ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第13話 にこ先輩、参戦!

6月に入った。

雨が多くなりμ'sは神田明神になかなか来なくなった。

すなわちバイト先にもあまり来ない・・・淋しい。

 

     ■□■

 

そんなある日の夕方、秋葉原にも久しぶりに晴れ間が差し込んだ。

ここぞとばかり、俺は前日にバイト先で売れ残ったアップルジュースとオレンジジュースを安く買い、紙コップを携え神田明神に行った。

ちょうど休憩のようだ・・・図らずも差し入れにはベストなタイミングだ。

そこで俺は気が付いた・・・あれ、7人いる?・・・良く見ると小柄な女の子が一人増えている。

凛「あ~しょー兄ぃ、お~っす!」

紫音「凛ちゃん、おっす!よっみんな、がんばってるじゃん。今日は晴れて良かったね~」

穂乃果「おっ!しょーくん!今日も何か持って来てくれたの??」

紫音「うんこれ、店員は安く買えるんだよ、消費期限が少なくなったやつ。みんなで飲んで」

ことり「紫音くん、いつもありがとう!あのね、メンバーが一人増えたの~!紹介するね!こちらが・・・」

ことりちゃんが言い終わる前に小柄な女の子はどんどんと近づいてきて、俺の前に仁王立ちになった。

凛ちゃんよりちょっと小さいだろうか・・・翠音と同じ年くらいに見えるけど、中学生がμ'sに入れるわけはない。

小柄な娘「あんたね!?ウチのアイドル達にちょっかい出してるっていう図々しい男は!!あのね、アイドルっていうのは清純が命なの。男なんて危険物以外の何モノでもないのよ!置くもの置いたらさっさと帰りなさい!ウチの子達と口をきく事は許さないわよ!」

すごい剣幕だが下から見上げながら言われるので、あまり恐くはない。

紫音「え、え~~っとはじめまして。俺は桜野紫音です・・・え~っとお名前は・・・」

小柄な娘「な!あんた、この宇宙ナンバーワンアイドルのにこにー様を知らないの!?ダメな男ね、そんなんでこの世に生きていられると思ったら大間違いよ!仕方ないわねえ、一回だけ自己紹介をやってあげるから、その腐った目を開いて良く見てなさいよ!」

ひ、酷ぇ言われようだ・・・何か始まるのか?小柄な娘は、そういえばなぜかみんながジャージなのに、フリル付きのピンクのミニスカートのトレーニングウェアを着て、ニーソを履いている。

小学生には良く見かけるような服だな・・・絶対領域があるのにあんまりときめかないのは何故だろうか。

小柄な娘は一度後ろを向いた。

そして振り返りながらツインテールを振り払って両手を影絵のキツネ風の形にして頭上に構えた。

小柄な娘「にっこにっこに~!あなたのハートににっこにっこに~!笑顔届ける矢澤にこにこ~!にこに~って覚えてラブにこぉ!」

紫音「・・・え~~っと・・・」

俺は二ヶ月前の音ノ木坂学院入学式で、凛ちゃんの写真を撮ってあげた時を思い出した・・・。

だが思い出したからといって、今の状況をなんら変える事はできず、どう反応すれば良いのかさっぱり判らない。

助けを求め周りを見渡す。

海未ちゃんとことりちゃんは生暖かい目で俺を見ている。

花陽ちゃんは小柄な娘を一生懸命見ている・・・何かを学ぼうとしているのか?

穂乃果ちゃんと凛ちゃんは俺の持ってきたジュースをコップに注いで騒ぎながら飲んでいる。

真姫ちゃんはこれまた俺が差し入れたパラソルの下で本を読んでいる。

・・・つまり誰も、俺のこの状況を助ける気は無いようである・・・自分で対処するしかない。

紫音「え~っとつまり、矢澤にこにこちゃん・・・で良いのかな?かわいいね!自分で考えたのかな~?」

にこ「にこにこじゃないわよ!にこよ!!しかもあんた何よその言い方・・・私をいくつだと思ってるの!?」

紫音「・・・ええ~っと、14歳?」

にこ「え~?にこってばぁいっつも若く見られちゃうんだ~って違うわよ!!私は17歳よ!あんた高二なんでしょ!聞いてるわよ。つまりここに居る誰よりもにこは年上なの。分かった!?分かったら敬いなさい」

17歳??この女の子が?と思ったがそれを口に出したら俺はたぶん一生ここに来られないに違いない・・・ここは空気を読んで追随の一手である。

紫音「せ、先輩ですか!にこ先輩、ですね!しまった~俺、宇宙ナンバーワンアイドルを知らなかったとは・・・一生の不覚です!」

俺がそう言うとにこ先輩は怒り顔からジト目までトーンが下がった。

にこ「・・・分かってきたじゃない、あんた。え~と桜野紫音、だっけ?シオンでいいわよね?さっきにこの事を中学生だと思った失礼千万男だけど、にこのかわいさは一応分かるようだから、特別にあんたはファンの一人か下僕一号としてμ'sに差し入れする事を許可するわ。ただし!!メンバーにちょっかいだしたら絶対許さないからね。即出入り禁止よ!!」

紫音「は、はいっ!分かりました!」

ふ~なんだかすごい先輩が入ったモンだな・・・大丈夫かね?特に真姫ちゃんとか考え方を押し付けると怒りそうだけど・・・。

にこ「ちょっとあんたたち、それ私にも飲ませなさいよ~っ!」

俺との会話が終わるや否や、にこ先輩は差し入れのジュースを飲みに行った・・・うむ、にこ先輩は差し入れ物量作戦で仲良くなれそうだ。

 

