真剣でこの歳で学園生   作:たいそん

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急に川神入り。

元々、前回のドイツでの話が楽しく。猟犬部隊関係のお話をしてから川神編に進もうと思っていたのですが………
ドイツでのイベントを考えていなかったので取り合えずこの三週間色々書いたり考えていたのですが、そこまで面白い話でもなかったので予定通りに川神編を開始しました。




一応、ドイツ編も別に改めて考えているのでカットされた梁山泊に居た頃と同じくどこかで入れるつもりです。



四日遅れの入学

4月5日、威圧するかのような古めかしい門の前に俺は立っていた。

場所は日本、川神学園前である。

 

ドイツにある姉妹校で試験を受けて昨日の夜に日本についたので、始業式に4日遅れる形で入学することになったがそんな事はどうでもいい。

そう、考えていることは一つだ――――――

 

「大学じゃねぇのかよぉぉぉぉぉォォォッッ!?」

 

おかしいとは思っていた。受けた試験が簡単だったからだ。

幾つか異様に難しい問題もあったが七割は中学生で習う内容だったのだ。

 

「姉貴が指定したってヒュームが言ってたけど、なんでだれも止めなかっただよ! 俺、今年で25だぞ!? 馬鹿なの??」

 

川神学園の制服が届いた時点で何となく察していたが最後まで諦めたくはなかった。

学園生が登校するより一時間早く来ているため近くには誰もおらず、こんな醜態をさらしているがどうやらここまでの様だ。

さっきの叫び声に反応したのか校舎から緑色のジャージを着た温和そうな男がやってくる。

 

「ど、どうかしかカナ?」

「あー、いえ。気にしないで下さい」

「スゴイ声だったけれド、君はもしかして本多奉君カイ?」

 

片言の日本語で問いかけてくるが見た目はアジア系、恐らく大陸の人間だろう。

 

「はい。これからお世話になります。本多奉です」

「うん、ヨロシクネ。川神学園で体育を教えているルー・イーだよ」

 

挨拶もそこそこにルー先生に案内され理事長室へ通される。

そこにいたのは長く白い髭を蓄えた老人だ。

だが老人は老いを全く感じさせないほどの快活そうな笑みで挨拶をした。

 

「川神鉄心じゃ。事情は知っておる、何かあれば相談に乗るからの」

「お世話になります。本多奉です」

 

事情を知っているということは義姉に頼られた人間の一人なのだろう。

この歳で学園生。要するに15~18歳の子供と生活を共にするのだ。

 

「じゃあ早速で申し訳ないんですけど、なんで俺はこの学園に来たんですかね?」

 

ルー先生は事情を知らないのか怪訝そうな顔をするが鉄心さんは後で説明する。とアイコンタクトをルー先生に送ると口を開いた。

 

「お義姉さん曰く。青春のプレゼントだそうじゃよ」

(あの世に行ったら絶対にシバく)

 

一番の疑問にキチンとした理由はないらしい。

大方、姉貴のおふざけの一環だろうと脳で素早く処理し、もう質問はないと伝える。

 

「案外ドライじゃのう、聞いていた印象とずいぶん違うようじゃ」

「姉貴は誇張が激しいですからね。アレとまともに会話するだけ無駄ですよ」

「ワシ、あの子好きじゃったんじゃがのぉ」

 

その後は余った時間で亡き義姉について思い出話に花を咲かせ、最後にこの学園の特殊な部分の説明を受けて部屋を出た。

教室の配属は成績優秀なエリートクラスでもある1-Sらしい。この歳で逆にS以外だったらそれはそれで泣けるので何とも言い難い心情だ。

 

「んじゃ、オジサンが先に入って説明するから。呼んだら黒板名前書いて自己紹介してくれ」

 

先に教室に入っていったのは、四月だというのにヨレたスーツに身を包んだ中年の男。

名前は宇佐美巨人、本人の自己紹介では銀髪のナイスミドルらしい。正直言って第一印象は生活習慣病に悩まされてそうなミドルだ。

 

