ワートリついに再開しましたね
また投稿遅いですけど、少しづつ進めていけたらと思います
奈良坂に那須を家に送り届けるように頼まれた天谷は、那須を無事に家まで送り届け、そのまま家路についていた。
その帰り道は外歩く人も走る車もなく、静まり返っており、冷たい冬の風が天谷の肌に突き刺していた。そんな寒さに体を震わせながら、少し小走りで帰っていた。
そんな中、天谷は来月から再び参加することになるランク戦について考えていた。
ランク戦は3ヶ月を戦い、1ヶ月を休み期間として行われるボーダーでのランク決めの戦いである。その中でも天谷はA級と呼ばれる上位層の部類にされらようになった。前回シーズンでB級上位になったため、昇格試験を経てA級になったのだ。
そして、次からのシーズンはA級としての初めてのシーズンであった。これまでとは違うさらにハイレベルな戦いのため、今までの戦いとは違う戦術を取り入れてみようかと思っていたのだ。
「二宮隊、影浦隊クラスがそろってるからきつい戦いになりそうだな…。単純に俺たちのチームの戦法はパターンが少ないし、もう少し考えた方が良さそうかな。今度柳本さんを誘って考えてみるか」
天谷隊の基本戦術は、天谷、宇野の二人のサポートを受けて剣持が敵懐で暴れるというものだ。剣持の攻撃性の高さ、天谷、宇野のサポート性を合わせてかなり安定感があるため、基本はこの戦術だ。
そして、これとは別に天谷を主体とした中距離戦も天谷隊としてのメインの戦いであった。
天谷、剣持はボーダーの中でも古参で、古くからチームとしては組んでいた。ランク戦に参入したのはつい最近であったが、長い付き合い故の連携があるため、阿吽の呼吸で、特に強くなると他の隊員たちの間では言われていたわ、
しかしながら、つい最近天谷隊に入った宇野と二人の連携はまだ完璧とは言えない。宇野自身がアシスト上手のため、今まではなんとかなってきたが、A級相手ともなると一筋縄では行かない、そう天谷は考えていた。
そして、今回このように考えるようになった一因として、最近宇野は悩んでいるようだということを知ったからというのがある。
宇野は入隊してからの時期がまだ短い方である。恵まれたトリオン量に才能も相まってここまで大きな苦戦をすることなく戦ってこられた。
しかし、B級上位、特に言えば二宮隊、影浦隊クラスともなれば、話は別になる。何度も戦って来たチームワークに努力によって積み上げられて来た練習量によってB級中位と比べると大きな差がそこにはある。
実際、前回シーズン、B級上位を相手するときに宇野は落とされることが多くなった。それも自分の役割をこなすことができる前にだ。
例えば東さんの狙撃、例えば二宮さんの両ハウンド…多くの方法で落とされた。
これが応えたらしく、今のままでいいのかと悩んでいるようであった。まだ入隊してから日が浅い方だし、仕方がない、これからランク戦をこなしていけばまだまだ伸びると柳本さん励ましたこともあったが、ダメだったと以前柳本さんに言われた。
責任感の強い宇野は、自分が何もできないことで俺や舞に迷惑をかけてしまっていると思ってしまってるらしい。
そんなことはない、むしろ多くのアシストで何度も助けてもらっているとこちらは思っているのだが、そうは伝わってないらしい。
そんな彼女をどうにか励ましたいところだが、うまい解決策は思い浮かばない。どうしたものかと悩んでいるところ、目の前に薄っすらと人影が見えてきた。
こんなところに誰がいるのかと目を凝らして見てみると、その人物は天谷の方へと歩いてきたのだった。
「やあ、天谷。元気してる?ぼんち揚食う?」
独特な話し方をしてきたその人物は自称、実力派エリートの迅悠一であった。いつものように手に抱えているぼんち揚を食べながら天谷の元へと歩み寄ってくる。
「迅さんこんなところで待ち伏せですか?悪趣味ですよ」
「悪趣味だなんで存外だなぁ。俺はただ用事があってここで待ってたのさ」
「俺がここを通るのも予測済みで?」
「ああ。俺のサイドエフェクトがそう言ってるからな。そして現に天谷はここにやってきたのさ」
迅悠一にはサイドエフェクトがある。それは未来を見ることができるという能力であった。高い確率で起こる未来ほど、遠い未来のことを見ることができ、不確定な未来ほど、見ることの出来る範囲は限られていくというものであった。
「…それで、迅さんは俺に何のようです?迅さんがわざわざこんなところで話しかけてくるなんて何かあるとしか思えないですから」
「なんだ、話があるってことが分かってくれてるなら話は早いな。簡単言わせてもらうとだな…」
それまでの軽い雰囲気は鳴りを潜め、急に真面目な顔になる迅さんに俺は、これから離されることがただ事ではないと直感的に思った。元々迅さんが直接何かを伝える時には何か大きなことが関わっていることが多いが、今回はその中でも特に重大なことかもしれない。
どんなことを話すのかと、息を呑みながら待っていると話を迅速さんは続ける。
「近く、ボーダーでの派閥戦争が勃発する可能性が高い。主に玉狛・忍田本部長派VS城戸司令派での争いになりそうなんだ」
