ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第31話 夢の扉

10月に入った。

俺はまた部活とバイトに打ち込んでいる。

というのは弓道の東京都秋季大会が3週間前となるため、成績を残すためには当然のごとく、部活に集中しなければならない。

ただ俺をとりまく環境は今一つ、弓道だけやっていれば良いという状況ではなかった。

その第一要因ははμ'sだ。

穂乃果ちゃんの復活により活動再開したμ'sは、階段トレーニングなども9人揃って行うようになった。

そして文化祭の反省から、今後も女子だけで行う事が難しい作業があると想定し、俺はμ'sのファン兼公式スタッフという役目を拝命した。

要するに何かのイベントに際し大道具係として活躍を要求されているのだが、特にイベントが無くてもほぼ毎日、メンバーの誰かしらからメールが届くようになった。

メールをもらうと適切に返さなければならず、それが一つ嬉しい悩みである。

次に第二要因として、バイト先に後輩が二人入った事がある。

一人は大学1年生の神流(かんな)すみれさんという娘で、誰もが振り返る清楚な美人お姉さんだ。

すみれさんはこのミニストッパから一番近い大学、つまり日本一の大学へ現役で合格したスーパー女子大生で、近所のアパートで一人暮らしをしていて生活費の足しを作りたいという事だった。

もう一人も女の子で、高校1年生の元気で明るく笑顔が大層かわいい、華宮(はなみや)佳織ちゃんという娘だ。

佳織ちゃんは近所に家族と住んでいて、高校は一つ隣の駅の御茶ノ水にある女子高だった。

単純におこずかい稼ぎがしたいらしく、一番家から近い場所に決めたとの事である。

この二人は俺とシフトが重なる事が多く、俺が教育係に任命されてしまったのだ。

ミニストッパは普通のコンビニの業務であるレジ打ち・品出し・清掃・整理以外にファストフードサービスがあるため、教育内容が多いのである。

後輩二人がある程度独り立ちできるまで、シフトを1日増やして欲しいと言われ、弓道の練習時間がその分減ってしまう事となった。

仕方ないので練習できる日に集中し、試合まで日曜は長めに練習する事とした。

そんな忙しい日々の中に第三要因として、我が高校の期末テストが来週に迫っているため、かなり切羽詰った状況となっているのだ。

 

さらに大きな話題がいくつか続いた。

一つ目は穂乃果ちゃんの音ノ木坂学院生徒会長就任である。

今年は立候補者がおらず、μ's活動再開ライブでノリノリだった穂乃果ちゃんを、絵里先輩が指名した形だ。

俺としては穂乃果ちゃんの生徒会長就任演説に興味があったのだが、紅音が言うには良く分からない内容だったらしい。

そして興味ではなく不安を持ったのは、海未ちゃんが副会長、ことりちゃんが生徒会書記に任命された事である。

あの二人・・・穂乃果ちゃんの生徒会と校内行事をフォローし、μ'sの歌詞と衣装を作成して練習し、さらに海未ちゃんは弓道、ことりちゃんはバイトを行うのである。

ちょっと考えただけでもとんでもない仕事量だ・・・スタミナや集中力、大丈夫だろうか?

海未ちゃんは俺と同じ弓道大会に出るはずなので、ライバルには頑張って欲しいと思う俺であった。

二つ目の話題は、音ノ木坂学院の廃校が、来年については回避された事が正式に発表された事である。

これには紅音と翠音、そして亜里沙ちゃんの喜びが大きかった。

亜里沙ちゃんは音ノ木坂に入学し、μ'sに入りたいという意向をすでに固めているようだ。

三つ目の話題は、2ndラブライブが開催される事になった、というものである。

これには、あきらめざるを得なかったラブライブ出場のチャンスが再び巡って来た!とにこ先輩が大喜びしていた。

ただ2ndラブライブはトーナメント形式で長期間かけて争われるため、決勝戦は来年3月という事だった。

よく聞いていないが、先輩方はセンター入試、私大受験、第一志望大学の二次試験にかかってくるため、練習が難しくなるだろう。

だがそこはあまり皆気にしていないようだった。

なぜなら、トーナメント形式なので東京代表になるためには、A-RISEを撃破しなければならないからである。

東京代表になれなければ3月までμ'sが続く事はなく、先輩達は勉強や進学に集中できるはずだ。

受ける大学によっては東京代表決定前の練習が、勉強とかち合うかも知れない。

少なくともこの時点では、底辺からの再スタートに近いμ'sが3月まで活動できると思っている人は、ほぼ居なかったに違いない。

例外は穂乃果ちゃんとにこ先輩であろう。

穂乃果ちゃんは最初2ndラブライブ出場にはあまり乗り気でなかったようだが、最終的には優勝を目指してがんばるという決意を表明した。

つまりμ'sの活動も生徒会の片手間というわけには行かなくなったわけだ・・・A-RISEに勝てるほどの練習をしなければいけないのだから。

だが今の穂乃果ちゃんなら、問題ないと思える。

解散危機から復活した彼女は本当に頼れるリーダーになっていて、例え壁が高かろうとも、生徒会もμ'sも、充分に両立して皆を引っ張っていけると感じさせてくれるのだ。

 

