[これが物語なら一番最初の話になるだろう]
俺、秋野 小雨はある日から、自分の思いを書き連ねた文を書く習慣ができた、世間で言う小説ってやつだ。そのきっかけは五年前俺がまだ高校2年だった頃の春の事だ。
高校1年のころ、俺は演劇をやっていた、入る部活が見つからずに迷っていたところを高校で知り合った相馬 迅という男に誘われたのだ、この男の行動力は凄まじいもので俺の記憶があっていれば入学してから一ヶ月もしない内に幅広い人脈を作り上げ、隙あらば誰彼構わず演劇部に誘っていた。それでもやはり演劇部という、軽音部や家庭科部、その他諸々のように多くの人を惹きつけるもの(軽音部なら華やかさ、家庭科部なら家事系スキルの会得)がなく彼に誘われて入部を決めたのは実際のとこ俺くらいだった。
そんな風に始めた演劇も高2になり1年が立つ頃には、だいぶ好きになっていた、そして俺は部長になった染野 優(相馬は部長投票で落選した)に新1年の指導を任され、日々1年との仲を深めようと必死になっていた。
「1年のヤツらの気持ちがわかんねーよ、染野ーーー俺やっぱ1年の指導とか向いてねぇーよ、、、」
俺は演劇部の部室となっている視聴覚室で椅子に座り長机に肘を着きながら染野に向かってそう呟いた。
「うるせぇな秋野、お前が去年演技が下手だし人を纏めるのが苦手だから、新1年に演技ダメだしされてもやっていけるメンタルの作り方とかそういうのしたいと思ってるとか言ったんだろ??」
「まぁまぁそんな怒んないでって!言ったけどさー人付き合い苦手なんよ、、、」
染野の威圧的な発言に押されて若干びくついてしまった。はぁ、、俺って肝っ玉のちいせえ男だなぁ、、
「ところで秋野、お前成績の方は大丈夫なのか?去年は無かったが、この演劇部見事に成績不良者が多い3代部活にランクインしたおかげで定期テストの結果次第では個人での部活動停止があるんだぞ?」
げ、そうだっけと思いつつ俺は慌てて目をそらし未だ吹けない口笛を吹くふりをする。あからさますぎた、、、かな?
「その調子なら、勉強は手付かずってとこだな、お前はうちの演劇部でも舞台経験が多いほうなんだから、部停にでもなって迷惑かけてみろ、しばき倒すからな!だいたいお前はなぁ、、」
「まぁーまぁー染ちゃんもその程度にしといてあげよ?言い方きついって〜まぁ染ちゃんが言ってることは正しいからきちんと秋野も勉強すんだよ??」
染野のまるでマシンガンのように飛び出てくる俺への不満を遮り話に入ってきたのは、染野の彼女の冬海 雪華だ、彼女は皮肉屋で真面目、成績優秀な染野と違いどこか抜けていて頭もさほど良くない、正直俺の方が良いくらいだ。だからこそなのか染野は彼女にいつも押し負けている、正直俺も初めてこいつが押し負けていたのを見た時は驚いた。
「雪華か、、成績はお前もだろ、、、二人揃って俺を困らせるなよ、、」
「さんきゅ!冬海!!わりーな!!染野!つーわけで俺は図書室で勉強ーしてきまーすっと、、部活は勝手に勧めといてーほかの奴らもそろそろ来るだろうし」
眉間を抑え、苛立ちを抑えつつ如何にもな感じの姿勢で話す染野に、大声で勉強を口実に部活から逃げ出す俺、隣で冬海が驚いて尻餅ついていたが気にせず走り出す。視聴覚室を出て最初の階段を図書室に向けて上り出す頃に、遠く後方から秋野ーー!!という怒声が聞こえた、それはまるで飛行機のエンジン音のように頭の中で響いていった。
[図書室、出会い、そして恋]
俺は染野から逃げ切り本当に図書室で勉強していた、俺はいつも同じ席に座って勉強している、すると気づいたのが俺と同じく自分の席を決めてる人が居たのだ、名前も知らない一学年上の先輩、とても美しい人で、俺は気づいたら彼女に見とれるようになっていた。彼女の席は俺の向かいで最近は若干勉強が手につかない程であった。
「あの、、、」
少しぼーっとしていたところに透き通るような甘い声が聞こえ我に返る。
「あっ、、えっなんでしょうか」
目の前にいる甘い声の持ち主に話しかけられたことに理解するまで二秒ほど時間がかかりその妙な間のせいか不思議そうな顔で見られる。
「いや、、前から図書室にいるところよく見かけてさ、前までは本を読んでいたの最近は勉強ばっかで、少しどうしてだろうって、、、2年生になったばっかなのにそんなに勉強する道理は無いと思うし、、、」
前から俺の事に気付いていたんだと少しだけびっくりする、俺は1年のころから図書室に来てはいたが適当に立ち読みしているくらいだった、俺自身彼女に気づいたのは定位置をつくり勉強し始めてからだったので素直に視野が広いんだな凄いなとか感じた、因みにうちの学校は学年ごとにネクタイ、リボンの色が違うため学年は見ただけで判別できる。今年は1年緑 2年赤 3年青だ。
「あぁそうですか、確かに2年の最初で放課後居残ってまで勉強するのは早いかも知れないですけど、俺成績悪くてこのままじゃ部活とかまぁ色々迷惑かけちゃいそうなんですよー」
俺は少しだけ緊張しながら返す。うまく言えてるかだいぶ不安だ、、、
「そうなんだー、ちょっと私と同じで本が好きな子がいると思ってたら急に読まなくなって残念でさー、そういうことなら良かったよ!勉強頑張ってね!えーと、、、」
「あっありがとう、、秋野 小雨です」
さっきまで少し暗い雰囲気を纏っていたのに急に明るく可愛らしくなった、その温度差から口調が若干砕けてしまったがまぁ大丈夫だろう。
「ん!私は春水 菜奈!よろしくー」
それが俺と春水 菜奈の出会いであり、俺が言葉の世界に、小説にのめり込んでいったきっかけだった。