ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第17話 1,2,Jump!

夏休みに入った。

8月後半に弓道の関東個人選手権大会東京都予選があるため、俺は夏休み中もバイトとバランスをとりつつ弓道の練習をする事にした。

とはいっても部員一人の部活なので・・・気楽なものだ。

ただしそれは裏を返すと、上達するにはサボりたい自分を自分で律さねばならない、という事でもある。

そんな俺の心を助けてくれるのは海未ちゃんと道場で練習したい、という希望だ。

 

     ■□■

 

秋葉原での路上ゲリラライブ成功から夏休み突入までの数日、μ'sは朝夕とも神田明神での階段トレーニングを休止していたようで、俺は彼女達に会う事はできなかった。

梅雨の明けた東京はとんでもなく暑い。

俺は午前中の涼しいうちは弓道の練習、午後はエアコンの効いたミニストッパでバイトという流れにした。

しかもこれなら、μ'sが神田明神に朝集合したところにわざわざ通りかかる、という作戦が使える。

・・・と思って一人ほくそ笑んでいたが、夏休みに入って更に数日間、まったく俺はμ'sと会えなかった。

もちろん道場に海未ちゃんがくるという事もない。

どうしたんだろうと思っていた矢先、ついに朝の階段トレーニングが再開され、9人になったメンバーがワイワイ賑やかにトレーニングしている所に遭遇した。

 

紫音「おはよう~っす!あ、絵里先輩、にこ先輩、東條先輩、おはようございます。みんなしばらく見なかったね~どうしてたの?」

凛「しょ~兄ぃおっはよ~!凛たちはねえ!合宿に行ってたんだよ!海辺のね~真姫ちゃん家の別荘!!」

花陽「紫音さん、おはようございます。それでにこちゃんがカレーを作ってくれて・・・白いごはんとの相性が最高でした!」

ん??にこちゃん??

にこ「ふふん、そうよ花陽、にこは完璧なアイドルなのよ。料理ぐらいなんて事ないわ」

真姫「・・・エリー、にこちゃんが調子に乗る前に一言釘を刺して欲しいんだけど」

むむ?エリー?

絵里「真姫、カレーは確かに美味しかったし、しばらくはにこのターンが続くのだから、ここは仕方ないわね。ショーン、おはよう」

しょーん!?

ことり「紫音くん、おはよう。絵里ちゃん、いつ紫音くんの事、ショーンなんて・・・そんなに仲良くなったの?」

え、えりちゃん??

絵里「ふふ、オープンキャンパスの時にショーンは翠音ちゃんと一緒に来て、ショーンと呼べって挨拶で言ったのよ。ことりが心配しているような事はないわ」

東條「ふ~ん、何かみんなええなぁ。私も桜野くんなんて呼びたくないわ~。おはよう、しおんくん!私の事はのぞみ、でええよ!」

希先輩は近づいてきて、俺の顔を見上げるように言った・・・ち、近い・・・というか胸、デカ・・・。

穂乃果「あ~なんか希ちゃんズルイなあ~大人の魅力を使おうとしてない?ほら~しょーくん、目が泳いでるよ!」

の、のぞみちゃん!

海未「ほ、穂乃果!し、紫音さんはまた私達に差し入れを持ってきたようですから・・・ちゃんとお礼を言って下さい」

紫音「な・・・なんかみんなすっごい雰囲気変わったって言うか・・・μ'sの雰囲気が変わりましたね、すっごい打ち解けてると言うか・・・」

穂乃果「そうだよ!私達、全員タメ口で話す事にしたんだよ!」

ことり「あはは・・・正確にはタメ口じゃなくて、先輩って付けるの禁止って話なんだけど・・・なんか合宿ですっごく仲良くなっちゃって・・・」

真姫「なんだか未だに不思議な感じよね・・・。紫音さんはμ'sじゃないからそれぞれと話し合って、名前で呼ぶか決めてよね」

紫音「ははあ・・・なるほど。確かに雰囲気は良くなった気がしますよ・・・するね・・・え~と、俺は先輩がいるときはやっぱり丁寧語にします」

そう宣言すると俺は差し入れ(コストカで安く大量に仕入れたスポーツドリンク)を置き、週3日か4日はミニストッパで午後にバイトするのでハロパロでも食べに来て欲しいと言い残し弓道の練習に向かった。

