話の展開はもう少し先までいけると思っていましたが、以外に進まなかった。もはやお約束ですね。原作でも大事な話のパートにもなりますのでカットはあまりできませんでしたし……
後半は、スバル君視点を入れてみました。
スバルがどう思って感じているのか、たまに挟むのも大事ですからね。彼もまた主人公の一人ではあるので。ただ、もしかしたらこの部分については賛否両論になるかも?
「本当に不思議だぁね、君は。わざわざルグニカ王国のロズワール・L・メイザースの邸宅まで来て、事情を知らないってぇいうんだから。よく、王国の入国審査を通ってこれたもんだーぁね?」
「まぁ、ある意味、密入国みたいなもんだからな……」
実のところ、咲夜もスバルと状況は似たようなもの。
しかし、あえて自分からバラす意味もないので、咲夜は話に口を出さずにこのまま静かに話を聞くことにする。
恥をかくのはスバルに任せましょう。
「呆れた。私たちがもし管理局に報告したらどうなると思うの?いきなり牢屋に押し込められて、けちょんけちょんにされるんだから」
「けちょんけちょんて、きょうび聞かねぇな」
「茶化さないの。ねえ、スバル。ホントに大丈夫?スバルの周りってみんなそうなの?それともスバルだけ特別物知らずなの?咲夜は違うわよね?」
「う……、耳が痛いわね。残念だけど、わたしもスバルとほとんど似たような状況よ。この国の事情も、状況もほとんど知らないわ」
スバルのあまりの無知さからエミリアが心配し、咲夜にも話を振ってきたので、咲夜も申し訳なさげに素直に白状する。
傍観者作戦はいきなり失敗したようだ。
「そんな二人なわけなので、差し支えないなら、ぜひぜひご講釈頂けると幸いに存じまして候」
「言葉使いが滅茶苦茶じゃない……」
そこにすかさずスバルが、フォローを入れるも、咲夜がダメ出しをする。
「スバルと咲夜は今この国――ルグニカ王国がどんな状況にあるのか知ってる?」
「全然まったくこれっぽっちも」
「全然知らないわね」
「そこまで言い切られると清々しいわね。二人とも今までどうやって生きて生きたの?なんかホントに心配になってきた」
「スバルと一緒にされるのは心外ね」
「いいじゃん、いいじゃん。一緒で。恋人のように一緒に歩みを進めていくのもいいのよ?」
「まだ、そのネタ引っ張るのね……」
「いやー。モテない純情少年からしたら、美少女と恋人と誤解されるだけでも嬉しいものなのよ。男ならみんなこの気持ち分かるはず!本当ならなお良しなんだけどね……」
スバルの少し自虐交じりの言葉に、「来世頑張りなさい」と、そう返そうとした咲夜だが、スバルが死に戻り体質だということに気付き、来世は当分来なそうね、と思い直し発言を止める。
「ほんと、スバルはだだをこねる子どもみたいね。えっと、話を戻すけど、今のルグニカは戒厳令が敷かれた状態で、特に他国との出入国に関しては厳密な状態よ」
「戒厳令……穏やかじゃない響きだな」
「あはぁ、穏当とはいえないねぇ。――なにせ、今のルグニカ王国には『王が不在』なもんだからねぇ」
「王が不在……」
王立国家において、王が不在とはいかに、重大な事実を告げられた咲夜とスバルはその意味の大きさに息を呑む。
そんな重大な情報を部外者に知らされた事実に、二人は何か意味があるのかと勘繰って警戒するが、
「心配、御無用! すでに市井にまで知れ渡った厳然たる事実だよん」
「そう。ならいいわ。何か面倒に巻き込まれると思ったじゃない」
「いやー、危うく秘密を知られたからには生かして帰さん。俺と咲夜たんの愛の逃避行の展開になるかと」
「……別の面倒ごとも発生しなくて本当に良かったわ」
咲夜は、知らされた事実が機密なものでないことに安堵するも、スバルの看過できない発言に、別の面倒ごとも発生しなくて済んだことに安堵する。
「逃げる前に埋める必要があったし」
「咲夜たん!声に出てる、出てる!つか埋めるって何を!?」
「安心なさい。とりあえず、起きないことになったのだから」
「ええ!?それは嬉しいけど、……いや意味が分からないし、分かりたくないからやっぱり喜べない!?」
「もう!スバルったらすぐに話を脱線させるんだから。大人しくちゃんと椅子に座って静かに話を聞いてなきゃ、頭にゲンコツしちゃうんだから」
「頭にゲンコツって、きょうび聞かねぇなぁ。ってか、話の脱線って俺だけが悪いの!?ねぇ、俺だけ!?」
「ふう。エミリア、スバルは無視して話の続きをお願い。これじゃあ、いつまでたっても話が進まないわ」
「咲夜たん、しれっと俺だけの責任にして話を終わりにしようとしてる!?つか、何を言っているのかしら、この男は、って顔でこちらを見てるし!そのわけが分からないわといった済ました顔も可愛いな、チクショウ」
