ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第49話 冬がくれた予感

ラブライブ東京決勝の翌日はクリスマスイヴである・・・しかし俺は午後からバイトだった。

ミニストッパに出勤すると、店長が手ぐすね引いて待っていた。

できれば遠慮したかったのだが、俺はトナカイの着ぐるみを着せられ、頭には角が付いたカチューシャを被る事となってしまった。

首には大きなベルをぶら下げ、尻の辺りにはご丁寧にしっぽが付いている。

その上から袖無しの店員制服を羽織ると、店長は満足げに頷いた。

雇われな分際では文句も言えず、俺はそのままレジに入らざるを得なかった。

 

レジに入るとミニスカートサンタコスの佳織ちゃんとすみれさんが既に働いていた。

佳織「あっ先輩、お疲れ様でっす!トナカイ超かわいいっ!」

すみれ「あら、紫音くんすっごく似合ってる。トナカイさん、今日もよろしくね!」

店長・・・この二人のスカート、短すぎませんかね?

と俺は嬉しくてドキドキしながらも少し呆れた。

佳織ちゃんの脚はほどよく細く健康的で微笑ましいが・・・すみれさんの脚は華奢ながらも凄い色気があり、目のやり場に困る。

二人を見ているとどんどんと落ち着かない気持ちになっていく自分が情けない。

今日は馬車馬ではなく艝トナカイのように働き、仕事に集中して二人の服装の事は意識しないようにしようと決意した。

 

     ■□■

 

夕方、制服姿のことりちゃんがミニストッパにやって来た。

俺はちょうどその時すみれさんと品出し中で、すみれさんのサンタスカートが立ったりしゃがんだりする度にふわっと揺れまくるため、決意がグラグラと揺らいでいる所だった。

ことり「トナカイさんっ」

そんなわけでことりちゃんが俺の肩を叩いた時は飛び上がるほど驚いた。

紫音「おわっ!びっくりした・・・ことりちゃん・・・メリークリスマス!いらっしゃいませ~」

ことり「紫音くん、かわいいっ!うん、すっごくいいよぅ!これはレアだよ~かわいいよ!」

ことりちゃんは「しっぽかわいい!」とか「角触りたい」とか騒ぎながら俺の周りを一周した。

勤務中なのでさすがにこれはまずい状況である。

紫音「ごめんことりちゃん、俺勤務中だから・・・」

俺が慌ててそう言うと、すみれさんが気を利かしてくれた。

すみれ「あら、紫音くん、せっかくだから5分休憩どうぞ。品出しはしておいてあげる」

紫音「すみれさん、すみません、ありがとうございます・・・後でちょっとお返しを・・・」

すみれ「うふふ、5分したらご主人である私の所に戻って来るんだぞ?トナカイさん」

すみれさんはトナカイの着ぐるみの腕を引っ張りながら、わざわざ背伸びして俺の耳元で言った。

うーむ、また誤解されやすい言動を・・・と思ってことりちゃんを見ると、案の定ことりちゃんの笑顔には殺意が混じっていた。

 

5分しかないので、少々恥ずかしいが俺はトナカイコスのまま、ことりちゃんと足早に店を出た。

ことりちゃんはスマフォで俺をアングルを変えて数枚撮影し、まだ足りないという顔で聞いてきた。

ことり「ねえねえ、もふもふして良い?」

紫音「も、もふもふ?何それ?」

ことり「こうするのっ!」

ことりちゃんは俺が答える前に俺に正面から抱きつき、頬を俺の胸にすりすりした。

あわわわ・・・なんかいつものことりちゃんと違うぞ?

