提督、もとい鈴谷とアーガマが向かい合う形で座っている。
先に口を開いたのは鈴谷だった。
「だからさ~...」
鈴谷の説明はこうだ。
元々、鈴谷はこの鎮守府に所属していた艦娘で、ある日、出撃して帰還したとき、鎮守府が深海棲艦の襲撃を受けていた。補給もままならないまま鎮守府の防衛を行い、無我夢中で戦っていて、気づけば深海棲艦は撤退、残っていた艦娘は鈴谷1人だったという。
そのご、殉職した提督の代わりを務めようと、鎮守府を修理(どのように修理したかは話してくれなかった)して、執務室にあったボロボロのクローゼットの中から提督の服を見つけて着用し、鈴谷から提督になった。
そして、鎮守府の砂浜で倒れていた五月雨を保護、治療し、この鎮守府に所属させた。
その後、中破した夕立を発見して、確保、治療、保護し、五月雨と同じく所属の艦娘とした。
それから数ヶ月経ち、夕立がアーガマを連れてきて、今に至る.....。
「こういうこと!」
「夕立さんと五月雨さんには教えてないんですか?」
「教えて~.......ない」
「教えた方が良くないですか?」
「いや~、だってさ...鈴谷でした~!ってバラすのもさ~...」
「それは置いておくとして...良いんですか?五月雨さん達が帰ってくるから急いで来たんじゃないんですか?」
「あ!そうだった!」
そう言って鈴谷はいつもの軍服に着替える。
自分の制服は綺麗に畳み、ハンガーにかけてクローゼットに仕舞う。
――軍服もちゃんと畳んでくれれば...
「あ~、髪も結ばなきゃ...」
と、コンコンと執務室の扉がノックされる。
「提督~、遠征艦隊、只今帰還しました~」
「ヤバいヤバい!」
「そこまでヤバくはないですよ...?」
「入って良いよ~...」
「分かりました~...って、提督...なんか疲れてません?」
「い...いや、気のせいじゃない?気のせい!」
「そうですか...?あ、遠征の結果ですけど...」
「成功です!」
「夕立は?」
「遠征先で被弾したので、入渠させました」
と、五月雨が報告書を机に出す。
「資源も確保出来ましたし、当分は困りません!」
「ふぅ~...良かった~...これで私の分も~...」
「私の分...?」
「なんにも言ってない!なんにも!分かった!?なんにも言ってないよ!!」
「え...あ...は、はい」
と、また扉がノックされる。
「提督~、蒼龍、帰還しました~」
「あ、入って良いよ~」
扉が開き、蒼龍と1人の艦娘が入ってくる。
その艦娘をみた瞬間、アーガマの顔が凍りつく。
ボロボロになった緑色の着物、ほどかれて腰まで伸びた長い髪、光を失った両目。
極めつけに、両肩に乗っている駆動系が破壊されたMS「ギラ・ズール」
「ガラン.......シェール...........?」
「................」
光の消えた目でアーガマを見る。
その目は、元のガランシェールとは思えなかった。
何の感情も伝わってこない。暖かささえ感じない。
無。完全なる虚無である。
その最中、ガランシェールと思わしき艦娘から発せられた言葉に執務室の皆が驚きを隠せなくなる。特にアーガマにとっては.....
「私は............誰ですか..............?」