第四話です。
スバルとエミリアの初会話となる場面です。
2017/5/20(土)
改訂。
スバル視点の追加。
2017/6/17(土)
一部文章を改訂。
スバルはその少女の美しさに息を呑む。
銀に輝く髪色と透きとおった宝石のアメジストのような紫色の瞳。どちらも日本ではあまり見かけない、特徴的な綺麗な色合いであったが、彼女の纏う何色でもない純白のローブと調和している。それだけで十分に彼女を魅力的に見せていtたが、整った顔立ちがさらに美しさを引き立てていた。
先ほど会ったメイドの少女とも負けず劣らずの美しさ。その彼女のどこか幻想的な美しさはスバルの目を捉えて離さない。先に会ったメイドの少女もそうだが、彼女を見ていると、どこか胸が高鳴る感じがする。
異世界に来てから会う女性がみな美しい少女ばかり。
「俺って異世界に来て、女運は上がったかも……」
どこか高揚した気持ちでそんなことを考えていると、浮遊感を感じることに気付く。
それは毎日、日常的に感じているもの。故にその正体を察するのも早かった。
「ああ、これ夢か」
心底残念だとスバルは思う。
さっきまで出会った美しい少女たちもきっと夢に違いない。
異世界に来たことも、ゲームのやり過ぎで見た夢だったのだと。
「夢でも良いからまた、あの子たちに会いたいな」
呟きながら、徐々に自分の意識が覚醒していく。
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寝ている男――スバルの治癒が終わり、咲夜とローブの少女は彼が目覚めるのを待っていた。とはいえ、そのまま何もしないで待ち続けるのも無駄なので、咲夜はその少女に話しかける。
「ねえ、貴方」
「なに?」
「お互いに自己紹介でもしない? わたしの名前は十六夜咲夜。貴方の名前は?」
咲夜は異世界の情報を少しでも得れれば、そんな思惑もあって少女に話しかける。咲夜に話しかけられた少女は、すぐに返事を返さず、やや逡巡ののち、
「……わたしの名前は、エミリア。ただのエミリアよ」
そうして自己紹介から始まったエミリアとの会話の中で、咲夜は以下のことを知った。
一つは、エミリアの使用した魔法について。
エミリアは精霊使いであり、先ほどチンピラたちを追い払った魔法は、精霊魔法というものらしい。
魔法使いは通常、自身のマナを使用して魔法を行使する。しかし、精霊使いはそれだけでなく、彼女が従えているようなパックをはじめとした、精霊たちに力を貸してもらうことで魔法が使用することも出来るらしい。精霊から力を借り、周囲のマナを集めて魔法を行使する。これにより、精霊使いは魔力切れ、ということが基本的になく戦場であれば警戒される存在とのこと。
エミリアは特に魔法についての資質が非凡らしい。そこは猫、もといパックが自慢げに、その小さな体を一杯に胸を張って語ってくれた。
二つ目は、現在いる場所について。
親竜王国と呼ばれ、王族と竜の間で盟約が結ばれているルグニカ王国の王都。
自分たちがいる場所はそこらしい。ルグニカ王国は元の世界では聞いたことが無い。
やはりここは異世界なのか、そう思うも一応、念のために、幻想郷という場所を知っているか聞いてみるが、彼女は知らなかった。長年この世界に生きていると自称する、妖精のパックにも聞くも、同じ答えが返ってきた。これにより咲夜は異世界なのだと確信したのだった。
三つ目は、エミリアについて。
会話の最中、咲夜がエミリアのやや尖った耳が気になり、しばしば視線を向けていたことにエミリアが気付くと、僅かに逡巡を見せるも、エミリアは自身がハーフエルフであるを告げる。
彼女が口にするのを躊躇う態度を見れば、何かしら重要なことを告白されたのだろうと咲夜は察することは出来たが、あいにくこの世界について何も知らない咲夜にとってみれば、さして興味を引くものではなく、思わず「ふーん」と、ただ淡泊な反応を返してしまった。
しかし、それがエミリアにとって逆に良かったのか、何故かその後のエミリアの態度はいくらか柔らかくなった。
咲夜としては、他にも色々と聞きたいことがあったが、話しているうち咲夜にすっかり気を許したエミリアからも、咲夜が質問をしたのと同じくらい質問をするので、あまり多くの話を聞くことができなかった。
現時点で言えば、エミリアとの会話で咲夜が得た大きな情報は、ここは異世界だと、確信できたことくらいだった。
そうしているうちに、「うう……」と言うような小さな声を漏らしながら、やっとスバルが目を覚ます。
「あら、目が覚めたようね?」
「まだ動かないで。頭も打ってるから、安心できないの」
気絶していたスバルの目が覚めたと分かるなり、エミリアは起き上がろうとする彼に声をかけて静止させる。
「この声は……そっか夢じゃなかったのか。そして、おお、この頭に感じる感触……。これが夢にまでみた美少女の膝枕……ってこんな毛深いわけあるか!!?」
「起きて良かったですわ(裏声)」
「まさか、人間サイズの猫に膝枕されるとは思わなかったぜ」
目覚めてすぐ聞こえたエミリアの声に、自分を膝枕している人物がエミリアと勘違いしていたスバルは、人間サイズの猫―――パックに膝枕されてることに驚き、跳ね起きる。
