夏休みに入ったのでもう少し早く更新していきます
「…三輪たちか…」
物音がし、天谷たちが話をしていた場所、旧弓手町駅の中へと入って来た人物は三輪と米屋であった。
「おっ、天谷と宇野ちゃんじゃん!お前ら何してるんだ?」
三輪はこちらを疑っているような目で見ている。一方の米屋は普通に聞いているだけだった。
「どうも、米屋先輩。先ほどまでここでネイバーの戦闘があったのですが、どうやらここに一般人が入り込んでしまっていたようで。その対処のためこの子達と話をしていたんですよ。」
宇野は咄嗟に嘘をつく。実際ネイバーと戦ったことに嘘はないし、記録を確認してもらえば分かることであった。
しかし俺たちを疑っている三輪は続けて質問をする。
「ならそこにいる三雲は何だ?そいつはB級隊員になったはずだろう?規則を知っているものがわざわざここへ連れて来るというのか?」
痛いところを突かれた…確かに三雲はボーダー隊員だから、ここはやって来ることがいけないことだと知っている。それにも関わらずここに連れてきていることも疑われる。
「それに…天谷、お前はあのとき会議の場にいたはずだ三雲の顔を知っているはずだ。にも関わらず一般人だと…?ふざけるな!大方そのどちらかがネイバーなんだろう!この際どちらでもいい!ネイバーは排除するまでだ…」
そう言うと三輪は腰に差している孤月を取り出して戦闘体制に入る。それを見た米谷も独特な孤月である、槍を作り出して戦闘モードに入る。
「おっ俺は初めて人型ネイバーと戦うんだ!ワクワクするぜ!だけど三輪、間違って一般人を攻撃しちまったらどうするんだ?」
「関係ない…本物なら戦いに来るだろうし、本物ならその瞬間まで反応できない。それを見極めろ。」
「…了解。」
そう言うと二人はこちらへ距離を少しづつ詰めて来る。
それを見た空閑がついに喋る。
「俺だよ。俺がネイバー。」
三輪たちが空閑の話した内容に反応する。米屋はおもちゃを見つけた無邪気な子供のような目をしているのに対して、三輪は憎き相手を見つけたいうような目で睨みつけていた。
だが空閑はそんな二人のことを気にも留めず話す。
「こっちの女の子は関係ない。ただ、ネイバーに追われて困るのだと言われたからその原因を調べてただけだ。」
「そんなこと信じられるか!大方庇っているのだろう。貴様らはそうやって卑怯な手を取るんだ!」
いきなり空閑の言葉を突っぱねた三輪は雨取に向けて、拳銃を放った。
三輪の拳銃から放たれたアステロイドは一直線に雨取へと向かって行く。あまりに突然のことに打たれた雨取も驚く暇さえなかった。
しかし、三輪から放たれたアステロイドはとっさに反応した天谷と空閑によって防がれたため、雨取に当たることなく済んだ。
天谷はアステロイドが雨取に当たらなかったことを確認して、三輪に対して普段の彼からは想像もつかないほどドスの効いた声で質問をする。
「おい、三輪…お前、今何したか分かってんだろうな?」
普段あまり怒ることの少ない天谷がこれまでに見たことがないほど怒っていることに宇野や、通信でその様子を聞いていた剣持、柳本もとても驚いていた。
それは敵対している米屋も同じで、驚き飛びのいたほどであった。
だがしかし、唯一三輪だけは一切顔を変えることなく、天谷を睨みつけていた。
「何をしただと?決まっている。ネイバーの排除だ!ネイバーを駆逐するのが俺たちボーダー隊員の仕事だろう!」
「ああ、そうだな。敵性ネイバーを駆逐するのが俺たちの仕事だ。けどな、敵とも、味方とも、そして一般市民とも分からない人にいきなり銃を向けていいものだと思ってるのか!それじゃあお前がやっていることは殺人行為じゃないか!」
