真剣でこの歳で学園生   作:たいそん

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サブタイトルの流れをぶった切ってごめんなさい
サブタイトルを適当に考えてきた自分が恨めしい

後、あらすじの25歳はミスで26歳に修正しました重ね重ね申し訳ない


目の見える日々の再開

「目が覚めたんだね、よかった~。全然目が覚めなくてめっちゃ心配したよ~」

 

目を覚ました時にちょうど扉が開かれ、長身の女性が入ってくるなり口を開いた。

その言葉に引っ掛かりを覚えながらもあたりを見回す、どうやらここは病室らしい。

ベットの傍らの机の上には花が生けられていて長身の女性が新しい物と交換している最中だ。

 

「どちらさん?」

「あ、自己紹介するの忘れてました。私はジークルーン・コールシュライバーです。ジークって呼んでね」

 

ペコリとお辞儀をする女性を改めて確認する。

黒を基調とした軍服に身を包み、黒い包帯を纏っている。180センチ程の女性はなかなか威圧感があるが話している分には普通の女の子といった感じだ。

そこまで思考を重ねた瞬間、違和感に気が付く。

 

「…………畜生、やられたのか」

 

眼を両手で覆い大きくため息をついた。

急激に落ちたテンションにジークは狼狽え始めた。

 

「えっと、どうかしたのかな? 目が痛いとか? 私ちゃんと手術できたと思うんだけど駄目だったかな⁉」

「いや、大丈夫。ただの自虐だから」

 

目が見えているという事は義姉の差し向けた連中に敗北し移植手術を受けたことになる。

トンファーを頭で受けた所から記憶が朧気だが見えるとはそういう事だろう。

 

「あれからどれくらい経ったんだ?」

 

ジークが脈を測る機械の数字をメモしているが終わるタイミングで質問する。

 

「三ヶ月くらい経つかな、目の手術というより隊長たちにやられた傷の方で意識がなかなか戻らなかったんだと思うけど」

「ああ、トンファーで頭叩かれたり神経に針刺されたり、果てには不死身の怪物を殺す蹴りを二発喰らったからな」

「うんうん。頭蓋骨にひびが入ってたし右腕に関しては粉々だったよ、針を抜くのにも無理に動いてた所為で一苦労で―――」

 

ジークはおしゃべり好きらしい、最初は手術よりも治療の方が苦労した話から戦った相手を目が見えなかったので実はよく知らないと伝えると話せる範囲で猟犬部隊について教えてくれた。

 

「でねでね、そこでコジーが銃弾を間違えて飲み込んじゃって、めっちゃ大騒ぎになっちゃったんだよ」

「帰りが遅いと思ったら奉さん目が覚めてたんだ」

 

なかなか面白い話のいい所で水を差され、開かれた病室の扉に目を向ける。

そこに立っていたのはジークと同じ軍服でスタイルのいい体を包み、美しい銀髪をポニーテイルにしている女性だ。鋭い目つきのわりに纏う雰囲気は人懐っこくその容姿から彼女がジークから説明されたリザ・ブリンカーだと予想する。

 

「リザ・ブリンカーさんか、いい蹴り貰ったのは覚えてますよ」

「リザでいいですよ、敬語もナシで。年上にそういう対応されるとこっちも話しづらいっスよ」

 

自分はガタイはいい方だがそれでも彼女の雰囲気は自身より年上に感じたほどだったので取り合えず敬語で対応したが失敗だったらしい。

 

「あ、そっか。私も敬語で話した方がいいのかな?」

 

ジークも年下らしいが身長の所為で年上だと思っていたので何も言わなかったが此方も裏目に出たらしい。

 

「いいよ別に、今更だし。年上年下とかどうでもいいし。というか君達いくつよ」

「二人とも19ッス。ジークは暇さえあればずっとここに通ってましたから半分友達感覚なんですよ、初めての主治医でもあるんで」

「五つも違うのかよ外国人ってすごいな」

「面倒見てあげてって言われてるし、あんなボロボロの状態で手術したからめっちゃ心配だったんだよ!」

 