『んじゃ、入ってこーい』

 

ネクタイ裏返ってたな。と先ほどの宇佐美先生の紺色のネクタイを思い出しているとお呼びがかかった。

一応、これから三年間を共にするのだ。歳の差があるとはいえ孤立は避けたいので失敗しないようにと自身に気合を入れてドアを引く。全員年下と思うとドアを開く前に感じた緊張感は霧散していた。

チョークを取り、黒板に名前を書いて自己紹介をする。

 

「本多奉です。本多なんて苗字ですが武将の忠勝さんとは何の関係もありません。これから三年間よろしく」

 

ここにきて視線に違和感を覚える。

確かにガタイはいい方で、最近は目つきが悪いと言われることが多いが老け顔ではない。

強面の奴が入学してきた位の奇異の視線だと思っていたがどうもそれとは方向性の違う視線だ。

鋭い視線が複数刺さり教室内の雰囲気が少し悪くなってきた瞬間、威勢のいい大声が響いた。

 

「此方は格式高き不死川家の「フハハハ! これから三年間共に切磋琢磨しようではないか! 我は九鬼英雄である! こっちは従者の忍足あずみだ」

「あ、うん。よろしく」

 

正直どうしようか迷った。

金ぴかの制服ではない服に目が行ったり、自己紹介を塗りつぶされて口をパクパクさせている着物の女の子に声を掛けようかとも思ったが、何より気になるのは従者の忍足あずみだ。

俺は彼女を知っている。梁山泊で仕事をした時に商売相手として何度か会ったことがあったのだ。

 

「私は葵冬馬です。その鋭い目に見惚れてしまって。挨拶が遅れてしまいすみません」

 

あずみにどう反応しようか悩んでいるとメガネを掛けたイケメンが挨拶をしてきた。

 

「僕はユキだよー」

「こら、フルネームで言わなきゃダメでしょ。コイツは榊原小雪ってんだ。んで、俺は井上準。よろしくな」

 

葵に続くように赤い目をした白い髪の女の子とスキンヘッドの男が自己紹介する。

そこからはなし崩し的にそれぞれSクラスの人間が挨拶をしていき、一通り終わると宇佐美先生に後ろの席に座るよう指示され、授業が始まった。

 

途中で葵から聞いたが、最初に感じた視線の正体はSクラスは成績の順位が低いとSクラス以外に落ちるシステムで、逆に言えば成績に執着している人間が多く入試を三位で突破した俺に対してライバル心が高いとのことだ。

同じく、入試を二位で突破した葵も同じ視線をぶつけられたらしい。

 

 

 

――――――――――――

 

授業が終わり、昼休みに入った事でクラスの人間がまばらになり始めた時だった。

 

「ちょっといいか?」

 

声の主は忍足あずみだ。

 

「おす、朝は挨拶しそびれちゃって悪いな」

「元々顔見知りだし気にすんなよ、それよりここじゃなんだ、屋上でいいか?」

 

その言葉に二つ返事で答え、購買でパンを買って屋上に向かう。

 

「事情はヒュームや帝様から聞いてる。なんかあったらアタシに言え、ヒュームに伝える事になってる」

「わかった。………というより気になってたんだけど、メイド始めたのか」

 

以前あった時は傭兵忍者やっていたのだ。ギャップに目が点に立ったのは仕方ないだろう。

 

「英雄様と出会ったからな。今のアタイは九鬼に仕えてるし、英雄様に忠誠を誓ってる。昔のことはこの学園では他言無用で頼む」

「俺も歳の事とか色々隠してるし黙ってるよ。寧ろ年下連中の中でどうしようか悩んでたから年の近いの居て助かったわ」

 

大陸で傭兵が仕事をするときは車や武器の調達にほぼ確実に梁山泊が間に入るので何度も顔を合わせていた為、年も近い理由からタメ口になっていた。

 

