GOD EATER 防衛班の終極   作:アマゾナイト

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前話のそのまま続きです。


Because everyone is doing it 4

新型神機兵7機を相手に、タツミ、カノン、ブレンダンは最後の戦いを挑む。

タツミがスタングレネードを放つ。最後の一つ。

 

「今だ!」

 

100万カンデラの閃光と大音響によって、神機兵達は突発的な知覚麻痺に陥る。

ブレンダンは一番手前の神機兵の武器破壊を狙う。

だらしなく垂れ下がった腕の神機に照準を合わせる。

 

(もらった!)

 

ブレンダンは攻撃に入る前に、頭の中で神機を振るうイメージをする。

しかし、そこである違和感を覚える。

スタングレネードにより麻痺しているはずの神機兵の双眸が、こちらをしっかり捉えていたのだ。

そして、掬い上げるようにして剣を振るってくる。

 

(まさか、フェイント……!)

 

これまでスタングレネードは何度も使ってきた。

その何れも効果があり、今回も効いたと確信していた。

だが、あろうことか、神機兵はスタングレネードに「対応」し、わざと効いているように見せかけてカウンターを狙ったのだ。

ブレンダンは慌てて神機を停止させる。

瞬時に装甲を展開して後ろを向き、神機を背負うように構えてガードする。

パリングアッパー。

素早い装甲の展開が可能なバスターブレードのみが使える、特殊な防御アクション。

ブレンダンは神機兵の攻撃をしっかり抑えると、すぐに装甲を解除し、そのまま流れるような動きで身体の右下から神機を回転させるようにして振り上げる。

カウンターに対するカウンター。

咄嗟の判断による切り返しが極まる。

バスターブレードが神機兵の胴体を裂く。

 

「ゥゥウウ……」

 

神機兵はよろめきながら後退する。

傷つけられた肉体から体液と肉片が飛び散る。

この状況でブレンダンは、これまで通り、敵を傷つけずに戦おうなどとは思えなかった。

自分はなんとか凌いだが、未だタツミとカノンはスタングレネードが効いていると信じている。

二人に早く伝えないといけない。

 

「おい! 気をつけろ! こいつら――」

 

ブレンダンが振り返った時には既に、神機兵がカノンにむけて弾丸を放っていた。

突然の不意打ちにカノンは驚くが、反射的に横に転がる。

辛うじて直撃は避ける。

だが、肩と脇腹に銃弾がかする。

 

「うっ……」

 

少しだけ呻きを漏らすカノン。

だが、転がりながらもなんとか体勢を立て直す。

片膝を立てて身体を地面にしっかりと固定し、バレッドを切り替える。

 

「そらっ!」

 

反動に揺れながらも、高威力のバレッドを放つ。

神機兵達はカノンの攻撃を避け、散り散りになる。

 

 

 

一方、スタングレネードを放つと同時に敵の中心に飛び込んだタツミには、神機兵3機が同時に襲い掛かってきた。

神機兵達はその絶大な膂力と高度な連携で、圧倒的な破壊力の剣撃を、止まることなく無限に繰り出す。

振り下ろされる斬撃が、巨大な瀑布の如くタツミを襲う。

 

「……っ……クソ!」

 

こちらが攻撃を仕掛ける番だと思っていたのに、スタングレネードに「対応」され、逆に不意を突かれた。

ただでさえ思考が混乱しそうなのに、激しい攻撃を乗り切るのに精一杯である。

周りなど気にする余裕などなく、縦横無尽にステップし、なんとか避ける。

そして、いつの間にか壁まで追い込まれる。

不意に背後に現れた障害物に、タツミは一瞬気を取られる。

それが、致命的なミス。

死角からの薙ぎ払いに、少しだけ気付くのが遅れる。

装甲の展開は間に合わず、反射的に差し出した神機で抑えようとする。

しかし、肉体から武器まで悉く質量で劣るタツミは当然の如く押し負け、5m以上吹き飛ばされる。

神機兵の一撃は凄まじく、タツミを飛ばすのと同時に、背後の壁も抉ってしまう。

 

