ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第4話 穂むらにて

日本に来て初めての慣れない授業をなんとかこなし、俺は弓道部へ向かった。

部長と今日も弓道神田道場に向かう。

袴の着付け、足踏みと胴造りの復習を行い、その後指導員と先輩の二人がかりで弓構え(ゆがまえ)と打起し(うちおこし)の動作を教えてくれた。

その後は道場に併設された小さなマシンジムで筋トレを行う事となった。

正確に狙うためには手ブレが起きないよう、弓の力に負けない安定した肩、上腕、背筋と、それを支える大腿筋の力が必要である。

また矢が放たれてから的に到達するまでの時間が短いほど落下が少なく直線的になり狙いやすいので、大きく強く弦を引けるパワーは単純に有利なのだ。

基礎筋力を付けるため、しばらくの間、筋トレは毎日行う事となった。

先輩が例によって予備校に旅立った後もマシンジムでしばらくトレーニングをしていると、ガラスのドアの向こうを園田師匠が通った。

俺は遅ればせながら気がついた。

園田師匠の制服のリボンは、紅音と違う色である。

すでに部活に所属しているので2年生か3年生である事は間違いない。

俺は園田師匠を呼び止めた。

紫音「し、師匠、園田師匠!こんにちは!」

園田師匠「は、はい・・・桜野さん、でしたか。こんにちは。昨日はすみませんでした。今日はトレーニングですか。精が出ますね」

紫音「いえいえ、あれは俺が悪いので・・・師匠、それよりも言いそびれていたんですが俺の妹、昨日から音ノ木坂学院の1年生なんです。師匠は2年生、ですよね?」

園田師匠「・・・ええっ?はい、そうです。私は2年生ですが・・・妹さんが音ノ木坂なのですか。それは驚きました・・・もしかすると、あなたも2年生なのですか?」

紫音「そうです、俺も2年生なんです。いや、たとえ同い年の女の子だとしても師匠は師匠、できるだけ師匠に近づけるようにがんばります!また機会があれば教えて下さい!」

園田師匠「・・・そうだったのですか、私で良ければ何でも聞いて下さい。でもなぜ、今になって弓道なのです?確か先月までアメリカにいたのだとか・・・」

園田師匠は昨日の事を思い出したのだろうか、少し頬を染めて俯きかげんに話している。

俺は弓道部に入る事になったいきさつを話した。

紫音「なかなか自分の力を役立てるところを見つけるのは難しいと思ってたんですか、俺が入部することで廃部を阻止できるならいいかな、って。素敵な師匠にも出会えたし」

そう言うと師匠は顔を真っ赤にし「す、素敵とか言わないで下さい」と小さな声で言った。

 

師匠の練習の邪魔をしてはいけないので、俺はもう30分ほど筋トレをし、15分ほど正座で師匠の練習を見学した。

正座がもっとできれば、師匠の美しい姿を長く見られるのにな・・・と思う。

正座の練習もがんばる事にしよう。

 

     ■□■

 

見学後、道場から実家へ帰る途中、道場と神田明神の中間くらいにあるコンビニ「ミニストッパ」が高校生アルバイトを募集しているのを発見した。

時給は条件により異なるが900円スタートのようだ。

地方よりは少し高い。

ちょうど店長が居たため、翌日の面接を約束した。

ここに決まれば練習も出勤も近くて助かる。

 

     ■□■

 

家に帰った俺を翠音が待ち構えていた。

翠音「お兄さま~お帰り~~」

紫音「はいはいただいま。なんだいこんな玄関先まで」

翠音「お兄さま、明日は何時に帰れるの?」

バイトの面接は17時からだが、筋トレ後の汗だくでは行きたくない。

筋トレは面接後が吉だろうな。

紫音「明日は午後3時ごろに一旦帰ってきて、5時前に出かける」

翠音「じゃあね!じゃあね!雪穂ちゃんの家の和菓子屋さん、近くだから一緒に行こうょ~穂むらってお店なんだって~」

ああなるほど、そんな事を今朝言ってたっけな。

そんなに時間は取らないだろう・・・面接はその後直接行けば良いし。

紫音「うん、いいよ」

数瞬の思考の後、快諾した。

 

