エクスリブリスに込める愛   作:天神神楽

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女帝がにじみだしてきました


私は貴女の夢を応援したい 私は貴方に夢を見ました

 アイドルになるという決心をしたその日の夜。私はことの経緯を両親と仙台に出張中の叔父さんに連絡しました。叔父さんは驚いていましたが、快く許可をくれました。

 そして、打ち合わせをするために、美城プロに向かうことになったのですが、ひ、一人では緊張してしまうので、既にアイドルである小早川さんのお知り合いの瀬織先輩にも着いてきてもらうことになりました。

 「しかし、まさか女子大生の引率をすることになるとは思わなかったなぁ」

 「す、すみません。やっぱり緊張してしまうので……」

 「まぁ、紗枝ちゃんも来てくれるみたいだし、気にしないで」

 とはいっても、先輩が来てくれたので、幾分か気が楽になりました。

 美城プロの目の前に到着すると、その大きさに圧倒されました。少々蹴落とされつつ、ビルの中に入り受付の方に要件を伝えると、すぐに深山さんがやってきました。

 「あぁ、鷺沢さん! 来てくださりありがとうございます。それに、貴方が《燿お兄様》、ですね。小早川さんからお話はよく聞いています」

 深山さんが瀬織先輩にも声をかける。

 「始めまして。瀬織燿です。その話の内容は気になりますが、怖いですし、聞かないことにしますよ」

 瀬織先輩の言葉に、深山さんはクスクスとほほ笑んでいました。

 「では、早速ですが、話に入りましょうか。そうですね、カフェがあるので、そちらで話しましょうか」

 そうして案内されたカフェは、とてもおしゃれなカフェでした。店員さんも可愛らしく、注文した紅茶もとても美味しいです。

 「先日お電話していただきましたが、鷺沢さん。アイドルになりたいと思って下さったのですね」

 「は、はい。私には部不相応だとは思いますが、それでも、やってみたいと思いました。

 「そんなことはないというのは、アイドルになってから分かりますよ。今日は、プロダクションの中を案内します。色々な施設があるので、楽しいと思いますよ。よろしければ、瀬織さんもどうぞ」

 「ではお言葉に甘えて。紗枝ちゃんに話ばかり聞いていたので、気にはなっていたんです」

 「それなら、きっと楽しんでいただけますよ」

 そういいながら瀬織先輩と深山さんが楽しそうにビルの方に向かってしまった。

 ……私のことを忘れていないですよね?

 

 

 ☆

 

 

