※すみません入れ忘れた文章を追加しました
義姉とは会えず、ついに四年の時が流れた。
「奉君、君にお客さんだ」
そう大成さんに言われて目の前に現れたのは強者の風格をこれでもかと撒き散らす老人だった。
「お前が奉か。義姉と違って凶暴そうだな」
「姉貴とどこを比べてそう判断したのかしらねぇが失礼だなアンタ」
初対面の相手にあるまじき発言をもらいイラっとするがここ四年間、義姉とは音信不通だったため、義姉の情報が得られるならばと渋々ながら部屋に通す。
座布団を出すが、座らずに老人は貫禄のある声で馬鹿なことを言い始めた。
「二日前にお前の義姉は死亡した。ドイツに遺体があるんでな、確認しに一緒に来てもらおう」
言葉の意味が理解できなかった。
中東で殺し殺されが日常の生活をしていても、義姉には未来視の眼がある。
絨毯爆撃すら場合によっては生き残りかねないあの異能を持つ義姉が死んだなんてあり得ない。
「信じられないか? 無理もない、この俺に泥を付けた人間がそうやすやすと死んでたまるかという事については同意見だ」
「爺さんアンタ、ヒューム・ヘルシングか」
「いかにも、九鬼家従者部隊序列零番ヒューム・ヘルシングだ。そして俺がわざわざお前に噓をつきに来ると思うか」
九鬼の最高戦力がわざわざ知らせに来たんだ、義姉の死は事実なのだろう。
「誰があのバケモンを
義姉の死を受け取めるにはそこだけが気掛かりだった。
瞑想さえすれば次の日の出来事さえ視れる義姉をどう倒したのか。
史進の異能が頭をよぎるが素、の戦闘力でも史進には負けないはず、まして未来が視ているので多勢に嬲られたという事も考えにくい。
「それについては俺の口からは言えん、お前の義姉から頼まれたのはドイツのリューベックにある彼女の死体へ案内する事と余計な情報を言わないことだ」
義姉は遺言なのか、わざわざヒューム・ヘルシングを使いに寄こしたのだいう事を考えれば実力行使で連れて行く事も視野に入っているとみていい。
「…………分かった、準備するから少し待っててくれ」
「案外素直だな、聞いていた印象とだいぶ異なるな」
いったい義姉は人外仲間に何を吹き込んだのだろう。
聞いてみたい事だったが、義姉から聞いていたヒューム・ヘルシングという人間の評価を鑑みるに気は長い方ではない。
必要最低限の荷物をバックに詰め込み、沙也佳ちゃんに街に出るときに時に使ったほうがいいと渡されたサングラスを掛ければ十分だろう。
「何か必要なものが合ったら言え、常識の範囲内であれば九鬼で用意する」
「だったら一杯付き合えよ、素面じゃ泣けねぇんでな」
半分冗談だ。そもそも涙を流す機能はもう無くなっている。
半分本気だ。自分でも不思議だった。
唯一無二の家族、義姉の敵にはなりたくない
義姉の負担になりたくない、義姉の傷つくところを見たくない
義姉が殺すところを見たくない、姉の死ぬところを――――――
そんな人生を歩んできたというのに義姉の死を知らされてもどこかで納得している自分がいる。
ついに死んだか、その一言だけが今胸の内に渦巻いている。
この感情をどうにかしないと自分がどうなるのかわからなくて恐ろしい。
だから、酒に誘った。
ヒューム・ヘルシングは真意を見抜いたのか、ただ一人の家族を失った俺を哀れんだのか、準備しようと一言告げると共に黛家の門の前に止めてあるリムジンへ向かう。
大成さんには義姉の死と遺体の確認に向かうと伝えて出てきた、娘二人は今は学校に行っているので挨拶はできないが、由紀恵ちゃんとは稽古相手しかしていなかったのでそんなに仲良く思われていないだろう。
沙也佳ちゃんは最近やっと火傷の跡に慣れてきたものの、夜に合うと悲鳴を上げてしまうので丁度いい息抜きになるはずだ。
――――――――――――
ドイツ、リューベックに到着してすぐに出迎えてきたのはドイツの軍人だった。
「貴方が奉さんですね、猟犬部隊副長フィーネ・ベルクマンです」
