クラフィ/Aliceの夢の物語り 作:クラフィ好きのサイヤ人
ミクイベでハッチャケた数日後、新しい小説を考えるある日、俺は式部にとある提案をした。
その提案とは、身体を借りる力を持ったその青年が、その力を駆使して敵と戦うという設定の小説だ。
「ふむふむ……なかなかいい設定じゃないの」
「ありがとうございます!」
俺の考えた設定を、式部は快く褒めてくれた。
なんだかんだ言って小説に直接関わるのはこれが初めてだったので、とても嬉しく思った。
「男視点か〜……私、女だから男の子のことよく分からないな……そうだ! あなたがその小説書いてみない?」
と突然式部が持掛ける。が、いままで小説を書いたことがなかった俺は
「い、いえ、今まで小説なんて書いたこともないですし……」
と、遠慮した。
「大丈夫! 私の助手をしているあなたならだいたいは書けるだろうし、小説家達の中で流行ってるピクリスっていう創作系SNSを使えば簡単に投稿出来るわよ」
「へー、やってみようかな……先生はそのアプリ使わないんですか?」
「ええ、私はアナログ派だからね」
その日をきっかけに、俺は式部に質問やコツを聞いたりしながら地道に小説を書き進め、ピクリスに投稿をし始めた。
そのSNSがある事件を引き起こすということも知らずに。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから数日後の朝、ラフな服装の式部は、青い半透明のボードを軽く触り、映像を映し出す。
その映像には、ニュースキャスターらしき人物とテロップが映っていた。
どうやらこれはテレビのようだ。
『次のニュースです。えー、Aliceの創作系SNS、通称ピクリスにて、作家と作品の情報が融合して大きな力が生まれてしまうという事件が発生しました』
「え!? て、ことはまさか助手クン……大変!」
焦った式部は俺の部屋のドアを乱雑に開け、俺の安否を確認する。
「じょ、助手クン! まだ融合は始まっていないみたいね……」
「ん? 先生……どうしたんです?」
式部の声で起きた俺は、寝惚けながら重いからだを起こした。
最近初音ミクにハマっていて、昨日は深夜の1時頃までミクの曲を聞いていた。
お陰で気持ちよく寝れたが、まだ5時なのに式部に起こされ目の下にはクマができていた。
「助手クン、いますぐあなたの書いている小説を全て消して!」
「え、どうして!?」
「いいから早く……ってあれ、助手クンは!?」
「か、身体が透明になってる!? 先生、どういう事だ!?」
その驚きの状況に、俺の眠気はすっ飛んで行き、代わりに焦りと不安が心の中に芽生えた。
「まさか、融合を……」
「先生? ……俺の声が聞こえていない」
「まだ前にいるはず……とりあえず、この状況を説明するわ」
式部はピクリスの事件について話し、俺はさっきよりもひどく驚いた。
小説内の力を持つものがたくさん現れるという事で驚いたのもあるが、今自分が、身体を借りる力を持っているという事で驚いたのもあった。
「つまり、今の俺は身体を借りる力があるのか……」
「仕方ないから、私の身体を貸してあげるわ。ただし、変なことしないでよね?」
「もちろん。たしか小説だと飛びこむようにすれば借りれるんだったよな……それ!」
俺は彼女に向かって、勢いをつけて飛びこむようにぶつかる。
すると、声は式部の声で、目の前には式部の手があり、服は式部と同じ服を着ていた。
どうやら身体を借りるのを成功したようだ。
「ふぅ……にしても、身体を借りないと会話すらできないって不便な能力だな……」
『他の、ピクリスに小説を投稿した作者達も小説内の情報と融合してると思うわ』
心の中から、式部の声が聞こえてくる。
その時、遠くで大きな爆発が起こった。
「な、なんだ!? まさか融合した作者が……?」
『とりあえず行って!』
「は、はい!」
俺は爆発が起きた現場まで向かって走っていった。
その様子を金髪の少女、アリスが眺めていた。
「厄介なことになったわね……いや、彼の能力があればあの人達を……」
と言って、どこかへとその場を去っていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「確かこの近くだよな?」
さっき爆発が起きた現場に到着する。
すると俺の後ろで、2度目の爆発が発生した。
その近くで、路地裏から爆発の様子を見る者がいた。
俺がそいつを見つけると、そいつは路地裏の奥へと走っていった。
「あいつがやったのか……!」
『助手クン、他の人と話す時は私の喋り方で話してよ』
「え? あ、ああ」
式部の忠告を聞きながら、俺は路地裏へと進む。
すると、堂々と爆発を起こした犯人が立っていた。
「お前……じゃなくて、あなたがあの爆発を起こしたのね?」
「ああそうさ。ボクは世界を鮮やかに染め上げるんだ」
そう言った彼は、葉っぱのような緑色と、レモンのような色の髪だった。
彼の目は狂気に染まっており、右手にはダイナマイトが収められていた。
そんな彼に当てはまる言葉は、危険人物という言葉以外ないだろう。
「これはとびっきりの爆弾さ。君も一瞬で木っ端微塵になるほどのね。さぁ、君も鮮やかに染め上がれ!」
「や、やべぇ!」
危険を察した俺は、彼に背を向け路地裏から逃げようとする。
だがその時、ダイナマイトからピーという高い音が出て、その直後に凄まじい爆発音と共に辺りは黒煙と爆炎に包まれた。
なんとか爆発する寸前に、氷でバリアを張ったので即死レベルのダメージは免れた。が、大きなダメージをくらってしまった。
気がつくと、連続爆破事件の犯人はもうそこにはいなかった。
「……くっ、氷でバリアを張ったのにどうしてこんなにダメージが……?」
『たしか小説の設定だと、身体を借りてるとダメージが2倍になったはず』
「そういやそんな設定あったな……」
「動くなッ!!」
俺はぎこちなく身体を起こしたその時、路地裏の入口の方から雄々しい女の人の声が響きわたった。
「両手を上げて足を地面につきなさい!」
ピクリスに小説を投稿して融合した作者が襲ってきたのかと思い、俺はその声に背を向けながら手を上げ、足をついた。
チラッと後ろを見ると、拳銃を構えたキリッとした目の女性が立っていた。
彼女はブレザーを着ていて、紺色の髪が風に靡いている。
『か、彼女は円卓の騎士のパーシヴァルさんよ!』
「円卓の騎士!?」
突然心の中で、式部が叫んだ。
それにつられて、つい俺もそう叫ぶ。
「ええそうよ。キャメロット城まで来てもらうわ」
キャメロット城というのはアーサーが築いた城で、そこを拠点とし多くの戦いに出陣している城だ。
「いや、おr……私はただ爆弾魔を捕らえようとしたんだけど、返り討ちにあっただけで……」
「む、紫式部さん!? ……事情は知らないけど、とにかく城に来るということは変わらないわ」
式部のことは全国的に知られているようで、その彼女に会えて動揺しているパーシヴァルは一瞬言葉を失った。
『とりあえずここは城に行くしかないわ』
「……分かりました」
俺は犯罪者のようで抵抗があったが、渋々パーシヴァルのあとに付いていき、キャメロット城まで向かった。