ジークはどうすれば治るかが感覚で分かるという安道全と同種の異能を持っており、それをマルギッテに買われて猟犬部隊に入ったそうだ。

そして猟犬部隊に入って少した所でその能力に目を付けた組織にジークは狙われるが、義姉に助けられ、その時に今回の事を頼まれたらしい。猟犬部隊にはまた別に借りを作ったらしいが両方とも未来を視た上での事だろう。

 

「命の恩人の頼みですから迷惑なんてそんな、あそこまで抵抗されるとは思ってなかったスけど」

「死人に対しての精いっぱいの反抗のつもりだよ、目玉渡す準備整えるくらいなら自分の命を優先しろってな」

 

そこに関しては意地の話なので譲れないが、頼まれただけの彼女達を頭に血が上ったとはいえ本気で殺そうとしたことには申し訳なく感じている。

 

「隊長さんにも謝らないとな、一回殺しかけた」

「実際は一発も受けなかったんでそんなに気にしなくてもいいッスよ。取り合えず隊長に報告だけしてきちゃうんでゆくっりしてて下さい」

「私も他の先生に目が覚めた事とか伝えなきゃいけないから一旦出るね」

 

ジークとリザはそう告げると病室を出て行った。

一人ベットの上に残される形になったが、考えたいこともあったので問題ない。

 

「流石に未来視を出来るとは思ってなかったけど姉貴の眼って実感わかないな」

 

窓の外から青い空を眺めてみるが視力を失う前と何ら変わりない光景を映すのみだ。

未来を視る異能は発動しない。そもそもどうやって使うのかすら分からないのだから。

もしも異能を引き継いでいても、使いこなすまでに時間がかかるはずだ。

 

(未来見るなんて絶対詰まんねーから使う気ないけど)

 

義姉を見続けたからこそこの目が嫌いだった。

小さな頃はまだ少し便利な程度だったが、瞑想を行って次の日の未来を視れるようになってから義姉にとっては呪いに変わったのだ。

明日の大筋の流れが分かるだけでどれだけ世界が退屈だったか、救えるモノも救えないモノも前日に分かってしまうのがどれほどの苦痛だったのだろうか。

 

 

――――――――――――

 

「オッス、俺がヨーロッパにいるときに目を覚ますなんてタイミングいいじゃんか」

 

二人が出て行ってから三時間ほどたつと、頭に×(ペケ)印を刻んだ男と金髪の燕尾服の老人が現れた。

 

「ヒュームさんは分かるけど×(ペケ)印の方は初めてですよね」

 

銀髪で赤いスーツに身を包みネクタイを緩ませ、シャツの胸元をだらしなく開けている姿をまじまじと見るが記憶に一切ない。

 

「九鬼帝様だ。口を弁えろ」

 

ヒュームがたまらずといった風に正体を明かすがそれが気に食わなかったのか九鬼帝がヒュームを小突いた。

 

「いいじゃん別に×(ペケ)印で合ってんだから、それにこれからする話はそんなピリピリしてない方がいいだろ」

「姉貴がまだ何かお願いしてるんですか?」

「まあな、簡単な頼みなんだが問題は奉君がそれを受け入れるかどうかなんだ。だからなるべくご機嫌は損ねたくないわけ」

 

移植手術への抵抗が激しすぎたためか、そこそこ警戒されているようだ。

義姉からの願いを完遂するために気を使っていると見ていい。

 

「眼の移植以上に気に食わない事は特にないんで大丈夫だと思いますよ」

「んじゃ、単刀直入に言っちゃうけど学校行ってくんね?」

 

学校、今年で24歳になる奉が通うとなると大学だろうか。

高校生の知識程度なら梁山泊で学んだので受験に向けて勉強すれば受かると思う。

 