かわいい娘ばかり9人が仲良くしている中にはなかなか入りづらい。

 

μ'sの朝練は週に2~3回あるようで、土日や雨の日は無しになるようだった。

どうやら歌の練習とダンスの練習は学校で行い、朝練は基本的には自主練としているようだ。

ことりちゃんと希先輩もバイトがあり、海未ちゃんは弓道、真姫ちゃんはピアノの練習がある。

他のメンバーも店番や飼育係、家族の事などそれぞれ忙しい様子で、できるだけ揃って練習するようにはしているようだが、毎日9人揃うのもなかなか難しいようだ。

海未ちゃんは学校にも弓道場があるため、μ'sの練習が学校である日はそちらで練習しているらしく、なかなか弓連神田道場には来なかった。

 

     ■□■

 

もうすぐ7月も終わろうというある日、μ'sの朝練に差し入れをしてから道場で弓道の練習をしていると、珍しく海未ちゃんがやってきた。

海未ちゃんと肩を並べて弓が引けるというのは、ここ何ヶ月かの俺の心のオアシスである。

ここぞとばかりに俺は練習の成果を存分に見てもらうため、集中して矢を放った。

ちなみに7月頭から強めの弓を新調し、そちらで練習している。

小1時間ほど二人で練習した。

俺はトータルで2時間以上の練習となり、昼飯の後バイトもあるため、名残惜しいが帰ろうとすると、海未ちゃんがもじもじしながら話かけてきた。

海未「あ、あの・・・紫音さん、少しよろしいでしょうか?」

紫音「はい、どうしたの海未ちゃん?」

海未「まず弓道の事なのですが・・・姿勢も狙いも見違えるほど良くなりましたね・・・肩と胸の筋肉が・・・その、相当たくましくなっているようです」

紫音「おお、海未ちゃんから褒めてもらえるとは嬉しい・・・師匠、俺ほぼ毎日、練習やってるからね。自分でも肩の筋肉は付いたの分かるよ。左手はタコも結構すごくできちゃって」

海未「ええ、本当に。努力されていると思います。次の大会は本当に負けてしまいそうです」

紫音「俺初めてだから良く判らないけど・・・なんか来月末の関東個人選手権は外した人から負けていくルールなんだって?でもハッキリ言って俺、海未ちゃんに勝つつもりで練習してるんで!気合入れてるよ!」

ライバル心を煽るように発言したつもりだったが、海未ちゃんは俯き加減で、あまり乗ってこなかった。

海未「私も練習しなければ、と思ってはいるのもののμ'sも忙しくて・・・そ、それで大変言いにくいのですが・・・」

紫音「なに?遠慮しないで言ってよ!師弟じゃなくて友達なんだから」

海未「・・・そ、そうでした。私が友達がいい、と言いいました・・・。それでは明後日、練習を邪魔して申し訳ありませんが、朝の時間を私達に頂けませんか?」

紫音「朝の時間って、午前中のこと?」

海未「具体的にはもっと早い早朝から、μ'sの・・・その、練習に付き合ってもらいたいのです」

紫音「え~とまあ弓道の練習は1日ぐらい無しでいいけど。午後はバイトだけど午前はOKだよ。俺で役に立つなら・・・」

海未「あ、ありがとうございます・・・それでは後ほど、集合時間などをメールしますね。翠音さんと紅音さんにも、ことりからお願いしてもらってます」

へ?あいつらも??しかしOKの返事をしたのに海未ちゃんはあまり嬉しそうではない。

むしろ最初よりもっともじもじしている気がする・・・。

俺は疑問に思いながら海未ちゃんに手を振って昼飯を食いに実家に帰った。

 

実家に帰ると紅音と翠音もことりちゃんからメールが入り明後日の午前が空いているか聞かれたらしい。

残念ながら紅音は部活の練習があって無理だが、翠音は可能と返事をしたようだ。

その後恐ろしく早い時間に秋葉原駅に集合するようメールが来た。

俺は了解の返信をしておいた。

 

     ■□■

 

約束の当日、俺は翠音と早朝の秋葉原駅にいた。

μ'sメンバー9人と雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんが集まり、全員で13名の団体である。

