ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第5話 廃校のうわさ

バイトに採用されてから数日が過ぎた。

基本的なシフトは、月・水は18時~21時で3時間、土曜は16時~21時で5時間、合計で週11時間の勤務である。

そうなると何曜日に月をまたぐかで異なるが、ひと月で44時間は働く事ができる。

携帯のプランを見直すなど無駄を減らせば、家賃を払ってもお小遣いくらいは出そうだ。

弓道部のほうはバイト先の「ミニストッパ」から近い事もあり、バイトの日は筋トレ、それ以外の日は袴を着けて練習する事とした。

日曜は午前中2時間を目安に練習する。

先輩と道場の指導員に新人戦に出てみたいという希望を話したため、練習はハイペースで進み、実際に矢を放つ段階に移行していた。

園田師匠は音ノ木坂学院の弓道部で練習し、それが終わってから更に道場に通って練習していた。

「弓を握ると心がす~っと落ち着く」と言っていたが、俺が指導員に細々と指示されながら練習しているのも耳に入らないようで、黙々と課題をこなしていた。

俺は話しかけたかったが、あまり話題もなく話しかける事はできなかった。

 

     ■□■

 

そんな折、新人戦まであと10日ほどとなったある日、園田師匠がいつもの時間より少し遅れて道場に来た。

見るとなんだか少し元気がない。

園田師匠と出会ってまだ日も浅いが、弓を握っているにも関わらず、師匠の心がどこかに行ってしまっている事は判った。

矢を放つそぶりも見せないので、俺は思い切って声をかけてみた。

紫音「師匠、園田師匠、今日は元気ないですね?」

園田師匠「・・・・・」

紫音「そういえば師匠、高校総体の新人戦がもうすぐあるそうですね。俺もとりあえず出場できるようにしてもらえるみたいなので、がんばって出場します」

園田師匠「・・・あ、桜野さんも新人戦に出場なさるのですね。がんばって下さい」

俺の言葉に答えながらも、いつもの覇気がない。

紫音「いったいどうしたっていうんです?園田師匠・・・体調が悪いんじゃないですか?」

園田師匠「・・・あなたにまで心配させてしまうとは・・・すみません。いえ、私達の力でどうなる事でもないので・・・ただ友達の落ち込みようが心配なのです」

はぁ~と師匠は盛大なため息をついた。

まだ気軽に話してくれる間柄ではないのが淋しい。

その後も練習に身が入らないようで、園田師匠はため息を吐きながら帰ってしまった。

師匠が居ないと道場は途端に華がなくなってしまう。

しかし試合に出場すると決めたのだから、そんな事で盛り下がっていても仕方ない。

まだまだ師匠には遠く及ばないが、俺はその後もしっかり矢を放つ練習をした。

 

     ■□■

 

練習を終え実家に帰ると、翠音は普通なのだが何やら紅音が複雑な顔をしていた。

翠音「お兄さま、お帰り~」

紫音「ただいま~。腹減った~。どうしたんだ紅音?ちょっと元気ないんじゃないか?」

紅音「お兄ちゃん、お帰りなさい。別に私は元気なんだけど・・・ちょっと学校がね」

紫音「学校?音ノ木坂学院がどうかしたのか?」

紅音「うん・・・なんかね、うちの学校、3年後に廃校になるんだって」

紫音「廃校??え~と学校がなくなるって意味か?」

日本語というのは初めて聞く単語でも音で漢字を考えると意味が大体分かるのは良いところなのだが、さすがに聞き返してしまった。

紅音「うん、そう。凛ちゃんと花陽ちゃんと話したんだけど、私達より下の学年はもう募集しないみたいなの」

紫音「むう・・・それは悲しいな。せっかく入ったのにな」

紅音「うん・・・」

ふと思い当たる・・・もしかして園田師匠が今日ため息を吐いていたのは、この事ではないだろうか?いや友達が、とか言っていただろうか。

俺が考え込んでいると紅音は何か思い出したようで、明るい声をあげた。

紅音「あ、そうだ。凛ちゃんと花陽ちゃんで思い出したんだけど、お兄ちゃん、明日の朝学校へ行くときに、UTXビルを回って歩いてもいい?」

紫音「ん?いいけど何するの?」

紅音「なんかね、UTX学院高校にA-RISEっていうスクールアイドルがいて、その新曲のPVが明日の朝にUTX学院のモニターに流れるんだって。それを花陽ちゃんが見たくて、凛ちゃんと一緒に見に行く約束をしたの」