「いいですよ、学費とか住む場所とかはどうなってます?」

「その辺はお義姉さんと話しついてるから気にすんな。むしろ考えてた以上にスムーズに話進んで俺びっくりだよ、学校なんか行きたくないってならないの?」

「抵抗してほしいならしますけど、学校に通うぐらいなら別に良くないですか? 傭兵家業を継ぐのは気が乗らないので自分探しにはちょうどいいかなって思いましたし」

 

今や身寄りのない自分に取り合えずの住処と日々を生きる目的を貰えるならば断る理由がない。

寧ろ学校ならば勉強しつつこれから先のことについても考えられるのでこの件については義姉の判断は肯定できる。

 

「んじゃ、来年の四月から日本の学校に通ってもらうからそのつもりで頼むわ、二、三月ぐらいヒューム寄こすんでそれまでは好きにしてて構わねえから」

「ここを離れるなら逐一連絡を入れろ、身分の不確かなお前では海外に出れないからな。九鬼で運ぼう」

「つーわけでヨロシク。これから面倒臭い会議が待ってるから俺たちはこの辺で帰るわ」

 

ヒュームから九鬼の連絡先を渡されると二人は病室を出て行った。

入れ違いになるように、というか外で待っていたのだろう軍服を着た女性入ってくる。

 

「今のは九鬼の当主でしたか………顔が広いですね」

 

燃える様な紅の髪を腰まで伸ばし、右目に眼帯をしているジークたちと同じ軍服の女性。

 

「マルギッテさんか」

「ええ、マルギッテ・エーベルバッハです。呼び捨てで構いません。この前はお世話になりました」

「悪かったって、謝るよ。初めて自分の感情を抑えられなくなっちまってさ」

 

殺す気でいたが殺すつもりはなかった。なんて事を言っている殺人犯をニュース見たことがあるが正しくソレだった。

 

「気にする必要はないと知りなさい、軍人をしてればああいった状況はいくらでもある」

「俺は二度と御免だけどな、暴力は嫌いなんだよ」

 

その言葉にマルギッテは目を丸くするが奉が軽く睨むと咳払いを一つして誤魔化した。

 

「盗み聞くつもりはなかったのですが先の会話を聞きました」

「学校通う話か、姉貴が頼んだらしいけど楽しそうだしいいかなぁと思ったんだよ」

「来年の三月までどうするのですか」

「国の移動は面倒事らしいから九鬼にはあんまりお世話になりたくないけど居候していた家に戻ろうと思う」

 

黛家に頼み込んで一年置いてもらえるように交渉か義姉の残した金を使って適当な部屋をドイツに借りるかだ。

九鬼と黛家に迷惑を掛けることになるので悩み所だがドイツ語が話せない時点でこの国に居づらいのだ。

 

「そうですか、お義姉さんに何かあったら面倒を見てくれと言われていたので少し準備していたのですが………」

 

歯切れの悪そうにマルギッテが予想外の言葉を口にした。

 

「姉貴が?」

「ええ、何らかの理由でドイツに残るようだったらドイツ語を喋れないから少し世話をして貰いたいと」

 

考えを改める必要が出てきた。

ドイツ語関係は一応問題なくなったが黛家には義姉の遺体確認にドイツへ行くと言ってある。

多くは無いが荷物も置いてあるので急にこのままドイツで一年暮らすとなれば九鬼ではなく、大成さんに迷惑が掛かるだろう。

しかしマルギッテの話を聞くにはドイツで暮らす準備も多少は進んでいるという事だ。

 

「取り合えず大成さんに連絡してからだな、悪いけど少し待っててもらえねーかな」

「そもそも貴方はまだ目覚めて一日しかたっていません、これから検査にリハビリと一ヶ月はこの病室で生活するはずなのでそこまで急ぐ必要はないと知りなさい」

「マジで?」

真剣(マジ)です」

 

 




もう少しで川神へ行けそう………
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