紫音「ちょっと!ことりちゃん!み、みんな見てるって!なんかすっごいテンション高いんだけど!?」

ことり「むふーっ!もふもふ幸せ!」

ことりちゃんは俺の慌てぶりを無視し、30秒はたっぷりもふもふしてから俺を見上げ、Vサインを出した。

ことり「ふふふ、ちょっと嬉しくて!紫音くん実はね、ことり達、μ'sは東京でトップのスクールアイドルになりました!」

・・・その言葉の意味を理解するまで1秒ほどかかったが、理解した瞬間、俺の体から驚きと喜びが湧き上がり、爆発した。

紫音「な、なんだって~!うっそー!マジで!お、おめでとう!やった~!」

俺はトナカイコスのままことりちゃんと両手を繋ぎ、二人で円を描いてぐるぐるその場をスキップで廻った。

紫音「すっげえクリスマスプレゼントじゃーんっ!皆頑張ったもんね!ホントに凄いよ!おめでとう!」

ことり「ううんっ紫音くんや皆のお陰だよっ!すっごい嬉しいよっ!まだ9人でもう少し一緒にいられるよ!」

ことりちゃんの顔も本当に良い笑顔でまぶしく輝いていた。

紫音「そっかぁ!じゃあ今からのクリスマスパーティー、優勝祝賀会と同時開催だね~良いなあ!俺も出たかったなあ。あ、俺のクリスマスプレゼントは妹に預けてあるけど、優勝のお祝いにお菓子も奢るよ!」

ことり「ごめんね、紫音くんも一緒のパーティが良かったけど、さすがに冬休みでも男の子を学校に入れるのはお母さんでも許可出来ないって・・・」

紫音「全然良いよ、どうせ今日バイトだし。じゃあもう5分になるから、お菓子奢るから持って行って」

俺はりんごジュースを二本とポテチ2袋を自費で購入し、ことりちゃんに持たせた。

するとことりちゃんは自分のバッグから何かを取り出し、差し出してきた。

ことり「はいっメリークリスマス!これはことりからのプレゼントです」

 

俺にプレゼントを差し出した後、更にロールケーキを二本買い、ことりちゃんは笑顔でクリスマスパーティへ向かって去って行った。

俺は仕事に戻りながら、昨日のライブを思い出す。

ライブ後のLinerの書き込みでは、A-RISEに勝つと思っていたのは穂乃果ちゃんだけだった。

他の皆は「やり切った満足感」を主に語り、負けても悔い無しと誰かが結論した後は、結果の話題よりμ'sとその愉快な仲間達との楽しいお喋りで盛り上がっていた。

しかしホントに優勝するとは・・・俺が言うのは気が引けるが、技術的にはともかく、昨日のμ'sは勝敗よりも自分達の気持ちを表現するためにステージに立ち、成功していた。

もしA-RISEのメンバーが負けた原因を問うなら、μ'sの原動力よりも、最後のステージで何を表現したかったのかを9人全員に問わないと、何も掴めないだろうと思う。

 

     ■□■

 

ことりちゃんが帰ってほどなく、今度は紅音と翠音も店にやって来て大騒ぎを始めた。

紅音「お兄ちゃん!ホントにトナカイコスだー!」

翠音「ことり先輩の情報通りだよぅ~お兄様、かわいぃ。写真撮ってからパーティーに行こうと思って」

妹二人のはしゃぐ声に、佳織ちゃんとすみれさんも寄ってくる。

佳織「紅音・・・その子、紅音の妹?」

すみれ「まぁ・・・かわいい妹さんね!」

佳織ちゃんもすみれさんも、翠音と会うのは初めてだった・・・俺の姿をスマフォで撮影後、今度は佳織ちゃんとすみれさんが休憩を取り、たっぷり15分は俺一人でレジをせねばならなかった。

ハロパロの注文でも入っていたら明らかに回らなかっただろう。

佳織「あっ紅音、ちょっと聞いてよ!紫音先輩、紅音が言ってた書記の先輩に・・・」

自動ドアは閉まっているのだが、店の外から不穏な話題が聞こえる。

日本に帰ってから一回も教会には行っていないのではあるが、クリスマスイヴなんだから今宵くらいは神のご加護が欲しいと思う俺であった。

 

     ■□■

 

21時になりバイト終了となった。

引き継ぎを済ませ更衣室に戻ると、すみれさんと佳織ちゃんが着替えずに待っており、左右から腕に抱きつかれた。

そのままスマフォで写真撮影大会となってしまった。

ちなみに夜番のおじさんバイトはサンタ帽だけのコスプレだった・・・非常に納得いかない。

 

佳織ちゃんとすみれさんに待っているよう頼まれたので、一人分としては店で一番高いケーキを二つ買って、店の前で待った。

程なく着替えた二人が出てきたので、すみれさんには今日のお礼と共に、佳織ちゃんには紅音に余計な情報を言わない口止め料として、ケーキをプレゼントした。

すると二人からも、それぞれクリスマスプレゼントを貰った。

何が入っているのかは家でじっくり見る事にして、寒いし明日もバイトなのでそこで解散となった。

 

     ■□■

 