紫音「ほほう、なるほど・・・」

花陽ちゃんというのは確か小泉さんの名前だっただろうか。

小泉さんとはまだ一度も話した事がなく、凛ちゃんとも入学式でカメラのやり取りをした以来である。

確か凛ちゃんは小鹿を思わせる、機敏そうでとても気が合いそうな女の子だった。

できれば雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんのようにきちんと挨拶し、俺を認知してもらいたい。

俺が返事をする前に、紅音は早々に決定してしまった。

紅音「じゃあお兄ちゃん、明日は少し早く行くからね!起こしに行くのは翠音じゃなくて私が行くわ。朝から変なもの見せないでよ?」

翠音「え~お姉さまずるぃ~じゃあ明後日から二日連続で翠音がお兄さま起こす係だょ」

紅音「あら翠音、あなたも早く起きる気があれば3人で見に行くという手もあるわよ。久しぶりに二人で起こしに行っちゃう?」

翠音「え!いいの?お姉さま・・・優しぃ!じゃあ明日は3人で登校だね!実はね、雪穂ちゃんはUTX学院に入りたくて、今日パンフレット持ってだんだょ」

そういや、俺の高校でもなんとなく話すようになったヒロタカがA-RISEという女子高生アイドルの話はしていたかもしれない。

話題づくりで早起きして見に行くのも良いだろう。

 

翌朝、俺達3人は秋葉原駅のほうを通るルートで出かけた。

いつもこの辺りは混雑しているが、駅前にあるUTXビルの洒落た歩道橋の辺りは特に混んでいた。

何やらリズミカルな曲も聞こえる。

その歩道橋以外のところはサラリーマンやOLばかりだが、UTX学院前で混雑を作っている人たちを見ると、女子高生・女子中学生が多数を占めている。

そしてみんなUTXビルの側面に取り付けられた超大型モニターに見入っているのだった。

「Private Wars」というのが新曲のタイトルのようである。

画面の中では3人の女子高生アイドルが洗練されたダンスを披露しながら歌っていた。

中央のショートヘアの娘は身長は低めのようだがキレのある動きと挑発するような微笑みが大変印象的である。

向かって左の娘は大きな瞳とかわいらしい顔立ち、長く豊かな髪が特徴で、3人の中では一番俺の好みかもしれない。

向かって右の娘はロングヘアで切れ長の瞳の横に泣き黒子があり、身長が高くスラッとした美人だ。

この3人が制服をアレンジしたようなミニスカートで軽々と舞いながら、次々と立ち位置を変えて行く。

なるほど、これは一見の価値ありで、女子が朝から並んで見て憧れるのも自然と理解できた。

 

画面に見入っているうちにいつの間にか、紅音の横に凛ちゃんと小泉さんが居た・・・走ってきたようだ。

その横にも同じ音ノ木坂の制服を着た娘が何人か居て、一人はサングラスとマスクで顔を隠した小柄な娘だ。

同じ1年生だろうか・・・しかし音ノ木坂の1年生は1クラスだけなので、紅音達が声をかけないなら違う学年だろう。

更にその横の栗色の髪の娘は口をあんぐりと開けて画面を見ていた。

いつかどこかで見たことのある娘のようなな気がする・・・。

俺が記憶をひっくり返しているうち、栗色の髪の娘はヨロヨロとよろけ、画面を何度か振り返りながら去っていった・・・学校へ行くのだろう。

凛「あかねちゃん、おっはよ~にゃ~!横の子は・・・妹さんかにゃ?あ、お兄さんおはようございます!!」

紅音「おはよう!花陽ちゃんもおはよう!」

紫音「凛ちゃん、おはよう!小泉さんもおはよう~」

花陽「ほわわ・・・」

小泉さんはまだ画面に見入っており、こちらの声は届いていないようである。

紅音「凛ちゃん、こちら私の妹の翠音(みおん)よ」

翠音「はじめまして~みおんです~お姉さまがお世話になってますぅ」

凛「か、かわいいにゃ~~!!みおんちゃんっていうんだ!すっごいかわいいね!凛はあんまり女の子っぽくないから、みおんちゃんみたいな女の子らしい妹になりたかったんだ~凛は星空凛だよ。凛って呼んでね!」

