Fate/Grand walker   作:シルムガル氏族のゾンビ

5 / 7
タイトル詐欺です。

長ーい(八千文字くらい)

これでも短編の長さの範疇なんだって。

こんな長さのを今月中に別のところで五本も書くんだ!死ぬ。


聖杯/Chalice

 ローザさんと別れた俺達は、キャスターの言う通りに聖杯を目指していた。途中に群がるスケルトンたちはマシュやキャスター、ほんのちょっとだけ俺と所長で蹴散らしていった。所長が戦っている姿を見てマシュやロマンがすごく、すごーく驚いていた顔をしていたのが印象的だ。所長は怒っていたけど。

 

「もう少しで入り口だ。そろそろ番犬が出てくるぜ」

 

 キャスターがそういった直後、風切り音が俺目掛けて跳んでくる。

 

「マスター!」

 

 マシュが射線に割り込んで矢を防いでくれた。よくよく見れば其れは矢ではなく、一本の剣だった。

 

「遠距離からという事は……、アーチャー!」

 

 所長の声に合わせる様に、黒い靄のかかったサーヴァントが現れる。

 

「シャドウサーヴァント……」

 

 戦闘態勢に入った俺達。そこへ一羽の梟が本を咥えて俺の元へ飛んできた。梟は本を俺へと落とすと、そのままアーチャーに向かって吶喊し始めた!

 

「あれってまさか、ローザさんのクリーチャー!?」

 

 梟はアーチャーに爪でひっかき傷を与えたけど、いつの間にか両手に握られていた剣で斬り裂かれてしまった。梟が与えた傷もすぐに塞がってしまう。

 

「フン、とうとう使い魔を使役するようになったのか」

 

「生憎、俺のじゃねえ。ちっとばかしいい女が協力してくれているのさ」

 

 アーチャーがキャスターの背で小さくなっている所長を睨んだ。けど、すぐに視線を外してしまう。

 

「マスター適性がないとはいえ、一端の魔術師。だが、その少女が使役していたわけではあるまい」

 

 黒い剣の切っ先を俺に向けて殺気を飛ばしてきた。それを敏感に感じ取ったマシュがすぐさま前に出て盾を構える。

 

「あるいは、そこの常識外の魔力を持った少年が呼び出したものか」

 

 そう言い切るや否や、マシュの盾から重い衝突音が響いた。

 

「くうっ!」

 

「ほう、手折られる花かと思えば中々に頑張るではないか」

 

 アーチャーが盾を蹴り、宙を舞うとそこへ火の玉が飛ぶ。

 

「キャスター!」

 

「気ぃつけなあ! あいつは接近戦が本業だ! 槍を持った俺の一割には届くくらいにな!」

 

「見栄を張るのはよくないぞ」

 

 キャスターへと剣を投擲し、残った剣でマシュの攻撃を捌いていく。

 

「(強い……!)」

 

 指示を出そうにも、目まぐるしく変わる戦況に目が回りそうになる。どうするか悩んでいると、肩に止まっている鉄の梟がつついてきた。梟はコツコツと魔術書をつついている。そのまま魔術書に触れた途端、俺の視界ががらりと変わった。

 

息の詰まる攻防は俺が知覚可能なほどに単純になり、目が回る高速戦闘も俯瞰して見ることが出来た。そして、いつの間にか周りにマナが浮かんでいることも、俺の周りに浮かぶ魔術も、はっきりと知覚した。

 

「マシュ!」

 

 土地と繋がり、平地から白いマナを出す。俺の掛け声に反応したマシュが盾を振りかぶった。

 

「やあああっ!」

 

「【絶妙なタイミング/Impeccable Timing】!」

 

 マシュの攻撃をいなそうと剣を構えたアーチャー。その意識のほんの僅かな隙間だった。その隙間を食いちぎらんばかりにライオンが背後から……ライオン? いや、あれライオン頭の人間!? 

