世界の引き金を引く者   作:曇天もよう

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戦闘シーンの描写をうまくしたくていろいろ錯誤してしてみましたがどうみなさんが感じるかドキドキしてます


犬飼澄晴②

「アステロイド」

 

「アステロイド!」

 

相対する二人は共にアステロイドを放つ。互いにボーダートップクラスのトリオン量を誇る二人の弾幕は激しさを増し、周囲を蜂の巣状態にしていた。

天谷と比べるとトリオン量は劣るが、ボーダーの中でも随一の指導者、東に師事を受け、その戦略に基づいて攻撃するのはNo,1シューターにして、個人総合2位の座に就くシューターの王たる二宮である。ハウンドを上手く使いこなして天谷を誘導しながら本命のアステロイドでシールドをゴリゴリと削っていた。

 

対して二宮と比較して年季に差はあるが、持ち前のトリオン量による物量の多さと、バイパーのリアルタイム軌道変更によって二宮を少しづつ削っているのが天谷であった。

しかしそんな戦いを続けていたが、側から見ればその戦いは二宮が終始押していた。普段から稽古でぶつかり合う二人にとって相手の特徴は手に取るように分かる。そのため、相手の弱点を突くように徹しながら戦うが、模擬戦の勝率は二宮に軍配があがる。天谷は二宮に大きく負け越しているのだ。

 

(このまま正面から撃ち合っても埒があかない…。正面きっての撃ち合いは二宮さんの得意な戦いだ。複雑な路地とかに引き込んでの乱打戦に持ち込まないと…)

 

このままでは埒があかないと思った天谷はバイパーによる攻撃をやめて後方に下がっていく。機動力の面では二宮に比べて優っているので距離は少しづつ距離を取れてはいるが、距離をとってなお二宮の射程範囲から逃れることはできない。

 

(ぐっ…射線を切りたいけど、直線続く道だからきつい…。なんとか後ろのあの路地まで辿り着ければ…)

 

矢継ぎ早に撃ち込まれてくるアステロイドとハウンドをシールドを細かく分解して避けながら、天谷は急いで路地の入り口を目指して駆ける。

しかしそんな天谷をおいそれと逃す二宮ではなかった。

「ハウンド+メテオラ…ホーネット」

 

二つの効果を併せ持つ至高の弾幕、合成弾をここで二宮は放った。ホーネットはそれまでのハウンドたちとは違い、天谷の上空方向から次々と天谷に襲いかかる。

 

ドドドッ!

 

ホーネットは天谷のガードや地面に当たると即座に爆発を起こす。ハウンドなどを持ち前のサイドエフェクトで細かく把握しながら小さなシールドで対処していた天谷のガードは薄くなっており、その爆発に天谷も飲み込まれる。

 

(ガード広げた瞬間にホーネットを使っての広範囲爆撃…!それにこの視界…まだ二宮さんの攻撃は終わってないに違いない…)

 

視界を奪った天谷に対して二宮はさらに追撃を仕掛ける。爆煙が立ち広がる道にアステロイドが放たれた。

 

ガガガッ!

何かの物に当たった音が聞こえてくる。ヒットの音が聞こえてくるため当たってはいるようだが、ベイルアウトの光が立ち昇らないことからクリティカルな攻撃にはなっていないと二宮は判断した。

 

爆煙がようやく晴れてくるとそこで二宮の攻撃が何にヒットしたのかようやく判断することができるようになってきた。

煙の白い中に薄っすらと見えるのは大きなフォルムの物体。そこには確かに何もなかったはずだが、二宮の攻撃を防いだシールド…いや、エスクードがそこにはあれほどの激しい攻撃を受けたにも関わらずどっしりと構えられていた。

 

(エスクードだと…?あいつが使うことがあまり見たことがないはずだが、これも迅の入れ知恵か?)

