ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第28話 宇宙No.1アイドル

翌日はラッキーな事に秋分の日で学校は休みだった。

俺は翠音を連れてお萩を買いに穂むらへ向かった。

前回月見団子を文化祭の二日目に買いに行って以来である。

あの日はやっぱり穂乃果ちゃんの熱が引いておらず、穂乃果ちゃんのお母さんと世間話をして帰ってきたんだっけ・・・。

衣装の穂乃果ちゃんは下にアンスコを履いていたはずだが、だっこやらおんぶやらで俺は彼女の柔らかいところを触りまくってしまったので、一人で気まずかったのを覚えている。

あの衣装、水着に近いヘソ出しだったし・・・穂乃果ちゃん、胸も普通にあるからなあ・・・大きくはないけど小さくはないし・・・思い出したら恥ずかしくなってきた・・・。

そんな事を考えていると翠音に左手をつねられた。

紫音「あ痛っ!何すんだ・・・」

翠音「もぅお兄さま、翠音とお出かけなのに何か変な事考えてますぅ」

紫音「え?俺なんか変な事言った?」

翠音「声は出てないけどぉだらしない顔してるぅ」

小悪魔め・・・そんなに表情には出てないと思うんだが・・・俺は決まり悪い思いをしながら穂むらの暖簾をくぐった。

紫音「こ・・・こんにちは・・・」

翠音「こんにちはぁ」

穂乃果母「あら、いらっしゃい」

紫音「どうも・・・」

翠音「わあ・・・美味しそう!」

ガラスケースにはたくさんのお団子やら饅頭やらが並んでいる。

レギュラー商品はだいたい全部食べたのだが、季節モノは当然初めて見るものばかりだ。

今日は秋分の日、やはりお萩目当てのお客が多く、ママさんはかなり忙しそうである・・・。

俺と翠音がガラスケースの前に並んで和菓子を見ていると、救いの天使雪穂ちゃんが現れた。

翠音「雪穂ちゃんやっほー!」

雪穂「あっみおんちゃんだ~!やっほー!お兄さんもこんにちは!・・・あっお兄さん、私お兄さんのメアド知らなくて・・・あの時はホントお姉ちゃんがお世話になりました!」

紫音「あ、こんにちは・・・いえいえそんな・・・俺は大した事してないし」

家族の人に面と向かって言われると照れるが、今日の俺には重大な使命があり、照れている場合ではない。

紫音「え~と今日は秋分の日なので・・・お萩を買いにきたんですよ・・・」

なに言ってんだ俺・・・自分でも残念ながら、口から出た言葉は完全にただの買い物客のセリフだった。

雪穂「はい、お萩ですね。何個ですか?」

翠音「うんとね!7個」

7個って・・・そんなに要るか?

紫音「翠音ちゃん??どうして7個なの?ウチは5人家族・・・」

翠音「なに言ってるのお兄さま!翠音とお姉さまは二個ずつ食べるの!」

紫音「・・・お前らホント甘いの好きだね・・・その割には細いんだよな」

雪穂「そう、みおんちゃんホント細くてかわいい・・・うらやましい。今包むね」

翠音「ううん、雪穂ちゃんのほうがスタイルいいよ~胸があって女の子らしいもん」

うむむ、このままこの会話が盛り上がるのは少し恥ずかしい・・・いい加減本題に入ろうと決意する。

紫音「雪穂ちゃん・・・穂乃果ちゃんは、いる?」

雪穂「お姉ちゃんですか?お姉ちゃんは今日もお店の手伝いを私に押し付けて遊びに行きました!もう帰ってきたら後片付けと明日の仕込みはやってもらうんだから!」

ああ、元気になったら早速遊びに行ったという事か・・・確かにμ'sも無いし、遊ぶには良いタイミングなのかもしれない。

ただ、俺が頼まれた仲直り作戦は、出だしからうまく行かない事が確定してしまった。

紫音「じゃあさ、帰ってきたら俺が会いたがってたって、言っておいてくれる?一応メールも出しておくけど」

雪穂「はい、分かりました!でもお姉ちゃん最近ちょっとおかしいから・・・抜け殻みたいになっちゃって」

雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの一番近くにいる女の子だから、おそらくこれは正しい評価だ。