バイトからの帰り道、俺は自分が妹達に預けたμ's9人へのプレゼントがどうなったか、気になってしまった。

足を止めてLinerをチェックする。

俺がμ'sメンバーに用意したクリスマスプレゼントは、勉強机や枕元に置いて手元を照らす小さめの照明スタンドである。

電球の傘は花のように開いたデザインの色ガラスで、その色はμ'sメンバー9人のパーソナルカラーと一致するだけのバリエーションが有り、購入の決め手となった。

スイッチの部分にも傘の色ガラスと同色のラインが入っており、安い割には洒落ていた事も大きい。

将来に渡り想い出を共有し、見る度に今年の出来事を想い出して貰おうと、パーソナルカラーと一致するようにメンバー全員に同じスタンドをプレゼントしたのだ。

小さくて安めとはいえ9個なので財布には大分痛手となったが、この半年の感謝の気持ちを込めたつもりである。

Linerには9色のスタンドが光っている画像と皆の感謝の言葉が上がっていた(俺のトナカイコスも上がっていたが見なかった事にしよう)。

皆喜んでくれたようで多数の感謝の言葉が書き込まれていたが・・・しかしLinerのどこの板を探しても、一番見たい海未ちゃんからの言葉は上がっていなかった。

「メリークリスマス」の一言もない。

途端に淋しくなった。

会いたい。

声が聞きたい。

そう思った。

しかしこの時間に電話はどうかと思うし、Linerに発言がないのだから忙しいのかも知れない。

昨日の事もあるし、疲れて寝てしまったのかも知れない。

今日はミニストッパにもカップルがたくさん来て、それぞれに楽しそうだった。

俺もメリークリスマスの一言くらい、あの娘に言えれば楽しくなるような気がしたのだが・・・今日のバイト終わりで会いたいと、昨日わがままを言ってでも約束しておくべきであった。

決勝が終わったばかりで言える空気でもなかったのだが・・・後悔が頭を満たしていた。

歩きながら「今すぐ電話しよう」と何度も思っては立ち止まる・・・だが、時間を見ると「それはやっぱり無理だ」と思う。

何度目かの逡巡の後、連絡を取る事は諦めた。

仕方ない、その代わり、この半年であの娘との間に出来た想い出の場所に行ってみよう、と思いついた。

具体的には告白した場所や最近勉強会の待ち合わせで使った所などである。

本人が居るとは思えないが、大して時間もかからないし、イヴくらい今年を振り返っても良いだろう。

俺は海未ちゃんと何回も二人きりになった弓道神田道場前と神田明神の二カ所だけ、マラソンで行く事にした。

 

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弓連神田道場の前に、寒い中立ちすくんでいる女の子が居る事に俺は驚いた。

しかし、その娘が海未ちゃんである事には驚かなかった。

ここにいる娘はこの娘しかいないのだから。

紫音「海未ちゃん・・・メリークリスマス!こんな所で何してんの?もしかして、俺の事待ってた?・・・なんて思い上がりかな?」

俺はできるだけ明るく声をかけた。

海未「め、メリークリスマス・・・です。まさか本当に会えるとは、思いませんでした。その・・・昨日約束しなかったので、後悔して・・・」

紫音「はは、俺も同じ。電話するかLinerするか迷って・・・もう寝てるかと思ったりして」

海未「そ、そんな子供ではありません・・・」

紫音「だよね。東京でトップのスクールアイドルだもんね。本当におめでとう。なんかまた師匠が遠い人になっちゃったなあ」

俺がそう言うと海未ちゃんは驚いたように顔を上げた。

海未「そんな事はありません!私は私のままです。あなたの近くに居たいと、思っています」

その言葉に今度は俺がびっくりした。

紫音「ど、どうしたの海未ちゃん・・・なんか女の子みたい・・・」

海未「女の子ですっ!一体私を何だと思っているのですか・・・」

寒さだろうか、頬と耳を朱く染めて拗ねたように言う海未ちゃんに、いたずら心を刺激される。

紫音「はは、暴力的な俺の師匠だよ」

海未「うっ・・・その節は反省しております。ですがその、自分でも良く判らないのですが、あなたをことりに取られたくないと思ってから今まで・・・」

そこで海未ちゃんは反省しているような表情から一転、切なさを含んだ潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