「姉貴何やったんだよ、軍人に出迎えられるってテロとかやらかしたんじゃねぇだろうな」
「テロリストの頼みを聞くほど暇ではないぞ」
「ヒュームさんがパシリに使われてる時点で色々やらかした可能性が高いんですけど………」
二人で話した結果、俺はヒュームさんには敬語で話すようにした。
義姉から聞いていたほど酷い人間じゃなかったのを知った時点でとりあえず謝った、義姉はヒュームさんがそんなに好きではなかったらしい。
ヒュームさんも義姉の話をしていたらなんだかんだ仲良くなったので軽口ぐらいは言うようになった、酒が抜けていないだけかもしれないが。
「フランク中将に連絡を入れますので少々お待ちください」
携帯で上司に報告を済ませたフィーネが車を運転し死体安置所………ではなく何故か城に連れていかれた様だ、ヒュームさんが「よく手入れされている城だな、今度その技術を若い奴らに学ばせに連れてこようか」とか呟いていた。
「初めまして、フランク・フリードリヒだ。君の義姉さんから頼まれて我が家で彼女の遺体は預かっている」
この言葉だけ取れば意味が分からないだろう。
「こちらこそ義姉がなんかご迷惑をかけたようで、フリードリヒさん。なんで姉貴の死体がここにあるか聞いてもいいですか?」
「その質問には私は答えられないな、彼女との約束を反故にしてしまう」
また義姉との
ドイツ軍の中将に自分の死体の管理を任せることを頼むとはいったい何を考えているのか分からない。
「今日は突然のドイツ訪問に疲れただろう、部屋を用意してあるのでヒューム殿も一緒に一晩ゆっくりしていくといい。マルギッテも明日には任務から帰ってくるはずだ」
「誰ですかソレ」
こっちの話だよ。とヒュームさんに向けて放った言葉と説明すると、部屋へ案内される。
どうやら義姉は何かしらの目的があって俺をここに呼びつけたらしい。
しかもヒューム・ヘルシングにフリードリヒ中将を
夕食の時にもう一度ここに連れてこられた理由を聞いてみたが、聞き出せなかったので渋々ベッドに潜り込む。
部屋歩手で探った感じだと、部屋は中世の城の様な石造りの割に現代のホテルと同等の部屋だった、それも結構いいとこのホテル並み。
義姉にはいろいろ文句を言いたいが明日にならねばその亡骸にはご対面できない。
まず何を言ってやろうか。そんな事を考えながら眠りについた。
――――――――――――
朝、ヒュームさんに起こされ朝食をとると、見知らぬ軍人が何人か増えていた。
自己紹介をすると言って何故か表の庭に連れていかれる。
「マルギッテ・エーベルバッハです、突然ですが貴方にはここで眠ってもらいます」
「それも姉貴がマルギッテさんに頼んだのか?」
返答はない、ただ返されるのは闘気だけだ。
「これを使え、義姉からの贈り物だ」
そう言ってヒュームさんが投げてよこしたのは5メートルの長さを持つ槍だ。
普通の槍に比べて遥かに長いこの槍を使っている人間はそうそういない。
簡単に言って姉が愛用していた槍だ。
「貴方の義姉には借りがあります、その借りを返す為にも説明はできませんッ」
全速力で駆け込んでくるマルギッテは構えていた槍を右手で弾き上げる。
この感触から見えない俺でも腕に装甲を付けているか、トンファーか何かを付けているとあたりをつけた。
「長いな、姉貴こんな扱い辛いもん振り回してたのか」
普段使う槍は2メートルから3メートルの物のため、倍の長さを感じる上に重い。
取り合えず闘気バリバリの左フックを上体を逸らして躱すと大きく後ろに飛び間合いを広く取る。
「させません」
しかし距離を取られればまともに打ち合えないのだろう、マルギッテはぴったりと追従して距離を詰めてくる。
仕方がないので柄を短く持ち、近接での取り回しをよくするがそれでも扱い辛い。
「
慣れない槍に手こずり、一瞬だけ生じた隙にマルギッテは特大の闘気を迸らせる。
一撃必殺、次に一撃で決めに来る。本能でそれを理解した。
「
「クソったれっ!」
