黒岩さんが聖杯戦争にinしました   作:BOX

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ウェイバー視点&セイバー視点





冬木市の港湾区の一角を占める広大なコンテナターミナル。

人払いの魔術がなされたその場所で、四体のサーヴァントが睨み合いの体制に入っていた。

四体全員がそれぞれ歴史に名を刻んだ英雄達。

殺気と緊張に支配された空間で、僕ことウェイバー・ベルベットはひたすら頭を抱えていた。

最初に戦っていた銀髪の女のセイバーと一応の師であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトのランサー。

そして、突然その場に乱入して何を思ったのか自分の軍門に降るように言い放ち、考え無しに自分の真名をばらしてくれやがった僕のライダー。

 そして、自ら以外が王を名乗るのが気に食わないとポールの上に現れた、アサシンを降した遠坂の当主のアーチャー。

 

 アーチャーに真名を尋ねたライダーに無礼だとキレたアーチャーが、昨夜に遠坂邸で見せアサシンを倒した多数の宝具の射出という常識外の攻撃を再現しようとする。

 こちらに向けられた黄金の宝具の矛先に思わず悲鳴を出したくなり、こんな展開にしてくれやがったライダーに撤退をさせようと口を開きかけ、

 

「む?」

 

 ライダーの片眉が上がり視線がアーチャーから外れる。

 見れば、四体のサーヴァント全員がライダーと同じ方向に目を向けていた。

 全員の視線の先を辿るとそこには黒い少女が立っていた。

 身に着けているのが現代風の衣服のため一瞬戸惑ったが、聖杯により与えられた力により、その少女がサーヴァントだとわかった。

 

「な、なんだアイツ……」

 

 他のサーヴァントと違い防御など一切考えていないかのような外見。

 その手には武器も何も持たず無手だった。

 

「……なあ征服王。彼女には誘いをかけないのか?」

「誘おうにもなぁ。まだ、能力はおろかクラスすらわからんしな。で、坊主よ。サーヴァントとしちゃどの程度のモンだ?あの娘は」

「ちょっと、待てよ!今見る。」

 

(筋力:B……耐久:A……俊敏:D……魔力:E……幸運:C……)

 

「…まず、間違いなくキャスターのステータスじゃないな。」

 

 筋力と耐久の値が高く。魔力は最低値。

 そして、この場にはクラスが分かってるサーヴァントが4体。

 アサシンが敗退した以上。

 残った二つのクラスの内、キャスターでは無いのなら。

 

「ていう事は、バーサーカーだよな。」

「そういう事になるの。勧誘は無理か。残念だの。」

 

 バーサーカーのクラスを得た英霊は、パラメーター数値が向上する代わりに理性を失う。

 だから、バーサーカーが睨み合いにどこまで付き合うかわからない。

 そうなればなし崩しで五体のサーヴァントによるバトルロワイヤルが開始されるだろう。

 あぁ、もうライダーの馬鹿野郎!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「バーサーカーね。どうやら、あれもまた厄介な敵みたい……。」

「それだけではなく、サーヴァント五体で戦闘となったら、恐らくは脱落者もでるでしょう。」

 

 セイバーは現在の危険性に気づき、撤退も考える。

 もし、戦闘になれば手傷を負っている自身が狙われる可能性が高い。

 

「アイリスフィール、ここは撤退を――――

 

「誰の許しを得て我を見ておる?この狂犬めが……」

 

ーーーっ!」

 

 アーチャーの怒声が響く。そちらを見れば、自分を凝視するバーサーカーをアーチャーが憤怒の眼差しで睨みつけていた。

 ライダーに向けられていた宝剣と宝槍がバーサーカーに照準を定める。

 

「せめて散りざまで我を興じさせよ。雑種」

 

「なっ!?」

 

 英霊の切り札である宝具をいとも人目に簡単に晒し、矢のように射出する。

 七体のサーヴァント達によるバトルロワイヤルである聖杯戦争では通常ありえない攻撃方法。

 二つの宝具がバーサーカーに直撃し、大きな爆発を二度起こした。爆風からアイリスフィールを庇う。

 あんなものが直撃したらひとたまりもないだろう。

 

「……奴め、本当にバーサーカーか?」

「狂化して理性をなくしているにしては、えらく芸達者な奴よのぅ」

「――――んな、アホな――――」

 

 そんな会話が聞こえ霞む視界で見れば、なんとバーサーカーが先ほどまで無手だったその手に漆黒の刀を持っていた。

 弾丸の如き速度で放たれた宝具を無傷で迎撃する。

 自身も最優のクラスであるセイバーとして呼ばれた身。

 やれないことはないだろう。

 しかし、それをバーサーカーがやったことが驚愕すべき点なのである。

 狂化してなお身体に染み付いた武芸は、あのサーヴァントがいかに優れた英霊なのかをひしひしと伝えてくる。

 

「――――我の裁定を拒むとは……そこまで死に急ぐか、狂犬ッ!」

「そんな、馬鹿な……」

 

 こめかみに青筋を浮かべて怒り狂ったアーチャーの背後に、一斉に輝く宝具が出現した。

 その全てが掛け地なしの世界の至宝、最高級の宝具だ。

 ライダーのマスターの言葉に思わず同意してしまう。

 

「この剣群相手にどこまで凌ぎきれるか――――さぁ、見せてみよ!」

 