翠音「てへへ、ありがとうございますぅ!凛ちゃん先輩、女の子らしいですょ~」

凛「う~ん凛は昔っから運動が好きで、髪型もこんなだし、お姉ちゃんからは弟っぽいって言われるんだ~。お古のスカートとかいっぱいもらえるんだけど・・・男の子から似合わないとか言われたりしてね、自信がないからあんまりはかないんだ。みおんちゃんはかわいい服似合うよね、絶対」

翠音「ううん翠音よりやっぱりお姉さまのほうがかわいいです。服も良く似合うし・・・でも凛ちゃん先輩だって絶対かわいいスカート似合いますょ!ね、お兄さま」

こ、ここで振るか・・・紅音の視線が恐いがここは空気を読まねばならぬ。

紫音「うん、凛ちゃんはすっごくかわいい娘だと思うよ。ぜんぜん男の子っぽくないよ~。音ノ木坂の制服だって似合ってるよ。そうだ、こんどウチに遊びに来たら?紅音は服いっぱい持ってるし・・・」

紅音「お兄ちゃん!!凛ちゃんは私の友達でしょ!?お兄ちゃんはかわいい娘はすぐ仲良くなろうとして・・・ホントやらしい!」

凛「お兄さん、上手だにゃ。凛みたいな男の子っぽい子を無理に褒めなくていいよ。あかねちゃん、お兄さんは凛がかわいいから言ったわけじゃないにゃ。あかねちゃんと仲良くなって欲しくて言ったんだにゃ」

すげえ、この娘、賢い。

その時A-RISEのPVがCMも含めあらかた終わり、小泉さんが夢から醒めた。

横の小柄な娘は既にいなくなっていた。

花陽「あ、皆さん、おはようございます。す、すみません私、画面に夢中になってしまって・・・」

凛「かよちんはいっつもアイドルが出てくるとすごい集中しちゃうんだよね~。かよちん、こちらあかねちゃんの妹でみおんちゃんって言うんだって。こちらはお兄さん・・・あれ、お兄さんの名前知らないや。教えて!」

紫音「小泉さん凛ちゃん、俺、桜野紫音(しおん)です。シオンって言いにくかったらショーンって言ってもいいよ。紅音がいつもお世話になってます」

翠音「桜野翠音です。お姉さまをよろしくですぅ~」

花陽「はうっっっ。み、みおんちゃんすっごくかわいい・・・お兄さんもさすが二人のお兄さんです・・・」

紫音「小泉さん・・・花陽ちゃんって呼んでいいかな?じゃあそろそろ学校へ行かないと遅刻するから紅音をお願いしますね」

花陽「はいっ・・・がんばります・・・」

紫音「じゃあ紅音、凛ちゃんと花陽ちゃんと学校へ行ってな。俺は翠音を送って行くから」

紅音「・・・もう!お兄ちゃんのバカ!でも一緒に来てくれてありがとう!凛ちゃん、花陽ちゃん、行こっ!翠音、じゃあね」

翠音「じゃあねお姉さま~凛ちゃん先輩、花陽ちゃん先輩、ばいばいです~」

凛「みおんちゃん、ショーン兄さんばいば~い!」

俺達はばいば~いと手を振って別れた。

凛ちゃん、さっそくショーンって呼んでくれてたな。

紅音は凛ちゃんには怒らないと思うけど、俺には怒りそうだ・・・う~む、気が重いが凛ちゃんとイッキに仲良くなった気がするのでヨシとしよう。

 

二人で歩き、地元中学校前で雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんに出会った。

俺は雪穂ちゃんに饅頭がとても美味しかった事を伝え、急いで自分の高校へ向かった。

 

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