μ'sメンバーは一応部活の集まりという事で全員制服だった。

俺を含めた残り4人は私服である。

中学3年生の女子3名は夏にふさわしい薄着で、雪穂ちゃんは黒のデニムミニスカートと水色の地にピンクの水玉模様がついたタンクトップが可愛らしい。

亜里沙ちゃんはフリルが多用された白いノースリーブのミニワンピで、これも涼やかだ。

翠音は複雑な刺繍がある明るいグリーンのキャミソールに薄いピンク色のフレアミニスカートである。

さらに雪穂ちゃんは野球帽、亜里沙ちゃんと翠音はリボンが付いた大きめの麦わら帽子をかぶっている。

この早朝から7月末の東京は暑く、30度に達しているかも知れない・・・日焼け対策に帽子は必要だ。

ただ今日の我々はμ'sの単なるお手伝いさんなのに、ちょっと中学生達はオシャレ過ぎる気がする。

亜里沙ちゃんなんて、今すぐグラビアアイドルになれそうだ・・・雪穂ちゃんだって俺の高校に連れていけば間違いなく天使扱いだろう。

もう誰を好きになって良いか判らないくらい、かわいい娘だらけだ。

 

俺達は秋葉原駅から山手線で4駅移動し新橋で降りて、そこからゆりかもめに乗った。

俺と翠音はゆりかもめに乗るのが初めてで、はっきり言うとテンション上がりまくりだ。

早朝という事もありほとんどお客が乗っていないので、俺は運転席、というか先頭席に行った。

ゆりかもめは自動運転のため、普通なら運転席がある所にお客が座れるのである。

翠音と並んで先頭席からの景色を興奮しながら見ていると、隣に穂乃果ちゃんが座った。

穂乃果「しょーくんってさ!いつもはなんか落ち着いた感じだけど、こういう時はやっぱり男の子だねえ~」

紫音「いや、穂乃果ちゃん、だって景色いいよ!海だよ!レインボーブリッジだよ!良い眺めだね!」

するとそんな俺を見ていた穂乃果ちゃんは何かを思いついたようで、顔がにま~~んと笑った。

穂乃果「ねえねえみおんちゃん!!しょーくん借りるね!」

穂乃果ちゃんは俺の腕を取り、残りのメンバーがいる所まで引っ張っていった。

よく見るとこの先頭車両には、他のお客は乗っておらず我々だけである。

穂乃果ちゃんは全員の前に俺を連れ出すと、天使のように微笑みながらこう言った。

穂乃果「ねえしょーくん、翠音ちゃん抜きの私達の中で、一番かわいい女の子、誰?」

紫音「な!?な、なんでそんな事聞くの?」

突然の意表を突く質問に俺が少し大きな声を上げると、全員がこちらを見た。

ことりちゃんは心配げ、海未ちゃんはすでにお怒りの顔になっている。

穂乃果「ねえ!ねえ誰?誰よ?誰が一番かわいい?ねえ教えてよう!!」

紫音「い、い・・・ちょっとそれ・・・今ここで言わないとダメ?」

穂乃果「もう!誰がかわいいかも言えないの?だらしがないなあ!ねえ、私でしょ?一番かわいい女の子は穂乃果だよ!って言ってくれたら・・・しょーくんに私の下着、見せてあげる!」

なあああ・・・なんだってえええええ!

俺はどう反応していいか分からず焦りまくって回りを見た。

ため息を付いているのが絵里先輩、にこ先輩と真姫ちゃん、雪穂ちゃん。

苦笑いしているのがことりちゃんと花陽ちゃん。

面白そうにしているのが希先輩と凛ちゃんで、亜里沙ちゃんはポカンとしている。

爆発寸前なのは海未ちゃんである・・・誰も助けてくれない。

穂乃果「ねえねえ!!しょーくん、私の下着、見たくないの?私ってそんなにかわいくないの?」

紫音「い、いやかわいいよ、俺ホント穂乃果ちゃんの事大好きだし・・・い、一番かわいいって思ってるよ・・・」

穂乃果「ホント!?やったぁ!!でもホントはさぁ、下着を見せないでも穂乃果が一番かわいいよ~って、最初から言って欲しかったなあ!でもご褒美に、見せてあ・げ・る!!」

そのまま穂乃果ちゃんは自分の制服のスカートを自分でパッとめくった。

紫音「おわわああわわ・・・!」

俺は・・・体裁を取り繕うべく一応腕を振ってみたが、やっぱり欲望には勝てなかった。

俺は片目を開けて穂乃果ちゃんのスカートの中を見た。

オレンジと黄色のボーダーラインの下着と白とオレンジのヒラヒラが見えた・・・ヒラヒラ?