 

「何っ!?」

 

「わあああ!!」

 

 ライオン頭が手に持った薙刀? みたいな武器でアーチャーを斬り裂き、消えていった。その攻撃が生んだ隙はとんでもなく大きい。硬直したアーチャーにマシュの渾身の一撃が突き刺さった。

 

「追撃!」

 

「まかせなぁ!」

 

 キャスターの火球が雨霰と降り注ぐ。キャスターには今ありったけとまではいかないけど、マナ数にしておおよそ20に上る魔力、言い換えれば龍脈20本分の魔力を注ぎ込んでいる。ガトリング砲もかくやと言った勢いで火球がアーチャーに殺到する。

 

「心臓を穿てねえのが心残りだが、焼き尽くしてやらぁ!」

 

 更に魔力を俺から吸い上げていく。が、俺の魔力は周りのマナを吸収することですぐさま補填されていく。

 

焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)ッ!!」

 

 木で編まれた巨人は、マシュに放ったそれよりも太く強靭で、空を焼くほどに燃え盛っていた。

 

「ぐああっ!」

 

 燃え盛る巨人に捕まれたアーチャーが巨人の腹部にある檻へと収納される。炎がさらに勢いを増していく。

 

「ぐ、おおおおおおお!!」

 

 中でアーチャーが剣を何本も取出しながら脱出を図っている。が、最早脱出は不可能。煌々と燃える炎の中でアーチャーの呻き声が聞こえる。

 

「さ、流石にやりすぎかな……」

 

 巨人が燃え尽き、炎が消えると全身を火傷しながらもなんとか形が残ってるアーチャーが横たわっている。

 

「あぁ? 灰も残んねえぐれぇに燃やしたつもりだったんだがなあ?」

 

 キャスターは獰猛な笑みを浮かべながら、更に数発火球を撃ち込んだ。オーバーキルだと思うんだけど。

 

「がはっ! はっ! はっ、ぐうぅ」

 

「よう番犬、丸焦げになった気分はどうだ」

 

「最、悪だ……、まった、く。火加減が、なっちゃ、いな……い」

 

 そう言い残して、アーチャーは消えていった。

 

「へっ、そうかよ」

 

 キャスターはどこか不満気な顔で歩き出した。

 

「いくぜ、聖杯はこの先だ」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 薄暗い洞窟の中を進んでいくにつれて、ヒシヒシと強い魔力を感じ始めた。

 

「この先に待っているセイバーだったな」

 

 先導するキャスターがおもむろに口を開く。

 

「あいつの正体はかの偉大なブリテンの王、円卓の騎士を束ねた騎士王」

 

「それって……」

 

「ああ、騎士王、アーサー・ペンドラゴン。その人だ」

 

 流石の俺でも知っている。エクスカリバーを振るうアーサー王伝説の名前くらいだけど。

 

「そら、みえてきたぜ」

 

 目の前には巨大な杯が見えた。

 

「わかるな、マスター」

 

 キャスターはさっきのアーチャーとの戦いの中で、俺のことを認めてくれたみたいでマスターと呼んでくれている。真名はクー・フーリンだ。

 

キャスターの言う通りに大聖杯には、凄まじいマナが集まっていた。しかし、どう言う訳かそれらは全て黒のマナ。何か汚染されたマナのように感じた。

 

「あの聖杯、黒のマナに染まっている。いや、あの大聖杯に蓄えられたマナが、大聖杯の中の何かで汚染されているのか?」

 

「なかなか察しのいいマスターじゃないか」

 

 声の方を見ると、黒い鎧に身を包んだ騎士が立っていた。その身に纏うマナも、黒く変色『されられた』もののように感じた。

 

キャスターとセイバーが問答している最中も、それだけが気がかりだった。

 

「なあ、セイバー」

 

「なんだ?」

 

 キャスターとの問答にひと段落ついた段階で、俺が割り込んだ。セイバーの目は品定めをする鑑定士のように鋭く、鉄のように冷え切っていた。

 