 

普段天谷が使うことのないトリガーのために余計に不思議に思いながらも、エスクードの後ろに天谷が潜んでいて奇襲を仕掛けてこないか確認するため、ハウンドを放つ。

しかし、今度はエスクードにヒットする音と地面を抉る音しか聞こえてはこなかった。

 

(ちっ…路地に逃したか。少し厄介だ)

 

目の前で逃してしまったことを表情にこそ出さないものの、悔しそうに天谷が逃げ込んだ路地を見つめる二宮であった。

 

 

 

***

 

 

「はは!防戦一方じゃいつまで経っても俺を倒すことはできないよ?」

 

場面は変わって宇野と犬飼の対面。犬飼に回し蹴りをくらい吹き飛ばされたことで剣持と分断されてしまった宇野は、肩に数カ所のかすり傷を負ったものの、なんとか塀を使っての射撃戦に持ち込んでいた。

 

(普段は天谷先輩のおかげでこういう撃ち合いのときも相手の場所が知れて有利だけど今はいないから顔を出して攻撃するこにも時間差ができちゃう…。剣持先輩と合流すれば戦いやすいけど、ルートを完全に塞がれてるから無理そうだし辛いな…)

 

宇野が考えているように、剣持との合流ルートは犬飼が完全に塞いでいた。反対側から大回りして合流することはできた。しかしながらそちらのルートは迅の戦っている方向で、そちらの戦場にぶち当たる可能性がある。

今回の作戦の目的は城戸司令派閥の撃退だが、お互いに任された相手をしっかりと受け持つことだ。そのルートを使って他の人に迷惑をかけられないという点で使えない上に、建物が低く、射線が通るため狙撃をされる可能性があった。そのため、ここでなんとか耐え凌ぐか、ここから押し返して合流を果たすという道しか宇野には残されてなかった。

 

(中距離の撃ち合いだとアサルトライフルを使う犬飼先輩には到底かなわない。どうにかしてハンドガンの小回りが効く近距離戦まで持ち込みたいところ…。でも迂闊に飛び出せば蜂の巣にされるのも分かってるから、覚悟を決めたら一気に距離を詰めなきゃ…)

 

これからやることが決まった宇野は両手に持った二つの武器を見つめながら深呼吸をする。ゆっくりと息を吸って吐いて心を落ち着かせる。

 

(うん、私ならできる…。私も天谷隊の一人なんだ。苦しい状況だけど必ず…倒す!)

 

***

 

一方、宇野の隠れている方角をいつでも攻撃できる態勢を取って待っていた犬飼は、一切反撃をしてこなくなった宇野のことを疑問に思っていた。

 

(うーん…宇野ちゃんはなんで反撃してこないんだろう?ここよりも下がるのは太刀川さんたちの戦場にぶち当たるから避けるはず。ここで押し返さないといけないと思うんだけどな?)

 

不思議に思った犬飼は耳に手を当ててオペレーターの氷見に宇野についての情報を訪ねようとする。

 

「もしもし?ひゃみちゃん?宇野ちゃんに動きがあるか教えてもらってもいいかな?」

 

『少し待ってくださいね。ちょっと今二宮さんの方に情報送ってるんで』

 

少し忙しそうな声をした氷見からの返答が聞こえて来る。どうやら二宮からの指示のようで、これでは仕方ないと諦めて、宇野のことは警戒しながら少し待つことにした。

 

「余裕があったら答えて欲しいんだけどね、二宮さんの方はどんな感じ?」

 

『……えっとですね、二宮さんが天谷くんを後退させて…傷を合わせた感じです。路地に逃げられたましたけど、二宮さんのダメージは軽微で優勢を保ってる感じです』

 

「さすがうちの隊長。俺じゃ天谷を単独で抑えるのはきついかな〜」

 

『流石に二宮さんの弟子をしてるので…強いとは思いますけどね』

 

「ははっそうだね。うちの隊長が唯一教えているくらいだし、そうじゃなきゃ」

 

『……さて、お待たせしました。えっと…宇野ちゃんは特に動いているような動きはないですね…それと……』

 

しばらくの間、宇野に関する情報や、歌川の状況、辻を通しての太刀川たちの戦況も聞く。どうやら歌川はかなり押されつつもなんとか踏ん張っている様子で、太刀川率いる集団は互角といったところらしい。それと他にも犬飼にとっては有益な情報もいくつか聞くことができた。

