日常の話が書いてみたくなったので書いてみました。もちろんメインの小説も頑張りますよ!
本編どうぞ!
3月のある晴れた日……
「あなたに音ノ木坂学院の共学化の為の試験生になってもらいたいのだけれど」
鞄から取り出した紙を大賀の前に置いた。
「えっと………」
大賀の目の前に座るキレイな女性はそう言った。その女性は音ノ木坂学院の理事長。さらにその自分が経営する学校に通っている17歳の娘も居る。とても高校生の娘が居る母親とは思えなかった。大賀は渡された紙を左に少しズラした。
「あっ、ごめんなさいね」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
大賀は右目が見えない。正確にはかなり見えづらくほとんどがぼやけて見える。メガネを掛けても対して変わらないことから、本人もメガネを掛けることを拒否している。
なになに。廃校の危機にあった音ノ木坂学院はスクールアイドルμ'sの活躍などにより廃校を免れましたが、またいつ廃校の話が出てくるかわかりません。その為に共学化の試験生を集うことにしましたが、1人も志願者は居なかった。
なるほど………いきなり共学化の試験生になるって言う人は居ないってことか。んー女子校だからほとんどが女子なんだよな?
「理由はわかりました。だから、おばさんから僕の母さんに頼んで僕に回ってきたんですか?」
「そうなのよ。行く高校もまだ決まってないって聞いたから、ちょうど良かったとおもったの。音ノ木にはことりも居るわ。それに穂乃果ちゃんと海未ちゃんも」
「知り合いが居るなら大丈夫じゃない?大賀」
あそっか。ことり先輩と穂乃果先輩と海未先輩が居るのか。わからないことは聞けるし、知り合いが居るっていうのも心強いけど………ん~まだやるとは言い切れないかな。
「………考えてもいいですか?」
「もちろんよ。わからないことがあったら私に連絡してね」
「はい、わかりました」
理事長はテーブルの上に広げていた資料を手際よく片付け鞄にしまった。
「あっ、
「ええ。少しなら大丈夫よ」
「じゃあ少し話しましょう。話したいこと沢山あるのよ♪」
そう言いながら大賀の母親は立ち上がりキッチンへと姿を消した。
母さん……あの調子だとすぐには終わりそうにないな~。でもおばさんもそれはわかってると思うから長くなる前に帰るはずだから大丈夫だよね。
自分は邪魔だと思い立ち上がってリビングをあとにしようとした。
「あら大賀、どこか行くの?」
「うん。ちょっと外に行ってくる。遅くはならないよ」
「わかったわ」
ドアのぶに手を掛けると美羽は大賀に話掛けた。
「試験生の件は出来るだけ内緒にしてね」
「わかりました」
ドアを開けリビングをあとにし、そのまま靴を履き玄関のドアを開けた。冷たい風が吹き込んできた。思わず「寒っ!」と言いながら素早くドアを閉めポケットに両手を突っ込んだ。口から漏れる息は白く、所々に白い雪が残っていた。
そういえば昨日3月で少し雪降ったんだっけ。もうほとんど溶けちゃってるけどね。でも昨日初めて雪を見たんだ……記憶を忘れてからは。
大賀のもう1つの失ったもの……それは記憶。高校1年生の時に8月に起きたある事故がきっかけで右目の視力と記憶をなくしてしまった。事故の記憶ももちろんなく大賀がどんなことに巻き込まれたのかはわからない。
今は記憶がないことをそんなに気にしていない。大賀の周りの人も記憶がなくなっても優しく接してくれるからであろう。
記憶をなくしてからもう7ヶ月くらい経つのか…早いな~。少しも記憶は思い出せないけど、大して困ってないんだよね。周りの人も優しいし。前と性格が変わってるらしいけど、覚えてないから僕もわからないや。
「必ず……守から」
ふいに大賀はそう言った。記憶をなくしたが、唯一覚えていた言葉。誰に向けて言ったのか、自分が言った言葉なのかは覚えてはいない。もしかしたら他人が言った言葉かもしれない。
必ずと守るからの間になにか名前的な言葉があるような気がするんだよね………。それに仲が良かった女の子の友達も居たって聞くけど誰だかわからない。
みんなの話を聞く限りだと西木野さん?らしいけど西木野さんは知らないって言ってて訳がわからない。
しばらくぶらぶらと歩くと神田明神に着いた。悩んだ時はいつもここに来ている。ここでバイトしているある人にもたまに相談している。
何度も登っている神田明神の階段。ここの階段はそこら辺にある階段とは違いかなりお年寄りに優しくない使用になっている。しかし大賀は何度も登っている階段。もう登り慣れている。
