ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第46.5話 幕間6:Snow halaton

紫音が待つと言ってくれてから数日、海未は生徒会とμ'sの活動で忙しい日々を過ごしていた。

夢中で仕事、やるべき事を片付けているとあっと言う間に時間が過ぎ、色々と考えずに済むというメリットがある。

そんな中でふと時間が空いた時、μ'sの面々を見ると・・・この中で一番魅力的な女の子になるなんて絶対に不可能だ、と未だに思う事がある。

まず見た目で勝てない。

性格でも自分が一番、可愛くないと思う。

仕事はこなせる自信があるが・・・他人の機微を察知するのは穂乃果、絵里の次に苦手だ。

泣き言を言っても始まらない、と海未は意識を仕事に切り替える。

あの人が見守っていてくれるのだから。

 

     ■□■

 

μ'sはまたも決勝で歌う曲で揉めた。

穂乃果が決勝前の決勝出場スクールアイドル紹介イベントで「東京地区優勝」ではなく「ラブライブ優勝」と言ってしまったためもある。

しかしそれ以上に困ったのは希が「9人でラブソングを作りたい」と言い出した事だ。

作詞担当である海未に視線が集まり、海未の恋愛経験について聞かれた時には難儀した。

紫音との事は恋愛経験になるのだろうか?・・・確かにこの苦しさ、というか切なさには自信があるのだが。

ことりと海未と紫音の関係を知らない穂乃果や凛、花陽達はきらきらと目を輝かせ海未の恋愛経験を聞いてきた。

何と答えれば良いか迷い、海未がことりの顔を見ると・・・ことりも穂乃果達に混じって海未の気持ちを暴露させたいのか、話を聞き出す体勢をしていた。

援護射撃も期待できず返答に詰まった末、結局海未は「恋愛経験はない」と答えざるを得ず、明らかに不興を買ってしまった。

皆の残念そうな顔を見ていると、自分が嘘を吐いたように感じる海未であったが、告白される事と恋愛経験は違うものだと考えるようにした。

それにしても、全部判っていてニヤニヤしながら見ている希には少し恨めしさを感じたので、二人の時に文句を言ってみると返事はこうだった。

希望「まだ素直になれんの?海未ちゃんは・・・。そんなら紫音くん、ウチが取ってまうで!もう彼は誰のアタックも断らないって聞いてるよウチ」

・・・手痛い反撃にあってしまった。

 

     ■□■

 

その週の日曜は全員で穂乃果の家に集まり、作詞の案を出し合った。

が、そうそう良い案が浮かぶはずもなく、全員で恋愛映画を観る事になった。

映画が始まると穂乃果と凛は早々に寝てしまった。

少なくともこの二人の恋愛スタイルは、この映画が参考になる事はないのだろう。

後から良く考えると間違いなく海未も寝てしまうべきだったのだが・・・若干興味が有ったのが失敗だった。

主人公と相手役が立場を超え、反対勢力の追跡をかわす逃避行の中で親密になっていくに連れ、海未は3週間前の事を鮮やかに思い出していくのだった。

なにしろ・・・この映画の端々で、あの日を彷彿とさせる点が次々に出てくるのだ。

恋愛禁止の立場である海未を好きになり、穂乃果達の追跡を振り切って紫音と手を繋ぎ船で逃げた事、公園で食事をしたり変装して隠れたりする所・・・似ている。

紫音と入ったクラシックカーの展示場に施されていた内装は、この映画の風景にどことなく似ているし、おもちゃの蛇があった店によく似たバーも出てきた。

あの日の恥ずかしかった自分を段々と思い出させられ、海未は座布団を頭に被って映像をシャットアウトしようとしたが・・・とうとう映画がクライマックスに来るまで目をつぶる事はできなかった。

しごく当たり前だが、頭に座布団を被っただけでは、ストーリーを止める事はできないのだった。

最後に結ばれるため、主人公が相手役の女性を抱き締めキスする(だろう)シーンは、紫音が海未を抱き上げた時を強制的に想起させた。

あの時最初は憧ればかりで、実際に抱き上げられるまで考え付かなかったのだが・・・抱き上げられたらくすぐりからもキスからも、逃げられないのである。

その事に抱き上げられてから気付く自分の間抜けさ加減に、盛大に焦った事を思い出す。

画面の中で主人公と相手役の顔がゆっくりと近づいていく。

それに連れて海未の脳裏には焦り以外にも、あの時感じた恥ずかしさ、甘酸っぱさ、顔の火照り、心臓の鼓動などの色々な感情、状態がカレイドスコープのように乱れ咲いた。

もうだめもうだめもうだめ~!堪えられませんっ!!