距離を詰めてきたマルギッテに此方からさらに間合いを詰める。
彼女の武器はトンファーだろう。何度か打ち合った感触にそう答えを出した。
ならばトンファーすら使い辛い距離を詰めて頭突きをかます。
両者共に痛み分けだが衝撃で後ずさるマルギッテ。
その隙に後ろに下がればいったん距離を置ける。
「どいつもこいつも借りだの約束だのなんなんだ、巻き込まれる立場にもなれっつーの馬鹿姉貴」
「彼女の命がけの行動を侮辱するのは許せませんね」
マルギッテはその言葉が気に入らなかったのか、再び距離を詰めながら口を開いた。
「知るかよ、くたばる様なタマじゃなぇ癖に一度も会わずにくたばりやがって。不満しかねーよ」
「彼女が貴方の為にどれだけ世界中を駆けずり回ったかも知らないでしょう!」
此方から攻撃はしない、その事に更に怒ったのかマルギッテはこちらの防御を崩すために上下左右から連打を加える。
だが誘導に成功している連打に脅威は一切なく、受け、流し、払う事でマルギッテの体力を削り取っていく。
「俺の為って言ったか?」
しかしマルギッテが滑らせた言葉に何か引っかかるものを感じた。
マルギッテも聞き返したことで口を滑らせたことに気が付いたのか息をのむ音が聞こえる。
「自分が死んでも俺の為になる事……」
黛家で過ごして四年、視界の無い生活にも慣れて次の年からは義姉に付いて行こうと思っていた。
しかし義姉は死に、その義姉に遺言を託された人間達。それもただの人間ではなくそれ相応の力を持つ者。
それだけの人間に借りを作っても義姉が死を選ばなければ俺に渡せないモノ、俺の為のモノ。
金ではない、権力でもない、土地でも、まして姉貴が返せないほどの借金をしていたなんて聞いて事すらない。
ならば――――――
「――――――――てめぇら全員グルか?」
――――――――――――
その場にいた人間全てに向けた怒気。
ヒューム・ヘルシングはその場で足に紫電を纏わせいつでも攻撃できるように構えをとる。
フランク中将は肉体を全盛期の時代へと若返らせる秘儀『メフィストフェレス』を無意識に発動した。
殺意ともとれる圧倒的な暴威を奉は収めるどころか更に噴出していく。
「質問に答えろよ」
奉はそう呟くとマルギッテが認識するより早く胸倉を掴み捻りあげる。
右手で構えた槍でマルギッテの左目を真っ直ぐ貫こうとしたその時、煙があたりを包みこんだ。
煙幕の出現と共に手から重さが消える、上着だけを残してマルギッテが手から脱出したようだ。
「ガキのお遊戯に付き合ってる暇ねぇんだ」
煙幕の中に感じる気配へと槍の柄を長く持ち遠心力に腕力を載せて大きく振るう。
槍は煙幕の中にいたモノを捉えた、金属音と共に弾かれたが。
「隊長に攻撃などさせん!」
「ナイスだテル。こいつ煙幕の中でどうしてこっちの位置が分かるんだ」
欧州ニンジャと呼ばれるリザ・ブリンカーがマルギッテを抱えており、その前には槍を受け止めている鎧に包まれた巨人テルマ・ミュラー。
二メートルはありそうな鉄巨人の持つ鉄槌に槍を阻まれていた。
「どっせーい」
そのテルと呼ばれた鉄巨人の陰から小柄な少女が躍り出ると鳩尾に的確に拳を叩き込んでくる。
その一撃はダンプカーの衝撃と同じといわれる猟犬部隊での攻撃担当コジマ・ロルバッハ。
しかし、その一撃を奉はモロに受けたにもかかわらず何ともなかったかのように立っている。
「こいつ、普通じゃない。殴ったコジマのほうが痛い」
コジマは半分涙目になりながら奉に蹴られてテルマの元へ吹っ飛ばされる。
「ぬう、私の鉄槌も曲がってしまった」
「コジマ以上の怪力にテル以上の耐久力って人間じゃねーだろ!」
リザの悲鳴に近い嘆きに今まで気絶していたマルギッテが目を覚ます。
「状況は……いえ、把握しました。彼女言っていた通りです」
マルギッテは眼帯を外しながら先ほど戦っていた人物が豹変した様をまじまじと見つめる。
「どいつもこいつも約束だの借りだの説明一切しないとかふざけてんのか? 俺は意地でも抵抗するぞ、今回ばかりは容赦しねぇ」