 深山さんに招待されて、美城プロのビルを歩いている。

 さすがは、業界に覇を唱える美城プロ。ビルの質もとても高いし、新設されたアイドル部門だが、設備も素晴らしいという他ない。

 「設備がとても素晴らしいですね。まだ男性アイドルはいないんですよね」

 「はい。今のところは採用する予定はないはずです。まだまだ新設ですし、他の事務所に食い込むのも難しいですから」

 Jupiterなんかは私も好きなのだが、同時展開するのはさすがに難しいのだろう。

 「しかし、女性アイドルのバリエーションはナムコプロにも負けていません。ソロは勿論、ユニットもたくさんあります」

 「ブルーナポレオンなどは私も好きですよ」

 様々なアイドルがその個性を存分に発揮しているのは、美城プロの大きな魅力だろう。

 「あら、KBYDは応援してもらえないんどす?」

 そんな所に、後ろからクスクスと笑いながら話しかけられる。

 振り向いてみれば、そこにはジャージ姿の女の子。いつもは着物なので、ちょっと新鮮だ。

 「まさか。私はファンクラブ会員No.01だよ。誰よりもファンだ」

 「あらあら、そんなら許してあげます。ふふふ、一週間ぶりですなぁ、燿お兄様?」

 彼女は小早川紗枝ちゃん。鷺沢さんの話で度々登場していた親戚のお嬢様のことである。

 「今はレッスンの休憩中?」

 「はい。深山はんから今日お兄様が来る聞いとったから、時間を合わせてもらったんどす」

 「それは嬉しいかな。あぁ、紹介しないとね。彼女がよく話していた鷺沢文香さんだ。鷺沢さん、この子が小早川紗枝ちゃん。親戚のお嬢様だね」

 「お話ではよく聞いとりました。初めまして小早川紗枝どす。話に聞いていた通り、年上の方なのにとても可愛らしいお方ですなぁ」

 「え、えっと、鷺沢文香です。瀬織先輩の一つ下の後輩で、色々とお世話になっています」

 可愛い女の子が仲良くしている様子は見ていてほっこりする。

 「ふふふ、せっかくですから、レッスンの様子を見ていきましょうか。トレーナーさんにも話はいっていますよね」

 「はい。トレーナーはん、お兄様に会うのを楽しみにしとりますよ」

 「トレーナーさんが? 何か話したの?」

 「えぇ。ウチの日舞の先生だ、って。日舞はレッスンにも取り入れとりますから、興味があるみたいどす」

 「先輩、日本舞踊をやっていたのですか?」

 そういえば、鷺沢さんには話したことはなかった。鷺沢さんとする話は、ほぼ本に関する話だし。

 「お兄様はウチの所の流派の名取どす。お兄様の光の君の舞はもの凄う色っぽくてなぁ、京都のお嬢さんたちに大人気やったんどす」

 「私も見てみたいですっ……」

 「少し恥ずかしいけどね」

 改めてこういわれるのは結構恥ずかしい。

 ともあれ、レッスンルームに向かうと、トレーナーさんと二人のアイドルさんが待っていた。

 「お、待っていたぞ小早川。そちらの男性が《燿お兄様》か。初めまして。トレーナーの青木聖です。他に3人青木がいますので、聖と。貴方のことは小早川からよく聞いています」

 「瀬織燿です。舞については、まぁ、別の機会に」

 「おや、それは残念です」

 聖さんにクスクス笑われてしまった。しかし、聖さん自身もアイドルとやっていけるくらい美しい。

 「あ、この人が燿お兄様? あ、私は姫川友紀だよ。ねーねー野球はどこファン? 私はキャッツ!」

 とても元気な姫川さん。彼女のキャッツファン度はテレビや雑誌でよく知られている。

 しかし、残念だが……。

 「私は《日野本ハム》のファンだ。ドラフトでは、泣かせてしまったかな?」

 私の言葉に、姫川さんはショックを受ける。

 「そ、そんな……だ、だけど、あれは正しい手続きに基づくものだから……っ!!」

 「そういってもらえれば、気が楽になるよ。それに、紗枝ちゃんと一緒に頑張ってくれている子だ。仲良くしてくれると嬉しいかな」

 「うん! 応援するチームが違っても、野球好きなことには変わりないもんね。よろしく、瀬織さん!」

 無事に姫川さんと仲良くなれたようだ。

 そこに、もう一人の女の子がこちらにやってくる。

 「ふ、ふふーん。紗枝さんから話は聞いていましたけど、中々にカッコいい人ですね」

 「おや、嬉しいことを言ってくれるね。そういう、可愛い君のお名前を教えてくれるかな?」

 なんだか、小さいころの紗枝ちゃんを思い出す。それほど幼いとは思えないけど。

 「中々わかる人ですね! やっぱりボクの可愛さは世界で一番ですね! ボクは世界でイチバン可愛い輿水幸子です! 燿お兄さんは、特別に幸子ちゃんって呼んでくれていいですよ!」

 ドヤ顔でふんぞり返る幸子ちゃん可愛い。

 「じゃあ、幸子ちゃん。それに、姫川さん。この子、鷺沢文香さんが、今度新しくアイドルになることになったんだけど、お仕事が一緒になることがあったらよろしくね」

 なんだか、私がマネージャーみたいなことをやっているが、まぁ、可愛い後輩のためだ。

 「あ、文香ちゃんだね! 紗枝ちゃんからいつも話を聞いてるよ。大好きなお兄様に仲のいい女の子が出来たっモゴモゴ」

 「友紀はん! な、なんでもありまへんよ!?」

 慌てる紗枝ちゃん可愛い。しかし、こんなに慕われているというのは、なんだか、気持ちがポカポカする。

 「そ、その、私は先輩の後輩というだけで、そのような関係では」

 「さ、鷺沢はん。そんなオドオドせんといて下さい。何だか居たたまれなくなります……」

 「ふっふっふ、それでも一番かわいいのはボクですけど!」

 まさにカオス。女三人寄れば姦しいとはいうが、格言とは実に物事をよくとらえている。

 「ほら、お前たちふざけるのはそのくらいにしておけ。瀬織さんと鷺沢も見て行ってください。瀬織さんは、何か気になったところがあったらアドバイスしてください。トレーナーに日本舞踊の専門はいないもので、あくまで教本レベルになってしまって」

 「それでしたら、アドバイス程度なら。それに紗枝ちゃんの腕前が鈍っていないか、しっかりと見ておかなければいけませんし」

 「それはぷれっしゃーですわな。ふふふ、いつもより頑張らなあきません」

 ニコニコとしながらレッスンの準備をする紗枝ちゃんたち。私たちは壁際に移動し、三人のレッスンを見学することにするのだった。

 