海未「ほ~~~の~~~か~~!!」

雪穂「お姉ちゃん、そういうはしたないのやめたほうがいいよ!」

凛「エッチにゃ!!しょ~兄ぃ、穂乃果ちゃんの下着見たにゃ!凛もやる!!」

今度は凛ちゃんが俺にスタスタと近づいてきて自分のスカートを持ち上げた。

凛「どう!しょー兄ぃ~凛もかわいい?どきどきする??」

もうガン見するしかあるまい。

凛ちゃんは赤い・・・これはもう分かる・・・赤い水着だ。

穂乃果「もう!しょーくんのエッチ!凛ちゃんのパンツまで見たな!私のパンツだけじゃ満足できないの?」

穂乃果ちゃんは俺の腹を指先でつんつんしている。

ことり「ほ、穂乃果ちゃん凛ちゃん、もうやめてあげようよ、紫音くん困ってるよ」

真姫「そうよ穂乃果、凛も。その悪戯は良くないわ。あれじゃあほぼ強制じゃない。でも紫音さんも紫音さんよね。もっと毅然と断らないと・・・きゃあっ!!」

真姫ちゃんは席に座らず立ってつり革に掴まり目を閉じて話していたため、話している最中に自分のスカートが希先輩によって完全にまくり上げられているのに気付くのが遅れた。

真姫ちゃんはピンクと赤のボーダーの水着だ。

にこ「ちょっとあなたたち、いい加減にしなさいよ。今日は私のための日なんだから、主役は私なのよ!私よりかわいいとか目立つとか有り得ないんだから。紫音、あんた女子にいいように遊ばれてないで少しは怒りなさい!水着くらいで鼻の下伸ばしてないでよ!」

言い終わったところで希先輩はにこ先輩のスカートも一瞬にしてめくり上げた。

こちらは薄いグリーンと濃いグリーンのボーダーである。

にこ「の、のぞみ~~!殺すわよ!」

希「だってにこちゃん主役なんやろ!主役はパンチラくらいガンガン見せんとね!」

真姫ちゃんとにこ先輩はそれで希先輩を説教し始めた。

穂乃果ちゃんと凛ちゃんはいつの間にか花陽ちゃんのスカートをめくろうしており、花陽ちゃんの必死の抵抗にあっている。

花陽「い、いやですっ!水着でも、スカートめくるのは恥ずかしいですっ!めくらないで~~誰か助けて~!!」

その花陽ちゃんの一言で海未ちゃんがブチ切れた。

海未「い、いい、いい加減にして下さい!!ここは電車の中ですよっ!!!」

それでようやく騒ぎは収まり一部はシブシブ、一部はため息を付きながら席に座った。

海未「穂乃果!もう、とにかく破廉恥な事はやめて下さい!」

穂乃果ちゃんは憮然とした顔をしている。

海未ちゃんは俺を振り返り・・・仁王像のような顔で言った。

海未「紫音さん!真姫も言ってましたがそもそもあなたが毅然としないのがいけないんです!穂乃果の下着なんて見たくないってどうして言えないんですか!あなたがこの騒ぎを起こしたようなものです!だいたいあなたという人は・・・」

