そして少年は世界を救う   作:如月誠

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いつ次の更新が出来るのか分からないので早め早めに書いていこうと思っています。


邂逅

 

「ふあぁぁ~~」

 

 

天王洲第一高校へと向かうモノレールの中で、桜満集は大きな欠伸をした。いつもなら暇なこの時間を使って本を読んだり勉強したりするのだが、この日は睡魔に勝てず立ちながらウトウト揺られていた。

 

 

「もう、集!起きて!周りの迷惑になるから!」

 

 

尤もな事を言うこの少女は校条祭。一月ほど前に転校してきた集と最初に話しかけてくれた少女で、彼と仲が良いグループの一人だ。

しかし、今の集にこの言葉は辛い。

 

 

集「うぅ、勘弁してよ祭。昨夜は全く寝付けなかったんだから」

 

祭「何で?また映画でも見てたの?」

 

集「うん。この前颯太が薦めてきた映画が寝るときまで頭離れなくてさー」

 

祭「それってホラー?」

 

集「いや、感動ドキュメント。主人公のお母さんが僕の親戚の叔母さんと似てたから」

 

祭「ふふっ、何その理由」

 

集(嘘だけど)

 

 

魂館颯太

祭と同じで仲よしグループの一人で、よく僕にそういうのを教えて来たりとかしてくれる。

だが、彼の薦める作品は良い悪いの差がハッキリしているからこうやって徹夜することも少なくない。

(まぁ今回は違うけどね)

 

 

祭「それにしても、やっぱり今日軍の車多いよね」

 

集「どしてダロネ~」ギクッ

集(僕は関係ないから)

 

 

 

 

 

 

学校に来るといつものように颯太の元気な(やかましい)挨拶が飛んできた。僕はそれをヒラリと躱す。

それでも気にしない様子で話しかけてくる彼には毎度の事ながら呆れるが。

 

 

颯太「なぁ集、EGOISTって知ってるか!?」

 

集「えっ!?あの颯太がアルファベットを使ってる!」

 

颯太「お前は俺を何だと思ってんだよ!そんくらい分かるわ!」

 

颯太「じゃなくてEGOISTだよ、EGOIST!」

 

集「エゴイスト:自分の事だけしか考えない人。利己主義者。要は自己中」スラスラ

 

集「舐めないでよ。これでも前のテストは1位だったんだからさ」ドヤァ

 

颯太「そっちじゃねーよ!今流行りに流行ってるバンドグループだぞ!本当に知らないのか!?」

 

集「…」ウーン

 

集「知らない」キッパリ

 

 

 

真顔で言い切った。

これで颯太の勢いは完全に止まった。口をパクパクしているが次に出る言葉はないようだ。

 

 

八尋「まぁ落ち着けよ颯太。集だって俺達と話題合わせるために夜通し頑張ってるんだからさ」

 

花音「そうだよ!一月前までアメリカで暮らしてたんでしょ?それに強制することもないでしょ、それ?」

 

 

二人が言うように集は実際アメリカで暮らしていたし、此方の文化がそれほど良く分からない。

だからこそこの現代映像文化研究会なるものに入ったのだ。(親しみ深い人が多いからでもあるが)

 

 

颯太「でも知らないのは勿体ないから俺ので聞けよ!絶対ハマるぜ~!」

 

集「ん~、いやイイ、眠いし。というわけでちょっと寝るから授業前には起こして」

 

颯太「え!?ちょっと待てよ一曲くらい…!」

 

集「Zzz」

 

颯太「って寝るの早っ!」

 

 

最後まで集に颯太の熱意は伝わらずにその場は終わるのであった。

 

 

 

 

 

集が颯太から渡されたパネルを受け取らずに済んだ事に、祭は少なからずホッとした。

 

 

それもそうだろう。

EGOISTのボーカルである楪いのりは歌も去ることながらそれに見合うだけの容姿も持ち合わせている。

街中で彼女を見かけようものなら例え彼女を知らなくとも声をかけたくなるほどの美しさだからだ。

この見た目であのどこか不思議がかった唄を自分が歌えたならと心底思う。

 

 

もし、ここで彼が彼女に魅せられてしまったら、と思うと彼女は気が気でなくなるだろう。

 

だから、その時は(・・・・)集が彼女の知っている集で良かったと思えたのだ。

 

 

 

 

 

昼休み

結局1~4校時全てを犠牲にした集だったが、お陰で眠気0の状態に持ち直す事が出来た。

その状態で教室を抜け出すと、近くの廃校舎に向かっていた。手には持参したおにぎりを3つほど持っている。

別に毎日ここで自作している映像を弄りながら飯を食べているわけではない。

ただ、こうした方が良いという集の気まぐれだ。

 

 

 

廃校舎について目に止まったのは外から入り口、そして中へと入っていく一列の血の垂れた跡だ。

集はそれを特に驚いた様子も見せず横目で眺めて自らも中へ入ろうとした。

その自然過ぎる行動が逆に不自然であるが、本人はそれを当然として捉えている。まるでここに何があって、これからどうなるかが分かっているみたいだ。

 

 

だが、そんな彼の手もドアに手を掛けたところで止められた―

 