「貴方の目的は、貴方は聖杯に何を願おうとしていた?」

 

 ピクリ、とセイバーの眉が動いた。

 

「貴方のその『安定を求める』清い青は、今や黒く塗りつぶされても、その中で『秩序を尊ぶ』白い色は失われていない。ならば」

 

 一度、深く息を吸う。周りの沈黙が痛いけど、もうここまで来たら止まらない。言いたいことははっきり言ってしまおう。

 

「貴方はもう騎士王ではなく、ただの王だ。それも、力で押さえつける暴君そのもの。そこまで堕ちてまで、貴方はあの汚れた聖杯に何を望む?」

 

 セイバーはしばらく表情を変えなかったが、やがて堰を切ったように笑い出した。

 

「なぜお前にそんなことを答えねばならん。言ったところで何か変わるのか? 私の願いに賛同でもして頭を垂れるつもりか? ちがうよなぁ?」

 

 セイバーが剣を抜き、下段に構えた。その剣には漆黒の魔力が纏わりつき、撃ちだされるのを今か今かと待っている。

 

「セイバー! 俺は……!」

 

「問答無用! お前は私の前に立った! ならば敵だ!」

 

「マスター!」

 

 マシュが俺の前で盾を構えた。

 

「ほう、その盾で受けるつもりか。面白い!」

 

 セイバーの持つ聖剣が振り上げられた。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!」

 

 聖剣が放った漆黒の闇と、光り輝く巨大なラウンドシールドがぶつかり合った。その衝撃でフォウが吹っ飛びかかったのを、何とかキャッチして抱きしめる。

 

「フォーーウ!」

 

「うん! いこう!」

 

「ファーーー!?」

 

 なんだか『ちがう! そっちじゃない! 逃げろバカ!』と言わんばかりにフォウがてしてし叩いてくる。構わず俺はマシュの隣に立つ。

 

「先輩!?」

 

「女の子を一人で戦わせたら、男が廃るってもんだ!」

 

 右手に刻まれた令呪が輝き始める。その赤い光は、俺の心の昂ぶりに応じる様に増していく。

 

「一緒に戦うぞ! マシュ! 俺達にはその力がある!」

 

 ひとりでに宙を舞う魔術書から、次々呪文が出てくる。それらは全て俺達の、マシュやキャスターの力を底上げするエンチャント呪文やインスタント呪文。このタイミングで唱えられる呪文で、魔導書にあるありったけのパンプアップを唱える。周りにあるマナを根こそぎ、大聖杯の下を流れる龍脈からも絞り上げる様に使い切る。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

 俺の中で何かが激しく燃える。それに伴い、俺に集まっていくマナが赤く染まっていく。

 

「はあああああああああああ!!」

 

 マシュの綺麗な髪が、ほんのりと赤く染まっていく。俺の魔力の影響だろうか? 隅っこでそんなことを考えながら、目の前の闇へと俺たちは一歩踏み出す。

 

「なんだと!? なら! はあっ!!」

 

 グンッ! と、闇の勢いが強くなる。だけど、そんなことでは止まれない。

 

「いくよ! マシュ!」

 

「はい! 先輩!」

 

 盾を構えたまま、二人で闇を押し返しながら走る。前へ! 前へ! まだ前へ! 

 

「俺達/私達は! こんなものじゃ止まらない!」

 

 ラウンドシールドが真っ赤に光る。

 

「いっけえええええええええええええ!!」

 

 そのまま、セイバーの放つ闇を押し切り、セイバーを弾き飛ばした。

 

「馬鹿な!? ぐあっっ!」

 

『嘘だろう!?』

 

「やるじゃねえか! マスター! お嬢ちゃん!」

 

「ありえないわよ……」

 

「フォーーーーーーウ!」

 

 弾かれたセイバーが弾丸のように吹っ飛び、大聖杯の下にある台座へと突っ込む。派手に上がった土煙がセイバーを隠してしまう。

 

