黒岩さんが聖杯戦争にinしました   作:BOX

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黒岩視点&おじさん視点






「スースー。」

「…………。」(困った。)

 

 虫を殺したあと、サクラちゃんに怪我がないか確かめようとしたら抱きつかれてしまった。

 その身体が震えていたので落ち着けるために抱きしめて頭を撫でてあげたら泣き出してしまい大変だった。

 今は、泣き疲れて眠ってしまっている。

 本当はカリヤを回収しに行きたいのだけど、首に回っている手を外そうとすると泣きそうな顔になるので外せないし起こすのも忍びない。

 暫く悩んだあと、サクラちゃんの身体を首を軸に回転させ、背負うことにした。

 起こさないように静かに階段を降りていき、カリヤを置いた場所に向かった。

 一瞬身じろぎもしないカリヤの姿に死んでしまったかと心配したが、眠っているだけのようで安心した。

 カリヤをもう一度抱えて二階に上がる。

 そして、少し考えカリヤをサクラちゃんのベッドに寝かせると別の部屋からベッドを持ち込み元からあったベッドに並べる。

 そこに腰を下ろし多少強引にサクラちゃんを引きはがす。

 安らかな寝顔が歪むが代わりにカリヤにくっつかせる。

 するとまた静かに寝息を立て始めたのでほっとする。

 そして、ベッドから降り周囲の地理の確認をしようとし。

 

 ぎゅっ!

 

 ――――出来なかった。

 いつの間にかパーカーの裾をサクラちゃんに掴まれていた。

 ふぅっとわずかにため息を漏らすとサクラちゃんの体がわずかに跳ねた。

 

(…………しょうがない。)

 

 眠るだけでも多少は力の節約になるはずだ。

 そう思いベッドに身を横たえ軽くサクラちゃんを抱きしめる。

 そして、知識では知っていてもはじめて使う言葉を紡ぐ。

 

「おやすみなさい。サクラちゃん。」

「・・・おやすみなさい。おねえちゃん。」

 

 その言葉を最後に私の意識は眠りに落ちて行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 夢を見た。

 生き物の気配のしない荒廃した世界。

 そこには異形の少女たちがいた。

 見た目は至って普通だった。

 ――――角や尻尾、異常に発達した爪など所々人間には本来ない部分を持っている以外には。

 少女たちはその手に武器を持ち、戦っていた。

 すでに何人も倒れているのにその瞳には怒りも悲しみも恐怖すら浮かんでおらずただひたすらに虚ろだった。

 そして、その戦いはただ一人を残して終結した。

 その夥しい躯の山の上にたつ少女の左目には青い焔が灯っていて、その顔は。

 

「今の夢は…………?」

 

 起き上がり今まで見ていた夢について考える。

 ――――サーヴァントとマスターの間にある繋がりによりお互いに相手の過去を夢で見ることがあるのだがゾウゲンから最低限の知識しか渡されていない雁夜には知る由も無かった。

 

「ふぅっ。」

 

 いくら考えても魔術師として三流以下の知識しか持たない自分では答えを出すことも出来ずにその体をもう一度ベッドに横たえ寝返りを打ち横を向くと。

 

「っ!」

 

 静かに自分を見つめる夢の中で見た青い瞳と目があった。

 その驚きで頭が覚醒した雁夜は昨夜のことを完全に思い出した。

 

「バーサーカー!桜ちゃんはいった「シー。」

 

 バーサーカーは自分に静かにするようにジェスチャーすると静かに自身の隣を指差した。

 

「スースー。」

 

 そこには静かに寝息を立てて寝ている桜の姿があった。

 

「良かった。」

 

 その顔は間桐の家で見た中で最も安心した顔だった。

 

「ありがとう。えーっと。」

 

 感謝の言葉を紡ごうとして、昨夜結局名前を聞きそびれたことを思い出す。

 

「…………何?」

「名前を教えてくれないか?昨日、聞きそびれたからな。それに恩人をいつまでもバーサーカー(狂戦士)呼ばわりは失礼だ。」

 

 そう伝えると彼女は納得したように一度頷き口を開いた。

 

「んっ、わかった。私の名前はブラック★ロックシューター。」

 

 ブラック★ロックシューター?

 異名ってやつかな?そうだとしても英霊という割には今風だな。

 

「あぁ、改めてありがとう。ブラック★ロックシューター。」

「どういたしまして。」

 

 多少締まらないがベッドの上でようやくお互いに名前を知った。

   ・

   ・

   ・

「他にも色々と聞きたいことがあるんだが大丈夫か?」

 

 そう尋ねると彼女は少し困った顔をして下を見る。

 その視線を辿ると・・・なるほど桜ちゃんの手がしっかりと彼女の手を掴んでいた。

 

「わかった。じゃあ、桜ちゃんが起きたら一緒に下に降りてきてくれるか?」

 

 そういうと彼女は頷きもう一度その身をベッドに横たえた。

 彼女は無口な性質のようで、必要な時以外は口を開かないようだ。

 