「なんだと…?こいつは俺たちのことを騙しているかもしれないだろう!それにアステロイドなら一般市民に当たったところで気絶するだけだから問題ない!」
「その行為が問題だって言ってんだろうが!お前はどうしてすぐにネイバーに対する憎しみだけで行動をとるんだ、三輪!もう少し落ち着いて考えろ。」
お互いに理念を譲ることなく言い争っていると空閑がこちらへとやって来て天谷に話す。
「なんかごめんね、天谷先輩。迷惑かけたね。これは俺が問題なことだ。天谷先輩に迷惑をかけたくないから大丈夫だよ。」
「やはり天谷はネイバーを隠していたのか!お前は俺と同じ仲間だと思っていたのに……もういい…ネイバーは殲滅全て殲滅だ!!」
三輪は怒りに身を任せてすぐに空閑に襲いかかった。三輪の様子を見て米屋も空閑へと攻撃を開始したが、米屋は複雑そうな顔をしていた。
三輪と米屋のコンビネーションはボーダーにおいてもトップクラスの相性を誇る。米屋が前衛を務め、切り込んでいき、その隙間を縫って三輪がハンドガンを打ち込む。そして、ハンドガンを避けようものなら、死角に三輪が入り込み、孤月で攻撃をする。
空閑は武器を持たず拳で戦う戦闘スタイルであるために、回避しながら反撃を静かに狙っていた。
しかし、ぱっと見れば三輪と米屋のコンビネーションの前に手が出せなくなっているようであった。
そのため、三雲や宇野は焦った様子を見せていた。
「天谷先輩!空閑のことを助けてやってくださいお願いします!」
「先輩、私が加勢した方がいいでしょうか?」
二人が焦っている中で天谷はあることに気がついていた。それは天谷にしか気づかないことであった。
「…迅さん、駅の近くにいるでしょ?何してるんですか?」
天谷のサイドエフェクトが発動し、駅のホームの屋根の上に迅がいるのを確認していた。天谷が迅に質問するとすぐに迅から返答が返ってくる。
『さすが、翔。すぐに俺のことに気がついちゃったよ。』
「迅さん、単刀直入に聞きます。このまま俺たちが加勢しなければ空閑はやばいかやばくないか教えてください。」
『いや、お前たちが加勢しなくともあいつは一人で三輪隊全員をあしらえるよ。なんて言ったってあいつは黒トリガーだからな。』
迅からもたらされた衝撃の情報に天谷は驚きが隠せなかった。
黒トリガー、通常のトリガーとは一線を画するトリガー。通常のトリガーが生産性を追求したトリガーであり、大勢の人が使えるようにしたものであるとしたならば、黒トリガーはそのトリガーが使い手を選ぶ一点物のトリガーである。
必ずしもそのトリガーは誰でも扱えるわけではなく、その黒トリガーと相性が必要である。その相性がよければその出力も上がるという変わったトリガーでもある。
黒トリガーの強さは通常のトリガーとは比べ物にもならないほどであって、その戦力は圧倒的である。
そしてその黒トリガーを空閑が持っていると聞いた天谷はひとまず安心したが、少しでも手伝うため、剣持や、宇野たちに指示を出す。
「剣持!お前は今どこにいる?」
『えっと…旧弓田町駅近くのビルに近づいてるあたりかな。』
「それじゃあ、柳本先輩の援護をもらって近くの狙撃地点を抑えてくれ。その近くに奈良坂と古寺が潜んでるはずだ。攻撃するんじゃなくてその地点を抑えるのが目標だ。頼んだぞ。」
『分かった。柳本先輩お願いします!』
『了解したわ。すぐに情報送るから待ってて。』
「続けて、宇野は三雲、雨取の保護をしてくれ。特に雨取は防御手段を持たない一般市民だ。必ず守り通してくれ。」
「了解しました。天谷先輩はどうされるのですか?」
「俺も近くの狙撃地点を抑える。頼んだぞ。」
天谷が指示を出し終えると同時に全員が一斉に動き出した。天谷は旧弓手町駅の近くから、剣持は旧弓手町駅に近づきながら狙撃地点一箇所づつ潰しにかかった。