海未「スノハレの歌詞を考えていた時も、クリスマスイヴの今日も、ずっとあなたに、傍に居て欲しいと思っていました」

紫音「はは、それは光栄です」

海未ちゃんは近寄り、俺の左手の袖をちょこんと摘んだ。

海未「パーティー後にあなたと会える紅音さんと翠音さんが羨ましくて、会いたいと昨日言わなかった事を後悔して、ミニストッパまで行って、あなたが佳織さん達とプレゼント交換していたのがショックで・・・」

うわ、また見られてたのかよ・・・。

海未「声をかけられず、あなたが疲れているだろうと思うと呼び出す事もできず・・・迷っているうちにここで、少しだけ待ってみようと思いました」

そうか・・・この娘なりに俺に気を使って、だからいつも陰から見られてたりするのか。

だが、この夜が早い季節に一人で外に居たり、大事な体を冷やすのは良くない・・・そこは注意しておかねばなるまい。

紫音「俺もLinerに海未ちゃんの書き込みがないし、どうしても今日、キミにメリークリスマスと地区優勝おめでとうが言いたかったから、会えて良かったよ」

そう言うと海未ちゃんは、俺の袖をぎゅっと掴み直した。

紫音「待っててくれてありがとう。でも人通りがたくさんあるとはいえ、この時間に女子高生がこんな所に一人で立っていたらダメだよ?」

俺の脳裏にはまだ、ことりちゃんの事件が濃く残っていた。

紫音「キミは遠慮なんかしちゃダメだ。俺は疲れてたってキミを守りたいし、呼び出されなくてキミに何かあったら・・・その方が死ぬほど後悔するし心配だよ」

俯いている海未ちゃんの頭を右手で撫でて上を向かせる。

紫音「だからこれからは必ず呼んで。一人で約束も無しに待たないで。判った?」

俺がそう言うと、海未ちゃんは何故か、涙目になった。

海未「どうして、どうしてそんなに優しいのですか・・・ズルイです」

紫音「はは、何言ってんの、俺達まだ恋人じゃないけど友達だろ?当たり前の事でズルくないよ。雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんも入れて、平等だよ」

そう言うと海未ちゃんは、今にも泣きそうな顔になった。

海未「あなたを恋人と、言いたいです。第二回ラブライブは3月2日です。長いですが・・・待って頂けるよう、自分を磨きます」

紫音「はは、東京でトップのアイドルにそんな事言われたら、嬉しいね」

そう言うと海未ちゃんは、涙目のまま拗ねた顔になった。

海未「ことりも穂乃果も皆、トップですから全然安心できません!それにあなたは、どうせ全員に同じ事を言うでしょうから」

はは、違いない。

 

     ■□■

 

俺は海未ちゃんを自宅まで送り届けた。

海未ちゃんからもクリスマスプレゼントを貰った。

自分の部屋に戻ってから開けると中には弓道の足袋とクリスマスカードが入っていた。

海未カード「メリークリスマス いつも本当にありがとうございます。今年はあなたのお陰でたくさんの知らない私を知ることができました。心からの感謝を込めて」とある。

去年の海未ちゃんは知らないが、夏から比べても、すごく変わったと思う。

 

俺はその後も貰ったプレゼントを次々と開けていった。

ことりちゃんからのプレゼントは手編みのスマフォ入れであった。

ことりちゃんのカードには「時間がなくて手袋も編めなかったの。良かったら使って下さい。大好きです メリークリスマス」とある。

スマフォはストラップを付ける所がなくツルツル滑るので、柔らかい袋はありがたい・・・使わせて頂こう。

他にも凛ちゃんからは猫の絵のTシャツ(凛ちゃんとお揃い)、真姫ちゃんからはゴデヴァのチョコレート、花陽ちゃんからはフォートレス&メディスンの紅茶を貰った。

更に絵里先輩からは手作りのネクタイピン、希先輩からは神田明神のお守り(恋愛成就)、にこ先輩からはアイドル雑誌(中古)を頂いた。

すみれさんからは皮製の手袋、佳織ちゃんからはスポーツタオルであった。

雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんからは小さいアロマキャンドルを貰ったのだが、穂乃果ちゃんからのプレゼントはやっぱり手作りほむまんだった。

ちなみに俺は雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんに秋葉原駅一階の店で買ったクッキーをプレゼントしたのだが、穂乃果ちゃんに食べられないよう、今からでもLinerしておこうと思う。

雪穂ちゃん、遅かったらごめん。

 

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