲兵隊が行うべきであり、憲兵隊の職責を不当に犯すことなど、王国戦士長として許されない暴挙だ。」
「難しい言葉でよく分らないけど、要するに面倒な事をする気はないって事ね。まったく、王への忠義に溢れる戦士長サマが聞いて呆れる。」
「陛下への忠誠は内心の自由の中で誓っている。私は王国戦士長。この国を愛し、守護する者だ。証拠も無しに無辜の民を疑うわけにはいかない。」
ヒルマは、このふざけた事をのたまう男を嫌いになれなかった。というより好意をもっていた。この男がまがりなりにも王国最強といわれる、いや人類最強といっても過言でない男というのは、先日の件で心の底から思い知らされた。そんな男を自分が『男』にしてやったのは女冥利に尽きるし、生物のメスとして強いオスに寄り添う事はとてつもない安心感をヒルマにもたらしてくれる。
八本指の経営する娼館へ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフが訪れた一件は大問題となった。翌日には緊急の幹部会が開催され、当事者のヒルマは他の幹部からの詰問を受けるが、当のヒルマも状況が理解出来ない。ヒルマに言える事といえば『ガゼフJrには勝てなかったよ』のみである。幹部達の意見も「まずは様子見」といった消極的なものが大半だったが、警備部門の長である闘鬼ゼロが、戦士長の排除を強硬に主張し、次に戦士長が来店した際に、六腕による強襲が決定された。
その日のうちにノコノコとやって来たガゼフが、娼婦相手にハッスルしているところへ、六腕全員が突撃したのだが…
「会いたかったぞ、ガゼフ・ストロノーフよ!貴様を倒して、王国最強に俺はなるっ!」
「ガゼフストラーッシュ!!」
「ウギャー!!」×3
「バ、バカなっ…六腕でも上位の3人が一撃だとっ…」
「幻魔サキュロント行きます!グオゴゴゴ」
「ガゼフ百烈拳ッ!!」
「ギャアーーーーーッ!!」
一瞬で4人が倒され、残ったのはゼロとエドストレームの2人。ガゼフのあまりの強さに茫然とする2人、それでもゼロは六腕最強のプライドで、己を奮い立たせようとするが、六腕唯一の女性でもあるエドストレームは、既に自分の生存を諦める…
「くっ、殺せ!」
「ガゼフ∞(ヨコハチ)無限大ーー!!」
「しゅごいのぉーー♡」
自分以外の5人を倒されたゼロは、とうとうガゼフに屈服した。戦士として、いや男として、目の前のコイツには絶対に勝てないと心の底から理解した。こうして王国の暗部に君臨した八本指は、戦士長一人に全面降伏する事となる。