「やった!」

 

「いえ、感触が軽かったです。恐らく直撃する前に後ろへ跳んでいます」

 

『マシュの言う通りだ。もう一発来るぞ!』

 

 マシュがふら付きながらも盾を構える。

 

「大丈夫」

 

「先輩……」

 

 煙が晴れると同時に、チャージを終えたセイバーが聖剣を振り上げた。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

「【まばゆい反射/Dazzling Reflection】!」

 

 牡鹿のような角をはやしたライオンの幻影が闇の前に現れる。それは闇を吸収し、暖かな光となって俺に降り注いだ。体の奥から活力がみなぎってくるのを感じる。

 

『まだだ! セイバーは大聖杯から魔力のバックアップを受けている! 次が来るぞ!』

 

「次はないさ。キャスター!」

 

「そういうこった!」

 

 令呪がさらに輝く。アーチャーの時とは比べ物にならない量の魔力を全部つぎ込んで、無理矢理に霊基を格上げしたキャスターの宝具が放たれた。

 

「燃え尽きろ! 焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)ッ!!」

 

 注意が完全にそれていたこともあって、一瞬反応が遅れたセイバーにとって、それを躱すのは困難だったが、躱せない訳ではなかった。巨人の腕を見切り、躱して斬りつける。しかし、傷一つ着かない巨人の腕から炎が伸びてセイバーを捕えた。

 

「この程度の炎など!」

 

 炎を振り払うことに気をとられたセイバーの直感が危機を告げた時、既にマシュは懐に潜り込んでいた。だが、それでも騎士王は、セイバーはその突進を受け止めた。

 

「残念だったな!」

 

「そっちがな!」

 

 盾の影から飛び出したのは、もう一人のキャスター。いや、正確には違う。よくよく見れば目に光がない。

 

「【もう一人の自分/Altered Ego】」

 

 こいつは魔力を込めた分だけ強くなる分身(コピー)だ。セイバーには呪文が通りづらいことを、キャスターに聞かされていたことで思いついた。もっと強い奴を呼び出せばいいという事だ。

 

コピー・キャスターの杖が槍のように鋭く、セイバーの心臓を貫く。それと同時に、セイバーから力が抜けた。

 

「無茶苦茶だな。マスターがサーヴァントと共に突っ込んだり、サーヴァントの霊基を魔力で補ったり、あまつさえ私に止めを刺したのが三重の罠の上にサーヴァントですらないときた」

 

「ああ、こいつは俺が召喚したクリーチャーだ。英霊にだって劣らない、仲間だ」

 

「フッ、まあいいさ。私も所詮はここに縛られたサーヴァントに過ぎない。気を付けるがいい、規格外なマスターよ。聖杯を巡る戦い、グランドオーダーは、聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだ」

 

 そう言い残して、セイバーは消えてしまった。振り返ると、キャスターも消えかかっていた。

 

「チッ! セイバーの奴言いたいことだけ言って消えやがった。じゃあなマスター、次はランサーで呼んでくれや」

 

 そういってキャスターも消えていった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「先輩! お怪我は?」

 

「マシュこそ、大丈夫?」

 

 マシュの手には水晶体が握られていた。それをみて所長もこっちに駆け寄ってきた。

 

「所長、無事でしたか」

 

「貴方が無茶苦茶してくれたおかげでね、ともかく、これを回収してカルデアに戻りましょう」

 

「残念だが、そうはさせてあげられないね」

 

 聞き覚えのある声を聴いて振り向くと、そこにはモスグリーンのタキシードとシルクハットの男がいた。

 

「レフ! 来てくれたのね!」

 

 レフ・ライノール。カルデアの魔術師で、マシュの次にカルデアであった人。温和な笑みがを浮かべているが、灯が覚醒した今、改めてレフを見た時に感じたのは、クリーチャーの気配だった。

 

「ダメです! 所長!」

 

