遊戯王ARC-V107シンクロ次元タキオン伝説 作:ふぁみゆ
気を取り直してプロローグを書き上げましたのでよろしくお願いします
皆が寝静まっているはずの夜。人里離れたところにあるとある遺跡が炎をあげていた。その炎をせいで、夜のはずなのに、辺り一帯が明るくなっていた。遺跡の周りを鈍い銀色の四肢を持つ機械仕掛けの巨人たちが囲んでいた。その大きな腕を振り、遺跡の外壁を巨人たちは次々と破壊していく。
その遺跡の中を走る一人の少年がいた。長い金髪を持ち、藍色の瞳を持つ精悍な顔立ちをした少年。少年の名はミザエル、この遺跡に封印されている"とあるもの"を守るため、遺跡に住んでいる一族の一員だ。夜の板をしていたミザエルも機械の巨人たちによる襲撃の被害者だ。彼は急いで家族の元へ向かった。
(どこだ!?皆はどこにいる!?)
自分の家族を探して必死に走り回るミザエルは、巨人による破壊が続く遺跡の中でとある場所にたどり着いた。
そこは一族が守りつづけてきたものが安置されている"封印の間"だ。本来はどんな強者がどんなに力を入れても開けることのできない、大きな石造りの扉があり、決して入ることができない場所。しかし、今は巨人の豪腕によって扉が周りの外壁ごと破壊され、中に入ることが可能になっていた。壊れた壁をくぐり、中にはいるミザエルはそこに置かれていた7枚のカードを発見した。それを見たミザエルは父親から聞いた伝承を思い出した。
「かつて、世界を救ったと言われる伝説の7枚のカード。しかし、強大であるがゆえに人の心を狂わせてしまう。そして、人の負の感情をカードが抑え切れなくなった時、更なる災いが起こる…」
ゆえに、我が一族は、このカードが決して人の手に触れないように守りつづけているのだ。
それが父の言葉だった。だが、カードの封印は説かれてしまった。このままカードを放置しておけば、巨人をこの遺跡に差し向けた襲撃者は必ずこのカードを見つけてしまう。
(人の手にふれてはいなないカード、しかし、このままここに残していくわけにはいくまい…)
ミザエルは7枚のカードを回収するために手を伸ばした。そのうちの一枚のカード、《No.107銀河眼の時空竜》に手が触れそうになったその時…
「っ!?」
突然、カードが強烈な光を放った。突然の強い発光にミザエルは反射的に目をつぶる。やがて、ゆっくりと目を開くと、ミザエルの目の前には、一体のドラゴンがいた。
真っ黒な体と、巨大な翼
向かい合うだけで凄まじい威圧感を放つドラゴン
対面にいるミザエルを見るその瞳は
銀河のように神秘的な光を放っていた…
ドラゴンは翼を広げ、その"銀河の瞳"でミザエルを見つめる…
「こいつは…」
「ミザエル!!」
背後から声が聞こえた。振り返るとそこには息を切らしながら走ってきたミザエルの父が立っていた。父はミザエルの背後にいるドラゴンを見つけた。そして、その表情に驚愕の色を宿す。
「ミザエル、お前…なんともないのか!?」
「父上、何を言っているのです!?いや、今そんなことはいい、他の皆はどこに!?…」
駆けつけた父に他の家族のことを訪ねようとしたのだが、話の途中で横やりが入ってしまう。背後から聞こえてくる足音に父が振り向いた。そして、父を追ってやってき青い制服を着て仮面をかぶった三人の男が封印の間に入ってきた。三人とも左腕には、起動状態のデュエルディスクが取り付けられており、デュエルディスクから発せられている黒い光の上に≪古代の機械巨人≫と書かれたカードが置かれている。それを見たミザエルは気づいた。こいつらが、襲撃者なんだと…
「こいつら!!」
ミザエルも左手にデュエルディスクを取り付ける。すると、ミザエルの右目の瞳が藍色から赤色に変色した。強い怒りを宿した瞳で三人の制服の男たちをにらみつける。感情に任せて、男たちと戦おうとするミザエル。しかし、そんなそんなミザエルを、父は右手で制した
「止めろミザエル」
「何故止めるのです!父上!こいつらは!!」
すると父は右手でミザエルの体を制服の男たちとは反対方向に押した。ミザエルはよろめいて、三歩ほど後退してしまう…。何とか踏みとどまるミザエル、しかし、体制を整えたときにはすでに、父と三人の男の戦いが始まってしまっていた。
「古代の機械猟犬の効果発動!相手のライフに600ポイントのダメージを与える!」
「ぐうっ!!」
「父上!!」
機械でできた猟犬の吐き出す火炎球に焼かれる父を見て、ミザエルは悲鳴を上げる。父は、その身を焼かれボロボロになりながらも、ミザエルに声を張り上げた。
「行け!ミザエル!今、ナンバーズを守ることができるのはお前だけだ!七枚のナンバーズを持って、タキオンドラゴンとともに飛び立て!タキオンドラゴンは時空を超える。あのドラゴンに乗っていけば、奴らも追っては来れない…」
「だめです!父上を置いていくなど!」
「行くんだ!われらの使命を全うするために!ナンバーズをこんな連中には絶対に渡してはならん!」
「…くっ」