「よっと。」

 

 桜ちゃんを起こさないようにベッドから降り、下の階に向かった。

 そして、階段にさしかかった時、階下から声がした。

 

「なんだ、これは?」

 

 そこにあったのは自身の兄である鶴野の姿だった。

 昨日はサーヴァントの召喚があったので外泊していたようで、台風にでもあったかのような家の中の有様に驚いているようだった。

 

「兄貴。」

「あぁ、雁夜か。これはどういう事なんだ?それに臓硯は?」

「…………爺なら死んだよ。」

 

 正直、この兄にはあまり良い感情を抱いてないので、詳しい説明をしてやる気にもならず事実を端的に伝えた。

 

「は?」

 

 そして、兄は予想通り信じられないという表情を浮かべた。

 自身だって、目の前で起こったことでなければ信じられなかった。

 

「おい。冗談だろ?あの妖怪爺が死んだって?」

「あぁ、死んだよ。割とあっけなくな。」

 

 その会話の後も信じられないという表情を崩さない兄。

 そんな表情を浮かべるこの兄が雁夜にはだんだん憐れになってきた。

 臓硯に逆らえなかったという事はわかっている。

 自身だって、あくまで倒すことではなく交渉でなんとかしようと思ってきた。

 

 …………当然だ

 物心ついた時にはすでに決して逆らってはいけない象徴として存在していたのだ。

 さらに間桐の家から逃げ出した自分と違い兄はその間もずっと臓硯の下にあったのだから。

 恐らくこんな風に考えられるのも彼女のおかげなのだろうが。

 

「なぁ、兄貴。」

「な、なんだ?」

 

 まだ、動揺が収まらないらしく若干どもりながら返事を返してきた。

 

「暫くの間、ウチに近づかない方が良い。」

 

 それは気にせずに兄貴に忠告をする。

 

「何でだ?もう臓硯はいないんだろう?

「あぁ。」

「なら今からでも教会に行って棄権してくればいいじゃないか?わざわざ、危険な橋を渡る必要はないだろう?」

「そうかもな。」

 

 そう、わざわざ危険な橋を渡る必要は無い。

 もともとの参加理由である桜ちゃんの救出はなった。

 そのおかげか正直今では時臣のことも殺したいほど憎んではいない。

 

「だ、だったら。」

「…………聞きたいことがあるんだ。」

 

 けれど、怒りはある。

 

「聞きたいこと?誰にだ?」

「…………遠坂時臣」

「止めておけ。」

 

 間髪入れずに兄貴はそう言った。

 

「自分の娘を臓硯に差し出すような奴だぞ。まともな筈がない。」

 

 確かにそうかもしれない。

 

「それでも、聞いておきたい。なんで、桜ちゃんを間桐の家に渡したか。」

「聞いても理解できる筈がない。相手は魔術師だぞ。」

「何でそんなに俺を引き留めるんだ?」

 

 自身と同じく兄も自分には良い感情は抱いてなかったはずだ。

 むしろ、恨んでいてもおかしくない。

 

「そうだな。正直、今までお前のことが羨んでいた。いや、むしろ恨んでいた。上手く逃げ出しやがってってな。」

「なら、何で?」

 

 そう、尋ねるとだいぶ落ち着いてきたらしくすらすらと話し出す

 

「俺には子供が居るんだ。」

「そうなのか?」

 

 少なくともこの一年で見たことがない。

 

「今は留学させてるがな。だから俺は今お前に感謝している。間桐の魔術を俺の子供に教えなくて済んだからな。」

 

 臓硯は間桐の魔術について、二人にはほとんど教えなかった。

 資料などは残っているだろうがやはり重要な部分は臓硯の頭の中にのみあった。

 その臓硯が死んだ。

 もう、間桐の魔術は潰えたと言えるだろう。

 

「そうか。それは良かったな。」

「あぁ、だから。」

 

 それでも。

 

「俺は参加するよ。」

「何でだ。何でそんな生き急ぐような真似を!」

「…………俺の残りの命は1ヶ月しか残ってないんだ。」

「なっ!」

 

 大口を開けて驚く兄貴。

 その姿が面白く思わず軽く笑ってしまう。

 

「だから、残りの時間はしっかり生きたいんだ。」

「…………。」

「そんな顔するなよ。兄貴。別に生き残る方法が無い訳じゃない。」

「聖杯か?」

 

 その通りだ。

 万能の願望器である聖杯の力なら半死人の身体を癒す位容易いことだろう。

 

「…………。」

 

 もういくら言葉を重ねても俺の意思を変える事はできないと悟ったのだろう。

 

「必ず生き残れよ。」

 

 そして、すれ違いざまにそう言い脇を抜けて行ったと。

 

「最後に。」

 

 そう言いながら足を止めた。

 

「なんだ。」

「謝って済むことじゃないが、あの子に謝って置いてくれ。俺が顔を見せたら怯えるだろうからな。」

 

 振り向かずにそう言うと今度こそ足を止めずに自室に向かっていった。

 

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