「アタイもアウェイ感キツかったから助かったぜ」

「つーか、俺が歳隠すとなるとあずみとタメ口はやめといた方がいいか」

「お前から敬語なんて初めて会った頃以来だなぁ」

「五年前ですね、懐かしー」

 

鉄心さんの時と同じく昔話を始めると時間はあっという間に過ぎ去り、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

 

 

――――――――――――

 

そして全ての授業が終わり、帰りのHRも終わった時だった。

 

「おい、グラウンドで決闘が始まったぞ」

 

『決闘』

 

この川神学園の特殊な規則の一つだ。

お互いのワッペンを叩きつけ合うと成立し、その後は字のまんま武力や知力を持って一対一の勝負をし勝敗を決めるのだ。

決闘が行われる理由は様々だ。

聞いた話によれば、学園祭の出し物の意見が割れた時。武術の心得のある転入生などに対して歓迎として。単純に喧嘩の決着に使うとき。

 

「戦ってるのは1-Fの椎名と2-Fの矢場先輩だ」

 

弓を持った女子生徒同士がグランドで戦っている。

1-Fという言葉に反応したクラスメイトが数人いるがSクラスの内何人かは他クラスを下に見ているからだ。

 

(あのショートカットの方やるな)

 

青い髪のショートカットの女の子、周りの話を聞くに椎名というらしいが上級生相手に押している。

矢場が矢を連射すれば椎名も応じるように矢を放ち撃ち落とす。

その繰り返しを行っているだけなのだが矢の速さ正確さで椎名は矢場の上をいく。

 

(でも、このままなら矢場先輩の勝ちだろうな)

 

最初に感じた感想は『格上に対してよく』やるな。という感想だった。

才能という点で矢場に勝っている椎名は一見この決闘では優勢に見えるが顔には少し疲労が見られる。

持久力、忍耐力において矢場に勝てない為にジリジリと体力を削られているのだ。

 

しかし諦めていない椎名の目にこれからの展開が気にはなるが、長居できない理由があった。

 

「おや? 奉君は決闘を見て行かないのですか?」

 

席を立ち教室を出ようとした時に声をかけてきたのは葵冬馬だ。

 

「用事があるんでな。今日は早めに帰らなきゃならん」

「そうですか、残念です。武人としての貴方から解説など聞きたかったのですが………」

「武人じゃねーよ、戦うのは嫌いだからな」

 

葵冬馬は体の筋肉の付き方から武人と判断し、目つきの鋭さから好戦的(バトルジャンキー)だと思っていたらしい。

残念だったな、この目つきの悪さはそのまんま姉貴譲りだ。

 

葵冬馬に別れを告げて下駄箱に向かい、靴に履き替え下校する。

その間にグランドの決闘に何かあったようだが見に行く暇は無い。

川神で生活することになった俺の新居の確認があるからだ。

 

住所は事前にヒュームに教えてもらったので問題ない。

入居祝いに九鬼の従者が運んでくる家電や家具の設置の指示をしなくてはいけないので、これ以上の時間のロスは避けたい。

 

「弓かー、楽しそうではあるよなぁ………」

 

現在扱える武器は槍や棒といった長物と刀のみだ。

暴力は嫌いでも武術そのものは嫌いでないので遠距離武器である弓に興味がわいた。

 

「落ち着いたら弓に手を出してみようか」

 

これから始まる生活に不安もあったが、何より未知に対する好奇心のが高かった。

今まで年下に教える立場だったのに対して今回は共に学ぶ、不安ではあるが楽しみでもある。

こんな状況に叩き込んでくれた義姉には文句が出るが、これからの生活には期待が膨らんでいた。

 

 




前回からかなり間が空いた気もしますが初めて書き物をしている自分ではペースがいまいちわかりません。最低でも月一は目標にしたいのですが


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