ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第20話 ことりの悩み

夏休みが終わり9月、新学期を迎えた。

俺は弓道関東個人戦大会一週間前でもある。

朝練を継続し、登校前の1時間でも集中して練習するようにした。

少し早く道場に入るようになったため、μ'sの朝のトレーニングが行われているのかは判らなくなった。

 

大会5日前の月曜からは海未ちゃんが道場に顔を出すようになった。

俺がバイトの日は30分くらいしか一緒にならないが、バイトがなければ2時間は一緒に練習ができる。

これは幸せだ。

だがこちらも海未ちゃんの横顔に見惚れている場合ではない。

何しろ東京地区代表選手の一人なのである。

とにかくがんばろう。

 

海未ちゃんの様子を見ている限りでは、ことりちゃんの留学に関しては何も知らない様子であった。

海未ちゃんから少し話を聞いた所によると、μ'sのスクールアイドルランクは19位になったが、もう少し上を狙いたいので文化祭では新曲を発表する事に決まったらしい。

A-RISEの7日間連続ライブもきっかけになっているようだ。

つまり海未ちゃんは授業が終わると学校の弓道場に少しだけ顔を出し、すぐにアイドル研究部の部室に戻り既存曲の歌とダンスの練習をする。

それが終わってから弓道神田道場で弓道の練習をして、家に帰ったら作詞をしているらしい。

まさにスーパーガールである。

俺は練習後に海未ちゃんに話しかけた。

紫音「海未ちゃん練習お疲れ。少し疲れが見えるよ。作詞のほうは終わりそうなの?」

海未「ああ、お疲れ様です。そうですね、学校の宿題や予習もしないといけませんし、疲れているかもしれません。ご心配させてしまい、すみません」

紫音「いや、師匠は師匠という事もあるけど、今はライバルだから。ライバルが体調不良じゃ、こっちも勝っても嬉しくないし。作詞は手伝えないけど、終わってから大会に入ったほうがいいかなって」

海未「そうですね、作詞の方は『ススメ→トゥモロウ』というのと『No brand girls』という二本を作りました。あとは真姫の曲に合わせ細部を調整するだけです。そしてどちらか良い方に振り付けを作ります」

紫音「すごいね、二本も作詞したんだ・・・衣装は?今までの服?」

海未「いえ、『START:DASH!!』、『僕らのLIVE 君とのLIFE』の衣装は9人分あるのですが、他に9着あるのはメイド服だけです。『これからのSomeday』に希と絵里の分を追加する手もありますが、いずれも暑苦しくイメージに合わない、となり新規作成する事になりました」

紫音「ええ?文化祭って9月の第三土曜、日曜だよね?実質二週間しかないじゃん・・・それまでに9着って、ことりちゃん、徹夜とかしなければいいけど・・・」

海未「そうですね・・・私も関東大会がなければことりを手伝うのですが・・・。あの子には負担をかけてばかりです。それにもう一つ重大懸案事項があります」

紫音「・・・まだあるの?」

海未「実はアイドル研究部は、文化祭での講堂の使用抽選を外してしまい・・・屋上でライブをする事になったのですが、簡易ステージをどう作るか、まったく決まっていません」

紫音「え~!って俺音ノ木坂の屋上行ったことないけどさ・・・屋上って普通何もないよね?大変だ・・・」

海未「とにかく穂乃果はラブライブ出場にすごく思い入れがあってがんばっていて・・・外に聞こえるくらい大声で歌って人を呼べるから良い、と言っているのですが・・・お天気も心配です。二日間ありますから」

紫音「そうだね・・・でも、そっちも心配だろうけど、せっかく代表になったからさ!まずは弓道大会がんばろうよ!それから思い切りことりちゃんを手伝って、ステージの事も考えよう!俺も手伝えればいいんだけどね~」

海未ちゃんの表情は硬めである。

紫音「海未師匠、大会までにちゃんと寝て、集中できるようにして下さいよ」

海未「・・・はい、そう致します」

海未ちゃんの表情は明るくなく・・・なんだか心配になる。

 

     ■□■

 

翌日、ミニストッパにまたことりちゃんがやってきた。

俺のバイト終わりを例によって待っている。

バイトが終わると俺は急いでことりちゃんのいるテーブルに向かった。

ニーソックスにピンクのリボンを取り付ける作業をしているようだ。

紫音「ことりちゃん、お待たせ~。これ、新曲の衣装?かわいい色だね!さすがことりちゃん」

ことり「紫音くん・・・ことり・・・どうしたらいいのか・・・分からなくて」

せっかく服を褒めたのだが・・・こんな泣き出しそうな顔をしたことりちゃんは初めて見るかもしれない。

いや待て、俺はズバリことりちゃんの泣き顔をこの店のこの場所で見ている・・・あれと同じくらい恐ろしい、悲しい事があるのだろうか?

