ソフィアの自室にはドレッドマイヤの姿は、まだなかった。
「ソフィア様、早く回収を!」
赤々と輝く支配の星に触れてみた。
見た目ほど熱さを感じない。
「ソフィア様!ソフィア様!」
ヘンリーが部屋に駆け込んできた。
ソフィアの手の中に『支配の星』を見つけた。
「無事に『支配の星』を手にいれることができたのですね!」
「ええ。
ところで、そんなに急いでどうしたの?」
「研究室の壁に不思議な紋様が現れたのです!」
ヘンリーに言われるまま、研究室に向かった。
「この壁画…、『支配の星』が落ちてくるのと同時に現れたの?」
「さようでございます。
エネルギーを注入しないと、作動しないようです。
あいにく、私の魔力は、ドレッドマイヤに奪われてしまって…」
ソフィアは、しばらく黙っていた。
「そういえば、『支配の星』って、魔力の塊みたいなものなのよね?」
「はい」
「なら、これでエネルギーを注入できるんじゃないかしら?」
そう言いながら、『支配の星』を壁画にかざした。
すると、青く輝き始めた。
奥へと向かう通路が現れた。
その先には、黄色い光がチラチラと光っているのが見えた。
「ちょっと見てくるわ」
「お気をつけて」
ソフィアは、隠し部屋の中に足を踏み入れた。
黄色い光の正体は、小さな正四角錐だった。
正四角錐にそっと触れると、魔術師の霊が現れた。
「…どうか驚かないでください。
私は、パトリック・ドレッドマイヤの精霊です。
私は、国王夫妻の忠実な臣下です。
本来なら、姫様がお目覚めになったとき、お仕えするように命を受けたのですが…。
姫様が見てきた影は、私が召喚し損ねた精霊です。
従わせようとしたのですが、逆に命、地位さえも奪われてしまいました…」
ドレッドマイヤの精霊は、正四角錐を指差した。
「どうか、あの影をこの『四次元プリズム』に封印してください。
影に最も近づくことができるのは、姫様だけです」
「わかったわ。
ところで、ヘンリーから『炎のアミュレット』と『氷のアミュレット』がこの城のどこかにあると聞いたのだけど…」
ドレッドマイヤの精霊は、指を鳴らした。
すると、『炎のアミュレット』と『氷のアミュレット』が現れた。
「こちらでございます。
姫様、これを何のためにお使いになるのですか?」
「『玉座の間』へと通じる扉の前でメイドがいたのだけれど、影が『ガーゴイルの呪い』をかけてしまったの…
」
「そうでしたか…。
どうぞアミュレットをお持ちになってください」
そう言うと、ドレッドマイヤの精霊は、姿を消した。
近くにあった釜に水を汲み、ヘンリーのもとへと戻った。
「見つけたわ!
『炎のアミュレット』と『氷のアミュレット』!」
「おお、姫様。
ガーゴイルを倒すには、凍らせたあと、熱湯を浴びせるのです。
ちょうどよい計画を練りました」
ヘンリーは、製図の部屋の上にある屋根裏部屋へと案内した。
「姫様、このようにするのです―」
ヘンリーの言う通りに仕掛けを作った。
釜に『炎のアミュレット』を貼りつけた。
「ゾーファ、静かに火を吹いて」
ボッ
水が加熱され、お湯ができた。
すぐさまガーゴイルのいるところへと向かった。
グォルル………
「今、助けるわ!」
ソフィアは、矢じりに『氷のアミュレット』をくくりつけ、力一杯弓を引いた。
シューッ!
矢は、ガーゴイルめがけて、青い軌跡を描いた。
『氷のアミュレット』がガーゴイルの体に触れた瞬間、たちまち氷に包まれた。
それを確認して、ソフィアは、素早く次の矢を放った。
シューッ!
放った先にあるのは、釜を支えていた重り。
ガッシャーン!
お湯が凍ったガーゴイルに降り注ぐ。
バリッバリバリ!
ガーゴイルを包んでいた石は、粉々に砕け散った。
メイドが気を失って倒れていた。
「大丈夫!?」
ソフィアは、必死に呼び掛けた。
「………うっ………」
「よかった!」
女性は、薄く目を開いた。
「……ソフィア……様。
助けていただき…、ありがとうございます。
ご両親は…、『玉座の間』で今も戦っておられます。
王妃様は、私めにこのパッチワークをソフィア様にお渡しになるように、とおっしゃいました」
メイドは、ソフィアにパッチワークを差し出した。
「この扉を開くには、『パラダイス・キー』が必要なのです。
王妃様は、おっしゃいました。
『魔法のパッチワークを完成することができたなら、鍵が現れるであろう』
ソフィア様、どうかパッチワークを完成させてください」
メイドからパッチワークを受けとると、早速始めた。
説明を読みながら、作業を進めた。
(思ったより、難しいわね…)
説明書には正方形の図に数字が振られているだけだった。
そして、ある形をかたどったとき。
「なっ、なに…?」
パッチワークが輝き始めた。
光がやむと、そこには絵柄と『パラダイス・キー』があった。
「………!」
絵柄は、母親が少女を抱いているものだった。
(昔…、お母様がゴールドリーフの木の下で勇敢なお姫様の話をしてくださったっけ…)
古い記憶がよみがえってきた。
「お父様とお母様は、無事なの!?」
「わかりません…。
しかし、一刻を争います!」
ソフィアは、『パラダイス・キー』を鍵穴にはめた。
扉がゆっくりと開いた。
(お父様、お母様、
私は、困難を乗り越え、帰ってまいりました。
どうか無事でいてください…)