穂乃果ちゃんは俺の前に立って説教している海未ちゃんの背後にこっそりと忍び寄った・・・説教に夢中の海未ちゃんはまったく気が付かない。

海未「穂乃果がふざけて言っているのは判っていたでしょう!それなのに、どうして・・・」

そして予想通り海未ちゃんのスカートを全部めくった。

・・・白だった。

俺は自分の頭のほうも真っ白になり自分でも顔に熱が上ったのが分かった。

海未「きゃあああああ!!!」

海未ちゃんは瞬時にしてしゃがみこみスカートを押さえた。穂乃果ちゃんは口笛を吹くマネをしている(でも音は出ない)。

凛「しょ~兄ぃ!顔真っ赤にゃ!か~わいいにゃあ!」

海未ちゃんはゆっくりと立ち上がった。

まるでドス黒いオーラが見えるようである。

海未「紫音さん・・・見ましたか?」

紫音「み、見てません!何も見てません!!」

凛「嘘にゃ~!しょ~兄ぃ顔、真っ赤だもん!」

海未ちゃんは渾身の右ボディブローを俺の腹に見舞った。

紫音「ぐ、ぐほぅ!」

すでに穂乃果ちゃんは逃げる気マンマンで、かばんを持ってゆりかもめのドアの前で、開いたら飛び出せるよう足踏みしている。

海未「ほのか・・・少しお話があるのですが・・・」

絵里「さ、さあほら、みんなもう駅に着くわよ!お台場海浜公園駅だわ!さあ降りなきゃ!翠音さん、悪いけどショーンが降りるの手伝ってあげてね、海未、と、とりあえず後にしましょうか!」

海未ちゃんの表情を見たμ'sと愉快な仲間達は絵里先輩の指示の下、そそくさとゆりかもめを降りる支度を始めた。

間もなくゆりかもめはお台場海浜公園駅に到着し、皆は我先にと降りていった。

海未ちゃんは迫力満点の歩き方でそれを追う。

俺は痛む腹をさすりながら何とかゆりかもめを降りた・・・うう・・・痛いけどちょっと幸せ。

 

早朝のお台場海浜公園は確かに閑散としていたが、まるで人がいないという事でもない。

散歩やジョギングの人々、すでに出勤しようとしている人、清掃の人などがチラホラいる。

絵里先輩によると今日はなんと、PVの撮影という事で集まったらしい。

本来は公園側に許可を取るべきかとも思ったようだが、申請して許可が出るまで時間がかかる事が一つ。

公園で遊ぶ人々は自由に自分達を撮影しているのだから、他の人の迷惑がかからない時間帯にササっと撮影しまえばいいか、という判断が二つ目の材料となり今日に至ったとの事だった。

まさにゲリラPV撮影である・・・良いのかな・・・。

公園に着くと穂乃果ちゃんはいの一番にブラウスとスカートをその場に脱ぎ捨て、水着となってしまった。

穂乃果「雪穂~!服畳んでおいて!みんなも雪穂に制服預けてね」

雪穂「もう!信じらんない!お姉ちゃん!普通の人は畳むの自分でやるんだよ!」

既に大騒ぎと化しているが、そんな中女子力が高いことりちゃんから一言あった。

ことり「紫音くんごめんね、みんな水着を中に着てるんだけど・・・恥ずかしい子もいるから、ちょっと後ろ向いててくれないかな?」

断れるはずもなく(だが断る!と言ってみたい)、俺が後ろを向くとひとしきりきゃあきゃあ声が聞こえ、その後、振り返る許可が出た。

何のことはない、お台場海浜公園には着替える施設がなく、短期決戦撮影のため全員が水着の上に制服を着て電車に乗っていたのである。

・・・と分かってはいても、やっぱりちょっと興奮してしまう。

少なくとも花陽ちゃんと絵里先輩と希先輩は、今すぐヤンマガのグラビアに掲載できるレベルのプロポーションである。

残りの6人も半年近くグラビアを見続けた俺にとっては、かなり上位のレベルだと分かる。

神田明神の階段トレーニングが効いているに違いない。

海未ちゃんは先ほどまでのお怒りモードが鎮火され、今は恥ずかしそうに背を丸め手を前で組んでいる。

頭には白いカチューシャを付けており・・・これはレアアイテムだ。

また海未ちゃんの水着は白に紺のグラデが入っていて、彼女の雰囲気にとても似合っている。

他のメンバーもハイビスカス、サングラス、ターバン、シュシュ、リボンなどで髪を彩り、ファッションタトゥやチョーカー、デニムショートパンツやオーバーオール、シースルーレース付きのパレオやフリルなどのアクセントで単なる水着とならないような工夫を凝らしていた。

どの娘も大変かわいく魅力的でたまらず見惚れていると、にこ先輩の口上が始まった。

にこ「さあ、合宿終了から約一週間!ついに来たわよ!この宇宙ナンバーワンアイドルにこにーのセンター曲のPV撮影が!!」

今日はにこ先輩がセンターのようだ・・・まずは話を聞いて情報を集めよう。

にこ「紫音、にこの誕生日はいつか分かる?」

情報を集めるつもりが突然振られた俺は、あたふたして花陽ちゃんを見た。

両手で7を作ったあとVサインが二回・・・花陽ちゃんナイス!