ここで階段ダッシュしたらかなり体力つくだろうな~。最初登った時結構疲れたし。入院してて体力も落ちてたし………。これでも元サッカー部らしい。だからはわからないけど、ボール見ると無性に蹴りたくなる。
階段を登りきり後ろに振り返ると夕日がキレイに映えていた。辺りを見回してもあの人は居なかった。階段に腰を下ろした。
今日はバイトお休みなのかな?なら仕方ないや。とりあえず試験生の件考えないと………。女子校か~絶対毎日緊張しそう……。中学とは違うだろうし、なにより1人って言うのが辛い。サメの群れに放り込まれる気分だ……。放り込まれたことないけど。
「あれ?大賀君やん。どうかしたの?」
「……
「そうや。その様子だとまたなにか悩み事?」
「まぁ……そんな感じです」
希はふふっと微笑むと大賀の横に腰を下ろした。今日は土曜日のため服装は制服ではなく私服。
「今回はどういう悩みなん?」
「えっと……ある学校に試験生として来ないかって言われていて…でも普通の学校とは違ってて、それで行くか迷ってるんです……」
「そうなんや。それってどういう学校なん?」
「あんまり口外出来ないのであまり言えないです。すいません」
「ええよ、ええよ。それで大賀君はどうしたいん?行きたくないの?」
行きたくない訳では………実際の所行きたいとは言えないよ。女子しか居ないところに行けって言われてもすぐには無理だよ。ただでさえコミュ症なのに……しかも希先輩は元音ノ木坂学院の生徒さんだよね?なおさらそのこと言えないじゃん………。
しばらく2人の間には会話はなく、ただ冷たい風が吹き抜けるだけだった。そんな中大賀は黙って考えていた。
周りが女子だけだという環境以前に自分が行ったところで音ノ木坂を救えるのかと、それにもし失敗してしまったらどうするのかと………ネガティブなことばかり頭をよぎってしまう。
「もしかして大賀君が言ってるのって音ノ木坂の共学化の試験生のこと?」
「えっ?な、なんでそのことを?」
「なんでって……穂乃果ちゃんたちから試験生の募集かけたって聞いたんや」
「なんだそれ~」と言ってぐったりする大賀を見てふふっと笑う希。
相手が知ってるのに隠してるってなかなか恥ずかしい……。でも知ってるならなおさら相談しやすいからいっか。
「大賀君が誘われてるとは知らなかったんやけどね。穂乃果ちゃんとか居るならええやん。わからないことも聞けるし」
「それはそうなんですけど………でも……」
「ん?他に心配ごとあるん?」
「心配というか……」
そう言って俯き、両手を組むように握りしめた大賀。希はその様子を心配そうに見つめた。そしてふと右目が目に入った。
(右目のこと気にしてるんかな?そんなに気にすることないと思うけど………)
「右目のこと気にしてるん?」
「……………はい。ほとんど失明みたいな状態だから、それに記憶もないし、いまだに仲が良かった女の子も思い出せないし。だから……」
すると希は大雅にぴったりくっつくように横に移動した。そして大賀をそっと自分の方に抱き寄せた。その瞬間大賀の顔が赤くなっていった。
「ちょ、えっ!?」
「大丈夫や。心配しなくても右目のことなんて気にしないって。あそこに居る人はみんな優しいと思うよ?だから大丈夫」
「希………先輩」
なんだろう?このもの凄く癒される気分は…………それに暖かいな~相変わらず大きい………あえてなにがとかは言わないけど。…………それに決心は出来た。
「ありがとう、希先輩。試験生の件……受けてみようと思います。希先輩たちが通う音ノ木坂を守ってみせます!」
希は大賀を離すと笑顔で言った。
「頑張ってな!応援するよ!」
「はい!」
こうして始まった1人の記憶と右目の視力をほとんどなくした青年の物語。この選択があとに大きく関わってくる。大賀に記憶が戻る日は訪れるのか…………。
「希先輩、送りますよ」
「ええよ。もう暗くなりかけてるから危ないやろ?」
「だからこそですよ。相談に乗ってもらったお礼です」
「ならお言葉に甘えようかな」
希と大賀は階段を降り始めた。
「今日は楽しかったにゃー!」
「そうだね♪」
「全く、あまりはしゃがないの」
1人スキップしながらテンションが高いオレンジ色の髪の少女。はしゃぐ彼女を注意する赤髪の少女。そんな2人を見て微笑む栗色の髪の少女。
3人は仲良く出掛けてきた帰りなのだ。そんな中赤髪の少女───
(あれは…希?それと……あの男の人は誰?もしかして……!?)
