ラブライブ・メモリアル ~海未編~ 作:PikachuMT07
総体の翌週、俺は紅音に頼み込みなんとか紅音と翠音の3人で今週末にケアルメイドカフェに行くことが決まった。
なんと週末は予約しないと入れないほどの人気になっているという。
もちろんミナリンスキーことことりちゃんの影響である・・・と紅音は言っていた。
またその週は海未ちゃんからメールがあった。
「紫音さん、こんばんは。一つ聞いても良いでしょうか?あまり好きではない方、味方と思えないような方が自分の欲する知識や経験を所有していた場合、力を借りたりしますか?」と書かれていた。
何の事だろうか?
俺は良く分からなかったので思った事を書いて返信した。
「こんばんは。良く分からないけど、目的によるんじゃないかな?是が非でも達成したい目標があって時間も足りないなら、効率重視で嫌いな人でも頭を下げなきゃいけない時あると思う。その人が相手にしてくれないとか嘘を教えるならダメだけどね」
10分ほどで返事があり「大変参考になりました。ありがとうございます」との事であった。
結局何の事だか詳細は教えてもらえなかったが、参考になったのなら良かったと思う事にした。
来たメールの返信ついでに、最近晴れた日もμ'sのメンバーが神田明神にこないのはなぜか聞いてみた。
返信は「テストで赤点を取らないためにみんなで勉強をしている」という事だった。
残念だがテストでは仕方がない・・・大学生や社会人に混じって神田道場で弓道の練習をするのも慣れたが、やはり海未ちゃんと肩を並べて練習したいものである。
そうメールで伝えるのは、かなり勇気が必要で・・・変に気を使わせるのも嫌だし、そもそも友達にそのようなメールを送って大丈夫だろうか。
熟考の末「俺も海未師匠に弓道のフォームと古文を習いたい。かわりに英語を教えるよ」と書いて返信した。
ぜひ実現して欲しいものである。
■□■
週末はケアルメイドカフェに向かった。
相変わらず紅音と翠音は服を合わせていた。
今回のコーデはセーラー服っぽいデザインのノースリーブブラウスに白いラインが一本入ったミニのプリーツスカートである。
色は紅音が薄いピンク、翠音は薄いグリーンで、二人とも胸にはタイの代わりに紫のリボンを着け、紺のカーディガンを羽織れるように持っていた。
ちなみに俺は相変わらずリーパイスのジーパンとバッシュ、Tシャツは赤のブーマである・・・妹達の視線は冷たい。
紅音「お兄ちゃん!ことり先輩に・・・ミナリンスキーさんに会いに行くのよ!もっとかっこいい服着ればいいのに・・・」
紫音「え~・・・そんな事したらお前達、怒るだろ・・・。そもそも下はこれしか持ってないんだよなあ~」
翠音「お兄さまの服・・・似合ってるけど~それが似合わない人ってあんまりいないよぉことり先輩はμ'sの衣装を作る人だからぁ・・・きっとカッコイイ服着ると、褒めてもらえるょ」
紫音「むむむ・・・すみません、今後の課題という事でお願いします・・・」
ご意見ごもっともではあるが現在の所有効な対策はまったく思いつかず、妹二人に呆れられつつ、ケアルメイドカフェに向かった。
店に着くとミナリンスキーさんが出迎えてくれた。
ミナリンスキー「お帰りなさいませ、ご主人さま、お嬢様!」
妹二人は到着した時から既にテンションMAX状態となり、ミナリンスキーさんとメイドとお嬢様の関係ではなく、姉妹のように打ち解けている。
またもやファッションの話になってしまい、俺は大変所在無い思いをする。
女性陣がしばらく服を褒めあった後、ようやく席に通された・・・そこで気付いた。
もしかして、俺がカッコ良い服を着ていれば、先ほどの会話に加われるのだろうか?
加わって欲しいから良い服を着ろ、という事なのだろうか?