「何をするの! 放しなさい! レフが来てくれたんですもの、もう大丈夫よ。ね、レフ。そうでしょう?」

 

 所長は気付いていないみたいだけど、マシュも違和感を感じ取ったみたいで盾を構えて所長の前に出た。

 

「マシュ! 貴女まで!」

 

「所長! 先輩の言う通りです! レフ教授からはよくないものを感じます!」

 

 レフは一度天を仰ぐと、こちらを睨みつけてきた。その顔に笑顔はなく、まさに悪魔の顔をしていた。

 

「とるに足らない子供とデミ・サーヴァント風情と見逃していたのが仇になったか。まさかそのような躍進を遂げるとは思ってもみなかった」

 

「レフ?」

 

 レフの手から凝縮された呪いの弾丸が飛び出した。マシュが構えていなかったらば所長は消え去っていただろう。

 

「フン、亡霊風情を庇うか。デミ・サーヴァント」

 

「何を言ってるのよ! レフ!」

 

「マリー、私はねえ、君の真下に爆弾を仕掛けたんだ。君の体は既に木端微塵に吹き飛んで、君の存在は謂わば残留思念、亡霊に過ぎない」

 

 マシュの手から水晶体がレフに向かって飛んで行く。咄嗟のことに追いつけず、水晶体はレフの手に渡ってしまった。

 

「君は死んで、初めて欲しいモノが手に入ったんだ! 喜びたまえ! 最もこの特異点が崩壊すると同時に君は消えてしまうがね。しかしそれではあまりに、忍びないだろう?」

 

 風景が切り替わる。そこはカルデアの管制室だった。

 

「嘘でしょ……? なんでカルデアスが真っ赤になっているの? ねえ、レフ、あれは偽物なんでしょ?」

 

「本物さ、聖杯を使えば時空を繋ぐことだって容易なんだ。君の為に特等席を用意したんだから、せいぜい絶望してくれたまえ」

 

 所長が混乱しているうちに、宙に浮いた。

 

「動くなよ、藤丸立香にマシュ・キリエライト。一つでもアクションを起こせば先に君たちの首が圧し折れるぞ」

 

 所長が徐々にカルデアスに近づいていく。動こうにもレフがこちらを凝視していて動けない。

 

「さあ、君が起こした悲劇の結末は、君の命でも贖いきれない大罪だ。だからせめて、カルデアスに飲まれて少しは罪を贖うといい」

 

「う、嘘よね! あれは高密度の情報体、次元の異なる領域なのよ!?」

 

「ブラックホール、いや、太陽かな? どちらにせよ、人間は分子レベルで分解される地獄だな。さあ、無限に苦痛を味わいながら、死んでいくといい」

 

「させるか!」

 

「動くなと言った!」

 

 レフから放たれるガンドの嵐で、身動きが取れない。

 

「先輩! 私が行きます!」

 

「ならば先に君のマスターから殺すとしよう! いい加減目障りだ!」

 

 マシュの動きが何かに絡め取られたように固まる。

 

「くっ! お、重い! 何かに圧し掛かられているみたい……!! 先輩! 逃げて下さい!」

 

「マシュ! くそっ! こうなれば一か八かだ!」

 

 マナを絞り出そうとしたとき、さっきまでどこかに消えていた鉄の梟が飛び出した。

 

「ローザさんの梟……?」

 

「何かと思えばこんな鉄屑如き!」

 

 レフのガンドの弾幕が梟を襲う、しかし梟は戦闘機も真っ青な軌道であっという間にレフに肉薄した。

 

「小癪な!」

 

 レフの振るった腕が梟に当たるのと、梟の嘴がレフの腕に突き立つのは、全くの同時だった。

 

「他愛のない……では、改めて藤丸立香を……、ごぼっ!?」

 

 レフの口から大量に血が噴き出された。それと同時に所長が落ちてくる。

 

「きゃあああああああ!!」

 

「所長!」

 