紫音「7月22日です!」

にこ「あら、よく勉強しているじゃない。まあ宇宙ナンバーワンアイドルの誕生日は常識よね。そしてまだプレゼントは募集中よ」

うむむ、後でハロパロをプレゼントしよう。

にこ「で、にこに~の誕生日、あんた達は合宿でそれをお・も・い・だ・し・て、にこにセンター曲をプレゼントしてくれたの。でもそのプレゼントはまだ未完成なの!この撮影を完璧に決めて、初めて成立するのよ」

ははあ、なるほど・・・誰もにこ先輩の誕生日を知らずに合宿し、プレゼントが用意されてなかったからセンター曲をプレゼントする羽目になったのだろう。

にこ「夏休みだって~のに8月に入ったらあんた達、なかなか9人集まれる日がないじゃない!だからなんとか一週間で集中して練習したのよ!今日はその本番なんだから!」

にこ先輩は息を吸ってさらに演説を続ける。

にこ「一般人がギャラリーしても困るから、この早朝に短く3回だけ撮影して撤退って事で集まったのよ。私へのプレゼントなんだから3回しかなくても絶対に決めるわよ!花陽!一週間は練習したんだから!間違えましたじゃ済まないわ。3回とも本番!ノーミスで踊りなさい」

花陽「は、はいっ!!」

にこ「紫音!」

紫音「は、はいっ!!」

にこ「いい?このPVはにこにーセンター曲っていう最も大事な面があるけど、それだけじゃないの。この前のホコテンの『Wonder Zone』のPVも良かったけど、あれじゃあまだまだインパクトが足りないの!ラブライブ出場のためのスクールアイドルランク20位以内、それを達成するためのPVが必要なのよ!」

あ、なるほど・・・。

にこ「恥ずかしがってる海未、真姫!いい?アイドルが水着で踊るPVなんてね!ネットを探せばゴロゴロ転がってるのよ!はっきり言って今更よ!だから水着PVでインパクトを出すにはエロよ!エロなのよ!!」

え、ええぇ~??

にこ「紫音!あんたはさっき穂乃果にこれでもかってほどエロを注入されたんだからね!くっそエロいPVを撮るのよ!私達を男の嫌らしい目線で、舐め回すように撮りなさい!襲いかからんばかりに撮るのよ!」

紫音「ええ~~と・・・」

にこ「海未!真姫!あんた達もなけなしのセクシーさをフル稼動させるの!恥ずかしがってる場合じゃないわ。何度も言うけどこれはにこにーがセンターの曲!にこにーの誕プレの曲!エロさ全開、にこがセンター、紫音はこれをしっかり守るのよ!そしてこの曲で20位以内に入るの・・・にこって完璧ね!」

紫音「・・・あはは」

にこ「それじゃあ始めるわよ!」

俺は手を挙げた。

紫音「あ、あの~~・・・」

にこ「なによ!これだけ説明したのにまだ分からない点があるの?仕方ないわねえ!言ってみなさいよ」

紫音「え~とにこ先輩がセンターならすっごいかわいいPVが撮れる・・・撮る自信があります」

にこ「当たり前じゃない。それが?」

紫音「ですが・・・あんまりエロくはならないかなもな~と・・・エロやセクシーを強調するなら絵里先輩か希先輩がセンター・・・もしくは花陽ちゃんならエロカワイイの王道が・・・」