衝撃の内容がその方から話された。ボーダーには主に3つの派閥が存在する。一つは城戸司令率いる派閥だ。この派閥はボーダー最大派閥で、ボーダー全体の3分の2の隊員が入っている。主な方針はネイバー撲滅で、ネイバーの住む世界に攻め込むことも考えている派閥だ。
そして、その派閥とは真逆、ネイバーの中にも仲良くしてくれる人はいるから、仲良くしようという考えをしているのが、今俺の目の前にいる迅悠一も所属する玉狛派だ。
基本的にこの派閥は仲が悪く、もめることもあるくらいであった。それは互いの言い分がまるで真逆であるというのが主な原因だが…。
その二つの派閥とは違うのが忍田本部長率いる、街の警備を最優先にしよう派閥だ。他二つの派閥と比べると温厚な派閥だが、ここにも微妙なところはある。
そんな一長一短なところがある3つの派閥が本格的に争うことになると言われたのだ。驚かないわけがない。
「信じられないだろが、これはほぼ確定した未来だ。城戸司令派はユーマの黒トリガーを奪取しに動く。それをうちと忍田派が迎え撃つ感じだ」
「その未来を回避する方法はないんですか?」
「俺もその方法を探してきたが、ついにそれは叶わなかった。俺たちはもう戦うしかないんだ」
「…なるほど、確かにこれは重大なことだ。しかし、なんでそんな話を自由派の俺に話してきたんです?」
今俺が言った通り、俺はどこにも所属しない自由派閥として知られている。それにうちの部隊は全員自由派閥で、どこの派閥にも深く干渉しないようにしている。
俺たちの意見はどこも極端すぎて、賛同できるところとできないところがあるから、そう言った立場になっている。同じように加古隊、影浦隊、那須隊などが同じようなスタンスになっている。
そんな俺になぜ派閥間争いの話を持ち出してきたのか、そこをきにしていると、迅さんは続けて話をする。
「なぜそんな話を俺に?って顔だが、天谷にも今回は関係してくる話だ。なにせ、今回はユーマの黒トリガーを奪いにくるというものだからな。それにここでユーマに戦わせずに守れなかった場合、これからの未来が危うくなる可能性が高い。極端な話、この三門市がネイバーの襲撃で壊滅的ダメージを負う可能性すらある」
「ユーマの黒トリガーを城戸派は奪いに行くと?それを庇うために空閑を玉狛に迎え入れたりでもするんです?」
「天谷は賢いから話がすぐに通って助かるよ。ああ、その通りだ。ユーマにはボーダーに入ってもらってその力を貸してもらう。本人もやる気になってくれてるさ」
流石は暗躍を趣味としている(小南談)だけあって、手際がいい。確かに黒トリガーの持ち主をわざわざ手にかけて奪うよりも確実に使える人物を仲間に入れる方が、こちらとしてはありがたい話だ。巨大戦力が一つ仲間になるのだから。
確かにその話なら俺自身は迅さんの話に乗ってもいいとは思った。デメリットに対してメリットが遥かに大きい。それに未来が見える迅さんのことだから信頼していいと思う。ただ気になる点があるのでそこは確認しておくことにする。
「確かに話を聞けば悪くないことだと思いますよ。ただ…空閑を玉狛に加えることによって偏る戦力、城戸派との対立によって起こる摩擦、その後の処理はどうするつもりなんです?そこがまず決まらないと話には乗れないですよ」
「相変わらず慎重派だな。そこはしっかり考えてるよ。偏る戦力に関してはこの『風刃』を本部に渡す。これで戦力の均衡は取れる上に終わった後の交渉の切り札にもなる」
その発言に俺は驚きが隠せなかった。迅さんの持っている黒トリガー、『風刃』は迅さんの師匠だった人物が作ったトリガーだ。そのトリガーの争奪戦を迅さんはあっという間に制して、その所有者となった。そんな大切な形見のトリガーを明け渡すほど今回の件に本気なのだろうということが伝わってきた。
「迅さんが『風刃』を交渉のカードに使うなら、それは間違いなく本気だということですね。分かりましたよ、あくまでも今回の派閥争いの仲裁として参戦します。城戸派に撤退を求めてそれでも引かない場合は戦闘もやむなしと言ったスタンスでいきますよ」
「それだけでも助かるよ」
「ただし、うちの隊員たちがどうかは分かりません。それぞれに話を聞いて、納得してもらえたなら共に来てもらいますし、ダメなら俺一人になりますけど、それでもいいのであれば、協力します。どうですか?迅さん?」
「そういうと思ったよ。しっかり話をして決めてほしい。特に、今回参加することは宇野ちゃんにとって大きな転換点になると思うからね」
「それってどういう…」
「それじゃ、 また会おうか。ちなみに勝負の日は遠征組が帰ってくるその日の夜…つまり来週だ。きちんと気持ちを整理して来た方がいいと思うよ。それと、天谷は孤月のトリガー外して射手としてのトリガー構成で来るといい。それじゃあ、よろしく」
肝心なところをはぐらかして迅さんは帰って行ってしまったのだった。
最後に話した内容が一体どういうことなのか、それを考えながら、天谷は改めて帰路につくことになったのだった。