~鎮守府正面海岸~
鎮守府の砂浜に1人の少女が座っている。
その砂浜には波の音だけが響いていた。
その波の音は、どこか悲しそうだった。
「...........」
砂浜に座っている少女は、静かに海を眺めていた。
海を眺めている目は、生気を失っていた。
「ガラン....シェール.......」
少女、アーガマは彼女の名前をずっと呟いていた。
もう、二度と帰ってこない彼女の名前を。
「アーガマさん!」
五月雨がアーガマに駆け寄ってくる。
「......?」
五月雨は今のアーガマを見て、驚きを隠せなかった。
アーガマの目を見た瞬間、一歩下がってしまう。
「え...あ....アーガマ...さん?」
「............」
コクンと頷く。
その後すぐに目を逸らし、海を見る。
「アーガマさん...一度来てください!」
五月雨はアーガマの腕を掴んで鎮守府に向かって走り出す。
途中、何度か転んでしまったが、アーガマは笑わなかった。
いつもだったら、苦笑いはしていただろうが、今は表情1つ変えなかった。
――――――――――――――――――――
~執務室~
「え、あ...アーガマ...で良いんだよね?」
「.........」
アーガマはソファに腰掛けずっと俯いている。
「アーガマさん...砂浜で見つけた時からずっとあの調子で...」
「アーガマ、どうしたの?鎮守府の沖でなにがあったの?」
その言葉を聞いた途端、アーガマが震え始めた。
「あ....あぁ....!」
「アーガマ!?アーガマ!落ち着いて...ね?落ち着いて...」
「あ...ぁ....しれ.....い.........かん......?」
と、扉が開く。
「提督、どうしたんですか~?」
扉を開けたのは緑色の着物を着た艦娘、蒼龍だった。
ずっと病室で寝ていたが、アーガマの出撃中に目を覚ましたのだ。
「あ、蒼龍!良い所に!」
「そ......う.....りゅう......さん...?」
「あ、そちらが噂のアーガマさん?」
「ちょっと色々あったらしくてね...夕立は?」
「そろそろ来ると思いますよ?」
と、廊下からドタドタとうるさい足音が聞こえてくる。
「噂をすれば...かな」
「夕立、参上っぽい!」
「お帰り~」
「春雨、どうしたっぽい?」
「夕立姉さん、この娘は春雨姉さんじゃなくて...」
「五月雨ぇ!」
「はいぃっ!」
提督が急に怒鳴る。
そして少し難しい顔をして、目で五月雨に伝える。
――もう全部バラしちゃえ。
「...!」
「夕立姉さん、ちょっとこっちへ...」
五月雨が夕立を部屋の隅へ連れていく。
そこでアーガマについて話すのだろう。
当のアーガマというと、
「アーガマ、落ち着いた?」
「は...い...。多少...は...」
「良かった良かった。じゃあ、向こうで何があったか...教えてくれる?」
「はい......えっと.......」
そういってアーガマは鎮守府海域沖での事を話始めた。