咲夜は幻想郷で人外に見慣れていたため驚くことはなかったが、人間サイズに大きくなった猫に、スバルはとても驚いていた。
「ん、そのメイド服を着た君は……。そうか、俺が目が覚めるまでいてくれたんだな。二人ともあり――」
「別に感謝する必要はないわ。私は聞きたいことがあなたにあったから待ってただけ」
「そうね、私もあなたに聞きたいことがあるから、傷の治療をしただけだもの」
「……おおう、優しい銀髪美少女達の優しさからの行動と思いきや、意外とちゃんとした見返りを求めるその強かさな回答にビックリ。でも現実はそんなもんですよね。でも俺はちゃんと礼を言うぜ! センキュー、サンクス、ありがとう!」
起きたスバルはにべもなく二人の少女から礼はいらないと拒否されるが、それでもと、テンション高く、大声で二人に感謝を告げる。
そして、同時に美少女たちから自分に聞きたいことがあると言われ、そのハイテンションのままで親指を立てウインクをする。
「俺に聞きたいこと? なんでも聞いてくれ。俺のスリーサイズ? 恥ずかしい趣味から、好きな女性のタイプまで何でも答えるぜ!」
随分とハイテンションなスバルに、咲夜は嫌そうな顔をするが、何でもペラペラと話してくれそうなスバルに、どう話を聞くべきかと少し警戒していた咲夜にとってはむしろ好都合だと感じる。そして、それならばと、咲夜は質問しようとするが、咲夜よりもエミリアの方が質問するのが早かった。
「わたしは盗まれた徽章を探しているの。何か情報を持っていないかしら?」
エミリアは、真剣な顔を、そして少し切実な表情を浮かべながらスバルに聞く。
その質問は、スバルが寝ている間にも咲夜もされた。勿論、知らないと答えたが。
「……悪いけど、何も情報を持ってないよ。徽章なんて知らないし」
「そう。なら仕方ないわね。咲夜からも同じ答えが返ってきたから、あまり期待はしてなかったけど……。じゃあ、もう行くわね。悪いけど急いでるの。ケガは一通り治ってるはずだし、脅したから連中ももう関わってこないと思うけど、こんな時間に人気のない路地にひとりで入るなんて自殺志願者と一緒だから。あ、これは心配じゃなくて忠告よ。次に同じような現場に出くわしても、私があなたを助けるメリットがないから助けなんて期待されても困るから」
「ゴメンね。素直じゃないんだよ、うちの子。変に思わないであげて」
エミリアの早口でまくし立てるような言葉に少し面食らうスバルにパックはフォローするように言った。
そしてスバルが呆然としているうちに、エミリアとパックは路地裏の出口の方まで行ってしまう。
咲夜は、エミリアの立ち去る後ろ姿を見届け、
「随分とお人よしな人間なのね。急いでいるなら、あそこまで他人にかまっている余裕なんてないハズなのに」
スバルは隣の咲夜のその呟きに、はっと我に返る。
「じゃあ、今度はわたしのしつ―――」
「―――おい、待ってくれよ!」
「ちょっ!! ちょっと待ちなさい!!」
咲夜の言葉を聞き終える前に、スバルはエミリアを走って追いかけようとし、咲夜は慌ててスバルの腕を掴んで止める。
「うわっ! ……っなんだよ!」
「ちょっと! わたしも質問があるって言っていたじゃない。質問に答えてもらうわよ」
「でも、俺も急いでいて。……いや、分かった。あとで質問に答えるから、今はあの女の子を追わせてくれないか?」
「絶対でしょうね?」
「……ああ、絶対にあとで答える。」
咲夜からじっと目を見詰められてあまり女の子に免疫がないスバルは顔を赤くして照れながらも、質問に肯定で返す。
「分かった。行きなさい。わたしの名前は十六夜咲夜。用事がすんだら、ここの路地裏の入口あたりで待っているから、日が暮れる前くらいには戻って来なさい。もし、それでも現れなくても、一時間は待ってあげるわ。それでダメなら翌日また同じ時間に。あなたの名前は?」
「きみは……。いや、俺の名前は菜月スバル」
咲夜の言葉に何か思うことがあったのか、スバルは咲夜に何か言葉を言いかける。
しかし時間がないことに気付いたのか、自分の名前だけ名乗り返すと、エミリアを追って走り去っていく。
「菜月、スバル……ね。名前からして日本人の可能性が高いわね」
走り去るスバルの後ろ姿を見ながら咲夜はそう呟く。
「もし、あの男、スバルが日本人だとしたら、わたしと同じく召喚された人間かもしれない。そのようなことを何度も漏らしていたし……、もしそうなら、あの様子からしてそれほど期待した情報を得られないかもしれないわね」
咲夜の目からはスバルは平凡そのものの男に見え、とうてい召喚魔法を扱えるような人間に見えず、また咲夜を知らなかったことから自分をこちらに召喚したものとも無関係だと判断する。
咲夜の名前を聞いたあと、スバルが言いかけたのは、おそらく同じ日本人のような名前に反応したからだろう。
「さて、一人になったわけだけど。まずはわたしもこの路地裏から出ないとね」
咲夜は、路地裏への出口に向かって歩いて行く。
最後まで咲夜とスバルが一緒に行動するか、悩みました。
悩んだ結果、現時点で咲夜とスバルが一緒に行動する理由が見つからなかったため、こうなりました。
話の都合上、スバルくんには何回か死んでもらわないといけないですしね(笑)
次回は咲夜一人の行動回です。