真姫たちの前を歩く大賀と希。2人は後ろの真姫たちには気付いていない。
「どうしたの?真姫ちゃん」
1人遠くを見つめる真姫に気付いた栗色の髪の少女───
オレンジ色の髪の少女───
「希ちゃん?」
「隣の人は……誰?」
「もしかして希ちゃんの彼氏さん!?」
「ちょっと凛!声大きいわよ!」
なぜか慌てて曲がり角に隠れる真姫、花陽、凛。その声が聞こえたのか希と大賀は後ろに振り返った。
「今、声聞こえなかった?」
「僕も聞こえました。でも誰も居ないみたいですね」
今の声……どっかで聞いたことがあるような……。
急に大賀の頭を襲う痛み。思わず「うっ!」と言って頭を抱えた。
「どないしたん!?大賀君!」
頭を抱える大賀の両肩に触れる希。
「いや……大丈夫…です」
今のは………?急に頭が……
「はぁ……はぁ……はぁ」
「落ち着いた?」
「………はい」
その様子を見つめる希。さらにその2人を影から見る真姫たち。小声で話始めた。
「大丈夫かな?あの人…」
「どうだろう……」
(今……希はあの男の人を大賀って呼んだのよね?もしかして……あの大賀かしら。それとも別の……)
心の中でいろいろ考える真姫だが、心の底ではわかっていた。小学校から中学校まで一緒だったが、音ノ木坂学院に入学し、スクールアイドルをやることになってからは会う機会が減った。それでも会える日は必ず会ってくれていた。
そんな大賀に少しばかり恋心を抱いていた真姫だったが、8月に起こった事故から真姫は大賀に会うのをやめてしまい、同時に恋心もなくしてしまった。その為、今では大賀にとって真姫の存在は音ノ木坂学院のスクールアイドルμ'sのメンバーとしか認識されていない。
「2人とも……帰りましょ」
「えっ?でも…あの人が」
「いいから行くわよ。希もついてるし大丈夫でしょ」
そう言うと真姫はそそくさと歩き始めた。その背中を花陽と凛は見つめるしかなかった。大賀を見てからの真姫の様子が変わったことに2人は気付いていたが、今はそのことを言わなかった。いや……言えなかった。
「真姫ちゃん……なにかあったのかな……?」
「わからないけど……様子は少し変だったよね」
どんどん離れて行く真姫に追いつこうと2人もその場から離れて真姫を追いかけた。
大賀も落ち着きを取り戻し希を家まで送るために歩き始めた。
あれから少し歩き希の住むマンションに着いた。
「ここでええよ」
「わかりました」
「………さっきのは」
「たまに頭が急に痛くなるんです……。なにかを思いだそうとするとなるみたいで。だからあまり気にしないでください。では、失礼します」
軽く頭を下げ自分の家の方向へと歩き始めた。希は少しその背中を見つめるとマンションの中へと入っていった。
(音ノ木坂に試験生として入学したときまたああなったらヤバいやな。真姫ちゃんたちと同い年やし、入学してから大賀君のこと話そうかな)
両手をポケットに突っ込んで暗い道を歩く大賀。表情ほ少し沈んでいた。たまに頭が痛くなるのはわかっていたが、さっき起きた痛みは“なに”でなったのかわからなかった。
あの状況でなにかの記憶が呼び起こされようとしたのか、聞こえてきた声で記憶が戻ろうとしたのか………大賀にはわからなかった。
そのことがわかるのはもう少し先のお話………
しばらく歩き自分の家に着いた。結構おそくまで話してたんだろうな~と思いつつ玄関を開けた。
「ただいまー」
「おかえりー。もうすぐご飯だから手を洗ってきなさい」
「わかった。それと、僕音ノ木坂の試験生の話受けるよ」
一瞬母親の動きが止まったが、微笑むと「わかったわ。美羽に言っておくわね」と言って夜ご飯の支度に戻った。
これで後戻りは出来ない。でもここで逃げる訳にも行かない。やるからには絶対に成功させないと!
改めて心に誓う大賀。
どうでしたか?
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次回の投稿は来年になると思います
それでは皆さんよいお年を!