最初に飛び込んできたのは、クリスタルでできた木だった。
「ヨシュア、これって…」
「この木は、管理が難しく、産地以外では育てられないと言われる『クリスタルツリー』です」
蒼い光をたたえる『クリスタルツリー』があるということは、この城が王族のものであることの証。
その根本には、石碑が置かれていた。
そこにはルーン文字が刻まれていた。
『ガーディアンストーン』
『ほんの数人しか知り得ない秘密を守ることが使命』
「お~い、誰かいるのか?」
クリスタルツリーの左側に広がる部屋から声がした。
「おお、人間か!
ここに吊り下げられて、もう100年になるのさ。
いい加減降りたいんだ。
俺を船長の所まで連れていってくれたら、いいことをしてやるよ」
木の枝にぶら下がっていたガイコツが話しかけてきた。
「ちょっと待ってて」
ソフィアは、ゾッとしながらも、踏み台を探し出して、ガイコツを枝から取った。
「助かったよ。
俺の名は、スカルド。
じゃあ、ジャックスペロー船長の所までよろしくな」
ソフィアは、クリスタルツリーの右側にあるコンジットに向かった。
コンジットには上向きの矢印があった。
「このボタンを押せばいいの?」
「そうさ」
スカルドが答えた。
ボタンを押すと、魔法の流れがソフィア達を上へと押し上げた。
着いた先は、操舵室。
そこには、ハンモックにねじれている石像があった。
「こいつだよ、ジャックスペロー船長は」
スカルドが言った。
ソフィアがジャックスペローの首もとにスカルドのついたネックレスをかけた。
「今、起こしてやるからな」
そう言うと、まるで目覚まし時計のように喋りだした。
「朝ですよ~!
オイッ!起きろっ!
助けてくれた姫様に敬意を払えっ!」
すると、石像は、人間に戻った。
それと同時にハンモックからはじき出された。
「ああ頭が…。
おっと、これはこれは…。
お姫様がここにいるということは…、大変だ…!
俺は、ジャックスペロー、両陛下の友人さ」
ジャックスペローは、ソフィアにこれまであった出来事を話した。
「国王と女王は、罠を仕掛けて、その中にドレッドマイヤをおびき寄せたんだ。
その中では、全てが止まった状態になるのさ。
両陛下は、自らを犠牲にしてドレッドマイヤを阻止しようと試みたが、奴の強力な魔力のせいで永遠に封じ込めることは不可能だった。
俺はというと…両陛下がドレッドマイヤの相手をしている間、バジリクスの注意を引き付けていたのさ」
そのままジャックスペローは、続けた。
「お姫様宛に預かっていた両陛下からの伝言をクリスタルの霊廟に隠したのさ。
でも…俺は取りにいけない…。
俺の部屋の箱にしまいっぱなしにしているんだが、その鍵が見つからないってわけ。
でも、もうひとつ両陛下から預かった『ガーディアンの腕輪』ならあるぜ。
役にたつと思うさ。
俺は、鍵を探しているから」
『ガーディアンの腕輪』を受けとった。
「ヨシュア、『ガーディアンストーン』で使えるんじゃないかしら?」
『ガーディアンストーン』の所まで戻り、『ガーディアンの腕輪』を置いた。
すると、腕輪が消えて、その代わりに鍵が現れた。
「姫様!
碑文も変わっています!」
『さらに、秘密を知りたいのなら、王家の血を引く証を見せよ』
「『王家の血を引く証』…、王冠や王笏のことでしょうか?
ひとまず、船長の所に戻りましょう」
鍵をジャックスペローに見せた。
「ああ、この鍵だ!
ちょっと待ってろよ…」
数分後、鉄製の王冠を持って現れた。
「控えの間に石像があったろ?
(俺が吊るされていた場所だぞ!)
あれは、『キングメーカーの像』と呼ばれていてね。
成人と認めた王族に鉄製の王冠を黄金の王冠に変え、授ける役目を持つんだそうだ。
さ、どうぞ」
「おっ重い…」
ソフィアには鉄製の王冠はズシリと重い物だった。
なんとか、控えの間まで運び、『キングメーカーの像』に被せた。
たちまち王冠は、黄金に変わった。
「姫様、あの窪みに『支配の星』をはめるのです」
ヨシュアがそっと指示した。
言われた通りにはめると、石像が声を発した。
『あなたを成人と認め、この王冠を授けましょう』
王冠は、ソフィアの物となった。
「さあ、『ガーディアンストーン』に見せましょう!」
『ガーディアンストーン』に王冠を載せた。
すると、ルーンストーンが現れた。
王冠を再び頭に被せ、コンジットに向かった。
「やっぱり…。
このルーンストーンは、ここで使うのよ!」
ソフィアがルーンストーンをはめた瞬間、魔力の流れが再び現れた。
その流れは、今度は下向きに押し流していった。
たどり着いた先は、クリスタルの青白い光に照らされた部屋。
左右には石像が立っており、碑文が書かれていた。
『ハロルド一世
トルスキアンの反逆を終わらせた偉大なる王』
『イングリッド女王
慈悲深き女王』
『トルヴァルド王
ナルニアに平和をもたらした王』
『アリッサ女王
比類なき知恵の女王』
「ここが…、『クリスタルの霊廟』なのでしょう…。
美しい…」
ヨシュアが感嘆していた。
ソフィアは、ひときわ大きなクリスタルがあることに気づいた。
触れると、映像が浮かび上がった。
「お父様!お母様!」
『愛するソフィア…
ドレッドマイヤは、強力な魔力の持ち主…
ですがあなたの前では無力も同然でしょう…。
王国の未来はあなたにかかっています。
どうかドレッドマイヤを倒し、あなたの英知で人々を導くのです』
映像は、不意に消え、代わりに舵が現れた。
「ソフィア様、『無限の球体』からドレッドマイヤが抜け出すまで、時間がありませぬ!
ドレッドマイヤを『四次元プリズム』に閉じ込められるほど至近距離に近づけるのは、姫様だけ…。
どうか王国をお救いください!」
ドレッドマイヤの精霊が現れて、警告した。
「急ぎましょう!」
再び操舵室に戻った。
「舵を使って、『玉座の間』に向かうんだ」
ジャックスペローは、操舵パネルに舵を付けて、勢いよく回した。
すると、窓の風景がたちまち変わった。
「いよいよだな、お姫様。
ドレッドマイヤを倒せるのはキミだけ…。
風の守り神が味方となるように!」
「その通り!
ガッツーンと奴に痛い目を見せてやりな!
俺達が応援してんだから弱音はくなよ!」
ジャックスペローとスカルドが励ました。
ソフィアは、両親とドレッドマイヤの待つ『玉座の間』へと向かった。
ドレッドマイヤを封印し、王国を救うため。