いやいや待て待て、と俺は考え直す。
そもそも自分が良い服を着ているのと相手を褒める能力には関係がないのだから、会話に加わるには服とオシャレポイントを褒める能力の両方が必要なのだ。
ハードルは高い。
そんな事を考えていたらミナリンスキーさんが来た。
ミナリンスキー「紫音様、お食事はいかが致しますか?」
おお、かわいい。
彼女の胸は座った俺の視線とちょうど同じ高さにあるので、エプロンをしていてもはっきりと分かる膨らみが、意識せずとも目に入ってしまう。
俺はドギマギしながら注文した。
サインはいつもらおうか・・・そもそも今日はそれが目的なのだから、なんとしても手に入れたい。
少々の待ち時間の後、注文の品がミナリンスキーさんによって運ばれてきた。
今日は3人ともケーキセットで、チョコレートケーキとアップルシナモンパイとレアチーズケーキがテーブルに並んだ。
いつものように3人で回して食べていると、少し時間が空いたのだろう、ミナリンスキーさんが水を注ぎにやってきた。
翠音が明るく切り出す。
翠音「あのね~ミナリンスキーさん、お友達の亜里沙ちゃんっていう子がね!μ'sの大ファンなのぉ。亜里沙ちゃんはね、雪穂ちゃんのお姉さまの穂乃果さんも大好きなんだけどぉ、海未さんとことりちゃんがもっと大好きで、いつもPVを見てるんだょ」
ミナリンスキーさんも明るい顔で答えてくれる。
ミナリンスキー「わ~嬉しい!!じゃなくて~そうなんだ~!きっとμ'sのみんなも嬉しいと思う!」
翠音「それでねぇ・・・もし亜里沙ちゃんがミナリンスキーさんの事を知ったらすっごく喜ぶと思うんだけどぉ・・・ダメかな?」
翠音がそう言うと、ミナリンスキーさんは悲しそうな顔でその場にしゃがみ、座っている翠音の視線に目を合わせた。
ミナリンスキー「本当にごめんなさい。雪穂ちゃんの友達のその子は・・・音ノ木坂の生徒会長の妹さんだよね。ここのお仕事の事は・・・まだ教えられないの。ごめんなさいお嬢様・・・」
沈んだ表情になったミナリンスキーさんだったが、俺がこの会話の終了時を狙ってカバンから取り出した色紙を見て、すぐにまた明るい表情を取り戻した。
ミナリンスキー「そうだ、このお店は教えないで欲しいんだけど、その代わりことりちゃんのサインで良ければ今作れるから、その子に渡してもらえないかな?」
その提案は俺達にも大変ありがたく・・・持参の色紙にミナリンスキーのサインを二枚、ことりちゃんのサインを一枚、その場で書いてもらった。
ミナリンスキーさんが何故、音ノ木坂学院スクールアイドルのことりちゃんのサインを書けるのか、それはメイドカフェでは聞いてはいけないお約束である。
目的を果たしデザートも食べ終わり、そろそろ帰ろうかと考えていると、何やらレジから揉めている声が聞こえてきた。
ただごとではない雰囲気に、俺は妹達が立ち上がる前に一人でレジへ向かった。
見たところ、どうやら大きなカメラを持った暑苦しい感じのオッサンが、ミナリンスキーさんや他のメイドを撮影しようと、しつこく彼女達を口説いているようだ。
もちろん店内はメニューや飲食物などの許可されたもの以外、撮影禁止である。
ミナリンスキー「こ、困ります・・・本当にメイドは撮影禁止です。お断りさせて頂きます」
ミナリンスキーさんとメイドの先輩は、銀のお盆で上半身を隠し顔をそむけながら話しているので若干迫力がない。
それを良い事に、オッサンはカメラを構え「少しくらいいいでしょう~お盆どけて」などと勝手な事を言って、今にもシャッターを切りそうな気配だった。
少々怒りを感じた俺は、オッサンのカメラのレンズの前に手をかざしながら言った。
紫音「すみません。俺その娘の友達なんですけど、メイドの撮影がどうしてダメかって言うと、カメラに写れない事情がある娘がいるからなんです。親や恋人に秘密にしてもここで働きたい娘がいるんです。そういう娘が写真のせいで辞める事になったら悲しいでしょう?勘弁してやってください」
突然口出しした俺をオッサンはしばらく睨みつけていたが、メイドさん達がお盆を下ろし毅然とした態度でオッサンを睨みつけると「チェッかっこつけやがって」とかなんとか、捨て台詞を吐いて帰っていった。
ミナリンスキーさんも安堵した様子である。
ミナリンスキー「紫音くん・・・じゃなくて紫音様、ホントにありがとう!!・・・ございました!またぜひお戻りくださいね!」
ミナリンスキーさんの笑顔、素晴らしい・・・俺も安心し、笑顔で会計を済ませた。
さて、妹達が食べた分は徴収してやろうと紅音と翠音の顔を見ると・・・ジト目でこちらを見ている。
店の出口へ向かう際、背中を軽く小突かれた。
翠音「お兄さま・・・かっこつけすぎだょ・・・ここまでしたら翠音たちの分、出してくれないとかっこつかないょ」
紅音「お兄ちゃん・・・むしろここの支払いだけで済むとは思わないでよね・・・ことり先輩は絶対にお兄ちゃんのものにはさせないから」
紫音「いやしかし困ってる友達はだね・・・できる限り色々と・・・」
俺が言い訳を始めようとすると紅音と翠音はミナリンスキーさんに満面の笑顔を送り、楽しく帰りの挨拶をして店を出ていってしまった。
そうなると俺も手を振り店を出るしかなく・・・ミナリンスキーさんには引きつった笑顔を見られてしまった。
■□■
家に帰ると紅音と翠音にかなり嫌味を言われた。
やっている事は正しくて良かったのだが、いちいちことりちゃんを意識して言うのがイヤらしい、わざとらしい、目立ちたがりの兄は恥ずかしい、というのが二人の主張だ。
別にそんなことりちゃんばかり意識してはいないつもりなのだが・・・。
そのくせ妹達は一通り言いたい事を言うと「でもホントはかっこよかった」「自分があんな風に守られたかった」とべったりくっついてくるのだ。
二人に片腕ずつ抱きしめられると悪い気はしないのが、俺の弱い所だ・・・あれ、もしかして食事代をこれで誤魔化されてるのか?
この小悪魔ども、一体どうしてくれようと考えていたが、俺の思考はそのうち、ことりちゃんの人気が出すぎて今日のような事件が何度も起きないかを考え、心配になってしまった。
そしてそういう事はえてして当たるものである。