天谷がグラスホッパーで空中を移動しながらスナイパー二人を探していると、かなり近くの建物の上で銃を構えている奈良坂を発見した。
「あんな近くに…あの位置から狙われたらさすがに反応するだけで精一杯だ。抑えなければ…」
すぐに方向転換して奈良坂の元へと向かう。建物に天谷が到着すると奈良坂が銃を構えるのをやめたこちらへと話をかけてくる。
「…戦闘は終わった。」
戦闘が終わったと言われて空閑がやられてしまったのでは…と心配になり、すぐに空閑がいた場所に振り返る。
するとそこにいたのは鉛弾を何発も食い、地面に倒れはしている米屋と三輪だった。
空閑も二発鉛弾をもらっていたが、腕に受けていたため、大きな問題はなさそうであった。
そして先ほどまで近くから高みの見物をしていた迅が空閑の隣に立っていた。
その様子を見るに決着がつき話をしているのだろう。とりあえずなんとか無事に済み、天谷も安心していた。
「それにしても…両親を殺されているのにお前がネイバーを倒すのではなく、守ろうとするなんて思いもしなかった。」
奈良坂は疑問に思ったことを素直に口に出す。
その疑問に天谷は答える。
「そうだな…俺はあいつに両親を殺されたわけじゃない。あいつは全く関係のない一人の人間だ。それならあいつを憎むのは筋違いだ。そして、あいつは俺と初めて対面したときに攻撃をしたわけでもない。それならわざわざ、敵対する者を増やす必要はないと思ったからだな。もちろん空閑が敵対するなら俺はあいつに容赦しない。」
天谷の答えを聞いて奈良坂も納得をしたようだった。
「そうか…そうならいいんだ。迷惑かけたな。」
「いや…すまんな…俺の方こそ邪魔する形になってしまって。」
互いに自分の行った行動を謝っていると、古寺と剣持がこちらへやってきた。古寺は剣持にプレッシャーをかけられたのかいつにも増して汗をかいているようだった。
「翔!古寺を抑えたって伝えてんのに通信を聞かないんだから!ちゃんと通信も気にしといといてよね。」
「まじか…すまんかった。」
通信を聞いていなかったことを謝っていると先ほどまで三輪たちがいたところから光が一筋立ち上がった。
その様子を見るに三輪がベイルアウトしたのだろう。奈良坂と古寺が通信で指示を聞いていた。
「…はい、分かりました。本部に戻ります。それじゃあ通信を切ります。」
そういって奈良坂は通信を切って天谷に一言伝える。
「天谷、おそらく城戸司令は空閑の討伐命令を出すだろう。だから…再び対立するかもしれないだろう。気をつけておけよ。」
「ああ、分かった。忠告をありがとう。じゃあ、俺たちももう少し防衛任務があるから戻るわ。」
そういってお互いに別れ、それぞれが行くべき場所へ向かった。
防衛任務の待機場所に向かう最中に天谷は考え事をしていた。
今回は咄嗟にみんなに空閑を守ることで動いてもらったが、みんなは本当にそのことをいいことだと思っているのだろうか?いざとなつたら俺一人で戦わないといけないかもしれない…
「どうしたの?なんか深く考え事してるみたいだけど?」
どうやら天谷の顔は深く考えている間にかなり険しい顔になっていたらしい。剣持が心配そうにこちらを覗き込んできたため、天谷はギョッとして飛びのいた。
「いきなり飛び退くなんてどうしたの?あ!もしかして私の美しさにやっと気づいちゃったのかな?全くこれだからモテる女は辛いのよ。」
剣持はドヤ顔をして腕を組んでいた。その様子を見てなぜか無性にドヤ顔が目に付いたので足を引っ掛けて、剣持を転ばした。
「いてっ…何するのさ!」
「いや、何でもないさ。さっさと戻るよ。」
「あっこら!逃げるんじゃない!」
剣持の行動で軽くなった気持ちで天谷は防衛任務の待機場所へと戻っていった。