心が悲鳴を上げた。

海未「は、破廉恥ですっ!!!!!」

皆の観ている映画という事は判っていたが、海未は叫びつつリモコンでTVの電源を切った。

皆の呆れ顔には少々後味の悪さを覚えた・・・しかし荒い息を吐きながら、さすがにこれを冷静に観るにはもう少し時間が必要だと思う海未であった。

 

     ■□■

 

その後やはり新曲は難しいのでは、という話になり三年生の受験勉強もあるため、早々に作詞検討会は解散となった。

が、そのすぐ1時間後、今度は希の家に再集合、という連絡が来た。

勉強がある三年生が来て欲しいと言うのだから、二つ返事で海未は穂乃果とことりと合流し、希の家に向かった。

希が一人暮らしだったというのも驚いたが、そこで聞いた希の本当の気持ち・・・転校が多く一人ぼっちが多かった希がμ'sへ抱く感謝の気持ちの大きさには驚いた。

そしてラブソングでなくても9人で曲を作りたい、その曲で東京決勝に出たいという希の気持ちは、海未だけでなく全員の心を打ったのだった。

曲は真姫でなければ作れないが、詩は全員から言葉を集めて作る事ができるはずである。

希の気持ちと、最近ずっと心にある紫音への気持ちが海未の中で渦を巻き、形になろうとしていた。

ラブソングが作れそうな気がする。

 

希を囲み真に打ち解けた顔で話すメンバーに、海未は勇気をもらった。

その勇気は、海未一人では不可能と思えるラブソングを作るためのエネルギーに、変わっていく。

その時穂乃果が窓の外を指した。

12月初旬の東京ではあまり無い事だが、折りよく上空に流れ込んだ寒波が積乱雲を作り、外は雪が舞い始めていた。

希の部屋から飛び出した穂乃果を追って、海未も外へ出た。

雪にはしゃぐμ'sのメンバー達。

自分にとって、確かに奇跡のような一生の友達になる8人なんだと、理由も無く海未は実感する。

どんよりとした空から舞い降りる白い雪は、9人に何かを届けてくれる天からの輝く贈り物のような気がした。

その時9人のそれぞれから自然とこぼれ出た言葉を、海未は作詞ノートに書き留めていった。

「想い」

「メロディー」

「予感」

「不思議」

「未来」

「ときめき」

「空」

「気持ち」

「好き」

ああ、書ける。

私にも、ラブソングが書ける。

皆からもらった言葉に私の心を乗せて、いや9人の心を乗せて、紫音へのプレゼントにしよう。

光がフィルムに想い出を残すように、雪の輝きが心に大切なものを焼き付ける、そんな詩を作ろう。

輝きが強すぎてハレーションを起こすくらい、紫音にしっかり届く詩にしよう。

海未の中に、はっきりと詩が形作られていく。

 

     ■□■

 

数日後、完成した詩を真姫に渡す時、海未は初めて、曲にリクエストを付けた。

単なるバラードにならないように、μ'sらしい勢いがある中でも切なさがあるメロディーにして欲しい。

難しそうに首を傾げる真姫に「ユメノトビラのような勢いとラブソングの切なさ」と説明した。

真姫「判ったわ。確か紫音さんもユメノトビラが一番好きだって言ってたし。予選と統一感がある曲のほうが良いかも」

紫音の名前が出たのにはどきりとしたが、真姫の顔を見れば紫音に今の海未の、μ'sのありったけを伝えられる曲を作ってくれると確信できる。

真姫は間違いなく天才なのだ。

真姫に詩を託した海未は、どうしても紫音に会いたくなった。

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