     ■□■

 

その後も何日か雨が続きμ'sメンバーには会えなかったのだが、嬉しい事にことりちゃんからメールが来た。

「これからのSomeday」という新曲が作られ、学校で歌うPVがネットに公開された、と書いてある。

俺は早速パソコンを起動し、またもや繰り返し見てしまった。

ことりちゃんには衣装を褒め称えるメール、穂乃果ちゃんには歌とダンスに感動したメール、そして海未ちゃんには「歌詞とみんなの笑顔がすごく希望に溢れて楽しい歌だね」とメールを出しておいた。

会えなくても、少しずつでも応援している気持ちを伝えたい。

 

     ■□■

 

6月半ばには弓道東京都総体があった。

海未ちゃんにメールを送ったところ、やはり個人戦と団体戦に出場する模様だ。

海未ちゃんは音ノ木坂の部員達と移動するので、一緒に会場まで行く事はできないが、男子個人戦にしか出場せず他に部員もいない俺は、女子の団体及び個人戦を応援する事ができる。

しかしそれも、こちらが良い所を見せないと意味がない。

俺はここぞとばかりに集中し、予選は4射的中で決勝に進んだ。

ここは日ごろの練習の成果をうまく発揮できたと思う。

しかし決勝では、緊張のためかミスしてしまい3射しか当たらず、ベスト8には入れず敗退してしまった。

残念であるが課題も見えた・・・やはり練習を重ね本番で緊張しても正しい姿勢が取れるようにする事、そして何より緊張しないよう試合に慣れる事が必要だ。

そんな反省もそこそこに、自分の試合が終わった俺は慌てて女子の試合を見に行った。

音ノ木坂学院団体は海未ちゃん以外の子の成績が振るわず予選落ちしていた。

しかし予想通り海未ちゃんは個人戦で健闘し、決勝に勝ち進んでいた。

多数の選手の中をきょろきょろと探し周り、何とか俺は決勝前に一人で調整をしている海未ちゃんを見つける事ができた。

声をかけ目立たない廊下の隅に海未ちゃんを連れ出す。

紫音「おっす、海未ちゃん、もうすぐ決勝だね!がんばって!!」

そう声をかけると、いつもより少し青ざめている海未ちゃんは弱弱しい微笑みを浮かべた。

海未「紫音さん・・・応援に来て下さったのですか・・・また私、緊張してしまって」

これまた予想通りの返事である・・・俺は近くに人が居ないのを確認し、手をキツネの形にして頭の上で構えた。

紫音「にっこにこにー!あなたのハートにニコニコに~!ほむまん持ってきたよラブにこぉ!はい、これあげるね」

俺は袴を着けた道着姿のまま、にこ先輩のポーズをやってからほむまんを差し出した。

俺のポーズをまじまじと見た海未ちゃんは・・・俺が恥ずかしそうな顔をするとぷっと吹き出した。

海未「な、なんですかあなたまで、ふふ、気持ち悪いです!それに手の形が違いますよ」

紫音「ひ、酷いなあ俺も気持ち悪いけど、そこまでハッキリ言わなくても。恥ずかしかったんだから・・・でも緊張は消えた?消えてなくても大丈夫、あのファーストライブの衣装に比べれば、弓道なんてどうって事・・・あ痛っ」

ほむまんを差し出した手を海未ちゃんにつねられた。

海未「またあなたは!そんな事今思い出させないで下さい!!ほむまんはありがたく頂戴します・・・それで、あなたはどうだったのですか?」

海未ちゃんはほむまんを受け取り、明るくなった声で聞いてくれた・・・俺としてはあまり聞かれたくなかったが、正直に言うしかあるまい。

紫音「う~ん恥ずかしながら予選は4射中ったけど、決勝が3射で・・・。今日の決勝は8射皆中の人がたくさんいて負けてしまいました・・・師匠の前で恥ずかしい。俺も来年は絶対一位決定戦に残ってやる!!」

それを聞いた海未ちゃんは感心した顔を見せてくれた。

海未「予選4射的中ですか・・・私を超えてますね。なんだか二ヶ月ちょっとで抜かれてしまったようです。私も決勝、がんばります」

うまく師匠の緊張は消し、闘志を刺激して盛大に燃え上がらせたようである・・・目的達成だ。

最終的に海未ちゃんは決勝で4射的中を果たし、成績は都内の高校生女子個人で7位であった。

さすがだ・・・。

 

俺は海未ちゃんにお疲れメールを送った。

内容は「入賞おめでとう、次は負けない!」である。

しばらくして海未ちゃんから返信があり「いつも緊張をほぐそうとしてくれてありがとうございます。お陰様で元気が出ました」と書いてあった。

俺は「試合って目標ができて楽しいね、スクールアイドルにも試合があればいいのに」と返したところ「生徒集めですから試合ではないですが、発表の場はあると思いますからそちらもがんばります」と返ってきた。

次に発表の場があるとすれば、新曲発表だろうか?女子高だから中々俺が入れる機会がないが、可能であるなら見に行きたいものである。

 

その数日後、海未ちゃんから来たメールには「スクールアイドルにも試合があるそうです。ラブライブというらしいです」という内容があった。

 

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