「手術の件が知れれば義姉に対してキレた後全力で抵抗するはず。と言っていましたからね」
奉は長槍を中程に構えながらゆっくりとマルギッテの元へ歩み寄ってくる。
「フィーネ、指揮を任せます、リザとテルマそしてコジマは私と共に彼を無力化します」
「「「「了解」」」」
フランク中将の隣にいたフィーネも合流し猟犬部隊として眼前の敵を無力化を目的と定めた。
まずはテルマが奉の前に進み出て曲がった鉄槌で打ち合う。
「”暴風”」
テルマのフルスイングに奉は槍を振るわれる鉄槌にピッタリと添えて右から左へと完全に受け流す。
「さっきは手加減していた! 車を相手にする時と同じ感じでいく!」
コジマが先ほどの倍の速度で拳を振りぬく。
それに合わせてリザが背後から接近し神経に金属製の針を突き刺す。その針は神経に直接刺すことで相手の動きを完全に封じる金縛りの技。
「猟犬部隊の連携に敗北はないと知りなさい!!!」
最期にマルギッテのトンファーによる兜割がコジマとの入れ替わりに放たれ額に直撃する。
人体が発してはいけない衝撃音がするがコジマの初撃に耐えた時点で手加減の出来る相手ではないと判断した故だった。
誰が見ても気絶するか死ぬかの一撃に猟犬部隊の面々は勝利を確信し、緊張を解こうとした時だった。
「まだだッ! マル避けろっ‼」
マルギッテはフィーネの叫び声に体が勝手に動いていた。
軍人としてのクセであり最も信頼する仲間の声に理由を尋ねる必要などなかったのだ。そして、その行動が彼女の生死を分けた。
ブォン としゃがみ込んだ頭上を何かが音速で通り過ぎて行ったのだ。
振るわれたのは通常の物より長い槍だ。
「うそ………だろ。神経に針刺さったままだぞ」
「コジマのイイの鳩尾に入った。普通動けない」
「私の攻撃の力をそのまま受け流し更に攻撃に転用したというのか」
マルギッテの眼前には首筋と背骨に針を複数刺された状態のまま、奉は槍を横薙ぎに振り抜いていた。
続けて槍を一回転させると石突部分での追撃。態勢の崩れた彼女にはその攻撃を避けるすべはない。
「これは不味いですね」
振り下ろされる石突は先ほどの横薙ぎと同じく音速を超えていた。
己の死を感じたその瞬間、奉は真横に錐もみ回転をしながら吹き飛んで行った。
「まるで赤子の癇癪だな」
ヒューム・ヘルシング。
世界最強の老人が烈脚を振りぬいた一本足の体制でそこに立っていた。
そして横には気を放ったのだろう、フランク・フリードリヒ中将も拳を突き出して並び立っている。
「しかし彼女から聞いていた通りの人物だな彼は」
二人が示し合わせたかのように目線を飛んで行った奉へと向ける。
城の壁にぶつかり衝撃で壁が崩れ下敷きになっていた。
「自分と義姉のためならすべてを敵に回してもおかしくない。というやつか」
「ええ、なぜ目を譲り受けることがそんなに嫌なのか分かりませんが、自分が嫌なことに抵抗するのに人を殺すことすら厭わない。聞いていたとおりだ」
瓦礫の中から這い出して来た奉は二人に意識を向ける。
足はガクつき誰の目から見ても瀕死の状態だが闘志だけは衰えている様子はない。
「俺の渾身のジェノサイドチェーンソーを受けてまだ立つか」
「あの程度でっ………ほんきゴホッ、なのかよ」
強がりでしかないその言葉にヒュームは獰猛に笑うと足に紫電を纏わせながらもう一度蹴りを加える。
その蹴りに奉は槍を殴り捨てて片腕で受け止めた。
驚愕の顔を浮かべるヒュームだがその直後に顔面に頭突きを喰らい後ろによろめく。
奉は転がっていた槍を蹴り上げて掴むとそのままヒュームに投擲する。
「させません!」
車程度なら貫通するであろうその槍をトンファーを駆使して弾き落したのはマルギッテだ。
その行動に今まで戦いに魅入っていた猟犬部隊の面々も我に返り行動を開始する。
「上等だ。ガキもジジイもまとめてかかってこいよ、叩き潰してやらぁ」