 

「ありがとうひゃみちゃん。俺の方はもういいから二宮さんと辻ちゃんの方をサポートしてあげてほしい。俺もさっさと決めて歌川の援護に行かないと。剣持を一人で足止めするのは骨が折れるだろうしさ」

 

『分かりました。それと犬飼先輩の言った通り伝えておきます』

 

「それじゃよろしく〜」

 

そう言って通信を切る。再び宇野のいる方角に目を向けてみるが、一切として宇野は動くようなそぶりを見せてはいなかった。まるでそこにはもう誰もいないように感じられるくらいに辺りは静まり返っていた。

 

(しかしとても戦場とは思えないくらいの静寂具合だね。しかし、流石にそろそろ手を打ってくるかな?気を引き締めていこう)

 

ここで一筋の光が立ち上り、ボーダー本部に向けて伸びていった。

思わず犬飼もそちらの方向を見つめて誰かがベイルアウトしたのだろと考えた。

 

(ん?あれは誰だ?迅さんの黒トリガーには脱出装置がないはずだから違うはずだけど…?)

 

そんなことを思っているとついに宇野が塀から飛び出してきた。前にレイガストを構えて、全速力でこちらへの走りこんでくる。

 

「やっときたね!もう来ないのかと思ってたよ?」

 

タタタタッ!!!

 

軽口を叩きながらも犬飼はアサルトライフルの引き金を引き続ける。銃口から放たれたアステロイドの弾は次々と宇野に襲いかかる。

 

ガキキキンッ!!

 

それらを回避しながら、回避が間に合わないものはレイガストで防ぎながら少しづつ宇野は犬飼との距離を詰めていく。しかし犬飼も近距離戦は持ち込まれまいと、後退しながらドンドンと弾丸を放っていく。

 

ピシッ!

ようやく犬飼までの距離が少しづつ迫ってきた中で、ついにレイガストに小さいながらもヒビが入り始めた。レイガストを持つ宇野の表情も不安によってどんどんと曇っていく。

 

「もう少しで割れるね。これでトドメだ!」

 

このままではまずいと思った宇野はレイガストと反対側に構えたハンドガンでのカウンターを試みる。しかし、犬飼はこれを難なくシールドで防ぎ、宇野に攻撃を続ける。

 

(これならもう少しで割れる…!このままベイルアウトに持って行こうか)

そう犬飼が思った時だった。

 

「今です!スラスター!」

 

シールドモードのレイガストを宇野はスラスターを起動してから犬飼に向かって放り投げた。スラスターによる推進力を得て持ち手のいなくなった壊れかけのレイガストは犬飼に向けて突っ込んでいく。

 

(シールドチャージ…?いや、宇野ちゃんはレイガストの後ろからの攻撃とシールドに切り替えている…。これは近距離戦に切り替えるための時間稼ぎか!)

 

宇野はレイガストを手放すと素早くハンドガンを撃ち、ハウンドの包囲網を展開する。これによって犬飼が左右や飛んで逃げることを防ごうとする。

 

「…なるほど…!なかなか考えたね。でも…」

 

犬飼は広く展開していたシールドを集約してレイガスト前に展開した。集約されたシールドは余裕を持ってレイガストを受け止めた。それに加えてハウンドはあくまでも、制限するための攻撃。その場に留まっていれば被弾することはなかった。

 

「シールドチャージはなかなか面白い考えだったと思うよ。でも残念。それじゃ俺には届かない」

 

今度は犬飼が一気に距離を詰める。右手に持ったアサルトライフルをオフにして、スコーピオンを伸ばしての不意打ちトドメを刺しにかかる。それはB級2位の隊長、影浦の使うマンティスのような要領であった。彼の使うマンティスはスコーピオンを二つ組み合わせたものだが、犬飼のものは一つだけのものである。そのため、伸ばせる距離は影浦のそれと比べると短いものであったが、今回の間合いなら十分に事足りていた。

薄く伸ばされたスコーピオンは宇野がその攻撃を防ぐためのシールドをすり抜けていく。

 