紫音「・・・その顔は・・・衣装が全員分できるとかの話じゃなさそうだね。留学の話が進んだの?」

ことりちゃんはこっくりと頷いた。

ことり「あの日、紫音くんに言われた事、お母さんに全部言ったの。今行く必要あるのかな?って。でも・・・逆に今行かない理由を聞かれちゃったの」

紫音「今行かない理由?」

ことり「だってね、μ'sの活動はオープンキャンパスの評判が良くて、廃校はとりあえずなくなったし、ラブライブは今の私達の目標だけどA-RISEには絶対に勝てないから所詮趣味の延長だって・・・。ケアルのバイトの事はお母さんには秘密だし」

ははあ・・・読めてきたぞ。

ことり「穂乃果ちゃんとも散々遊んだでしょって。もう遠く離れても親友である事は変わらないんだから、将来の為に今決心する事も大事だって・・・」

紫音「分かったよ。留学するよりも大事な事や、日本でしかできない事はこれなんだよって、お母さんに言えなかったんだね・・・」

ことりちゃんはこっくりと頷いた。

紫音「そっか・・・ことりちゃんは服やデザインよりもっと好きな事ってないの?それが日本でしかできない事なら一番いいんだけど」

ことり「・・・あるよ」

紫音「えっ何なに?」

ことり「・・・好きな人がいるの。最近お洋服の事よりも考えているかも・・・」

紫音「・・・好きな人かぁ・・・。それ、確かに日本にいたほうが有利だけど・・・お母さんに通じるかな・・・」

ことり「・・・通じないと思う。もしその人と付き合ってても、将来のほうが大事って言われちゃうと思う・・・」

ですよね~。

紫音「穂乃果ちゃんには話したの?海未ちゃんは弓道の練習で会った時は知らない様子だったけど」

ことり「・・・何度も・・・何度も言おうとしてるんだけど・・・穂乃果ちゃん新曲にすっごい入れ込んでて・・・なかなか聞いてもらえなくて」

紫音「まだ言ってないの?」

ことりちゃんは何度目かの頷きを返した。

紫音「そっか~。ことりちゃんのお母さんって、音ノ木坂の理事長なんだよね?」

ことり「うん」

紫音「俺の高校の都市伝説でさ、音ノ木坂の現理事長は宇宙が白く見えるくらいの数の宇宙怪獣が攻めてきても撃退できるくらいすごい人だっていうのがあって」

ことり「・・・し、紫音くん?何言ってるの?」

紫音「まあとにかくそんな強そうな人にウソや中途半端な事を言っても通じないと思うんだよね」

ことり「・・・それは、そうだと思う」

紫音「だから・・・ホントに正直に、好きな人がいるから日本に残りたい、デザインよりも好きなんだ、って伝えるのはどうだろう?ホントにデザインより好きなんだって理解してもらえれば、留学の話はなくなる気がするんだけど」

ことり「・・・そんなにうまく行くかなあ・・・」

紫音「それはその人の事どれだけ好きだ、ってアピールできるかに寄ると思う・・・っていうかちょっと待って。ことりちゃん、ホントは留学したいの?したくないの?俺、ずっとしたくないから相談を受けてると思ってたけど・・・合ってる?」

俺がそう聞くと、ことりちゃんは本当に苦しそうな顔をした。

ことり「・・・あのね、正直に言うと迷ってるの。ことりの中でデザインを勉強したい気持ちはあるの。挑戦したい気持ちも。それは穂乃果ちゃんにもらった挑戦する気持ちなの」

ことりちゃんは下を向いていた顔を上げ、俺の目を見ながら言った。

ことり「でも今、μ'sのみんなが大好きで、他にも大好きな人がいて、毎日楽しくて、衣装も作れて・・・これを置いて行ってしまっていいのかなっていうのがもう一つの気持ち」

紫音「そっか・・・そのもう一つの気持ちがすごく大きいか、すごく小さいかならすぐ決まるんだろうけど・・・俺はことりちゃんと別れたくないから、今が楽しいのを応援したいな」

俺がそう言うとことりちゃんは楽しそうに笑った。

ことり「・・・ふふ、別れたくないって、まるで付き合ってるみたい」

紫音「あはは、恐れ多いね。でも迷ってるって事はことりちゃんの中でまだ、今が楽しい気持ちと留学したい気持ちが半々なんだよ。だから早く穂乃果ちゃんに言いなよ。絶対・・・」

俺は穂乃果ちゃんの口ぶりを真似て口を尖らせながら言った。

紫音「何言ってるの!ことりちゃん!私がμ'sやりたいんだから、勝手にどっか行っちゃだめだよ!・・・って言われて迷えなくなっちゃうよ、強制居残り」

ことり「ふふっ、似てる~」

俺達はあははと笑いあった。

ことり「・・・穂乃果ちゃんには、文化祭が終わった打ち上げの日に、絶対に相談するね」

紫音「そうだね、絶対相談しよう。じゃあそろそろ遅いし、帰ろうか」

俺達は店を出て、俺はことりちゃんを家まで送っていった。

 

     ■□■

 

実家に帰ると紅音がとたとたと走ってきた。

紅音「お兄ちゃん、大変大変。ケアルカフェにミナリンスキーさんのシフトがないの!」

当然のように今ことりちゃんと会っていた事は隠し、言葉を返す。

紫音「ああ、そりゃ文化祭があるから、それでだろ?」

紅音「ううん、文化祭の後もシフトが入ってないの。来週ミナリンスキーさんの・・・ことり先輩の誕生日なの。私、お店でプレゼントを渡そうと思って、お店に聞いたら・・・シフトが入ってないって」

確かに実際に留学が決まると準備があるから、シフトは守れなくなる。

つまり残留が決定しないとシフトは入らないという事か。

紫音「・・・そりゃ悲しいね・・・っていうかさ、ことりちゃんの誕生日っていつなの?俺全然知らないんだけど」

紅音「9月12日よ。お兄ちゃん、そこは紳士としてプレゼントしないといけないわ。しっかりお願いね。私が学校で渡してもいいわ」

うむ我が妹よ、大切な情報感謝である。

しかしその日は文化祭2日前ではないか・・・どうなる事やら。

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