にこ「・・・紫音、まさかあんた、このにこにー様がエロくないとでも言うつもり??」

紫音「いや!決してそんな!!エロい、エロいですよ!」

にこ「・・・そうよ、あんたの妄想力で、にこにーの限界までエロカワイイPVを撮りなさい!では改めて、バックダンサー達、行くわよ!」

にこ先輩の長い演説を水着で聞いて苦笑いしていたμ'sメンバーは、バックダンサーと言われた事は流してライブに入るようである。

今回の役割は雪穂ちゃんが荷物番、亜里沙ちゃんが音響、翠音はダンスにずれがないかチェック(撮影したビデオを見直す時間がないし鏡もないので)、そして俺は3回だけのライブを隅々まで撮影する係である。

μ'sの面々は円陣を組んだ。

穂乃果「1!」

ことり「2!」

海未「3!」

真姫「4!」

凛「5!」

花陽「6!」

にこ「7!」

希「8!」

絵里「9!」

全員「μ's!ミュージック~スタート!」

 

(スクフェス「夏色えがおで1,2,Jump!」プレイをおすすめ!)

 

曲が始まってしまうと、俺はどうやってエロカワイイPVを撮ろうか、なんて事は綺麗さっぱり忘れてしまった。

この曲、にこ先輩の誕生日が分かってから歌詞も曲も振り付けも考えたのだろうか?

すごい完成度である。

「START:DASH!!」も「僕らのLIVE 君とのLIFE」も大好きだが・・・この曲、これまでで一番好きかも知れない。

俺はノリノリで撮影した。

1回目はにこ先輩を中心とし9名のフォーメーションが分かる全景を中心に撮影した。

2回目はメンバーそれぞれのバストアップ、下からあおるような絵や横顔とバストを撮影した。

3回目は背後にも回り全員のヒップの動きやフォーメーションの変化に合わせ回り込む絵を撮った。

夢中だった。

海未ちゃんがどこにいるのか意識できなかった。

それほどまでに曲もダンスも全てが良かったのである。

特に真姫ちゃんが高い声で歌い上げるサビは、圧巻だった。

大変に美しい・・・何度も聞きたいと思わせるものだ。

夢のような時間はそれでもたったの20分チョイである。

4分半の曲を3回、連続で踊り撮影は終了した。

9人は荒い息である。

特ににこ先輩はセンターの気合が伝わってくるほど、溌剌としたダンスであった。

さっさと息を整えた絵里先輩から「じゃあ、撤収するわよ!」と言われ、9人は制服を水着の上に身に付けた。

俺は後ろを向いていたが、良く考えるとこの着替えシーンを撮影しておけば一生の宝物ができた可能性に思い至り、ドジな自分を恨んだ。

 

     ■□■

 

ゆりかもめから山手線に乗り換え秋葉原まで戻ってきても、まだ8時前だった。

この後μ'sメンバーは、今撮影した画像を編集しPVにする作業を、午前中に行うようである。

後からCGで、背景を観覧車上空に花火が上がる夜景に変更したいそうだ。

俺と中学生は解散かな、と思ったその時だった。

海未「紫音さん、皆さん、少しお話、よろしいでしょうか?そこのハンバーガー屋さんにでも入りましょう」

海未ちゃんがいつにも増して、丁寧な低い声で言った・・・嫌な予感しかしない。

13人全員でゾロゾロとハンバーガー屋さんに入った。

 

案の定、俺と穂乃果ちゃんは海未ちゃんの前に座らされた。

海未ちゃんの両脇には、雪穂ちゃんと翠音が仁王立ちである。

海未「穂乃果、紫音さん、何を言われるか、分かっていますね?」

穂乃果「ええ~?何のこと?穂乃果別に悪い事してないよ?」

おおお~穂乃果ちゃん、強気!

雪穂「は~~っ、お姉ちゃんあのね、電車の中で男の子に迫ったあげく、自分でスカートの中見せるなんて恥ずかしいと思わないの?ヘンタイだよ?」

穂乃果「え~っ!だってさ~中は水着で誰に見せてもいいもんだし~!ちょっとかわいいって思ってもらえるかと思ったんだよ~!そんなに悪い事かなあ?」

穂乃果ちゃんの反撃に凛ちゃんが加勢する。

凛「えっとね、穂乃果ちゃんに助け舟を出すと~。穂乃果ちゃんは別にしょ~兄ぃの事誘惑しようと思ったわけじゃないにゃ。今日はにこちゃんがセンターだし、水着のデザインは一応揃ってて一人だけ目立つの難しいから、しょ~兄ぃに皆よりちょっと早く見せて褒めてもらいたかっただけなのにゃ」

