やっと咲夜さんがスバルくんに質問できる時が来ましたね。
ここまで長かった……
双子のメイドも部屋出て行き、部屋には咲夜と、微妙に興奮している様子のスバルが残った。
咲夜はこれまでのスバルの発言から、スバルが自分と同じく異世界から来た人間か確かめようとしていた。
「部屋に残ってもらった理由だけど、スバルに聞きたいことがあったからよ」
「……え!? き、聞きたいこと?……もしかして、咲夜は俺に何か聞きたいことがあって、呼び止めたの?」
「ええ、そうよ。それ以外に何があると言うの?」
スバルは呼び止められた理由に、がっくりと、残念そうに肩を下げる。
しかし、咲夜にとっては重要なことであった。
咲夜がスバルと関わろうと思った理由でもある。
召喚魔法の事故によって異世界に来た咲夜としては、同じく異世界、さらに日本と思われる世界から来たと思われるスバルからの情報は少しでも得ておきたい。
咲夜とスバルとで、異世界に来た原因が異なる可能性はあるが、それでも時間の逆行や黒い女の影などを考えると、咲夜とスバルの共通項も多いため、決して無関係ではないはずだ。
「あなたの着ている服だけどここじゃ見かけない服よね。あなたどこから来たのかしら?」
「えっと、どこからって聞かれると困るんだが……。そうだな、ずっとずっと遠い東の方から来た、とか?」
「東……。曖昧ね。国の名前とかは?」
「え~と、その……」
スバルは視線をあちこちに移動させながら、なんて言葉を返そうか困っている様子だった。
そこで咲夜は、こちらから答えを切り出すことにした。
「当ててあげましょうか?」
「あ~と、たぶん無理じゃないかな?下手したら地図上に載ってないような辺鄙の場所だし?ほら、この服も変わっているだろ?俺の世界じゃ流行りの服な「日本」んだ……え?」
スバルの言葉に割り込んで咲夜がある国の名前を言う。
咲夜の言葉を聞き、スバルは目を見開いて驚く。
「えっと、咲夜たん?今、なんて?」
「……日本、そう言ったのよ」
スバルの言葉、「たん」に反応してピクリと眉を少し上げた咲夜だが、ひとまず、話の方を優先させる。
「えっと、お箸の本数のお話ではなく?」
「それは二本、まあ、音は一緒だけど、今は国の話でしょう?」
「ほ、本当の本当に?」
「しつこいわね。本当の本当よ」
スバルの信じがたい気持ちも分からなくもないが、いい加減に納得してほしい。
咲夜はそこで、さらに彼が信じやすくなるような言葉を言う。
「十六夜咲夜いざよいさくや」
「?」
「十六の夜に咲く夜と書くわ」
「!?やっぱり、初めて名前を聞いたときにも思ったけど、もしかして?」
「わたしのことはどうでもいいのよ。それよりも、あなた日本から来たのね?」
「いやいや、俺にとって咲夜たんのことは超重要なことですけどね!?……えっと、質問に答えると、咲夜たんの予想通り、俺は日本から来た、純粋、ピュアな日本人だぜ!咲夜たんも日本から?」
「そうよ」
咲夜が同郷のものと分かるとスバルは笑顔になり、「おお~!!」と、声を上げ、両腕を上に伸ばして喜びを表現する。
そしてまじか、まじか……!と、呟きながら、全身で喜びを表わす。
異世界で同じ同郷の者を見つけ、喜びを感じるのも無理はない。
しかし、咲夜の話の本題はそこではない。
わざわざ同郷の者だと告白するために呼び止めたわけではない。
「話はこれで終わりじゃないわよ」
「え? そうなの? っていうか、咲夜たんあまり驚かなくね? ……もしかして、ずっと前から知ってた?」
「まあ、大分前から予測はついていたわね」
「マジかよ!? なんで教えてくれなかったの?」
「確証がなかったし、あなた人の話を聞く前にどっか行っちゃうじゃない」
「う……そうかも。エミリアたんを追いかけるのに夢中だったからな」
スバルも自分のこれまでの言動を顧みて、思い当たる節があったのか、咲夜の言い分を認める。
「やっぱりストーカーなんじゃ……」と咲夜が言うと、「それだけは否定させてくれ!」とスバルが懇願してくる。
「話を戻すわよ。貴方は日本人だとして、どうやってこの世界に来たのかしら?」
「えっと、俺は直前までコンビニにいたんだ。コンビニで買い物をして、その後、店を出たら気が付いたらこの世界にいたんだ」
「そう。気が付いたら異世界にね。前触れは無かったの?何か違和感とか」
「ん~……特には。あ、でも少し視界が歪んだような気がしたな。あの時はゲームのし過ぎで目が疲れていただけかと思ってたけど」
「それが異世界召喚の前触れだったと?」
「今にして思えばな」
「そう。それと、……コンビニって何かしら?」
「え!?咲夜たんコンビニを知らないの?マジで!?今時どんな田舎でもコンビニの一つはあるだろ!?」
「……すごく閉鎖的な田舎だったのよ」
「閉鎖的な場所で、仮にコンビニが近くにないとしても、知らないって人はそういないと思うけど。咲夜たんって、一体どこに住んでたの?」
