ゼロから始める瀟洒な異世界生活   作:チクタク×2

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十一話です。

いつもより少し短いですが、
前半は結構大事な話の内容になっています。
後半は……まぁ、うん。読んでみれば分かるかと。


第十一話:魔法の適性

「フェルトは気絶しちゃったみたいだけど、勉強会はどうする?」

 

 午前中の講義を逃げ出したフェルトは、キャロルによって気絶させられたのち、無事?捕縛されたようで、今は自室で寝かされていた。

 肝心のフェルトがいない状態で、このまま講義を続けるのか、咲夜はラインハルトに聞く。

 咲夜としてはこのまま続けてくれた方がありがたいが……。

 

「お昼までまだ時間があるし、もう少し続けても構わないけど、咲夜は何か聞きたいでもことあるかい?」

「魔法について知りたいわ」

 

 咲夜は元々魔法が使えない体質だった。

 しかし、こちらの世界ではどうやら咲夜は魔法を使用することが出来るようだ。

 あの盗品蔵でエルザに襲われるスバルを助けたように。

 なら、魔法の知識を得るのも無駄ではない。

 もしかしたら、魔法を使うことであの時のように時を止めることが出来るようになるかもしれない。

 

「魔法か。僕も専門家ではないから、そこまで深く知識を持っていないから基本的なことしか教えられないけどそれでもいいかい?」

「別にそれでも構わないわ。わたしとしてもいきなり専門的な話をされても分からないだろうから。そちらの方がかえって助かるわ」

「それは良かった。魔法とは――」

 

 そこからラインハルトは魔法についての講義を始め、そして咲夜は新しく知った情報をメモしていく。

 

 以下は、その話を聞いて咲夜がメモをしたことである――

 

 魔法には基本となる四つのマナ属性、火・水・風・地の四つのマナ属性があること。

  熱量関係の火のマナ。

  生命と癒しを司る水のマナ。

  生き物の体の外の加護に関わる風のマナ。

  体の内の加護に関わる地のマナ。

 大凡はその四つに大別され、魔法使えるものは大抵はその内のひとつを適性を持つ。

 2つ以上を扱えるものは希少。

 また、上記以外にも陽と陰の属性もあるが、該当者はほとんどいない。

 

 咲夜が魔法の属性について、メモしたところでラインハルトが実際に複数の属性を扱える魔法使いを、例に挙げる。

 

「複数の属性を扱えるものは少ない。ただ、いないわけじゃない。例えば、咲夜も知っているロズワール様もそうだね。彼の場合は中でも特別で、いずれの魔法も万全に扱うことができる『魔導の加護』を持っていて、六つの属性を全て扱える」

 

 ロズワールは宮廷魔術師、それも筆頭だけあって魔法に関しては才能は周りと格が違うらしい。

 

「見た目と言動はアレだけど、やっぱり凄い人物だったのね」

 

 咲夜のロズワール評について、ラインハルトは苦笑しながらも説明を続ける。

 

「ロズワール様は王国から特別な称号を示す色の称号、『赤』、『緑』、『黄』を与えられているほどだよ」

「へぇ。それぞれ色がそのマナの属性を表しているのね。『赤』が火、『緑』が風、『黄』が地ってところかしら。他の属性については称号を持っていないということはロズワール以外にも称号持ちがいるってこと?」

「『青』の称号持ちは、近衛騎士団所属の騎士がいるけど、実は『白』と『黒』は欠番なんだ」

「ふーん。必ずしも誰かしら称号持ちになっているってわけでもないのね。あなたはどうなの? ラインハルト」

「恥ずかしい話だけど、僕は魔法の方の才能は全くなくてね。魔法を使用できないんだ」

 

 以外にも完璧超人と思われたラインハルトにも苦手なものはあったようだ。とは言っても、魔法が扱えずとも十二分に強いのだが。

 

「魔法と言えば、咲夜は盗品蔵で使用した魔法は一体何だったんだい?」

 

 ふと、ラインハルトが盗品蔵での出来事を思い出し、咲夜が使用した魔法について問われて、咲夜はギクリと、背に冷汗を流す。

 

 ……誤魔化すべきか、それともここは正直に話すべきか。

 

 咲夜は判断に迷うが、咲夜としても自身の魔法の正体を掴んでおきたい。

 この先何かに役に立つ機会があるかもしれない。

 あまり人に知られたくない事だが、ラインハルトもそこは承知していはず。

 この男ならいたずらに言いふらすことはしないだろう。

 咲夜は正直に話すことにする。

 