話が進まないことにエミリアが「ハァ」とため息を一つした後、ロズワールが代わりに話の続きを引き継ぐ。
「戒厳令もその一環だねぇ。王不在のこの状況で、他国に対しても、国の中に対しても火種が発生することは避けたいってこぉと」
「んん?そういうのって普通、王様の子どもが跡を継ぐんじゃねーの?若いようなら摂政とか付けて」
咲夜は王が不在であれば、国を導いていく存在がいなくなるとどうなるのか、具体的な想像はつかなかった。
咲夜は幻想郷の外の知識や、幻想郷で暮らす上で必要な知識以外は持っていなかったからだ。
話の内容はぼんやりと理解できなくもないが、話の内容を聞いて自分なりの考えを出せるスバルに内心驚いていた。
そのあたりの知識も必要かもしれないわね……。
「ふむ、ついてくるねこの会話に。通例ならその通りになるだろうね。だぁけど、事はそう簡単には解決できない。半年前に、城内で蔓延した流行病によって、みーんな王族はお亡くなりになったんだぁよねぇ」
「じゃ、本気で王様不在じゃねぇか。そうなると国ってどうなるんだ?」
「現状の国の運営は賢人会によって行われてるよん。いずれも王国史に名を残す、名家の方々の寄り合いだ。国の政治自体に関しての影響はそこまでじゃぁない」
「王様がいなくても大丈夫なら、王様なんていらないんじゃないの?」
咲夜は王不在で国の運営が可能なら、そもそも王はいらないのでは?、そう考えての発言であったが、
「咲夜くん、そーの発言はぁ、ちょっと問題発言かなぁ。場合によっては不敬罪と取られかねない」
ロズワールは、言葉こそ今までの軽い感じで言っているが、その目は真剣で、向かい合っているだけなのに、彼から威圧感を感じてしまう。
これが、彼の本来の、本気になった時の表情なのかもしれない。
咲夜とスバルは、雰囲気をガラリと変えた、ロズワールに対して、息を呑む。
そして、「気持ちは分かるけどね」と一言前置きを置いて、ロズワールは表情を引き締め、
「――王不在の王国など、あってはならない」
「そりゃそうだ」
運営に問題がないとしても、頭の存在しない組織など成立しない。
ましてや国ともなれば。
日本だって、どれだけ民意優先とささやかれても総理大臣というトップが存在する。
幻想郷では国の概念がない。
場所は日本にあるとは言え、日本の総理大臣によって管理されているわけでもない。
幻想郷は自由で、基本的に誰もが平等であった。
咲夜とスバルの生きていた環境によって認識の差異があった。
スバルと異なり未だに納得の言っていない様子の咲夜に対して、ロズワールは、たとえ話をして説明する。
「そうだねぇ。咲夜くんはメイドだったよねぇ?」
「ええ、そうよ」
「例えばの話だけど、君がある貴族の屋敷で働いているとする。そこの当主はあまり有能ではなく、ほとんど屋敷の管理は、部下やメイドたちで賄えていたとする」
「……」
「しかし、ある時、屋敷の主が病によって、お亡くなりになられた。その屋敷の管理はどうする?」
「それはもちろん、その主の親族などが後を引き継ぐわ」
「屋敷を管理するのに、主が不要なのに?」
そこで咲夜も気付かされる。
主がいなくても、屋敷の中は回るかもしれないが、その館の顔役は必要だ。
屋敷の主は貴族。
なら貴族間での交流もあるだろう。
何も世界はその屋敷の中で回っているわけではない。
外から見られていることも気にしなくてはならない。
体面の問題もある。
雇われているものは仕える相手もいなくなる。
「気付いたようだねぇ。そぉう、どんな状況でも、どんな国でも主、導き手は必要。責任の所在もあるし、国なら法律もある。その法律を保証させているのが、王族。騎士たちも誓いを立てているのも王族。国民にとっても主は国の象徴でもある。主が決して有能でなくても、部下が優秀であれば、問題ないかもしてない。でも、いなければそれはそれで問題なんだぁーよねぇ。外国から見たら、国が纏まっていなく揺れている国に見える。つけ込む隙があると思われる」
「なるほど。分かったわ」
「よろしい」
咲夜も理解を示したことで、ロズワールも話の本題に入る。
「王不在の王国は新たに王を選ばなきゃならない。でも血族は壊滅。なら国の誰もが納得いくような形で、王様を選び出さなければならない」
「なるほど、読めてきたぜ。つまり、王国は王不在な上に王選出のどたばたで混乱中。他国との関係もプチ鎖国状態。だってのに現れる謎の異国人俺たち二人――超怪しいな!!」
「さぁらに付け加えちゃうと、エミリア様に接触してメイザース家とも関わり合いを持ったわけだしねぇ。そんな怪しさ万全な君たちは……」
ロズワールが目を瞑り、首に手刀を当ててギロチンアピール。
