エクスリブリスに込める愛   作:天神神楽

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懲りることなく、新投稿。
だって、ふみふみですもの。しかたないね。


私の可愛い後輩 私の素敵な先輩

 私にとって、本とは読んで楽しむものでした。

 様々な種類の本を読んでいますが、それをどなたかに披露することはありませんでした。

 問われれば、説明することはあっても、私から積極的にお話することはありませんでした。

 

私にとって、本とは自分の中で味わうものでした。

 心が躍るような冒険譚も、思わずうなってしまうほどの知啓も、理解し難く首を傾げてしまうような哲学思想も、私は自分の糧にしかしてきませんでした。

 講義の関係でレポートをまとめることはあっても、私が進んで発表することはありませんでした。

 

 私にとって、本とは未知と巡り合うためのものでした。

 それは、とてもとても楽しく、ドキドキする逢瀬のようで、どれだけ読んでも飽きるということはありません。

 ――――ただ、一人でいることに、ふっと不安を覚えることがなかったとは言えなかったのでしょう。

 苦しいものでも、寂しいものでもありませんでしたが、それでも、不安は心の隅にあったのでしょう。

 そんなところに現れたのは、一つ上の先輩。

 私と同じように書を嗜むお方でした。

 私と違い多くの人に囲まれるお方でした。

 でも、そのお方は私に声をかけて下さいました。

 

 瀬織燿(せおりひかる)さん。

 始めは、とてもお恥ずかしい姿を見せてしまいましたが……。

 

 それでも、私が一歩踏み出そうと決心できたのは、貴方がいたからです。

 貴方が声をかけてくれて、興味深いお話を聞かせてくれて、見たこともない稀覯本を読ませてくれて、経験したこともない様々な出来事に触れさせてくれたからなのです。

 

 だから、私は、貴方のようになりたい。そう思ったから、髪を上げ、顔をあげました。

 そして願わくば――――。

 ……これ以上は秘密です。

 

 

 

 

 私の後輩にとても面白い子がいる。大学全体を通して、彼女ほどの読書家はいないだろう。

 私もお家事情柄嗜んではいるが、彼女ほどではない。

 彼女の名は鷺沢文香。私の一つ下で19歳の大学2年生である。

 髪を下しており、少し地味な印象だが、一度だけ彼女が髪を上げた姿を見たことがある。

 何度か声をかけて少し仲良くなった頃、二人で書店に行ったことがある。その際に突然の雨に降られてしまい、たまたま近くにあった私の家に避難した。

 その際にお風呂を貸し(その時は家を出ていた)、携帯に連絡が入り家の中に戻っていると、そこには髪を上げた鷺沢さんがいた。

 家には彼女一人だけだったので、鷺沢さんに間違いないのだが、あまりにも美しく思わず立ち尽くしてしまった。

 彼女自身は首を傾げていたので、自分では自覚していないのだろうが、アイドルにもなれてしまうほどの美しさである。

 とはいえ、私と彼女ではそのまま色気ある展開になるはずもなく、私の家に保管してあった、実家からくすねてきた稀覯本の話で盛り上がったのだが。

 ともあれ、私の後輩はとても面白い子なのである。

 「瀬織先輩?」

 そんなことを考えていると、本から顔をあげた鷺沢さんがこちらに顔を向けていた。本棚の前でボーっとしていたからだろう。彼女は首を傾げていた。

 「いや、なんでもないよ。そういえば、おじさんは今日も仕入れかな?」

 「はい。今回は神戸の方のオークションらしいです。大物があるとかで張り切っていました」

 いまお邪魔している書店は《鷺沢古書店》。彼女の叔父が経営しているお店だ。彼女はここに居候しており、店番のアルバイトもしている。

 私も後輩との縁で訪ねてみれば、品ぞろえがとてもよく、話も盛り上がり、おじさんとも意気投合していた。鷺沢さんはまだお酒が飲めないため、晩酌には私が付き合わせてもらっている。

