ラブライブ・メモリアル ~海未編~ 作:PikachuMT07
大晦日の夜は親父も入れて家族5人で鍋を食べた。
残りの汁に蕎麦を入れるのが美味しい。
夕食後、妹二人は先を争って風呂に入りきゃあきゃあ大騒ぎしながら服を選び始めた。
どうせコートを着たら見えないのに・・・と思うが、口に出すと恐ろしく怒られるので言わないのが人生を平和に生きるコツである。
ニューイヤーになる1時間前、のんびり歌番組を見ているとやっぱり怒られた。
翠音「お兄さまぁ、お兄さまもおしゃれして。ゆっくりしてないで早くだょ」
紅音「お兄ちゃん、格好悪かったら連れていかないんだからね!早くしてよ?」
俺達はこの後二年参りに行くことになっていた。
妹達の要求も判らなくはないが、コートを着たら見えないと思うのは俺だけじゃないと信じたい。
だが妹達は中のファッションにも手を抜かない事がおしゃれだと信じているのだ。
仕方なく、親父がゴルフコンペの景品で貰ってきたラコスケのタートルネックニットセーターを譲って貰い、ユミクロのヒートテクノカットソーの上に着た。
ズボンは同じユミクロのスキニーパンツである。
その上にいつものキャメルカラーのチェスターコートを羽織り、こんな時の為に買っておいたコートに合わせた色のワークブーツ(中古)を履く。
妹二人は色違いのコクーンコート、ニットのミニスカートに横縞のニーソ、ショートブーツだ。
俺は呆れて二人に物申す。
紫音「お前らまたそんなミニで・・・風呂から出てちゃんと体拭いたか?風邪引くぞ?」
紅音「大丈夫だよっ!中は暖かいの着てるんだから」
翠音「翠音も大丈夫だもん。でもお兄さま、心配してくれて嬉しぃ~」
という返事であった。
まあ2~3時間で素早く帰る事としよう。
■□■
二年参りの俺達桜野兄妹の最初の予定は、亜里沙ちゃんを迎えに行く事だった。
絵里先輩は何か用事があり先に出たそうで、さすがに金髪超美少女の亜里沙ちゃんを、一人でこの時間に歩かせるわけにはいかない故の判断である。
除夜の鐘が鳴る中、綾瀬家のマンションに到着して1分ほど待つと亜里沙ちゃんが登場した。
当然のようにミニスカートだった。
亜里沙「こんばんは~」
桜野兄妹「こんばんは~」
翠音はさっそく亜里沙ちゃんにぴたっと寄り添って仲良く話しながら歩き出す。
俺と紅音は並んで後ろからついていく。
翠音は亜里沙ちゃんと俺達を交互に見ながら少し興奮気味に話している。
翠音「亜里沙ちゃん、かわいぃよぅ~お兄さま、ほらぁやっぱり寒くてもおしゃれするんだょ?」
亜里沙「翠音ちゃんも、紅音先輩もかわいいです!ふふ、紫音先輩も、かっこいいです」
紅音「亜里沙ちゃん、お兄ちゃんはね、言わなかったら超ダッサい格好で来るところだったの。一緒に歩けないくらいの」
亜里沙「亜里沙は~紫音先輩なら普通の格好してくれれば、一緒に歩きたいです」
翠音「だめぇ、だめだよ亜里沙ちゃん。去年までのお兄さまは絵里さんと亜里沙ちゃんみたいな女の子がすっごい好きだったの。すぐ嫌らしい事されるょ」
紫音「おいちょっと、翠音までそんな事を・・・俺は紳士だから変な事とかしないよ、亜里沙ちゃん!今度二人で遊びに行こうか」
紅音「お兄ちゃん!中学生をデートに誘うとか!おかしいでしょう?ヘンタイだよ!」
紅音の抗議にも亜里沙ちゃんは柔らかい微笑みを返してくれる。
亜里沙「ふふ、亜里沙は嬉しいですよ?穂乃果さんや星空先輩を抱き上げた時とか、すっごく憧れましたし~亜里沙もして欲しいなって」
翠音「もぅ亜里沙ちゃんってばぁ・・・困るょ~亜里沙ちゃんは翠音のお友達の中で一番かわいい子なんだからぁ・・・お兄さまが調子に乗ってしまぅ」
紅音「亜里沙ちゃん、そうよ!私がこんなのよりもっと良いの探してあげる」
紅音の発言に、俺はさすがに少し悔しくなった。
紫音「こんなのって俺はモノか!まったく酷い妹だ。もうお前らには優しくしない。妹をクビ。凛ちゃんと亜里沙ちゃんに俺の妹になって貰おう」
しかしその発言が終わると同時に、俺は紅音から腕をつねられ翠音からは脛を蹴られた。
