(バーサーカーは一体どうしたんだ?)
ランサーは夜の街を移動しながら考える。
その身は霊体化しているので当然一般人に見られるようなことは無い。
――バーサーカーがいきなり走り去ったあと。
何ら問題なくセイバーの聖剣の一撃で巨大海魔は屠られた。
その後、バーサーカーの事も気にはなったがキャスターを倒した以上。
置いてきたマスターの許婚であり、仮のマスターでもあるソラウのことが心配だったので性急にその場を離れたが・・・。
「・・・ソラウ殿。」
ソラウが待機しているはずの場所にあったのは物理的に破壊された令呪と覚えのある魔力を含んだ夥しい血の跡だった。
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(俺は間違っていたのだろうか?)
拠点にて主であるケイネスに報告を終え、叱責を受けながら考える。
討ち取れたのはキャスターの使い魔である海魔に集団でキャスターのみ。
主であるケイネスは重傷を負い。
仮の主であるソラウは攫われてしまった。
さらに現場の状況から決して無傷ではないだろう。
――こんな窮地に陥ってしまったのは自分のせいではないのだろうか?
――自分の騎士道に対する拘りや誇りの性ではないのだろうか?
(・・・いや)
ランサーは脇に置いた必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を見やる。
(「貴方とセイバーには万全の状態で戦ってほしい。ただそれだけ、」)
もしも、自分が騎士道に従いバーサーカーを助けなければ。
必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を失わざるおえなかった筈だ。
そして、自身が敗北したときに下らない言い訳にしていたかもしれない。
――本来なら騎士道で利など考えるべきではないが利は有ったのだ。
それ故に決して間違いではない。
・・・そう。
「・・・ケイネス殿。何かここに近づいています。」
だから、最後まで自分の信じる忠義を貫こう。
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「すでに夜明けも程近いが、我々が雌雄を決するには今夜をおいて他に無いと思うがどうだ?ランサー?」
「セイバーよ。この胸に涼風を呼び込んでくれるのは今はもうお前たちだけだ。」
セイバーは騎士の誓いを守り、疲弊した身体を動かし訪ねてくれた。
そして、バーサーカーのおかげでお互いに全力でもって戦える。
この二人だけが騎士道を、誇りを、拘りを唯一理解してくれる。
「しかし、セイバー。貴公が挑んできたのだ。当然。手心など加えぬぞ?」
「侮らないで頂きたい。ランサー。お互いに真名も宝具も割れているのです。もう、貴方の槍の攻撃は受けない。むしろ、そちらが必要では?」
「ハッ!言ってくれる。」
セイバーが黄金の刀身を晒す。
当然だろう。
一度、お互いに剣と槍を打ち合わせ。さらに、一度刀身を完全に晒しているのだ。
むしろ、破魔の赤薔薇《ゲイ・ジャルク》と打ち合った時に発生する風は不確定要素にしかならない。
お互いに一歩づつ歩を進め、射程圏内に入った所で武器を打ち合わせる。
――決闘を開始した。
初めにそのまま鍔迫り合いを始める。
両手でそれぞれ一つの槍を操る以上、両手で振るう剣には敵わず弾かれる。
弾かれた勢いのまま回転し槍を叩き込む。
それは後ろに飛ばれることで回避される。
距離が開いたことによりこちらのターンとなる。
使う武器が槍であり、さらにそれが二槍。
リーチと手数ではこちらが優る。
セイバーの射程の外より連撃を放つ。
しかし、セイバーはその直感と技量により破魔の赤薔薇《ゲイ・ジャルク》を皮一枚で避け、流血しながらも必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)は決して身体で受けないように剣で逸らし、避けていく。
何度も立ち位置が入れ替わり、火花が散る。
頭をかすめる剣戟に髪の毛が宙を舞う。
お互いの武器を共に喉元に突きつけ合う。
それを弾き、距離を置く。
そして、一拍の空白が生まれる。
「はは。騎士道の剣に誉れあれ。俺はお前に会えてよかった。」
「勝利宣言か?余裕だな!」
そう言い放つとセイバーが向かってくる。
それを迎撃しようとした時、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)が地面に転がった。
取り落したかと思い破魔の赤薔薇《ゲイ・ジャルク》を両手持ちにするとそのまま流れるように破魔の赤薔薇《ゲイ・ジャルク》が胸を貫いた。
「ゴパァ!」
喉をせり上がってきた血を吐き出す。
目からも血が流れだしよく見えない。
しかし、声が聞こえてくる。
「残る令呪を全て費やしてサーヴァントを自決させる。確かに条件は満たされた。」
この声はセイバーのマスターの声!
俺は、俺は生前と同じく主君の裏切りで死ぬのか?
怒りや憎しみがこみ上げ、絶望が胸を埋め、膝を着いたときに
――地面に転がった必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)が手に触れた。
(「貴方とセイバーには万全の状態で戦ってほしい。ただそれだけ、」)
(まだ、まだだ!)
必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を強く握りしめる。
「セイバー!」
唖然とそこに立ち尽くすセイバーに声をかける。
どこかに彼女もこの謀に加担しているのではないのかと思ったが、その顔に色濃く刻まれた何故?という表情にそういった考えは捨てる。
「俺は生前と同じように主君の裏切りで死ぬのでは無い!誇り高い騎士の決闘で死ぬのだ!」
その言葉を受けたセイバーがはっと剣を握り直す。
そして、力強く一歩踏み出す。
「我が一投を受けてみろセイバー!」
破魔の赤薔薇《ゲイ・ジャルク》は正確に霊核を貫いている。
自身が消え去るまで時間は無い。
片膝になり、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を振りかぶる。
そして、残った気力を掻き集めて投擲した。
それはこちらに向かうセイバーの頬に一本の赤い線をつけ。
次の瞬間、正面から襷掛けに切り裂かれた。
「ああ、セイバー。俺は満足だ。」
セイバーはこの決着を悔やむだろう。
だから、最後にこれだけは伝えたかった。
こんな拙い作品を読んでくれてありがとうございます