「これでおしまいだね!」

 

ついにその首に刃が届く、その瞬間犬飼が見たのは不敵に笑う宇野の姿であった。奇襲のようなシールドチャージに移動抑制のハウンド。まさに宇野の切り札を使わせた上でそれらを看破した。それに加えて今まさにとどめが刺されそうであるという場面での笑みに犬飼は恐ろしい予感がした。そして、その予感はすぐに的中することとなる。

 

『犬飼さん後ろです!』

「犬飼先輩!」

 

通信によって聞こえた声、そして後ろから聞こえた声が指し示したいたもの、それに犬飼はすぐに気がつくことができた。

犬飼は咄嗟の判断で首や胸元に厚くシールドを張って横に飛び退いた。そこには予め宇野の放っていた弾が仕掛けられていたので、ダメージは覚悟の上だ。

バチバチと腕や足にアステロイドが当たることでトリオンがどんどん漏れていく。しかし体の重要なパーツ、トリオン伝達脳とトリオン供給期間である頭の心臓は守り抜くことができた。もし咄嗟の判断で飛び退いていなければそこに襲いかかった鋭いスコーピオンによって完全に斬られていただろう。

 

「あらら、厄介だから分断したのに合流されちゃうなんてな」

 

今の攻撃によって重傷を負った右手から左手にアサルトライフルを持ち変えてアステロイドを、着地したてで硬直状態の剣持に向けて集中的に放つ。

 

「やばっ!」

剣持は犬飼を攻撃するためにスコーピオンを両手で使っていたため、シールドをすぐに貼ることができなかった。そのため、防御をすることも回避をすることもできない、そう思われた。

しかし、その反撃は攻撃を仕掛けた剣持には届かなかった。後ろに控えている宇野がシールドを張ったからだった。

 

「ありがとう比奈ちゃん!なかなか合流できなかった!大丈夫?」

「先輩がいい場面で合流してくれたので助かりました。何とか大丈夫です」

 

剣持は特に傷を負った様子はなかったが、宇野はかなりボロボロの状態であった。その様子からかなり追い込まれていたのだと剣持は判断した。

 

 

 

「すみません、足止めしきれませんでした…」

 

一方その剣持の相手をしていた歌川はかなり満身創痍な様子で、身体中に傷ができている上に左手をやられていた。

 

「ううん、剣持ちゃんを足止めしてくれたからかなりこっちも削れたよ。合流されたのは正直きついけど、こっちにも策はある。こっからが勝負だよ」

「…分かりました」

 

そこまでは足止め叶わず、自身もダメージを負ってしまったことにかなり悔しそうな表情を浮かべ、下を向いていた歌川だったが、先ほどまでとは違い前を見据えている。

 

 

両者敵を見据えながらジリジリと距離を取って相手の出方を伺う。互いに相手の先手を伺う中、犬飼が不意に表情を緩める。

 

「犬飼さんが笑ったってことは何か仕掛けてくるよ!比奈ちゃん気を付けて!」

「はい!」

犬飼が笑うとき、それは何か仕掛けてくることが多いと、幾度となく戦ってきた剣持は知っていた。それによって辛酸を舐めさせられたことが何度もあったからだ。

 

「やだなぁ人が笑っただけでもそんな言われ方するなんて。でも…」

そんな言葉を言いながらも犬飼の不敵な笑みは消えない。そして、最後の言葉を言おうとした瞬間、剣持だけは気づいた。今から何が起こるのか。

「比奈ちゃん!」

「それは正解だね」

剣持が叫び、犬飼が最後の一言を告げたその瞬間宇野には何があったのか理解することができなかった。突然視界がぐらついたということを認識することすら出来ないまま体にピシピシッとにヒビが入っていく。

 

「…ごめんなさい、先に落ちます…」

こうして宇野はベイルアウトに追い込まれてしまったのだった。

 

 

 

 




今までの話の中で、天谷が宇野を呼ぶときに、「比奈」と呼んでいましたが、これからは宇野で統一させてもらいます
突然の変更ですが、よろしくお願いします
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