     ■□■

 

翌日、約束通り俺は15時に帰宅し、翠音とともに穂むらへ向かった。

面接があるので服装は制服である。

穂むらは予想外に近かった。

神田明神や道場から歩いても5分くらいの立地である。

店に入ると確かに昨日の朝出会った、明るい中学生の雪穂ちゃんがいた。

普通に日本で生活していたら珍しくないのかも知れないのだが、俺達兄妹には強烈に珍しい割烹着姿だった。

雪穂「いらっしゃいませ~!」

翠音「雪穂ちゃん、来たょ~~!」

雪穂「あ!みおんちゃん、嬉しい!来てくれたんだ~!お兄さんもいらっしゃいませ!」

紫音「こんにちは!なんかかっこいい店だね!」

当たり前だがニューヨークにはこの手の年季の入った風情ある和の店はない。

雪穂ちゃんと翠音が女子トークをしているうちに俺は店内を一通り見回した。

障子や暖簾、折り紙、絣の布でできたコースターなど、割烹着も含め俺にとっては珍しいアイテムばかりだ。

翠音「雪穂ちゃん、おすすめのお菓子はどぉれ?」

雪穂「え~みんな美味しいんだけどね~今は春だから~桜餅と柏餅、いちご大福もいいよ~。お萩もあるし!でもね、常連さんはやっぱり、お饅頭を買っていく人が多いかなあ~。季節を問わずいつでも美味しい、穂むらの饅頭、ほむまんだよ」

なるほど、そこまで言われたら買わざるを得ない。

紫音「翠音、軍資金は?」

翠音「え~とね、お母さまから2,000円もらった~。でも全部使っちゃダメだってぇ」

そりゃそうだわな・・・。

俺達はほむまんを5つ、後は桜餅、柏餅、いちご大福、お萩、草餅をそれぞれ1個ずつ買った。

家族5人分のつもりなのだが、親父は饅頭を食うか判らない・・・絶対紅音と翠音が取って食いそうだ。

翠音「ねぇねぇ雪穂ちゃんのお姉さまは居ないの?」

翠音がそう聞くと、雪穂ちゃんは形の良い眉を少し曇らせて答えた。

雪穂「・・・お姉ちゃんはね、今日も私にお店番押し付けて遊びに行っちゃったんだよ!もうホントいつもひどいんだから!」

むむう、それは残念だ。

翠音「それはちょっと残念。でもお兄さまのほうがもっと残念だよね~かわいい女の子が見れなくてぇ。雪穂ちゃんのお姉さまは高校2年生なんだって~」

紫音「これ翠音、なんて事を言うんだ・・・雪穂ちゃんを見れただけで充分満足だよ」

雪穂「あはは、うちのお姉ちゃんはそんなに期待するほど美人じゃないよ~かわいいタイプではあるけど、とにかく性格がいい加減で・・・」

話を聞いていると雪穂ちゃんのお姉さんは相当活発で自由奔放、そして思い込みが激しく一直線という感じだそうだ。

ニューヨークでは自己主張するタイプの女の子が圧倒的に多かったので、俺としては合わせやすい娘かも知れない。

 

     ■□■

 

まだ見ぬ雪穂ちゃんのお姉さんを想像しながら和菓子を持って一旦帰宅した。

さらにその足でバイト先に面接に行き、無事採用された。

その後道場のジムで筋トレし、園田師匠の練習を見学した。

園田師匠の道場での評価は「実力を出せれば高レベル」なのだそうだ。

普段はとても落ち着いて達人のように見える園田師匠だが、何かあると途端に動揺してしまい狙いが定まらなくなるのだそうだ。

それは高校生なのだから当たり前のように感じた。

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