抜け殻か・・・ことりちゃんの留学出発の飛行機は今週の土曜午後3時だ・・・木曜までには絶対に会って、抜け殻という状態を解除せねばならない。

俺達はお萩の支払いを済ませて店を出た。

帰ったら次はメール作戦である。

 

     ■□■

 

しかし結論から言うとメール作戦は失敗であった。

考えに考え抜いた文面だったのだが、返信はそっけなく「今は会いたくない」としか、書かれていなかった。

だが俺は、まだこんな事であきらめるわけにはいかない。

 

     ■□■

 

幸運は翌日に起こった。

その日俺は部活へ行くのに神田明神を通った。

すると、にこ先輩、凛ちゃん、花陽ちゃんの3人が、もはや懐かしいとさえ言える階段トレーニングをしていた。

俺が喜び勇んで声をかけようとしたその時、ちょうど階段を登ってきたのは・・・なんという偶然か、今一番会いたい人、穂乃果ちゃんその人であった。

この幸運を明神様に感謝しながら改めて声をかけようとしたが、俺は自分の声を飲み込まざるを得なかった。

なぜなら3人と穂乃果ちゃんはお互いを認識した瞬間、笑顔は消え表情が固くなり、楽しい階段トレーニングが突如として冷たい冬に包まれてしまったように見えたからだ。

声を発せないばかりか、俺は境内の建物の陰に隠れ、聞き耳を立てていた。

境内に、にこ先輩の声が響く。

にこ「当たり前でしょ?スクールアイドル続けるんだから」

穂乃果ちゃんの声は聞こえないが、にこ先輩の憤りが混じる悲痛な声は、隠れている俺にも良く聞こえた。

にこ「にこはアイドルが大好きなの!!」

にこ先輩の声は良く通った。

にこ「みんなの前で歌ってダンスして・・・みんなと一緒に盛り上がって・・・また明日から頑張ろうって・・・そういう気持ちにさせることが出来るアイドルが、私は大好きなの!!」