「でも、そうはならない」
「ふむ。それはどのような根拠で?」
ロズワールの手刀で表現したギロチンよる処刑、それを咲夜に否定され、ロズワールがその理由を興味深々に尋ねる。
「わざわざ、これから処刑する人に一から分かりやすく説明する意味はないもの」
「なーるほど。咲夜くんも知識はないでも状況理解は素晴らしい。君もなーかなかに優秀だーぁね」
「もしかして、もしかしてだけど メイザース家ってのはいい家柄で、ひょっとして賢人会関係かあるいはもっとすごい家柄!?」
「私は賢人会の構成員じゃぁないし、さしあたって王国の玉座に関わる立場じゃない。――ねぇ、エミリア様」
ロズワールに同意を求められたエミリアは、渋い顔をしながら白状するように応じた。
「騙そうとか、そういうこと考えてたわけじゃないからね」
「――えっと、エミリアたんてばつまり」
「今の私の肩書きは、ルグニカ王国第四十二代目の『王候補』のひとり。そこのロズワール辺境伯の後ろ盾で、ね」
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――『女王様候補』、その言葉にスバルは内心、ひどく動揺し、心臓音が外に聞こえるのではないか、というほど、自分の心臓がドキドキしているのを自覚し、黙り込む。
動揺していることはだけはエミリアに悟られたくない。
この世界では一般大衆よりも劣る戸籍不明の外国人、怪しさ満点の自分の立場と比べて、はるか遠い存在に感じてしまう。
自分はエミリアに恋をしている、とっくの前に自覚していた気持ち。
しかし、
「おう、ジーザス、なんてこった。俺の恋路の前途多難さに我ながらビックリだ。ジュリエットを愛するロミオすら俺に同情するぜ」
「騒がしくなったり静かになったり、忙しい奴ね」
自分の恋路の壁の高さと厚さに心が折れそうになっているところに、咲夜の声が聞こえ、目を向ける。
目を向けた先の少女もエミリアと同じ銀髪。
日本人には見られない、美しい銀髪をし、また顔立ちも驚くほど整っており、人形のよう。
十六夜咲夜。
実はスバルは、エミリアと同じくらいには彼女のことも気になっていた。
自分と同じ世界、日本から来た異邦人。
自分と同じ立場で親近感を沸くが、彼女のことをスバルはほとんど知らない。
これまでのループによる経験で吸血鬼という存在に仕えていると聞いたことがあるが、どこまでが本当かは不明。
もっとも自分に近しい存在なのに、この食堂にいる誰よりも所在が明らかでない存在。
しかし、それでもスバルは彼女にこれまで何度も助けられてきた。
一番初めにあの通路で助けようとしてくれたのも彼女だし、一番会話をしたのも彼女かもしれない。
通路と盗品蔵でも助けられ、時には体を張って助けてくれもした。
彼女には恩が一杯ある。
彼女と会話し、時折こちらをからかい、笑うその笑顔に惹かれている自分がいるのも自覚している。
エミリアにも心惹かれているのに。しかし、どちらへの思いが強いかと聞かれると断言できる。
きっと、この気持ちは諦めることはできないだろう。それは――
「——さておき、悪かったな、朝食の邪魔して。さあ、みんな、食事に戻ろう。団欒をやり直して、今のは忘れ……」
「ただの狂言発言に、ずいぶんと仰々しいお題目を並べたもんなのよ」
髪をかき上げて爽やかを気取り、場の空気を勢いで持ち直そうとしたスバルの意図が唐突に崩された。
崩したのは離れた席で、退屈そうにこちらを眺めるベアトリスだ。
「お前、本当に俺の天敵だな……」
えー後半のスバル視点ですが、
スバルが咲夜をどう思っているか、描写してみました。スバルにとって咲夜はどういう存在なのか、こればかりはこの小説で書かないと、原作を知っている人でも分からないですからね。本来はいないキャラクターですし。内容については、賛否両論かもしれませんが、一応二次創作ということで許してください。
勿論、スバルくんは一途のキャラなので、一番に置いてあるヒロインはもちろん、言わずともがな、です。そこは原作と変わりなく。
ただ、作者の個人的な主観というか、趣味というのが入り混じった感じではありますが、作者さんは咲夜が好きです。咲夜さんみたいな人がいたら好きにならざるを得ないだろう、と思っていますのでこのような展開に。
あえて、タグ付けして誰がヒロインか書いていなかったのもこれが理由でした。
もちろん、咲夜さんがスバルくんに本当に惹かれる展開になるかは、分かりません。
咲夜さんはチョロインではないので。
と、上記のように言ってみたはいいものの、皆さんの反応も気になるわけで。そのあたりの感想をいただくと嬉しいです。肯定的な意見も否定的な意見も大歓迎です。