黒岩さんが聖杯戦争にinしました   作:BOX

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セイバー視点&黒岩さん視点



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「はあっ!」

 

 巨大な海魔の一部となった海魔を潰し、巨大な触手を両断する。

 しかし、瞬きの内に再生していく。

 その再生力は恐ろしく、ライダーの雷撃はおろかアーチャーの剣弾を受けても再生しダメージを与えることが出来ない。

 どうすれば、

 

 キイィィィィン

 

 何の音だ?

 そう思い、空を見上げる。

 するとそこには二機の戦闘機が飛んでいた。

 その内の一機が海魔に接近していく。

 

(そんなことをしたら!)

 

 案の定、海魔が反応した。

 細い触手を飛ばしていき、戦闘機を捕らえる。

 そして、自身に引き寄せていく。

 もう、駄目かと思ったその時。

 いくつもの何かが空を裂き飛来して、触手を引きちぎった。

 その影響で戦闘機は海魔にはぶつからずに引っ張られた力のままに滑空し、川に接触して何度か水上で跳ねてた後、岸に乗り上げて止まった。

 翼などが折れて、無残な様子だが胴体部分は何とか原型を留めていた。

 その何かの発射元に視線を飛ばす前にもう一度発射され、残っていたもう一機の片翼を打ち抜く。

 機体は海魔にぶつかり爆発したが、パイロットの方は脱出装置が作動したらしくコックピットから射出され、その姿は街中に消えていった。

 その何かはアーチャーとは違う方向から飛んできた。

 そして、あんな攻撃を出来るサーヴァントはもう一人しか私は知らない。

 改めて、発射元に視線を向ける。

 そこには

 

「バーサーカー!あなたも来てくれたのか!」

 

 橋の上で風に靡く黒衣があった。

 当然と言えば、当然だろう。

 子供たちの命を救うためにあそこまで尽力した彼女ならこんな状況で来ない訳が無い。

 しかし、それでも状況は変わらない。

 私やライダーの死角から近づく、触手がことごとく打ち抜かれるので戦いやすくはなった。

 だが、それでも海魔の再生スピードを上回ることが出来ないので、足止め以上の事が出来ない。

 

「おおい、セイバー!このままでは埒が明かん。いったん引けい。」

「ふざけるな。ここで食い止めねば!」

「そうはいっても手詰まりであろう。余に考えがある。いいから引けい。」

「くっ!」

 

 確かにこのままでは最終的に押し負ける。

 せめてもの置き土産として、進路上の触手を断ち切って岸に向かう。

   ・

   ・

   ・

「時間稼ぎとか言われても。僕たちが何の策も思いつかなければ元の木阿弥だ。なあ、何か策は無いのか?」

 

 ライダーが固有結界を使い、足止めを行っている間に策を考えなくてはいけない。

 そして、全員が策を考えているとアイリスフィールの携帯電話が鳴りだした。

 

「えっと……。これ、どうするのかしら?」

 

 しかし、使い方が分からないらしくライダーのマスターに手渡した。

 恐らくは切嗣からなのだろう電話越しに幾度か言葉をかわした後、困惑顔でこちらに向き直った。

 

「どうかしたのか?」

 

 その表情を疑問に思ったのだろう。

 ランサーが尋ねる

 

「それが、あんたに言伝があった。セイバーの左手は対城宝具だとか。なんとか。」

「っ!……それは本当なのかセイバー。」

 

 ……知られてしまったか。

 さすがに偽ることも出来ずに肯く。

 

「それは、あの怪物を一撃で仕留めうるものなのか?」

「可能だ。」

「……。」

 

 そう、私の聖剣の一撃ならあの巨大な海魔も屠れるだろう。

 しかし、

 

「だが、ランサー。私の剣の重さは、誇りの重さだ。あなたから受けたこの傷も誉れであって、枷ではない。もし、この左手の代替としてディルムッド・オディナの助勢を得るならば、それは万軍にも値する。」