紫音「あ痛っつつ痛ててて!う、嘘です、ごめんなさいお兄ちゃんが悪かったです!」
亜里沙「二人の攻撃、ハラショー!ふふ、紫音先輩、優しいです!」
妹二人は俺を睨みつけ、亜里沙ちゃんを両側から挟んで行ってしまった。
いや思いつきで言っただけだが、なかなか良い案なのでは?と思いつつ、急いで3人の後を追った。
俺達4人はまだ除夜の鐘が鳴り続けているうちに穂むらに辿り着き、雪穂ちゃんと合流した。
雪穂「こんばんは~!明けましておめでとうございます!」
一同「明けましておめでとうございます!」
雪穂「あ、皆さんちょっと遅かったです。海未ちゃんとことりちゃんが迎えに来て、お姉ちゃんは先に行きました!」
雪穂ちゃんの言葉に俺達は、挨拶もそこそこに雪穂ちゃんを加え5人で穂乃果ちゃん達を追って神田明神へ向かう事にした。
神田明神が近くなるに連れ人が猛烈に増え、道は普通の速度で歩くのが困難と言える混雑となってきた。
通りから見ると、神田明神から人が溢れてくるように見えるような状況である。
穂乃果ちゃん達を目視で見つけるのは厳しいように思えた為、俺達は先に5人で明神様へのお参りをする事にした。
30分ほど並んでようやくお参りし、参拝後は人の流れに従い歩き出すと、雪穂ちゃんが聞いてきた。
雪穂「ねえねえ、皆何をお願いしたの?」
亜里沙「亜里沙はねえ、音ノ木坂に入ってμ'sに入れますように!って願いしちゃった」
雪穂「あ、それ私も!お姉ちゃんがいるからちょっと微妙だけど、まさかA-RISEに勝つとは思わなかったし~!西木野先輩とか超かわいいし!翠音ちゃんは?」
翠音「うちはぁお母さまがスクールアイドルって考えに反対しててぇ・・・だから雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんともっと仲良くなれますように、皆で一緒に居られますようにぃってお願いしたの」
雪穂「そっか、お母さん心配してるんだね~確かに西木野先輩とか学校の前で出待ちされてサインねだられたりとか、良くあるらしいよ。うちのお姉ちゃんにはないけど」
亜里沙「亜里沙もお姉ちゃんを待つのに音ノ木坂の正門前に居ると、ファンの子いっぱい見る~」
紅音「A-RISEに勝っちゃったから三学期はすごい事になりそうね。もうμ'sの人はお兄ちゃんの手が届く人じゃないわね~」
相変わらず紅音は俺の恋路を潰そうと考えているようだ。
それならここは、別の恋路の可能性を示すのも良いだろう。
紫音「うー・・・そうしたら亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんに遊んで貰おうかな」
雪穂「うん、紫音さん、絶対お姉ちゃんより私の方がかわいいし、しっかり者です!オススメですよ!」
翠音「もぅ雪穂ちゃんまで・・・翠音はもう一回明神様に、お兄さまが女の子にモテないようにってお願いしてくるぅ」
紫音「や、やめて下さい翠音さま。お兄さまは少し大人しくします」
翠音のその発言に、思わず俺は懇願の声を上げてしまった。
弱いお兄さまに亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんは大笑いしてくれた。
それはそれで、恥ずかしい。
俺達5人は楽しく話しながら歩き、多数の絵馬が掛かる絵馬掛所の前を過ぎて社務所の横に入った。
多数の人で混雑している中「良くその人に気付いたな」と最初は思ったが、良く見ると気付かない方がおかしい。
亜里沙「お姉ちゃん!」
亜里沙ちゃんが駆けだし勢い良く抱きついた巫女さんは、なんと絵里先輩である。
俺の大好きな金髪碧眼、抜群のスタイルを紅い袴の巫女服に包んだ絵里先輩の目立ち方は、尋常ではなかった。
俺は興奮を抑えきれなくなった。
紫音「え、絵里先輩、明けましておめでとうございます!すみません、ちょっと写真良いですか?」
絵里「あらショーン、明けましておめでとうございます。今年もよろしくね。皆揃って、亜里沙と来てくれたのね。ありがとう!」