現代の日本に住む日本人で、コンビニを知らない人はいないだろう。
仮に見たことが無いとしても、知らない、と言うのは、ありえない。
「……それは言えないわ。」
「なんでよ?」
スバルの質問に答えを窮す咲夜。
どう答えを返すべきか悩むが、ふと名案を思い付く。
「わたしはある屋敷の主の元で住み込みで働いているの。その主は普通の人とは少し違ってね、一目にあまり触れることを好まないのよ。だから、場所は言えない。日本であるのは認めるけどね」
咲夜は、前回のループで盗品蔵で、自分の主が吸血鬼であることをエルザに話した。
その時、スバルもその話を聞いていた。
吸血鬼なら人にあまり見られない場所に住んでいても不思議ではない。
スバルもその事を思い出し、言えない理由に納得の態度を示す。
「そっか。主の意向なら仕方ないよな。ごめんな。なんか突っ込んだこと聞いちまって」
「まったくよ。女性の住んでる場所を無理やり聞こうとするなんて。ストーカーに教えられるわけないじゃない」
「ええ!?まだその疑い晴れて無かったの!?」
「まあ、良いわ。貴方は今後どうするつもりなの?」
「今後?」
咲夜は異世界召喚について、何か情報をスバルから得ようとしたが、やはりスバルの方でも原因はよく分かっていないらしい。
一番聞きたかったことは確認できたので、今後の話に話題を変える咲夜。
「エミリアたんの日課を見にいくんじゃねーの?」
「違うわよ。そんな短期的な話ではなくて、もっと長期的な話よ。意図せずに異世界に来ちゃったんだから、普通、元の世界に戻ろうとするでしょ。その為にどうするか、何か考えはないか聞いてるのよ。もちろん、異世界で暫くの間過ごすことになるだろうし、お金や泊まる場所とか、そう言うのも考えなきゃいけないわね」
「げげ!!?確かにそうだった。何にも考えてねー!どうしよう、咲夜たん。俺一文無しだよ!……いざとなったら体を売ってでも」
「……貴方を誰が買うのよ」
まさか、何にも考えてなかったとは。
この男は何も考えずに人助けをしていたのか、と呆れる咲夜。
「そうね。現状だと、エミリアに相談するのが一番良いかもね。この屋敷は大きいし持ち主はお金持ちでしょう。そこに住むエミリアなら、何か融通を利かせてくれるかもしれないわ」
「なるほど」
「じゃあ、話も終わったしエミリアのところに行きましょうか。エミリアはどこに行ったの?」
「おう、庭園に行ったらしい。俺たちも早く合流しようぜ」
部屋を出るために、咲夜は部屋の扉を開ける。
『キャっ!』
「ん?」
部屋を出ると、仲良く可愛らしい声を上げながら、双子のメイドが倒れる。
どうやら扉の前で聞き耳を立てていたらしい。
咲夜が扉を開けたことで、倒れた、というところだろうか。
「油断も何もねーな、このメイド達」
「お客さま、誤解です。レムたちは部屋が汚れた時のために待機していただけです」
「お客さま、誤解です。ラムたちは部屋の染みの汚れがついたベッドのシーツを取り換えるために待機していただけよ」
「いらねーお世話だよ!後、お姉さまの方は表現が具体的過ぎて生々しいわ!」
「まあ、お客さま、生でした、だなんて嫌らしいわ」
「言ってねぇし、してねぇよ!」
このロズワール邸で働くメイドとやらは、幻想郷の連中に負けないくらい、強い個性を持っているらしい。
こういう手合いは、あんまり真面目に付き合うと疲れるだけだ。
「ほら、いつまでもじゃれ合ってないで、エミリアの所に行きましょう」
「お、おう」
「お客さま、案内します」
咲夜の言葉に、すぐに青い髪をしたメイド、レムとやらが前に出て案内人を務める。
そして先頭をレム、咲夜が歩き、少し遅れてスバルとラムが続き、一行は庭園までの道を進む。
「お客様、これをどうぞ」
「何、これ?」
「精力剤よ。お客様はあまり女性を喜ばせられるような技術は持っていないようなので。次からは、これでもっと廊下にも声が響くくらい、相手を悦ばせるよう頑張ってくださいな」
「臆面無く下な発言したよこのメイド!余計なお世話だし、悲しいけど何も無かったし、まだ俺は童貞でピュアなままだ!どうせ技術なんか持ってねーよ!それとさり気に、聞き耳立ててたことを認める発言したよ、このメイド!」
「そう言いながらも受け取るのね」
「いつか、機会があるかもしれないし……」
ラムがスバルを気遣い?をして、咲夜たちに聞こえないよう、静かに何かの粉末が入った瓶を差し出す。
どうやらそれは精力剤のようらしく、余計なお世話だと言いながらも、折角なのでと、言葉とは裏腹に受け取るスバル。
正直、どっちもどっちなひどいやり取りが、庭園に着くまでに、咲夜たちの後方で行われたが、先を歩く咲夜とレムは気づくことはなかったのであった。
すみません。下ネタが入ってしまって。
でもR15の皆さんなら笑って許してくれますよね? |ω・`)ちら