 すぐさまマシュが所長を受け止め、俺はレフに向かって呪文を打つ準備を整えた。しかし、周りのマナはさっきの戦いでほとんど枯渇しており、今唱えられるのは【ショック/Shock】が精一杯だ。

 

「おのれぇ……何をした!!」

 

「知りたいか?」

 

 レフの背後に誰かが立っている。いつの間にかいたその人物は、不敵な笑みを称えたグラマラスな美人。

 

「ローザさん!」

 

「おう、無事かね藤丸君、マシュちゃん、あと所長ちゃんにフォウ君!」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 いやー、バーサーカーは強敵だったな。処理に時間がかかってしまった。それはさておいてだ。

 

目の前で悪意の大梟から戦闘ダメージ貰った謎のデーモンがこっち睨んでるんだけど、悪意の大梟が反応したってことは敵か。

 

「さて、なんで君が現在進行形で死に向かっているかというとだね。悪意の大梟にはある特殊な能力があるのだよ、我々は似たような能力を全部ひっくるめてこう呼んでいる。触れるだけで相手を死に誘う能力―――即ち、【接死】とね」

 

 だが、もみあげのすごいデーモンはどこかへ消えてしまった。死んだことで戦場を離れたというよりかは能力で一度死んでからどこかへ帰った(墓地から手札に戻った)感じだ。

 

「不覚をとったが、まあいい。どちらにせよ人理焼却は既に成され、未来は確定した! 震えながら絶望し続けて死ぬがいい!」

 

 存外元気だなあのデーモン。

 

気になることがいくつか出てきたが、まずは所長ちゃんの状態を改めてチェックしよう。私風に言えば今の所長はスピリットだ。

 

「とりあえず話は聞いているさ。さっきのデーモンがペラペラしゃべっていたのをね。要は肉体が元通りになればいいんだろう?」

 

 そう言い残し、一足先にカルデアとやらへプレインズ・ウォークする。座標はさっき時空が繋がったときに記録した。そこで所長の物と思わる僅かな肉片を見る。見事に木端微塵だ。

 

「あちゃー、これはちょっと過去からやり直すか。ほい【一日のやり直し/Day's Undoing】」

 

 現れた無機質な門をくぐると、丁度二十四時間前ぐらいのカルデアにひょいと私が入り込んだ。

 

「ほんじゃ、ばれる前にちょちょいっと所長ちゃんに【再生/Regeneration】つけて、一日待ってもう一度ここに来ると」

 

 そして一日が過ぎる。

 

「はい、時間通りにやってきました。丁度私が一日のやり直しを唱えた直後だな。ほれ、再生能力起動」

 

 みるみる間に所長の肉体が再生されたが、生憎魂はスピリット化しているため、このままじゃ動かない。どちらにせよちょこっと死霊呪術(ネクロマンス)かじってれば肉体に魂を憑依させることなど容易い。そんなことを考えて言ううちに所長が目を覚ました。どうやら手助けするまもなく肉体に還ってきたようだ。

 

「目覚めはどうだね? 肉体は私がちょっと過去まで行って再生させたよ」

 

「……もう何も言うことはないわ」

 

 あちゃーだめだ精神的に参っちゃってる。徐々に回復を待つしかないか。どうにもこの人理焼却とやら、かなり長い時間がかかりそうだ。

 

「さてさて、ここまで関わってポーイじゃ後味が悪い。最後まで付き合うとしますか」

 

 とりあえず私は、今頃帰ってきているであろう藤丸君達の元へ向かった。長くて短い、とても大切な一年が始まりを告げたのだった。




やっとプロローグ終わったけど、次はアモンケットが出る前に書けるか不安でござるの巻。

龍脈1個=土地1個=マナ①

さて、誰を召喚しよう。

私のカルデアにはアルトリア顔は一人もいないし、エミヤもいないです。

じゃあ代わりにギデオンとか呼ぼう!(呼ぶとは言ってない)
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