絵里先輩の優しい微笑みを写真に収めたくて仕方ない俺は、あまり周りを見ずスマフォを構えアングルを検討しだした。
にこ「ちょっとあんた、何勝手に撮ろうとしてんのよ。巫女は許可を得て撮影よ。特にこのにこ様は東京トップのスクールアイドルの巫女コスなんだからね!金取るわよ」
そのセリフと共に突然どアップで画面に入ってきたにこ先輩に、ビックリした俺の手が画面に触れ、スマフォがシャッターを切った際の軽やかなメロディーを発した。
紫音「うげっ」
にこ「ああっ!今、この宇宙一のアイドルにこ様の巫女服コスプレを撮影したわね!今すぐ五千円よ!しかもあんた、今ウゲ!って言ったでしょ!」
紫音「に、にこ先輩明けましておめでとうございます。い、いや宇宙一のアイドルがいきなり写ったからビックリしただけですよ!出来れば全身が入るようにもう一枚撮りたいんですけど・・・料金は500円に負けて下さい」
とりあえずにこ先輩を満足させないと絵里先輩の撮影には至れないと判断し、俺はにこ先輩を本気で可愛く写るよう撮影する事にした。
スマフォを構えるとにこ先輩は次々とセクシーポーズ(なんだろうな、きっと)を取る。
にこ先輩の相手、大変だ・・・誰か助けてくれないかな、と思って周りを見ると、妹と中学生チームはいつの間にか消えていた。
仕方なく俺は撮影を続行する。
心はそれほど乗り気ではなかなったが、にこ先輩ははっきり言うと顔は十分に整っていて、小顔なので相対的に目はすごく大きくパッチリとしてかわいい。
写真には性格が写らないので、そのうち俺はにこ先輩を夢中で撮影していた。
今日は草履なので背はいつものままだが、10cmヒールを履きこなせれば、にこ先輩は巫女服だけでなくミニスカートでもメイド服でも何でも似合うに違いない。
撮った写真を画面に呼び出して見せると、にこ先輩はかなり満足したようで、こう言い放った。
にこ「紫音、あんたなかなか上手に撮るじゃない。伊達に半年もμ'sのスタッフをしてないわね。後でこれ、にこにメールしなさい。それから撮影料は五千円よ。元旦なんだから良いでしょ?明けましておめでとう」
うう、やはり撮影料は負ける気がないらしい・・・元旦は関係ない気がするし、そもそも凄い理論だ。
ここは反論せざるを得ない。
紫音「えーと先輩、アイドル写真屋だってにこ先輩の写真、400円が良いところですよ?ちょっと高過ぎますよ」
希「にこっち~巫女服撮影させてお金取ったら商売やんな?明神様のアルバイト中にお金儲けして良いと思ってるん?」
俺達の会話に割って入ったその声に、今度はにこ先輩が呻く番だった。
にこ「うげっ希」
希「それに、巫女服は明神様の備品なんよ?それをお借りしてるんやからレンタル料も払わんとね~」
にこ「わ、判ったわよ。紫音、じゃあ写メだけで許してあげるわ。感謝しなさい!まったく悪運の強い子なんだから」
素晴らしい天使の登場ぶりに俺は感激した。
いや待て、ここは明神様なのだから天女様の登場である。
希先輩はにこ先輩を仕事に戻し、いつものいたずらを考えてるような微笑みを浮かべ、話かけてきた。
希「うふふ、紫音くん、明けましておめでとう!ウチはタダで撮影してええよ~可愛く撮ってくれたら、ウチの事わしわししてもええよ!」
紫音「希先輩!明けましておめでとうございます!いや元旦から助けてもらってありがとうございます!頑張ります」
わしわしと言うのが何だかは知らないが、タワシみたいなモノで擦る感じだからブラッシングかな?俺はそう思ったが深くは考えなかった。
にこ先輩から交代し、今度は希先輩の撮影会と相成った・・・これは元旦から嬉しい。
希先輩の巫女姿は見慣れているが、着こなしは自然で立ち姿は美しく、なかなか撮影の機会もないので集中して撮影した。
撮影した画像を見せると、希先輩は左前からのバストアップ写真を特に気に入ってくれたようだった。
希「うん、ええやん。じゃあ紫音くんは後でウチをわしわしする権利をゲットやね!」
