「エイナさああああああああああああんっ!」
エイナの名を叫びながらギルドに飛び込むベル
「うわああああああああああああ!?」
血で真っ赤になったベルを見て悲鳴をあげるエイナ・チュール。
叫ぶエイナに
「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださああああああいっ!」
(カオス)
*──*──*──*──*
「ベル君、キミねぇ、返り血を浴びたならシャワーくらい浴びてきなさいよ……」
「すいません……」
ダンジョンを運営管理する『ギルド』
そしてその窓口受付嬢 エイナ・チュール
受付嬢の他にベルの攻略アドバイザーもしている
彼女はヒューマンとエルフのハーフだ
しかし、ハーフといっても
**───*─*─*───**
ここはギルド本部のロビーに
ベルとエイナはお互いに椅子につき、テーブルを挟んで向かい合っていた
オレ?オレはベルの膝の上で
体を洗ってさっぱりしたオレ達の前で、エイナはこれみよがしに
「あんな生臭くてぞっとしない格好のまま、ダンジョンから街を突っ切って来ちゃうなんて、私ちょっとキミの神経疑っちゃうなぁ
ネコちゃんもせっかくの真っ白な毛が台無しになるところだったねぇ」
「
「そ、そんなぁ アズまで…」
ベルの
エイナは苦笑してベルの鼻をちょんと指で押さえると「今度は気を付けてね?」と
ベルは大げさに首を縦に振る
(風圧がすごい)
「それで……アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だったっけ?どうしてまた?」
「えっと、その……」
ベルは顔を赤く染めながら一部始終を語った。
普段通っているダンジョンの2階層から一気に5階層まで下りてみたこと。
足を踏み入れた瞬間いきなりミノタウロスに
追い詰められたところを、【
動揺しながらも何とかお礼を言おうとしたけど、手を差し伸べられた瞬間 頭が真っ白になりーー膨れ上がった
耳を傾けて聞いていたエイナは、話が進んでいく内に表情を険しくしていく。
「──もぉ、どうしてキミは私の言いつけを守らないの!ただでさえソロでダンジョンにもぐってるんだから、不用意に下層へ行っちゃあダメ!冒険なんかしちゃいけないっていつも口を酸っぱくしていってるでしょう!?」
「は、はいぃ……!」
ソロ、という言葉に抗議の声をあげようと口を開いたが、今回 自分が全く役に立たなかったのを思い出し
(やっぱり、魔法は使えなきゃな…)
──『冒険者は冒険しちゃいけない』──
これは攻略アドバイザー、エイナ・チュールの口癖。
文字だけ見ると矛盾しているように感じるが、つまりは『常に保険をかけて安全を第一に』という意味だ
特にベルのような駆け出し冒険者は
一番命を落とすケースが多いのだとか。
5階層でLv.2にカテゴライズされるミノタウロスと
あのモンスターは少なくとも15階層以下の迷宮に出現するのが
エイナに言わせれば『ダンジョンは何が起こるかわからない』ってことだろう
実際、神ですらわからないのだから
「はぁ……キミは何だかダンジョンに変な夢を見ているみたいだけど、今日だってそれが原因だったりするんじゃないの?」
「あ、あはははっ……」
(正解。)
あのジジイがハーレムとか教え込むから…
もともと、ベルが冒険者になろうとしたのはまだ見ぬ美女美少女との巡り会いーーそれこそ
「あの、それで、ヴァレンシュタインさんのことを……」
ベルが話を
「う~ん……ギルドとしては冒険者の情報を漏らすのはご
「教えられるのは公然となっていることだけだよ?」と前置きしてからエイナは語り始めた
本名、アイズ・ヴァレンシュタイン。
【ロキ・ファミリア】の中核を
剣の腕前は間違いなく冒険者の中でもトップクラス
たった一人でLv.5相当のモンスターの大群を
神様達の間でもその名前は知れ渡っており、『アイズたんマジ無双』とまで
下心を持って近寄ってくる異性は
ついこの間にはとうとう千人斬りを達成……。
「え~と、他に何があったかなぁ。あの容姿であの強さだから、話題は
「あ、あの、冒険者としてじゃなくて……趣味とか好きな食べ物とか、後は今言った最後みたいな情報を……」
ベルが顔を赤くしながらおずおず言う
エイナは目をニ、三度
「なぁに、ベル君もヴァレンシュタイン氏のこと好きになっちゃったの?」
「いや、その……ぇぇ、はい……」
「あはは、まぁ、しょうがないのかな。同姓の私でも彼女には思わず溜息ついちゃうし」
苦笑してエイナは優雅に紅茶を飲む
その姿はエルフとあって気品に
その後少し考え込んで、ヴァレンシュタイン氏と付き合っている人というのは耳にしたことがないと言った
それを聞いてガッツポーズするベル。
(そんなにか)
「趣味とかそこまで踏み入った話は
「そ、そこを何とか!」
「だーめ!ほら、もう用がないなら帰った帰った!」
立ち上がり、オレ達を追い出すように部屋の退出を促すエイナ
オレは置いてきぼりを食らう前にベルの肩に飛び乗った
ギルド本部のロビー前に全員で出る
「ああ、エイナさんのいけず……」
「あのねぇ……キミは冒険者になったんだから、もっと気にしなきゃいけないことが沢山あるんだよ?」
「うっ……」
「
「アズぅ…」
ベルが深く頷くオレに恨みがましい視線を向けてくるが、知らん
事実 今のベルにヴァレンシュタインに惚れている暇は無いのだ。ヘスティアも居ることだし
「キミはもうロキ以外の神から『恩恵』を授かったんでしょう?【ロキ・ファミリア】で
「……はい」
「……想いを諦めろなんて言いたくないけど、現実だけはしっかり
少なくとも今は冒険者として頑張れ。
エイナは
オレも賛成だ、金が貯まったら惚れる余裕も出来るだろう
若干へこんでいるベルを見ながら困った顔をしながら、エイナはギルド職員として事務的な対応をした
「
「……そうです、ね。一応、ミノタウロスに出くわすまでモンスターは倒していたんで」
「じゃあ、換金所まで行こう。私も付いてくから」
ベルに気を使っているのがまるわかりだ
ただでさえベルは駆け出しで、ソロなのだ
こんなに良くしてもらって…頭が上がりそうにない
それから換金所へ向かい、本日の収穫を受け取った
ゴブリンやコボルトを倒して手にいれた『魔石の欠片』全て合わせて二四〇〇ヴァリスほど
いつもより少ない収入だが仕方ない。
ベルがヴァレンシュタインから逃げたため、普段より短い時間しかダンジョンへもぐっていないからだ
オレ達の食費を考えると、何とかアイテムの補充ができるぐらいしか無いな
「……ベル君」
「あっ、はい。何ですか?」
帰り際、出口まで見送りにきたエイナに呼び止められる
エイナは
「あのね、女性はやっぱり強くて
「……」
「……ヴァレンシュタイン氏も、強くなったベル君に振り向いてくれるかもよ?」
エイナの
勢いよくその場から駆け出したかと思ったら
すぐに振り返り エイナに向かって叫ぶ
「エイナさん、大好きー!!」
「……えうっ!?」
「ありがとぉー!」
……やれやれ、うちのご主人様は単純だなぁ