ふらふらとおぼつかない足取りで、しかし本気で勝つ気でいる奉は一歩また一歩と歩を進める。
「あれは俺の先祖が倒した化け物と同種だ、仕留め損ねればどう成るかわからん」
ヒュームがそう言って気を足に集中する。
マルギッテもその意見には賛成だった、満身創痍でボロボロの奉を倒せる感覚がしないのだ。
正々堂々などと言っている暇は無かった、この場にいる人間全員がそう感じるほどの何かをアレは発していた。
「では私から始めよう」
フランク中将が気を込めた回し蹴りを放つ。
今までの攻撃で体がうまく動かないのか、その蹴りをモロに延髄に受けるがまだ立ち続ける。
「リザ!」
「おうさ、コジ!」
次にリザとコジマが左半身に同時に攻撃を加え、それに合わせるようにテルマの折れ曲がった鉄槌が背中を打つ。
「”衝撃”」
流石に奉も耐えられなかったのか右の方向へと体が倒れていくがすんでの所で地面を踏みしめ体勢を立て直す、返す形で拳を握りいつの間にか正面に陣取っていたヒュームに向けて放った。
奉の込めた意思はどれほどだったのか、今までの攻撃で最も鋭いその拳にマルギッテは反射的にヒュームとの間に入り拳をトンファーで受けた。
「硬ぇな」
「当たり前です、トンファーこそ最硬の武器と知りなさい」
その場からマルギッテが飛びのくと気を練り終えたヒュームが深く一歩踏みこむ。
「ジェノサイドォッ」
最期にサングラスを付けたままの顔面にヒュームの蹴りが突き刺った。
「チェーンソーッ‼」
ヒュームが今日一番の蹴りを炸裂させる。
一撃で体力を十割持っていくと言われた最強の蹴りを三発受けてやっと奉は意識を手放した。
「………驚いた、まさかこれ程とは。よくやったマルギッテ」
「ありがとうございます中将。姉の話では贔屓目に見ていて話を盛っていると思っていましたが、話以上でした」
メフィストフェレスを解き少し肩で息をしながらフランク中将がマルギッテを労う。
「マル、ジークに連絡を入れた、すぐにでも運んだ方がいいな」
「そうですね、もし目覚められたら正直辛い、コジマにリザ。彼を運びましょう」
「りょーかい、ってコイツ目が見えてなかったのか⁉」
コジマが奉の足を持ちリザが上半身を持とうとした時、壊れたサングラスが地面に落ち、素顔を晒した。
瞼を焼き潰したままの痛々しい様に猟犬部隊の一同は息をのむ。
「煙幕が効かなかったのは初めから目を使っていなかったからという事か」
テルマが納得のいった声を上げ奉を担ぎ上げた。
「隊長、私が運んだ方が早いかと」
「え、ええ。では頼みます」
男嫌いのテルマが鎧を着ているとはいえ奉を運ぶこと志願したことに驚きつつも許可を与える。
「コイツが目覚めたらここに連絡を入れろ、ではフランク中将。俺はこれくらいで失礼する、仕事があるんでな」
「私も少し休んだら壊れた家の修繕を頼まなくては、休日は返上だね」
ヒュームはマルギッテに名刺を一つ渡し、奉が目覚めたらと連絡するようにと告げると仕事は終わったとばかりに門へ向かう。
「フィーネ、事後処理を頼みます。私はジークの元へ向います。テルマが彼を運ぶと思いませんでしたから。リザとコジマでお嬢様がお戻りになる前にこのあたりの掃除をしておいてください」
矢継ぎ早に指示を飛ばすとマルギッテはあたりを見回す。
フリードリヒ邸の現状は最悪だった。
城壁は崩れ、壁越えの技の応酬により庭の芝生は抉れている。
この惨状を学校から帰ってくる嬢様に見せるわけにはいかない。
先程までの緊張感とは一転し次の仕事に向かう、軍人なんてやっていれば仕方のない事だ。
「これまで壊されるとは思いませんでした、片付けが終わったら新しいトンファーを取ってきますか」
マルギッテは奉に粉砕された愛用していたトンファーの欠片を拾いながらそう呟いた。
猟犬部隊の容姿も書きたいのですが主人公が盲目なのでそんなに書きませんでした
次からはしていくと思います
人称ぐちゃぐちゃの癖にとか思うでしょうけどだからこそか書かない方がいい気がする(甘え)