ゼロから始める瀟洒な異世界生活   作:チクタク×2

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 第二章の第一話になります。

 活動報告で、新しいお話の投稿が来週末になるかもと記載しましたが、どうやら嘘だったようです。来週に向け書いていたのですが、暫く改訂作業ばかりやっていたせいか、新しい話を書くのに飢えていたようで、筆の進みが順調だったようです。

 まあ、今回は大きく話が進むわけでもないのでお気楽に読んでください。最後まで読めばタイトルの意味も分かるでしょう。


第2章
第一話:最悪の目覚め


 そこは闇に包まれた空間だった。

 咲夜は、ふと気づくとそこに一人で立っていた。

 どちらの方向が上か、下か、自分の向いている方向は正面か、後ろか、分からない、ただただ、闇に包まれていた場所だった。

 すると、前から光が差して、ある光景が見えてくる。

 そこは盗品蔵の光景だった。

 もっともラインハルトの剣圧により、全てが吹き飛ばされ、残骸が散らばった後の場所だったが。

 

 ———ここは……、そうか、私は盗品蔵でエルザと戦っていたのよね。確か。

 

 咲夜は、先ほどまでの自分の記憶を思い出し始める。

 盗品蔵にてスバルたちとともにエルザと生死を懸けた戦いをしていた。

 そこにラインハルトが救援に現れた。

 

 現れたラインハルトの力は凄まじく、あのエルザさえも歯牙にもかけない強さだった。

 そしてラインハルトは、剣を振り下ろした。

 ここはその後の光景だ。 

 

 そこまで咲夜は記憶を思い出す。

 すると、その場の光景にラインハルトやスバルたちの姿も見えてくる。

 そうだ、私たちは助かったのだ。

 でも、何かを忘れているような……。

 咲夜は、そう考えていると、瓦礫に隠れているエルザに気付く。

 

 咲夜の体は咄嗟に動いていた。

 手にはククリナイフがいつの間にか握られていた。

 エルザはエミリア目がけて飛び出している。

 スバルがエミリアを庇って体を前に出す。

 

 咲夜はそれを見て必死に駆ける。

 しかし、足をいくら前に出しても間に合わない。

 咲夜の手が届く前にエルザがスバルをククリナイフで突き刺す。

 「あ…‥」と、咲夜は思うも、エルザは刺したククリナイフを体から引き抜く。

 咲夜は目の前で、刺された箇所から対象に血を流しながら倒れていくスバルを呆然と見る。

 スバルの体がこちらの方に倒れ、咲夜は咄嗟に体を抱きこむように支える。

 

 ———そう、間に合わなかったのね。またやり直し。

   でも、スバルには死に戻りがあるから、またやり直せば、いい。

 

 咲夜はスバルが苦し気に死んでいくのを、どこか他人事のように見ていた。やり直せばいい、と頭で考えて。

 

「そう、今度も間に合わなかったのね」

 

 咲夜は、ふと、声をかけられる。

 それは女性の声をしていた。

 そして、その声はすぐ目の前からした。

 咲夜は、倒れ、支えたスバルの体だったはずのものが、スバルの体ではなくなっていることに気付く。

 そしてそれは良く見慣れた人物のものだった。

 

 服と同じ紫色をした図書館の魔女。

 己の抱えている体はパチュリーになっていた。

 そしてパチュリーは顔を咲夜に向け、目の部分が空洞になっている状態で、咲夜を見つめ、口から血を流しながら言った。

 「また、間に合わなかったのね」と。

 

 

******************

 

「ああああっ!!?」

 

 咲夜は叫びをあげ、体を起こした。ハア、ハア、と息を荒げなげる。

 体はぐっしょりと嫌な汗をかいていた。

 そこに横から声をかけられる。

 

「大丈夫!!?」

「ひっ!?」

 

 咲夜はすぐ横からかけられた声に驚き、思わず怯えの声を上げてしまうが、声をかけた人物の髪色が銀色であることに気付く。

 

「落ち着いて。もう大丈夫だから」

 

 また、声がかけられる。

 先ほどとは異なり、相手を落ち着かせるようなゆっくりとした口調で言われる。

 そこでようやく、咲夜は横にいる人物がエミリアであることに気付く。

 それと同時に自分がベットにいることも。

 

 どうやら自分は夢を見ていたようだ。

 そのことが分かると同時に、他人に恥ずかしい姿を見せてしまった事実に思わず赤面してしまう。

 「恥ずかしい姿を見せたわね……もう大丈夫」そして消え入るような小さな声で、彼女に謝罪する。

 

 エミリアは、咲夜の落ち着いた姿を見て安堵する。そして、ベッド横のテーブルに置いてあったグラスのコップに、水を注ぎ、咲夜に差し出す。

 