「実はわたしも良く分かっていないのよ。あの時は無我夢中だったし、気が付いたら、って感じだったわ。魔法も初めて使用したし」

 

 咲夜の初めて使用した、という言葉にラインハルトは驚く。

 

「そうだったのか。きっと、初めての魔法の行使にゲートが驚いて、マナが過剰出力してしまったんだろう。マナの大量消費と、エルザを退けて気が抜けたこと、疲労も重なって気を失ってしまったんだろうね」

「そうね。あの時はわたしも意識して魔法を使用したわけじゃないから、どんな魔法を使ったのか分かっていないの」

「あの時の咲夜は、僕にはエルザの元に一瞬で距離を詰めたかのように見えた。素早く移動したのではなく、初めからその場に居たかのように。何か咲夜の方で魔法を使用した時に感じたことは無いかい? そこからどんな魔法か導き出す手掛かりがあるかもしれない」

「そうね……あの時はまるで周りの時が止まったかのように感じたわ」

 

 ラインハルトの観察眼には驚かされる。

 やはり、ラインハルトに話して正解だったか。

 もしかしたらこのまま、魔法の正体を掴めるかもしれない。

 

「時が止まる……」

 

 咲夜の言葉に何か思い当たることがあったのか、ラインハルトが考え込む。

 咲夜はラインハルトが答えを出すのを静かに待つ。

 暫くして、ラインハルトが咲夜に向き直り口を開く。

 

「咲夜の魔法の適性は『陰』かもしれないね」

「『陰』? それは何故かしら?」

「『陰』魔法は、相手の視界を塞いだり、音を遮断したりなど、妨害・能力低下系の効能が多いんだ」

「確かに、時を止める、という能力は相手に働きかける能力に括れないわけでもないわね……」

「それに、『陰』魔法には相手の動きを遅くする魔法も存在する。咲夜のように完全に相手の動きを止める効果は無くても、似た系統とも言えなくもない。『陰』魔法は中でも四大属性と比べてその希少性もあることもあって、失伝してしまった魔法が多いから、咲夜の魔法はその失われた魔法なのかもしれないしね」

「どちらにせよ、大凡の当たりが付けられたのは吉報ね。魔法を使うにはどうすればいいのかしら?」

 

 魔法の系統も大切な情報ではあるが、咲夜にとってはむしろ使えるようになることが優先。

 以前のように暴走せずに扱えることが出来るようになれば、それは新たな武器になる。

 

「魔法を扱うにはイメージが大切と言われているね」

「イメージ?」

「そう。魔法を行使にするにあたって、詠唱を行うのが一般的だけど、それはイメージを固めるためなんだ。熟練の魔法使いなら詠唱も無しに魔法を行使することも可能だ。とは言っても、魔法は抽象的なものが多いからピッタリくるようなイメージをすることは難しいだろうね。咲夜の時を止めるような魔法は尚更」

「そう。それは残念ね。練習が必要になるわね……」

「こればっかりは、努力や経験が必要だろうね」

 

 咲夜は口ではそう言いながらも、自分ならあの時に使った魔法を詠唱無しでイメージ出来ると確信していた。

 幻想郷では数えきれないほど、時を止めることを繰り返していたのだ。

 イメージなら容易い。ポケットに手を入れ懐中時計があることを確かめる。

 もし、イメージをするならこの懐中時計の針を止めるイメージすれば恐らく大丈夫だろう。

 

「ありがとう。とても役に立つ情報が手に入ったわ」

「役に立てたなら嬉しいよ。そろそろお昼時だね。ここらで終わりにしようか」

 

 ラインハルトが言い終わると同時に扉をノックされ、それと同時にキャロルがお昼の準備が出来たと声がかかり、勉強会はお開きとなったのだった。

 

 昼食の時間が終わり、午後になると、咲夜は屋敷の仕事をキャロルから教わりながら、一緒に仕事を行っていく。

 フェルトのお付きの仕事だけでなく、屋敷の仕事もしなければならないからだ。

 しかし、世界が異なるとは言っても、人が暮らしていく上でやらなければならない作業に大きな違いはなく、紅魔館でメイドとして働いてきた経験もあって、咲夜はすぐに仕事を身につけていった。

 筋が良いとキャロルも褒めていたほどだった。

 炊事の仕事では、マナで働きかけないと火が起こせなかったり、道具を使うのにマナを使用する必要があるものには、咲夜も難儀させられたが、キャロルが丁寧に指導してくれたため、夕食の下ごしらえが終わる頃には問題なく自分の意思で自由にマナの出力の調整が可能になっていた。