紫音「おお、何だか良く判らないけど、良かったです。では続きまして、絵里先輩の撮影を希望したいのですが・・・」
先ほどにこ先輩に割って入られ絵里先輩を見失ってしまっていたが、希先輩にも協力してもらい、荷物を運んだり参拝客に絵馬の掛け方を教えたりしている絵里先輩を見つけた。
俺は希先輩の口添えをもらい、更に拝み倒して何とか巫女バージョンの絵里先輩撮影の許可を貰った。
絵里「ショーン、恥ずかしいし仕事中だから、少しだけよ?」
紫音「はいっ!ありがとうございます!」
絵里先輩の巫女姿は一生に一度の可能性も充分にある、レア条件である。
俺は後悔しないよう、一枚一枚を大切に、アングル変えて何枚か撮影した。
よし、ここは勢いで、もっと核心に迫るショットに挑戦するしかない・・・。
絵里「・・・そんなに近くで撮るの?ショーン、恥ずかしいわ」
紫音「あ、一枚だけなんで、目線お願いします」
絵里先輩が上目遣いでこちらを見るのを、俺はチャンスを逃がさず撮影した。
これは・・・至高(嗜好)の一枚だろう。
紫音「絵里先輩、すっごく綺麗で・・・かわいいです。ホントは最初から憧れてました!あの、もう一枚今度は横顔で・・・」
欲望全開でそう言う俺の唇に、絵里先輩は左手の人差し指を当て、スマフォを物つ俺の左手を、右手で自分の胸に押し付けた。
絵里先輩の大きくて柔らかい胸に、俺の左手が当たっている・・・が、人差し指で口を塞がれ、声を上げる事が出来ない。
その状態で絵里先輩はウィンクしながら俺に優しく言った。
絵里「ショーン、私に夢中になってくれるのは嬉しいけど、あなたにはもっと大事にしなければいけない人が居るわ」
そう言うと、絵里先輩の視線は俺の背後に移った。
そこでようやく、俺は自分の背中に刺さる殺気に、今更ながらに気が付いた。
恐る恐る振り返ると、そこには妹チーム4名とμ'sの1・2年生、合わせて10名の女の子が勢揃いしていた。
これはもう、笑うしかないだろう。
紫音「あは、あははは。皆さん明けましておめでとうございます・・・」
海未「あ・・・挨拶の前に絵里の胸から手を放しなさい!」
紫音「は、はいっ~!」
海未ちゃんからすごい剣幕で怒られた。
真姫ちゃんだけは呆れ顔(なんと振袖)、花陽ちゃんはオロオロ、雪穂ちゃんは苦笑しているが、後の娘は全員がお怒りモードである。
元旦から俺、大ピンチだ。
絵里「あらみんな、甘酒はどうだったの?あ、海未?この手はね、ショーンがあんまり撮影を止めないから・・・」
しかし絵里先輩の言葉はお怒りの方々の耳には入らないようだった。
穂乃果「しょーくん!絵里ちゃんに嫌らしい事しようとしたの!?はっきり言って!」
うぐぐ、絵里先輩のフォローも聞いてもらえないのでは助かりようがない・・・神も仏も居ないのか?あ、明神様はここに居るが、ちょっと今忙しいのかもしれない。
そんな事を考えながら絶望的な状況の回避策を考えていた俺に、雷光のように啓示が閃いた・・・明神様は忙しくても、さっきそこに天女様が居たではないか。
紫音「あ、そうだ、思い出した!絵里先輩、撮影ありがとうございました。じゃあ俺、希先輩をわしわしする約束あるから行くね!じゃあねみんな!」
この前漢文の授業で習った「三十六計逃げるに如かず」というヤツである。
手を振ってその場を去ろうとする俺の腕を、絵里先輩がはっしと掴んだ。
絵里「待ってショーン。希に、何をするんですって?」
紫音「はい?えーと、わしわしする、って言ってましたよ」
絵里先輩は辛抱強く、問い直した。
絵里「誰が、誰をわしわしするの?」
紫音「ええ?えーと、俺が希先輩の写真を綺麗に撮ったから、俺が希先輩をわしわしして良い権利があるって言われました」
一同「ダメ~~~~~!!!」
言い終わった瞬間、俺は駆け寄った女の子一同に揉みくちゃにされ、アチコチ引っ張られ脚を蹴られ踏まれて、体中叩かれつねられボロボロになってしまった。
どうしてこんな事に・・・誰か助けて・・・。
最終的に希先輩共々こっぴどく怒られたのは言うまでもない。
真姫ちゃんの振袖姿の撮影を逃がしたのは、一生後悔しそうである。