 

 ☆

 

 

 小早川さんたちのレッスンを見学させてもらうことになりましたが、失礼ながら私にとって、一番気になってしまったのは、瀬織先輩だった。

 日本舞踊をやっていたことは知りませんでしたが、普段の所作の美しさを思えばなるほどと納得しました。

 そして、今レッスンの様子を見つめる先輩の視線には、思わずドキドキしてしまいました。

 真剣そのもののその視線は、三人の動きを一つも逃すまいと見つめています。トレーナーさんの説明で、今回のレッスンは基礎レッスンというものらしい。その中でも、日本舞踊の動きのようです。

 「私は専門ではないので詳しくはありませんが、やはり小早川さんが一歩抜きんでていますね」

 「はい。腕の動かし方などはとても綺麗です」

 二人で思ったこと等を話していると、レッスンが終了した。

 トレーナーさんが指導を終えると、顔を先輩に向けた。

 「さて、瀬織さんは何かありますか?」

 「そうですね……大体のことは聖さんが仰ったことと同じです。細かいところを言うのであれば、もう少し全体の流れを意識した方がいいかな?」

 「細かいところですか?」

 「言葉では少しわかりにくいのですが……ちょっと失礼しますね」

 そういうと先輩は上着を脱ぎ、皆の前に立った。

 「今、みんなが踊ったのは、こんな感じ」

 先ほど三人が踊っていた振付をそのままなぞる先輩。一目見ただけで踊れるのは、凄いと思います。

 「それで、改善したのが、こんな感じ」

 そして先輩は再び踊り始めました。振付は同じはずなのに、その美しさは全く違いました。練習用の振付なのにも拘わらず、惚れ惚れしてしまうほど美しいものでした。

 「と、こんな感じかな。雰囲気のレベルだから、難しいかもしれないけど、これができるようになれば、魅せることが出来るようになる。まぁ、美城プロならエレーナさんがいるから、彼女に聞いた方がダンスの魅せ方を勉強出来ると思うよ。私はあくまで日舞だからね」

 先輩の説明を聞いて成程と思いましたが、それでもなお、先ほどの舞の余韻が残っていました。それは三人も同じだったようで、ぽかんとしています。

 「す、すごーい!! 紗枝ちゃんから聞いてたけど、本当に凄いんだね!」

 「ぼ、ボクも認めてあげてもいいですよ!」

 姫川さんも輿水さんも、先輩の舞に感動していた。

 「まだまだ私もお兄様には適いまへんなぁ。本当に美しゅう舞どす」

 「紗枝ちゃんもしっかりとしていたよ。あと一歩進むなら、雰囲気を魅せられるようにしないと」

 「はーい、お師匠はん」

 小早川さんも嬉しそうに頷いていました。

 「っと、鷺沢さんをほったらかしにしてしまったね」

 「そうだな。どうだったかな? 基礎的なレッスンだったが、普段はこのようなことをしているよ」

 「進む道は険しき、ですね」

 「そうだな。千里の道も一歩から。そう言えるなら十分さ」

 トレーナーさんにそう言ってもらえて、少しだけホッとします。

 「では、そろそろお暇しましょうか。皆さん、突然なのにありがとうございました」

 「いや、有望な新人だ。これから、よろしくな鷺沢さん」

 「は、はい」

 レッスンルームから退室し、最初のカフェに戻ります。今度はコーヒーを注文しましたが、とても美味しいです。

 「さて、少し急ぎ足になってしまいましたが、楽しんでいただけたでしょうか?」

 「はい。触れたことのない世界でしたので、とても興味深いものでした」

 「ふふふ、これからは鷺沢さんもその一員になるんですよ。それと、瀬織さんも、突然アドバイスなどをしてもらい、すみませんでした」

 「いえいえ、とても面白かったですよ。それに、妹弟子の成長も見られましたし」

 先輩も楽しんでいたようで、とても嬉しそうな表情をしていました。

 「それにしても、いよいよ鷺沢さんもアイドルか。可愛いとは思ってたけど、それを証明するときが来たね」

 「か、可愛いだなんて、そんな……」

 「ふふふ、今の鷺沢さん、とっても可愛らしいですよ。思わず、宣材写真にしたいくらいです」

 「あぅぅぅ……」

 何というか、このお二人には敵う気がしません……。

 




本作に登場(名前だけ)したエレーナとは、私の多作品に出ているキャラクターです。アナスタシアの姉という設定。
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