 空気を震わせる怒声を合図に、宝具の群れがバーサーカーに向かって放たれた。

 コンクリートもコンテナもアスファルトもことごとく灰塵と化していく。

 大音響と大閃光の連続炸裂に地面が揺れる。

 そんな、アーチャーの連続攻撃に晒されたバーサーカーもまた、常識外れの防御を行った。

 襲い来る宝具をかわし、流し、撃ち落とす、

 さすがに軽々とはいかず体に傷を作りながらもバーサーカーは確実に前進していく。

 

「―――どうやらあの金色は宝具の数が自慢らしいが、あの黒い娘っこは最低限の迎撃しか行っておらん。金色の奴も、ああも節操なく投げまくらずに狙い撃てば良いだろうに。融通の利かぬ奴よのぅ」

 

 この戦いを冷静に分析ライダーのする台詞に耳を傾けていると、唐突に爆音が止まった。アーチャーが宝具の全てを射出し終えたのだ。

 その隙に距離を詰めていたバーサーカーが残りの距離を一息で詰め、アーチャーの足場の街頭を一刀両断した。

 足場を両断される前に跳んだアーチャーが鎧を鳴らして地面に着地する。

 そして、再びバーサーカーに向けられたアーチャーの視線は怒りに満ちていた。

 

「痴れ者が……。天に仰ぎ見るべきこの我を、同じ大地に立たせるか!その不敬は万死に値する。そこな狂犬よ、もはや肉片一つ残さぬぞ!」

「「「「「…………!!」」」」」」

 

 その場にいる全員が息を呑む。

 アーチャーの背後の空間に、さらに30を超える宝具が新しく出現したからだ。

 さっきとは比べ物にならない大量の宝具の一斉射出の前触れに、余波を警戒し剣を握りなおした。

 だが、

 

「……貴様ごときの諌言で、王たる我の怒りを鎮めろと?大きく出たな、時臣……」

 

 おそらくアーチャーのマスターが止めたのだろう。

 アーチャーは攻撃の手を止め、怒りの声をあげる。

 しかし、マスターの言葉を完全に無視することは無く。

 忌々しそうにふんと鼻を鳴らしながらも宝具を消し踵を返す。

 

「……命拾いをしたな、狂犬」

 

 アーチャーは一度バーサーカーを睨み付けると、残りの三体の英霊に流し目を向ける。

 

「雑種ども、次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い」

 

 そう言い放つと、アーチャーは静かに霊体化して姿を消した。

 アーチャ-がいなくなったことを確認し少し安心する。

 メンバーこそ変わったが四体による睨み合いの状態に戻ったからだ。

 

「フム。どうやらアレのマスターは、アーチャー自身ほど剛毅な質ではなかったようだな」

 

 ライダーが今の出来事をそう批評した。

 

「……。」

 

カツッ

 

 靴音にそちらを見ればバーサーカーも上着を翻し、こちらに背を向け立ち去って行った。

 その姿が夜に紛れて見えなくなってからライダーが呟いた。

 

「あの娘のマスターはなかなかのものじゃのう。」

 

 ?どういうことだ。

 

「どういうことだよ。ライダー?」

 

 同じく疑問に思ったらしいライダーのマスターがライダーに尋ねる。

 

「単純な話だ。あの娘の役割はアーチャーの調査だったということだろう。」

「調査?」

 

 それは特におかしなことではない。

 私自身、あまり気分はよくないが他のサーヴァントをおびき出す餌として町を一日練り歩いていたのだ。

 別に不審な点は・・・?

 

「大方、アサシンを瞬殺したアーチャーの実力が見たかったんじゃろう。」

「それがどうしたんだ?」

 

 ・・・そうか!

 

「わからんか?これが普通のサーヴァントならわかるがそれをバーサーカーがやってのけたのだぞ。」

「・・?・・・!?」

 

 ライダーのマスターが驚愕する。

 当然だろう。

 バーサーカーの制御は至難の業である。

 それは過去の聖杯戦争でのバーサーカーのマスターが全員魔力切れで敗退していることからもわかるだろう。

 そのバーサーカーを斥侯として利用し成功させる。

 それはマスターとして超一流であることを表している。

 

《ランサーここは一旦引け。》

「わかりました我が主よ。」

 

 ランサーの陣営も一旦撤退することを選んだようだ。

 思わぬダークホースの登場に対する対応を決めるためだろう。

 

「では、セイバーこの戦いの決着はいずれ。」

「あぁ、楽しみにしている。」

 

 その去り際にお互いに再戦を誓い合う。

 そして、

 

「さて、残ったのは私と貴公のみだが。剣を交えるか?ライダー。」

「よせよせ。今日は良いものを見させて貰った。やりあうのならお互いに万全の時だ。」

「そうか。」

 

 正直助かった。

 ランサーの宝具の能力で癒えない傷を負っている。

 今は他のサーヴァントと遣り合うのは下策だ。

 

「それでは、我が軍門に降ることを再考しておいてくれよ。セイバー。」

「……挑発なら乗らせてもらうが?」

「血の気が多いのう。それでは、さらばだ。」

 

 最後にそう言い残し空を駆けて去っていった。

 

「私たちも帰りましょうか?セイバー。」

「えぇ、そうですね。アイリスフィール。」

 

 キャスター以外の全てのサーヴァントの情報が少しは手に入ったので、これを 元に対策を考えるべきだろう。

 車に向かいながらそう思った。

 

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