父の言葉を聞いたミザエルは、七枚のナンバーズを手に取った。カードを、しっかりと握りしめると、前にいる、漆黒のドラゴン、タキオンドラゴンを見上げる。
「タキオンドラゴン!!」
ミザエルが叫ぶと、タキオンドラゴンは高らかに咆哮をあげ、長い首を地面に下した。ミザエルは首を渡って、ドラゴンの背中にまたがる。そしてドラゴンの上から父を見た。父はその後も男たちの操る猟犬の火炎球をその身に受け続けたのだろう。着ていた服はボロボロになり、肌は焼け爛れている。それでも父は、ドラゴンに乗り飛び立とうとするミザエルの方へと振り返り、笑いかけた…
「頼んだぞ、ミザエル。ナンバーズを、守り抜いてくれ…」
周囲に風を巻き起こしながら、ドラゴンは羽ばたいた…翼から、煌めく粒子を巻き散らしながら炎の中を飛び出し、星が光る空へと飛んでいく。機械の巨人たちも空へと羽ばたく光に気付いたようだ。巨人たちの隣に光とともに現れた巨大な戦車に乗り込み、戦車の砲塔をドラゴンに向ける。戦車の中からドラゴンにその照準を合わせて、引き金を引く。砲塔が火を噴く。発射された砲弾がドラゴンに向かって放物線上に飛んでいく。しかし、砲弾が命中することはなかった。砲弾が当たる直前に、突然ドラゴンが姿を消したのである。巨人は空を探すも、ドラゴンの姿はどこにも見当たらない。空にはただ、炎にその身の光をかき消されそうになりながらも懸命に光る、星があるだけだった…
夜の街中、都心部にある居酒屋などの店ははきらびやかなネオンが輝かせ、仕事を終えて帰路に着く大人たちを誘う。このように夜も明るさとにぎわいを絶やさない街を人々は『眠らない街』などと呼称しており、そういった街が集まっている地域を、この世界では『トップス』と呼んでいる。しかし、そんなトップスとは対照的に、昼間でも薄暗く、空気の淀んでいる地域がある。そこには人々が憩う、娯楽施設も店もない、道は狭く掃除もできていないのか、衛生状態もあまり良くない。そこに暮らしているのは貧しくてまともな仕事を持てない人々。そういった地域をこの世界では『コモンズ』と呼んでいる。
コモンズ地域はの街中は照明どころか、住宅から漏れている光も少ないため夜になると、外に出て歩くのも怖くなるほど暗くなる。慣れている人でなければ、外に出ようともしないだろう。そんな深い闇の中に一筋の光が走り、爆音が響いた。
その光は、バイクのヘッドライトの明かり
その爆音はバイクのエンジン音
暗く狭いコモンズ地区の街中を一台のバイクが走っているのだ。夜のほんのわずかな光を反射する白い車体に前と後ろに突き出した大きなホイール、ハンドルグリップは運転席の前ではなく横についているというなかなか奇抜なデザインのバイクはこの世界のどこにも売っていないものだ。そのバイクに乗っているのは少女。風をほぼ全身で受けてしまうバイクでの走行だというのに、この少女は、上はへそを出した短いランニングの黒いTシャツに薄いブルーのデニムコート、下は足を大きく露出したホットパンツという薄着でバイクに乗っている。それでも少女は吹き付ける風に一切ひるむことなく、スピードを出して細い路地を駆け抜けていく。
少女の名は不動ユウカ、コモンズの街で独り暮らしをしている少女。物心ついた時にはすでに親はいなくなっており、12歳まで、コモンズで身寄りのない子どもを引き取って育てているマーサおばさんという人に育てられた。元々、機械いじりが好きだった彼女は成長してマーサおばさんの家を出た後、捨てられた電化製品を修理し使えるようにしたり、他の家の機械の修理を請け負ったりして生計を立てていた。このバイクもユウカがジャンクを使い、一から自分で組み上げたものだ。今もジャンクから作ったとは思えないほどのスピードが出ているのだが…
ドカアン!!ブシュウ…
「っ!、またダメになった…今度はどこが壊れたんだろう…」
突如爆発を起こし、動かなくなってしまった。ユウカは仕方なくバイクから降りて、車体を押し始める。帰ったらすぐに修理しないといけないな、すぐに、直るといいんだけど…、などと考えながらただ黙って歩き始める。幸い、彼女が家として使っているガレージのすぐ近くだったため、少し歩くだけで済んだ。ヘッドライトが消えて真っ暗になった道を、ゴロ…ゴロ…と、タイヤが回る音を立てながら歩いて行く。
すると…夜の空が突然、強く光りはじめた
「!、な、なに!?……」
なんの前触れもなく起こった発光に夜の闇に順応しはじめていた目では耐え切れず、ユウカは思わず目を瞑る。
しばらくして、ユウカが、ゆっくりと目を開くと…そこには、長い金髪を持った、一人の少年が倒れていた。それを見つけたユウカは急いで少年に
「大丈夫?しっかりして!!」
ユウカは肩を強く叩き、大きな声で呼びかけるが少年に反応はない…
周りには誰もおらず、誰かに助けを求められるような状況ではない。そのためユウカは少年の背中に担ぎ、左手で支えながら右手でバイクを押して進みはじめた。人一人とバイク一台の重みを一身に受けて、ユウカの歩みは少し遅くなる。それでも、ユウカは自宅として利用しているガレージへと歩いて行った……
遊戯王ARC-V