結論から述べると、今回の戦争に皇帝は来ていなかった。やる気がなくなったので、王が居る本陣で待機していたら、レエブン侯がじーっと俺の事を見つめていた。別にいいじゃん、諸侯軍で最大勢力のボウロロープ侯が「戦士長は王の傍に控え、その身をお守りするべき」「帝国軍など我ら諸侯軍のみで鎧袖一触」って言ってたし。大丈夫、大丈夫♪
ボウロロープ侯の軍勢が帝国軍に突撃をかまして、帝国軍の逆撃に遭って大変な事になっていたが、どうでもいいと思って傍観していると、王がいつもの視線を送ってくる…それでもガゼフなら…ガゼフならきっと何とかしてくれる!!そういう目をしている!…ちょっとだけムカついたんで言ってやった。
「まだ慌てるような時間じゃない。」
ボウロロープ侯の軍勢どころか、他の諸侯軍も絶賛敗走中で、さすがにちょっとマズいと思っていたら、王から『ボウロロープ侯を救出し、帝国軍を撃退せよ!』とかいう無慈悲な特攻命令を受けた。王よ、お前はいったい何を言っているんだ?まるで成長していない…と思いつつ、部下を率いて前線へ突撃する。レエブン侯はなんか頭を抱えていた。
俺と部下達の必死の抵抗によって、なんとか帝国軍を押し返して膠着状態になった。損害は王国側が三割オーバーで全滅判定、帝国側は一割未満。こうなれば帝国軍はこれ以上の余計な損害を出さない為に撤退するだろう。いつものパターンだ。めでたくリ・エスティーゼ王国の17連敗が決定した。整然と撤退していく帝国軍と、注意深く対峙する俺達をしり目に、何故か勝鬨をあげる王国貴族達…もうゴールしてもいいよね?
リ・エスティーゼ王国の大本営発表によると、ボウロロープ侯を中心とした勇敢な諸侯軍の活躍によって、帝国軍は甚大な被害を被って這う這うの体で撤退したらしい。王国の勝利に多大な貢献をしたボウロロープ侯は勲功第一とされ、若干の被害を被りながらも奮戦した諸侯軍も勲功大と評された。そして王国戦士長に対しては、諸侯軍への被害に対する重大な責任と、敗走する帝国軍を追跡せず放置したとして、貴族達から問責決議案が宮廷会議へ提出された。おかしい…こんなことは許されない…
論功行賞を兼ねた宮廷会議では、王国の為に損害を被った諸侯への損失補填として、各諸侯への大幅減税が議決された。そして王国戦士長と部下への懲戒処分も議決された。処分内容は地位剥奪や1年間の俸給返上等、ふざけた内容が提案されたが、レエブン侯のとりなしで俸給の一部返上となった。
宮廷会議の後で王の執務室へ呼ばれた。執務室へ向かうと、王の他にレエブン侯とラナー王女が居た。俺に対して頭を下げ謝罪する王。この期に及んでも、王の言っているのは「すまぬ…すまぬ…」「ガゼフに頼めば何とかしてくれると思った」だけだ。傍に控えるレエブン侯が気まずそうにしているのに対して、ラナー王女は無表情だ。ブチ切れるのを必死に堪えた俺は、王に対して常識と礼節に則った諫言を行った。
~常識と礼節に則った諫言集~
「誠意は言葉でなく金額」
「交渉している感じがしない。ブチ切れていいですか?」
「上がった分は寄付するつもりだった」
「金額で揉めてるんじゃない。ガゼフさんの記録に失礼。神様に頭が上がらない」
「僕の年俸が上がらないと、後輩たちに夢を与えられない」
「自分は礼儀とか筋道を大切にする人間。ルール違反する王国とは契約できないし、許せない」
「大台(金貨1万)に行かない理由が無い。出さないと王国が恥ずかしいと思う」
これだけ言えば、さすがのランポッポ王にも理解出来るだろう。辞表を叩きつけるのを、辛うじて堪えた俺が屋敷に帰ると、意外な来客が待っていた。