 

 これがまごうことなき私の本心だ。

 

「なぁ、セイバー。俺はキャスターの奴が許せない。」

 

 当然だ。

 故に打ち倒さねばならない。

 

「奴は恐怖の伝播を是とし、他者の恐怖を悦とする。騎士の誓いに賭けて決して看過できぬ悪だ。」

 

 そこまで言ったランサーは破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を地面に突き立て、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を両手で掴んだ。

 その姿から直感が半ば確定した未来を幻視させる。

 

「ランサー。それは駄目だ」

 

 口で静止を求めることは出来ても、実際に止めることは出来ない。

 それが海魔を倒すのに確実な方法だとわかってしまうし、代替案もセイバーには存在しない。

 

「いま勝たなければならないのは、セイバーか?ランサーか?否どちらでもない。ここで勝利するべきは、我らが奉じた騎士の道――――そうだろう?英霊アルトリアよ」

 

 そう言って、ランサーが両手に力を籠めようとしたところで。

 

「……。」

「……何故、止めるのだ。バーサーカー。」

 

 今まで無言だった黒衣の彼女だった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……何故、止めるのだ。バーサーカー。」

「……わからない。」

 

 気づいたら手を伸ばしてランサーを止めていた。

 まだ、少々精神が不安定だからだろう。

 そして、

 ――――ランサーの槍を折らずに済む方法を持っているからだろう。

 

「セイバー。左手を。」

「あ、はい。」

 

 とりあえず、それを実行するためにセイバーに声をかける。

 そして、左手をとった。

 

「私の宝具をあなたに使う。だから、出来るだけ受け入れて。」

 

 セイバーのクラスが耐魔力を持つと知っているので身をゆだねるように頼む。

 

「……わかりました。共に肩を並べ戦ったあなたを信用します。」

 

 こちらの目を真っ直ぐと見つめながらそう言われる。

 その信頼に応えるようにしよう。

 

「痛みと傷を抱きしめて(ブルー・オブ・ティアズ)」

 

 青い光が傷ついた左手を包み込む。

 すると、傷は瞬く間に消えた。

 

「傷が!」

「どうして、治癒は効かないはずなのに。」

 

 当然だ。

 この宝具の力は治癒ではない。

 

「おい!()()から血が流れてるぞ。大丈夫なのか?」

 

 ライダーのマスターが気づいたようだ。

 そう、この宝具は他者の痛み、傷、障害、体内の異物を私に移す。

 そんな宝具なのだから。

 

「……ここまでしてくれるのは何故なんだ。バーサーカー。」

 

 傷を見て宝具の能力に気づいたらしいランサーが尋ねてくる。

 

「森での借りを返した。それと、」

 

 さっきはわからないが、これが理由なのだろう。

 酷く単純な感情の産物。

 

「貴方とセイバーには万全の状態で戦ってほしい。ただそれだけ、」

「そうか。」

 

 ランサーがそう言って笑った。

 

「……貴方達だけに宝具を開帳させておいて私が見せないという訳にもいかないでしょう。私の宝具もご覧に入れましょう。」

 

 セイバーも私の宝具の効果を察したのだろう。

 しかし、何も言わずに剣を頭上に掲げた。

 風が周囲を渦巻き、黄金の剣身があらわになった。

 それに思わず見とれていた時。

 ――――自身への魔力供給が突如として途絶えた。

 

「っ!」

 

 契約のパスを辿り走り出す。

 

「バーサーカー!」

 

 背後から声が投げかけられるが、それに答える余裕も無かった。

 魔力供給が途切れる。

 それは異常事態であり、非常事態の証だ。

 未だに繋がっているラインから生存はしている事は判る。

 つまり、カリヤの現状は二通りのケースが考えられる。

 一つ目は他のマスターと戦闘中の場合。

 戦闘に魔力を取られて此方に回す事が出来ない。

 しかし、戦闘中なら令呪で私を呼び出せばいい。

 故に現実的ではない。

 もう一つは、

 ――――魔力を生成出来ない程に衰弱している場合。

 魔力とは、生命力。

 いや、命そのものだと言われている。

 それを生成する事が出来ない。

 その状況の意味することは単純だ。

 

(間に合って!)