「喉乾いたでしょう?これでも飲んで」

「ありがとう」

 

 咲夜は、羞恥心がまだあるのか、顔を赤らませながらも素直にエミリアからコップを受け取り、水を飲む。冷たい水により、喉が潤う。冷たい水の温度は、咲夜の火照った体を冷まし、また思考もハッキリと覚ます。咲夜はコップに注がれた水を全て飲み干し、「もう大丈夫」と、コップをテーブルの上に戻す。

 

「えっと、まずは自己紹介からね。わたしの名前は十六夜咲夜。あなたは、……エミリアと言ったわね」

「あ、うん。わたしはエミリア。盗品蔵のことは覚えている?」

「ええ、覚えているわ」

 

 咲夜は、既に盗品蔵であったことを完全に思い出していた。

 あの後、夢とは違い、咲夜は間に合った。

 咲夜はエルザの攻撃を防ぎ、スバルは助かった。

 その後、攻撃に失敗したエルザはそのまま逃走。

 全員が無事であることを確かめ、談笑していた。

 そしてそのとき、スバルが――。

 

「スバルは、スバルはどうなったの!?」

 

 思わず、咲夜は体を乗り出してエミリアに問う。

 これ程までに苦労したのだ。

 他人に恥ずかしい姿も見せてしまったのだ。

 無事でいなきゃ、ただじゃ済まさないわよ。と咲夜は、スバルに対し、若干の逆恨みのも交え恨みの念を贈る。

 この時、冷静に考えることができれば、時間の巻き戻りが起きていないことでスバルの無事、少なくとも死んでいないことに気付けただろうが、寝起きや動揺していたこともあり、咲夜はそこまで頭が回らなかった。

 

「大丈夫。無事だよ~」

 

 そこに中性的な声で返事が返ってくる。

 エミリアの長い髪に隠れるようにして出てきた、

 妖精、パックによるものだった。

 彼は、咲夜の様子を楽し気に見ながら、現れる。

 

「そう、なら良かった」

 

 咲夜はホッと息を吐く。

 その様子を見てエミリアもクスっと、笑う。

 笑われ、思わず「なによっ」という、視線を咲夜がエミリアに向けると、エミリアは「ごめんなさい」と謝罪し、理由を話してくれる。

 

「お似合いだな、と思って」

「な、何が……?」

 

 お似合い、つい最近も聞いたことのあるフレーズに咲夜は嫌な予感を感じながら、エミリアに恐る恐る聞く。

 エミリアはそんな咲夜の姿に安心させるように「大したことじゃないの」と、前置きして説明する。

 

 盗品蔵で咲夜が気絶した後の話だった。

 あの後、スバルと咲夜をどうするか、ラインハルトと話し合ったらしい。

 ラインハルトはスバルと自分も含め、客人として保護する、と申し出たのだが、スバルに関しては、エミリアが、自分のせいで迷惑をかけたから、と引き取ることにしたらしい。

 ならば、咲夜だけでもとラインハルトは考えたらしいが、そこでフェルトから「姉ちゃんは、そこの兄ちゃんの彼女らしいぞ」と、一言があったので、恋人同士を引き離すのはどうかと、言う話になり、咲夜もエミリアに引き取られることになったらしい。

 その顛末を聞き、咲夜は思わず絶句するも、エミリアは話を続ける。

 

「でね、咲夜さんはすごく美人でしょう?スバルはあんな人だし、正直どうかな?と思っていたのだけれど……」

「君のスバルを心配する姿を見たらね……」

 

 エミリアの言葉の続きを引き継ぐようにパックが言い、エミリアが最後を締める。

 

「すごーくお似合いだな、と思ったの」

「ラブラブだね~。可愛い女の子にあんなに想われているなんて、僕も思わず羨ましいと思ってしまったよ~」

 

 咲夜は顔を赤くし、俯く。

 傍から見てそれは照れているように見えたが、果たしてそれは本当に照れているためか、それとも怒りによるものか。

 スバルもどうやらここにいるらしい。

 咲夜は、スバルと会話しなければならないことが一つ増えたと、忘れないよう心のメモ帳に書き殴る。

 そして咲夜は、俯いていた顔を上げる。

 顔からは赤みが消え、ただ一つ笑顔があった。

 まずは、誤解を解くことが優先だ。

 

 かくして、咲夜の迎えた目覚めは、二人の誤解から解くことから始まった。




 第二章、ロズワール邸での目覚めからの開始です。もしかしたら、ラインハルトの場所からスタートするのでは?と思った人もいるかもしれませんね。あえてもやもやするような形で話を切りました。
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