穂乃果「そう!そうだよ!それで見せるなら笑いを取れたほうがいいかな~って・・・」

海未「そんな笑いはいりません!!しかも電車内ですよっ!とにかく自分のことばかりでTPOをわきまえていません!!しかもスカートを、も、持ち上げるなんて、破廉恥です!!ダメです!!絶対!」

穂乃果「もう~・・・分かったよ~」

海未「紫音さん、あなたもあなたです!穂乃果がふざけて言っている事は分かったでしょう!なぜ毅然と断れないのですか!!」

うう、どう出るかなあ・・・。

紫音「いや・・・だってさ・・・穂乃果ちゃんに『お前の下着なんて見たくない』って言ったら傷付けちゃうかも知れないし・・・穂乃果ちゃんにああいうセリフ言ってもらうと嬉しいし、ドキドキするし・・・まさかホントに下着が見れるとは思ってないし」

俺が小さく言い訳すると翠音が声を出す。

翠音「お兄さま、ここにお姉さまがいなくて本当によかったけど、間違いなくお姉さまだったら気絶するくらい怒ってると思ぅ。お兄さまは穂乃果さんを傷つけないために言ったのかも知れないけど、お兄さまがそれを言うと他の人が傷ついたり恥ずかしい思いをしたりするんだょ。だからあの場ではダメなの」

ううう翠音には勝てない。

紫音「はい、すみませんでした・・・」

絵里「海未、二人とも反省しているようだし、その辺で許してあげたら?今日はみんなで集まれるのが午前中しかないから早く学校に戻らないと」

絵里先輩も助け船を出してくれたようだ。

海未「・・・仕方ありません、絵里がそういうならこの辺で終わりにしたいと思います・・・が、穂乃果、最後に今日の反省点を自分の口でもう一回言って下さい」

穂乃果「え~~!うんとね・・・電車の中では男の子を誘惑しない、下が水着でもスカートはめくらない・・・あとなんだっけ?」

海未「自分の都合ばかり考えない事です!もう!穂乃果、紫音さん、反省のため神田明神経由で走って学校に行って下さい!」

紫音「えええ!俺も??」

海未「当たり前です!あ、あなたのせいでみんな恥ずかしくて傷ついたんですよ!」

紫音「うう、すみません」

穂乃果「へ~んだ!海未ちゃんの鬼ババ!海未ちゃんのオデコなんかシワだらけなんだから!その綺麗な髪が抜けても知らないよ~」

う~む、穂乃果ちゃんは海未ちゃんを怒らせる天才だな・・・。

これでは俺がいくらがんばっても、海未ちゃんと仲良くなれるわけがない・・・でも俺はあきらめないけどね。

海未「ほ~の~か~!!待ちなさい!!」

穂乃果「べ~!じゃあマラソンで学校に戻ります!しょーくん行こっ!」

紫音「はは、じゃあ翠音、俺も走ってくるわ。では先輩方、皆様すみませんでした、反省します!走ってきま~す!」

凛「あ~あ、穂乃果ちゃんもしょ~兄ぃもそんなに悪い事してないと思うけどにゃ~かわいそうだにゃ~」

海未「凛!なにやってるんです?あなたもです!あの二人と走ってきなさい!」

凛「にゃ!?何でにゃ!!」

海未「自分でスカートを持ち上げたのはあなたと穂乃果だけですっ!!」

 

俺と穂乃果ちゃんと凛ちゃんは3人でだらだらと走り、ミニストッパに寄って「俺達は悪くない」という話で盛り上がりながら大盛ハロパロを食べた。

更ににこ先輩の誕生日プレゼントとして大盛りハロパロを買い、3人で走って音ノ木坂学院に行った。

そしてメモに「にこ先輩、誕生日おめでとうございます。ハロパロ食べて下さい。今日のライブ、最高にエロかっこ良かったです」と書き、ハロパロと一緒に穂乃果ちゃんに託した。

メモはミニストッパのレシートの裏というのがなんとも情けないが、気持ちは伝わったと思う。

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