俺の全身に鳥肌が立った。

脳裏に俺とにこ先輩の、二人だけの屋上ライブが鮮烈に蘇った。

鼻の奥がツーンと痛くなる。

にこ「穂乃果みたいないい加減な好きとは違うの」

にこ先輩は・・・挑発だろうか?しかし穂乃果ちゃんは一瞬言い返そうとしたものの、勢いを失ってしまった。

それを見た花陽ちゃんと凛ちゃんが明るく穂乃果ちゃんに話しかける。

内容は聞こえなかったが・・・穂乃果ちゃんは明らかに愛想笑いと判る微笑みを返して、階段を降りて行った。

穂乃果ちゃんと話す大事なチャンスを失った、という事は後から気付いたが、その時の俺はまったく穂乃果ちゃんを追いかけようとは思わず、フラフラと3人の前に出て行った。

紫音「にこ先輩・・・」

にこ「あら、紫音じゃない」

凛「あっ!しょー兄ぃだ!」

花陽「あ、こんにちは」

紫音「こ・・・こんにちはぁぁぁ」

にこ先輩と目が合うと俺は感極まってしまった。

にこ「ちょっと何よ紫音、何泣いてるの?」

紫音「ふうぅぅ~・・・泣いてまぜん~目から汗が出てるんですぅうう」

にこ「・・・それを泣いてるって言うのよ・・・あんたもしかして、さっきの聞いてたの?」

紫音「ずびばぜん~聞いてました・・・にこ先輩の言葉・・・感動しましたぁあ。俺、マジで元気になったんです!あの日・・・」

にこ「・・・あんたは私のパンツを見て元気になったんでしょ?」

凛「にゃっ!!しょー兄ぃ!にこちゃんのパンツ見たの?なんで!!見損なったにゃ!」

紫音「ち、違う、凛ちゃん違う!にこ先輩!俺はぢゃんとあど日もライブで感動じたって言いまじたよぉ!!意地悪言わないで下ざい~~」

にこ「・・・冗談よ。あんたは私を感動させるくらいの立派なオーディエンスよ。そう、あんたが元気になる所を見て、私も元気になる。それがアイドルよ」

凛「なんだ冗談か~良かった」

俺はなんとか感情を落ち着かせ、まともに話せるようになってから言った。

紫音「凛ちゃん、花陽ちゃん・・・にこ先輩は本当に宇宙ナンバーワンアイドルかも知れない。3人でアイドル続けるんだってね。がんばってね。俺、絶対応援するからね」

凛「うん!しょー兄ぃ凛たちのこと、応援してね!とりあえず今は『にこりんぱな』って名前だけど、ちゃんとした名前付けて来年にはにこちゃんの分まで、凛とかよちんでラブライブに出るから!」

凛ちゃんはいつも元気で本当に癒される(母さんが許せばこの娘も俺の妹で良いと思う)。

そこで花陽ちゃんが真剣な表情で口を開いた。

花陽「あの・・・紫音さん。私・・・穂乃果ちゃんはただ傷ついて、自分を責めてるだけだと思うんです・・・。アイドル活動っていうか、歌って踊って夢中になれる楽しい事を、穂乃果ちゃんが嫌いになるはずありません」

花陽ちゃんは俺を見つめて続ける。

花陽「その楽しい事と、私達がにこちゃんと目指しているアイドル活動は、ほぼ同じ事なんです。だから学校存続とか関係なく、一緒にやれるはずなんです」

凛「でも・・・穂乃果ちゃんにとって楽しいのは、きっと凛たちとの活動じゃないんだよ。ことりちゃんと海未ちゃんが一緒にいるから、凛にかよちんがいるように、楽しいと思えるのにゃ」

相変わらず凛ちゃんは、最短で本質を見抜いている。

花陽「そう・・・かもしれないけど、私じゃことりちゃんの代わりにはならないのかも知れないけど・・・でも・・・」

俺は凛ちゃんと花陽ちゃんの頭に手を片方ずつ置いて言った。

紫苑「二人とも、すごいね。良く観察して穂乃果ちゃんの事考えてるね。俺も二人と同じ考え。穂乃果ちゃんは絶対歌が好きなんだ。でなきゃ今までのライブでも、あんな楽しそうな顔できないからさ」

二人の顔を交互に見ながら言う。

紫音「でも凛ちゃんが言うように、ことりちゃんと海未ちゃんが居るから本当に楽しいって事もあるよね。ちなみに、にこ先輩も4月の最初のあの3人のライブ、講堂で見てましたよね?」

にこ「・・・見たわよ。私だって、あの子の歌を好きな気持ちがいい加減だって、本気で思ってるわけじゃないわ。でも・・・これしきの事でくじけてたら、どの道今後もアイドルとしては厳しいのよ」

にこ先輩の意見は正論ではあるが、穂乃果ちゃんが歌に対する自分の気持ちを偽っていて、本当は歌が大好きなんだという事を、ここに居る全員が信じている事は確実だった。

紫音「にこ先輩・・・今後の事はともかく、穂乃果ちゃんが本当にアイドルを無駄だと思うはずがない、って気持ちは皆一緒ですよね。俺、作戦って言うのはおこがましいですけど・・・俺だから言える言葉があるんです。それを穂乃果ちゃんに伝える場が欲しいんです。協力お願いできませんか?」

そう言って俺は、にこ先輩に・・・もちろん凛ちゃんと花陽ちゃんにも・・・頭を下げた。

そして俺のバイトが無い木曜、この神田明神で俺が待っている事を、穂乃果ちゃんに伝えるようお願いする。

それがダメなら後は、穂乃果ちゃんのお母さんに頼み、穂むらの前で待ち伏せして直談判する以外、俺に残された方法はない。

頼んだぜ!にこりんぱな!

 

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