     ■□■

 

2ndラブライブ開催の報があった10月の第一週、土日を利用してμ'sはまた西木野家別荘へ旅立っていった。

2ndラブライブは未発表曲で勝負せねばならず、そのための新しい曲を作りに行ったのだ。

新曲は動画で発表し、まずは投票ランキング4位以内に入る事が目標となる。

来週末には動画をアップし週末までに投票、連休明けには予選通過校が発表されるというスケジュールである。

作詞作曲編曲レコーディング、衣装のデザインと製作、振り付けとその練習を1週間でやるなんて、とんでもない強行軍だ。

2ndラブライブ開催発表から運営側が出したスケジュールがそうなっているので逆らう事はできないが・・・普通には不可能と思える。

ただ我らがμ'sは前回発表の曲「No brand girls」を、二学期開始から文化祭までのたった2週間で、素晴らしい完成度まで高めているのだ。

今回は更にその半分の期間しかないが、実績と実力はあると思う・・・俺は出来上がると信じていた。

 

     ■□■

 

合宿の翌週、いよいよ新曲の動画発表をせねばならず、メンバーから「PVの作成場所の候補を挙げて欲しい」と何度も俺にメールが届いていた。

だが・・・俺にはそんな撮影ができる場所の情報がなく、言葉に詰まらざるを得なかった。

そもそも綺麗なステージや公共の場での撮影には許可が必要で、許可を得る時間自体がなく思いついても却下せざるを得ないのである。

俺もμ'sと頭を抱えていたが、どういう経緯か、なんと最終的にはその週の土曜、A-RISEの学校であるUTXビルの屋上で、撮影する事が決まった。

A-RISEのご厚意に甘えた形だが・・・俺としては大道具係の役目も無く、テストに集中できて実は助かった。

 

     ■□■

 

その週の土曜、テストとバイトを終えて帰ってきた俺は「ニヤ生」のタイムシフト予約でA-RISE、μ'sの動画を連続で見た。

毎回μ'sの新曲を聞くと、これが最高、次の新曲はこれを超えられるはずが無いと思う。

そう思うのだが・・・現実はそれを毎回繰り返してしまう・・・つまり毎回、前回の曲を超える名曲なのである。

前曲が大好きなのに、次の新曲がまた、それを超えるほど好きになってしまう。

特に今回は前回の「No brand girls」が良い曲過ぎるし、しかも準備は1週間しかないし、完成度は低いだろうと俺は本気で思っていたのだ。

だが「ユメノトビラ」は「No brand girls」をあっさりと超える、名曲であった(あくまで俺の好みではあるが)。

初めて聞く曲なのに、聞いただけでなぜか泣けてくるのである。

確かに俺は「No brand girls」から「ユメノトビラ」までの間に彼女達が経験した傷、痛み、そして勇気と友情、成長を知っている。

この曲の背景を知っているから泣けてしまうんだとも考えた。

でも・・・そんな事を知らなくても、やっぱりこの曲は泣けてしまうのではないか、とも思う。

それは青春という、理由もなく輝ける時代の歌だからであり・・・まさしく9人揃ってラブライブのステージに立つという夢に繋がる扉なのだからだろう。

 

「ユメノトビラ」が公開されたその夜の内に投票はすごい勢いでμ'sに集まり、1stラブライブに不参加となった際に付いた「アイドルランクなし」から一気に、上位にランクインした。

しかしながら上位という事ではダメで、具体的には週明けにランキング4位以内に入っている事が2ndラブライブの東京予選勝ち抜きの条件である。

投票して祈るほかはあるまい。

 

     ■□■

 

翌日の日曜、音ノ木坂学院では体育祭があった。

μ'sメンバーは予選ランキングの推移に内心ドキドキしながら参加していたはずだ。

俺は弓道の大会二週間前で、しかもテストがあったためバイトのシフトがずれており、せっかくの体育祭なのに見学に行く時間があまりなかった。

午前中弓道の練習、15時からバイトの間の3時間で、紅音と凛ちゃんの借り物競争と穂乃果ちゃんのパン食い競争、海未ちゃんとことりちゃんの玉入れを観戦した。

海未ちゃんのポニーテール+ハチマキ+ブルマの姿はまさにお宝以外の何物でもなかった。

他のメンバーもそれぞれレアな表情や姿を拝ませてくれた。

新人アルバイトの教育がなければ、アルバイト自体を休んで写真を撮りまくっていたに違いない。

ただその行為は、カメラ小僧の変態男子高校生と認識されても言い訳できないわけで、海未ちゃんには絶対に犯罪者として扱われるだろう・・・紅音にも迷惑だ。

そういう点ではバイトで良かったのだ・・・と俺は信じ込む事にした。

仕方ない・・・バイトがんばろう。

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