「ソフィア王女、完成しました!」
その声を聞いて、ソフィアは、すぐさま支度をして、飛行機に乗り込んだ。
「いきますよ」
ヒュドーは、飛行機を押した。
「ありがとう、ヒュドーさん!かならずリューリクさんを救出して戻ってきます!」
「どうかご無事で!」
飛行機は、空高く飛び立った。
「私が『神隠しの森』まで案内します!!しっかり付いてきてください!」
ヨシュアの後を追うようにソフィアは、飛行機の操縦管を動かした。
ルテフォを離陸してから1時間後、はるか向こうに青々と茂った森が見えてきた。
「あれが『神隠しの森』です!着水体制に入ってください!」
ソフィアの乗せた飛行機は、ゆっくりと高度を下げた。
「着水するわ!」
森の入口近くにある湖に着水した。
「なんだか、霧が立ち込めてない?」
「急ですね…」
神隠しの森に入ってからすぐに霧がでてきた。
霧のなかに小さな光る球体が見えた。
「何かしら…?」
一瞬、不気味な緑に光った。
「なんだったのでしょう…」
「………」
ソフィアからの返事はない。
すると、ヨシュアを置いて、ゆっくりと歩き出した。
「ソフィア様!?」
「………………………」
なお返事はない。
ソフィアの顔を見た。
凍らされたように表情のない顔。
大きく見開かれた目。
その瞳にはヨシュアの姿が映っていないのか、全く気づかない。
そして、どこか虚空を見つめているような焦点の合わない視線。
「ソフィア様?しっかりしてください!」
「………」
ヨシュアの声も届いていない。
機械仕掛けの人形のようになってしまったソフィア。
その足取りは、ゆっくりと、だが、確実に森の奥深くへ進んでいた。
「ソフィア様!これ以上、行ってはなりません!」
ガツッ!
「イタタタ…」
「グル…」
ヨシュアとゾーファは、何かにぶつかった。
しかし、ソフィアはそのまま奥へ向かっていた。
「ソフィア様!」
ガツッ!
「ふっ、不可視の壁!?」
次第にソフィアの姿が霧に包まれていった。
「!?」
霧の中に不気味に笑う顔がヨシュアの目に映った。
「ソフィア様ー!」
「…………………?」
ソフィアは、霧の中でふと後ろを振り返った。
すると、緑の光球が再び光った。
(おいで、ソフィア…。もっと奥に来て…。…あなたの両親が待っているわよ…)
耳許で囁くような声が繰り返し聞こえた。
「…リョウ…シン…、アイ…タイ…」
再び歩き出したソフィア。
緑の光の向こうに怪しく笑う女の姿がうっすらと現れたが、ソフィアの目には見えていなかった。