 「神戸か。そういえば、実家の方から連絡があったな。家の縁の旧家の蔵から出てきたらしいね。どうも、芸能関連の本らしい。だが、相当値が張ると思うが……。おじさんは大丈夫なのかい?」

 「叔父は自信満々でしたが……。でも、瀬織先輩のお家なのでしたら、引き取らなかったのですか?」

 「オークションには参加していると思うよ。母はいつも正々堂々勝ち取ってみせると意気込んでたしね」

 「それでは叔父は負けてしまいますね」

 鷺沢さんはそう言ってクスクス笑っていた。

 出会った頃はおどおどしていた彼女だったが、最近ではこのように笑ってくれるようになってきた。髪型は相変わらずだが、それも彼女には似合っている。

 「おっと、そろそろお昼か。鷺沢さんは午後は講義ある?」

 「はい。でも4講義目で聴講なので、お昼を食べてからにしようと思っていました」

 「じゃあ一緒の講義か。なら、お昼は私が作ろう。たしか、昨日のカレーが残っていたから、カレーうどんにでもしようか」

 ここ最近の鷺沢家の食卓は、私が担っている。どうもこの叔父と姪コンビは料理が得意ではないようで、一度ごちそうしてあげたら、懇願されてしまった。食費を出してもらえるのはありがたいが、苦笑してしまったのはいうまでもない。

 「鷺沢先輩のカレーうどん、美味しいです」

 カレーうどんは彼女の好物にラインナップされているので、口調も少し上機嫌だ。

 「じゃあ、ちょっと待っててね」

 勝手知ったる他人の家の台所。私が来てから冷蔵庫の中身が5段階はアップしたらしい。

 可愛い後輩の笑顔を思い出しつつ、張り切って昼食を作るのだった。

 

 

 ☆

 

 

 台所から、とても良い香りと聞き心地の良い鼻歌が聞こえてくる。

 ……女として申し訳ないと思いますが、先輩の作って下さるお料理はとても美味しい。

 わ、私もできないわけではありません。でも、苦手です。

 でも、そんな私のことを先輩は笑うことなく、優しく頭を撫でて慰めてくれました。……苦笑はしていましたが。

 その撫で方はとてもお上手で、聞いてみれば、親戚に懐いてくれたお嬢様がいたみたいです。それで鍛えられたとか。

 瀬織先輩のご実家《瀬織家》は、京都に伝わるとても由緒正しい旧家にして、かつては朝廷の書陵を管理なさっていたそうです。現代では公職ではないものの、世界有数の蔵書家として名高く、見せていただいた古書は、目が飛び出てしまうほど希少な本ばかりでした。

 そんな名家の生まれながら、とてもお優しく、家庭的です。学校の成績も首席らしく、まさに、才色兼備。校内でも様々な所で、先輩のお名前を耳にします。

 それでも、先輩は私にたくさん声をかけてくだいました。

 昨年の文化祭の際にも、一人でいた私のことを誘って下さり、とても楽しい文化祭を過ごすことが出来ました。

 それだけではありません。球技大会も、先輩の学会での発表の際にも、先輩は私のことを引っ張っていってくれました。

 そして、昨年の私の誕生日には、大きなケーキを作ってきてくれて、とても豪華な料理を作って私の誕生日を祝ってくれました。

 その時に先輩がプレゼントしてくれた、金襴の魚の栞は、私の宝物です。

 「鷺沢さん?」

 物思いに耽っていたからか、先輩の私を呼ぶ声を聴き逃していたみたいです。期せずも、先ほどと同じような状況に、クスリと笑ってしまいました。そんな私を見て、先輩は首を傾げていましたが、柔らかい笑みを浮かべました。

 私の一番好きな先輩の表情です。

 




叔父さんは、どんな人物にしようか悩んでます。聖帝タイプか、細っこいタイプか。
某ノベマスに影響を受けそう。
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