「ぐっ!」

 

受け身に失敗し、肘を地面に強打してしまい、激痛が走る。

早く起き上がらないと次の攻撃が来る。

だが、落下の衝撃で身体が軋み、思うように動かない。

なんとか頭だけを上げ、神機兵達を捉える。

すると、彼らはタツミに攻撃を仕掛ける絶好の機会であるにも関わらず、こちらに見向きもしないで、崩れた壁の穴を見つめていた。

その小さな穴から、壁の向こう側が少しだけ見える。

外部居住区。

人々の生活する場。

 

「ゥ……ウウグオォ!」

 

それを見た途端、神機兵達は突然叫び出し、そして壁に剣を突き立て始めた。

何度も何度も、狂ったように剣を突き刺す。

初めは小さな穴が、少しずつ広がっていく。

 

(何……やってんだあいつら……!)

 

まさか。

タツミは思い出す。

新型神機兵には、その連携力の潜在能力を引き出すために黒蛛病患者の人格がインストールされている。

その患者には当然、外部居住区に住んでいた者もいる。

その人たちが、人格を写し取られた時のことを考える。

つまり、ラケル博士によってフライアの隔離施設に移された時、彼らが一番に思っていたことを。

それはやはり「帰りたい」という思いなのではないか。

もちろん、早く病気を治し、苦しみから解放されたい、という気持ちはあっただろう。

だが、その願いの先には、家族や、友人ともう一度会いたい。あの場所に「早く帰りたい」という希望があったはずなのだ。

 

(…………)

 

帰巣本能。

もし、その強い思いがあの神機兵達に写し取られたとして。

彼らが帰郷の喜びで、打ち震えているとするなら……。

 

「くそぉっ!」

 

タツミは飛び出す。

……神機兵に自分達と変わらぬ「気持ち」というものがあるとして。

彼らの心に、純粋な願いがあるとして……。

それでも……。

それでも、壁を崩されるわけにはいかない。

外部居住区に住む人々を不安にさせるわけにはいかない。

それはタツミの中で既に決定されたことで、覆しようのない定理のようなもので。

どうしようもないくらい、止まれないことなのだ。

極東支部を守るためなら、どんな相手でも戦う。

例え、それで相手の純粋な願いを踏みにじるとしても。

この時、タツミは「戦う」ということの意味を初めて理解した。

「人々を守る」自分達は……、

「この星を守る」ため戦うアラガミと、何ら変わらない……。

――タツミが近づいた時には既に、人が通れそうなくらい穴は広がっていた。

神機兵はタツミに気付くと、上段から剣を振り下ろしてくる。

タツミは装甲を展開し、振り下ろされる剣の軌跡とほぼ平行になるように差し出す。

神機兵の剣とタツミの盾が重なるも、盾の僅かな傾斜を滑るようにして剣の軌道がずれる。

結果として、神機兵の剣はまるで空振りしたかのように地面に刺さる。

タツミは自分の神機を、地面に刺さった剣の上に置き、力を込める。

神機兵は慌てて、剣を引き抜こうとする。

すると、タツミはその引き上げられる力を利用して、ブラッドアーツを放つ。

「フェイタルライザー」。地上から空中へと素早く斬り上げるショートブレードの特殊アクション「ライジングエッジ」の進化した技。

切り上げと同時にオラクルの刃が発生し、神機兵を刻む。

顔と胴体を滅多切りにされた神機兵は、仲間の足元へと倒れる。

それを見て、残った神機兵が叫び、タツミに怒りの目を向ける。

――戦場は混沌と化していた。

銃弾を撃ち続けるカノン。

敵に張り付き、果敢に攻めるブレンダン。

烈しい攻撃を「技」でいなすタツミ。

それぞれが全員、走り、転がり、腕を振り、力を込め、その瞬間にしかできない全力を、何度も繰り返す。

極度の疲労は当然のこと。

タツミは、腕や足の筋肉が冷たくなったような感覚に襲われる。

 

「はあっ! はあっ!」

 

