「………とりあえず、謝っておくわ。悪かったわね、サイト。」
オールドオスマンをしめやかに爆発四散させた後、ルイズとサイトは負傷した二人を保健室へと運び、自分達は授業のある教室へと向かっていた。
その道中、の彼らの会話がこれである。
「いきなりどうしたんだ?ルイズ、具合でも悪いのか?」
「失礼ね。私だって謝りくらいするわよ。」
「お、おう。」
「考えてみたら、あなた達もいきなり召喚されて、あの扱いだったもの。そりゃ、怒りもするわよね。」
「あー、まぁなぁ。」
「とはいえ、サトウの奇行はちょっと理解できないけど。」
「だよな。いきなりあのじいさんをホモ扱いしたときは流石にアイツの頭を疑ったわ。」
「………オールドオスマンに言われた通り、あなた達の待遇は改善するわ。けど………」
「けど何だ?」
「悪いけど、あなた達を、元居た場所に還すのは………」
「………まぁ、方法が謎なんだから、その辺りは仕方ないっちゃぁ仕方ないかなぁ。」
「………それだけじゃ無いわ。あなた達二人は、私の魔法が成功したって、数少ない証なの。あんた達の国ではどうだか解らないけど、このトリステインじゃ、魔法の使えない貴族って言うのは白い目で見られ続けるのよ。始租ブリミルの奇跡である魔法を使えない貴族なんて………って。この学園に居る時間が、私にとっても最後のチャンスなのよ。卒業する時までに魔法が使えないようだと………」
そう言って、俯くルイズ。
「………ふーん、貴族って大変なんだな。」
「………はぁ、平民のあんたにはそこら辺の苦労が解るとも思えないけどね。」
「まぁ、ウチの国には貴族なんて居ないからなぁ。」
「えっ?貴族が居ないってどういう事よ?」
「あー、昔は居たんだよ。貴族っぽい人達。けど、明治維新やら、戦争に負けたりやらで居なくなった。」
「じゃぁ、誰がどうやって国を治めてるのよ?」
そこから、日本と言う国を、知っている範囲で紹介するサイト。
その内容に、興味津々で引き込まれるルイズ。
「えっ?じゃあ、サトウが言ってた共産主義なんちゃらって、只の戯言じゃ無かったの?」
「いや、確かに共産主義って考え方はあるけど、アイツはただ思い付くまま言ってただけだと思うぞ?………多分。」
「そ、そうよね。あんな危険思想………」
かくて、二人は少しずつお互いを知り、その距離を、本当に僅ではあるが縮めていった。
一方、その頃のサトウはというと。
「………何だか甘酸っぱい気配を感知したぞぅ?」
「なんじゃ、いきなり立ち上がって。ちゅうかもう動けるのか、丈夫じゃのう?これが若さなのかのぅ。結構重症にも見えたんじゃが。」
「ふふん、鍛え方が違うのさぁ!あと、退屈だからね!保険医の先生もおばちゃんだったし。こう言うのって、ぼんきゅっぼんのいけない先生が出てくるんじゃないの?」
「まぁ、ワシもそう言う人材を探したんじゃがのぅ。そんな理想的な人材はみつからなんだ。」
「かーっ!世知辛い!不景気!んで、オスマン・トルコさんよ?使用人のお仕事ってどこで教えてもらえばいいのん?」
「何じゃよ、オスマントルコって。ちゅうか、使用人の仕事って………本当に体は大丈夫なんか?」
「ご心配ありがとうございます。けど、何か大丈夫っす。本当何でかわかんにゃいけども。こやってエアリンボーだって踊れるよ?そこからエクソシストスタイルに移行!!」
「ぶ、不気味な動きじゃのう………うわ、その体制でベッドから降りるな、気持ち悪っ!」
「ねーねー、ミスターアタテュルク、使用人のお仕事って何処で誰に教えて貰えば良いのさ!?」
「うわ、キモッ!怖っ!解った解った、教えるから普通にせんか!」
「へーい。」
「この時間なら使用人の皆は食堂で昼の準備をしとるじゃろ。どれ、一筆したためるから、ちょっと待ってなさい。」
そう言って、近くにあった羊皮紙と筆記具一式を魔法で呼び寄せるオスマン。
「しかし、何でそんなに乗り気何じゃよ。これでは罰の意味がなかろう。」
「何だか面白そうな雰囲気だったからね!そーゆーイベント的な存在は見逃さない。」
「いや、イベントって。」
「罰として受ける事は承知したが、それを楽しむなとは言われてなかったしね。」
「なんちゅーか、無駄にポジティブというか………ミス・ヴァリエールも大変じゃのう。ほれ、これを食堂の厨房に持っていきなさい。マルトーという男に渡すのじゃ。」
「オッケー、サンクス!オールドオスマン!ところで、オッケーサンクスオールドオスマンって、何か妙に語呂が良くない?」
「知らんわ、ほれ、とっとと行くんじゃ。全く、君の相手は疲れるのぅ。」
そんなこんなで、保健室を後にするアテクシは食堂へ。
「マルトーさぁん!いらっしゃいますぅ?」
厨房に入るなり、大声で叫ぶ。
そうじゃないと、自分の声も聞こえないくらいの慌ただしさなのだ。
「あぁん?この忙しいのに何だおめぇは!?」
その声に反応した男性が現れる。
ガッチリとした体型のおっさんである。
「僕サトウ!オスマンに言われてマルトーさんの手伝いに来ましたぁ!これ、読んだってや!」
「あん?どれ、そいつを寄越してみろ。」
「ほいさ。」
俺の手から、羊皮紙を受け取って眺めるマルトー氏。
「おめぇ、お貴族様にケンカ売ったんか!んで、罰としてこっちに寄越されたと。」
「そだよ?」
「ふぅん………で、おめぇさん何が出来る?厨房に立った経験は?」
「バイトで少々。だから料理は出来るし、配膳なんかも大丈夫!」
「バ、バイト?まぁ、兎に角経験はあんだな?じゃあ、こっちを手伝って貰うぞ。そこのジャンと一緒に芋の下処理を頼む!」
「オッケー!親方ぁ!」
「誰が親方だ!誰が!クソ忙しいんだからとっとと仕事にかかれ!」
と、怒鳴られてしまった。
俺、しょんぼり。
だけど気にしない。
気にせず、仕事に取りかかる。
出来る男は仕事で語るのだ!
「俺は今、全自動ジャガイモ下拵えマッスィーンなのだ!!ひょーー!!」
ジャガイモ、剥く!!オレ、ジャガイモ剥く!!!
へへっ、見ろよ、余りに俺の手つきが鮮やかなもんで、隣の推定ジャン君も眼を剥いている!
こんな尊敬の眼差しを向けられちゃぁ、俺も止まれない!
更にスピードアップ!全てを細く短冊状に刻み、序でにピーマンを刻み、油を敷いて炒め、調味料をぶちまけ、肉をぶちまけてまた炒め!!
「出来上がったのが此方!ジャガイモ千切り炒め!広東風!!親方、配達してきまさぁ!!」
中華は出来立てが一番旨いんだ!
早く客の口にぶちこまねば!
何だか後ろで親方の怒鳴り声が聞こえた気がしたが気にしない。
できる男は振り返らないのだ。