 

 そんなこんなで、夕食の時間になり、食堂に屋敷の住人たちが集まり、食事が開始される。午後の時間の勉強で疲れ果てたのか、フェルトはあまり元気がなさそうだったが、食事が始まると美味しそうに食べ始める。

 そんなフェルトの姿を見て咲夜は、ふと紅魔館のスカーレット姉妹を思い出す。

 丁度同じぐらいの背をして、赤い瞳が彼女たちを思い起こさせる――。

 

 そして夕食も終わり、咲夜は夕食後の食器の片付けを手伝う。

 それが終わると、ようやくメイドの仕事が終わりを迎える。

 咲夜は部屋に戻り、貰った部屋着に着替える。

 そして一時間ほど言葉の勉強を行った後、布団に入る。

 

 夕食のフェルトの姿を見たことで、咲夜は紅魔館にいるレミリアたちを思い出していた。

 

 今頃、お嬢様たちはどうしているのだろうか? 

 ちゃんと屋敷の管理は出来ているだろうか? 

 自分がいない間、美鈴は代わりを出来ているだろうか?

 

 色々と心配事を思い浮かび、咲夜は中々眠りに入ることが出来なかった。

 そんなとき、部屋の外から物音がかすかにする。

 

「?」

 

 音はどうやら、バルコニーの方からするようだ。

 咲夜はバルコニーの階段の方を眺めていると、そこに小柄な人影が降りてくる。

 影の形を見るに、どうやらフェルトらしい。

 おそらく屋敷から脱走を企てているのだろう。

 咲夜はそっとベッドを抜け出す。

 

「よし、部屋の明かりが消えている。姉ちゃんはもう寝たようだな」

「何が良しなのよ」

「うわああぁ!!……姉ちゃん、起きてたのかよ」

 

 咲夜はベランダの窓を開ける。

 

「まあね。ほら、見つかったのだから、今日は大人しく部屋に戻りなさい。明日も朝は勉強会でしょ?」

「うぇぇ」

 

 フェルトは咲夜の言葉に苦手な時間を思い出し、嫌そうな声を出しながら、しかめっ面をする。

 咲夜はそれを見てクスリと笑いを漏らし、フェルトは咲夜を恨めしそうに睨む。

 

「それにしても何でこんな時間まで起きてるんだよ、姉ちゃん。今日は初めてのメイドの仕事で、ぐっすり寝ていると思っていたのに……」

「意外と考えているのね、貴方。でも、そうね。あまり寝付けなかったものだから」

「ふーん、まぁ、気持ちは分からねーでもねぇけどな。あたしもまだすぐに寝付けねーし。ベッドはふかふかで寝心地はいーんだけど、なんか貧民街にいた頃よりも寝付きがわりーんだよな……。こんなことしてる場合じゃねーのに。早くロム爺を見つけてやらねーと」

 

 咲夜は後半にフェルトの口から小さく零れた弱音の言葉を聞き取り、意外と寂しがり屋なのねと、思った。

 そんなフェルトを見て咲夜はあることを思いつく。

 

「フェルトもあまり寝付けないのよね?」

「え? あ、……ああ」

「なら一緒に寝ましょう」

「は?」

「我ながらいい考えだわ。そうと決まれば……」

 

 咲夜はフェルトの脇下に腕を通して抱き上げ、窓を閉じ、部屋に戻る。

 

「ちょっ!?? 何すんだよ!姉ちゃん」

「さあ、フェルト様、一緒に寝ましょうね」

「はああぁぁ!? ちょっ!やめっ!!」

 

 咲夜はフェルトの抗議を無視して、一緒にベッドに入り、フェルトをしっかり抱きしめて眠る。

 

 うん、今度はきちんと寝付けそうだ。

 良い抱き枕もあるし。

 

 咲夜の腕の中にいたフェルトも最初は咲夜の腕の拘束から抜け出そうと足掻く。

 しかし、ガッチリと捕まれ、抜け出せないことを悟り、素直に眠りに着く。

 そうして咲夜、そして以外にもフェルトもその日はぐっすりと寝ることが出来たのだった。

 翌日、中々起きてこない二人を起こしに来たキャロルが、二人の微笑まし気な様子を見て、起床の時間を少し遅らせるよう配慮したほどだった。




落ちがアレですが、こんな可愛らしいフェルトちゃんもありですよね?
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