 

 そして、ラインを辿って着いたビルの屋上に降り立った時。

 カリヤの苦悶に満ちた声が下の方から響いた。

 次の瞬間、目の前の柵を乗り越え空中に身を躍らせる。

 

(見つけた!)

 

 そこには倒れ伏し悶えるカリヤの姿とその脇でカリヤに何かを行っている黒衣の男の姿があった。

 路地裏の壁を左右交互に蹴り、さらに加速する。

 

「カリヤから離れろ!」

 

 そう叫びながらブラックブレードを突き出す。

 しかし、点の攻撃であったためか黒衣の男に巧みに避けられる。

 

(外した!けど、まだまだ!)

 

 コンクリートに突き刺さったブラックブレードを軸に相手の側頭部へ蹴りを放つ。

 しかし、それも頭を砕く代わりに武器を犠牲に流される。

 

(この男――――強い。)

 

 ブラックロックキャノンを砲の形態にして構えた。

 相手も先程砕いた筈の剣をどこからか取り出し構える。

 一瞬、膠着状態に陥る。

 しかし、カリヤが瀕死である上にすぐに倒せるような相手ではないことから。

 時間はあちらの味方であり、こちらの敵だった。

 

「逃げるなら、あとは追わない。」

「……それではお言葉に甘えさせてもらおう。」

 

 こちらが不利な以上、多少粘るかと思ったがあっさり男は走り去っていった。

 

「カリヤ!」

 

 完全に姿を消したのを確認してから、地面に膝をつきカリヤの状態を確かめる。

 

「……酷い。」

 

 全身にやけどを負い、骨折もしているようだ。

 見える範囲だけでそれなのだ。

 見えない部分を含めたらどうなるのか。

 

「……どうして私を呼ばなかったの?」

 

 意識を失っているので聞こえないのは分かっているが、思わず漏らしてしまう。

 この怪我は明らかに戦闘が原因だろう。

 自分では他のマスターに対抗するのは難しいとわかっていた筈なのに何故自分を呼ばなかったのかと思わず責めるような声色になる。

 けれど、

 

「私が考えたいことがあるって言ったから遠慮したの?」

 

 そうだとしたら自分の責任だ。

 理不尽に怒って、勝手に嫉妬して、サーヴァントの義務を放棄して。

 

(やっぱり、私に感情なんて……。)

 

いや、考えている場合ではない。

今はカリヤを治すのが先だ。

感情の必要か不要かなんて、あとで考えればいい。

 

「痛みと傷を抱きしめて(ブルー・オブ・ティアズ)」

 

カリヤを青光が包み込む。

そして、傷が消えていく。

 

「あぁ。」

 

涙がこぼれる。

身体中を痛みが走る。

身体の中をナニカが這いずる。

そして、何よりココロがイタイ。

 

(・・・かりや。・・・かりや。)

 

ーーーあなたはこんなものを抱えていたの?

身体中をこんなものに食い荒らされて。

 

ーーー聖杯なんていらない?

ーーーあなたが生きてるのが奇跡のようなものなのに?

ーーーあなたが生き続けるためにはその奇跡に縋り続けなければいけないのに?

それでもあなたはあのこを優先して。

 

ーーーそれもこれもあの人のため?

 

(イタイ。イタイ。イタイ。サビシイ。サビシイ。サビシイ。ツライ。ツライ。ツライ。)

 

「こんなに痛いのなら、こんなに寂しいのなら、こんなに辛いのなら。」

 

ーーー私は

 

「ココロなんて・・・いらない。いらないよぉ。」

 

 私はもう涙も嗚咽も止めることが出来なかった。

 

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