肉体の消費に、呼吸が追いつかない。

それでも、止まらない。

敵の連撃を、捌く。捌く。捌く。

あまりに激しい呼吸に、喉が裂ける。

口の中が血の味がする。

同時に、強烈な嘔吐感に襲われる。

たった数秒が、何時間にも感じる。

それでも、なお剣は振るわれる。

なんとか躱す。

その行いは、最早タツミの意志によるものではなかった。

空っぽ。ただの作業。

生きる機構。原初の生命活動。

次第に、視界が曇りだす。

気付いた時には、音も痛みもどこかへ消えていた。

暗闇で戦っているような気分。

最早、何をしているのか上手く認識できない。

しかし、傷が増えていくのは分かる。

二の腕が深く斬られる。

殴られ、肋骨が折れる。

無理な体勢で左足の腱が切れる。

とうとう、タツミは地面に倒れ込む。

しかし、なんとか片膝を立てる。

神機兵が剣を叩きつけてくる。

それを片足で這うようにして身体をずらして、なんとか避ける。

そこに、神機兵が水平に剣を振るってくる。

――動けるのは、これで最後。

 

「……」

 

タツミは神機を握った、震える右手を掲げる。

最早盾にもならない、ただの飾りのように構えるだけ。

だがそれが、最後まで生き足掻く者の証だった――。

 

……

…………

…………………

 

唐突に、戦場に静けさが訪れる。

 

「…………」

 

止まっていた。

神機兵全機が、その動きを止めていた。

カノンに銃を撃ち、ブレンダンと激しい攻防を繰り広げ、タツミを襲っていた神機兵が、そのままの体勢で、固まってしまっていた。

 

(…………)

 

終わった……のか。

タツミは頭がぼうっとして、今一つ状況を把握できない。

聞こえてくるのは、自分と仲間の荒い息遣い。

パチパチと燃え続ける火の気。

バランスの悪い体勢で停止した神機兵が、倒れる音。

すると、いつの間にかタツミの耳から外れて転がっていたイヤホンから声がする。

 

『別働隊が任務を達成したようです! 全ての神機兵が停止しました! 皆さん、無事ですか!!』

 

静まり返った戦場に、ヒバリの声がよく響く。

少し離れた所にいるブレンダンが、額の汗を拭いながら答える。

 

「こちらブレンダン。問題ない」

 

カノンが肩で息をしながら答える。

 

「ハアッ、ハアッ、……カノン……大丈夫です……」

 

タツミはとても返事をする余裕がなかったため、大の字に寝転んで、激しい呼吸を繰り返す。

それが聞こえたからか、タツミが返事をしないからか、ヒバリが叫ぶ。

 

『タツミさんは!!? 大丈夫ですか!』

 

あ、こんなに慌てたヒバリちゃん、珍しいな。

タツミは思う。

いつも冷静に、テキパキミッションをこなすのに、こんな自分の心配をしてくれるのが、少しだけ嬉しい。

そしてなんだか心地いい。

ついさっきまで、生きているのか死んでいるのかわからなくて、それでも今は、しっかり生きているのだって、そう思える。

けど、彼女を不安にさせ続けるのも申し訳ない。

身体中が痛いけれども、元気な声を聞かせたい。

まあ、喉が潰れて上手く声が出ないかもしれない。そう思ったが、ちゃんと返事はできた。

 

「ああ……大丈夫だよ。……ヒバリちゃん」

 

ため息のような、それでいてじりじりと暖かみのある声が、イヤホンから漏れる。

 

『……よかったぁ……』

 

それは歴戦のオペレーターにあるまじき、ひどく心の緩んだ声だった。

 

こうして、防衛班と新型神機兵の幕は閉じる。

防衛班が極東支部を守り切るという勝利を収めて……。

 

――だが。

この時は、まだ誰も知らなかった。

防衛班の終極が、まだ始まってもいないことに。

 

「彼女」の叡智はここから真価を発揮する。

ここに、究極の犠牲が産んだ、終極の兵器が目を覚ました。

 




GODEATER ONLINE配信されましたね。
新たなストーリー、楽しみです。


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