誰かに手を抑えられたのではない。集自身が止めたのだ。しかし集は、見えない何かが自分を引き留めたのだと一瞬だけ錯覚した。

 

 

人から忘れられた、寂しい廃校舎は今、神秘的な唄声に包まれている。

 

 

 

 

 

少女は昨晩の時点でこの廃校舎に身を潜めたのだが、止血と報告を済ませている内に夜が明けてしまい、日没までここに居座ろうと考えた。

お供に添えられたふゅーねるの中にある容器を見て安心すると同時に、見つかるが先か、夜になるのが先かという不安がつき纏う。

 

 

「ねぇふゅーねる。私、これを涯に届けられるかな?」

 

 

凝り固まった不安が言葉に変わり、それはやがて唄に変わっていった。多少危険かもしれないが、今の自分を支えてくれるのはこれしかないと感じていた。

近くにいないと聞こえないくらいの声量だし大丈夫、と思っていると、後ろから何かがぶつかる音が聞こえたー

 

 

「!!?」バッ

 

 

そこにいたのは制服姿に身を包んだ学生だった。手には小さい箱のようなモノを持ち、部屋の入り口で立ち尽くしていた。

 

 

その少年はポーと自分の方を眺めていたが、やがてフッと優しい笑顔に変わった。

 

 

集「綺麗な唄だね、感動したよ。僕は桜満集。君は?」

 

 

温かい、穏やかな陽差しのようなその笑顔に魅せられてか、少女は内心彼への疑念を捨てていた。が、外面はあくまで警戒した風を装っていた。これも涯からの教え。他人をあっさり信用するなという事だ。

 

私が答えないことで生まれる沈黙に耐えかねて集が言葉を発しようとした時、

 

 

ぐぅ~~~

 

 

私の腹が鳴った。

 

 

集「…」

 

「…」

 

集「…おにぎりだけど、食べる?」

 

「///」コク

 

 

警戒心は空腹と羞恥心には勝てなかった。

 

 

 

 

 

 

集におにぎりをご馳走してもらった後、いのりはふゅーねると戯れていた。

ここまで彼の動向を調べていたが、特に怪しい動きは無かったのでいのりは彼を安全と認識した。

 

 

集「ねぇ、それで答えがまだだったんだけど…君は何て名なの?」

 

いのり「いのり。楪いのり」

 

集「楪さん…か」

集(今度は随分素直に答えてくれたな)

 

いのり「…知らない?」

 

集「ん?」

 

いのり「私の事…知らない?」

 

集「…?えーっとゴメン、何処かで会った事あるっけ?」

 

いのり「そう…知らないのね」シュン

 

 

集が自分を知らない事が少なからずいのりを落胆させた。涯にやらされて始めたとはいえ、いのりは自分の唄には自信を持っていた。

それを裏付けるかのように、ネットでは彼女についてで持ちきりだ。(そこに唄以外での話題があるのを彼女自身は気付いていないが)

それがまさかターゲットにしている層の人間に知られていなかったので、こうして柄にもなく感情を外に出している。

 

 

集「ゴ,ごめん」

 

いのり「ううん、良いの。これから先もっと頑張るから」

 

集「楪さんは前向きなんだね。羨ましいよ」

 

いのり「……恐いの?」

 

集「え?」

 

いのり「前に進んでいくのが、恐いの?」

 

集「…」

 

いのり「桜満集は、臆病な人?」

 

集「ハハッ、そうかもね。僕は臆病なのかもしれない」

 

いのり「…そう」

 

 

 

二人の間に気まずい空気が流れる。

いのりは、唄こそが自分を人であると認識できる唯一のものだと考えている。歌っている時は自分をさらけ出し、感想を言われると胸の内が温かくなる。いのりはその感覚が大好きだ。

 

だからもう一度その温かみが欲しくて頑張れる。前向きになれる。人は皆、誰かに誉められると嬉しくなり、それを得ようと前向きになれる。

人である(歌う)時の自分と、人ではない(誰かを殺す)時の自分とでは心の在り方に大きな差がある。

涯に命じられるのが嫌なわけではない。

 

ただ、自分にとっての1番は誰かに誉められ、そのために前向きであり続けようとすることなのだ。

 

しかし目の前の彼は前に出ることを拒んでいる。怯えているようにも見える。

 

だから…

 

 

いのり「とって」

 

集「…え?」

 

 

あや取りで作った橋を彼の前にかざす。

 

 

いのり「やれば、できるかもしれない。

でも…やらないと絶対にできない」

 

集「やれば…できる?」

 

いのり「前に進むことは恐いかもしれない。けど、進まないと何も得られない」

 

集「…」

 

集「ゆずり…」

 

 

バン!

 

 

集いのり「「 !? 」」

 

 

 

入り口の扉が盛大に開け放たれると、白い服を着たGHQが流れ込んできた。

 

 

集(しまった、僕とした事が…!)

 

いのり「ふゅーねる!」バッ

 

いのり「え!ちょっ…!?」

 

 

集が状況を分析していると、いのりが格子を跨いで二階から飛び降りた。

言われてふゅーねるも動こうとするが、ボディが損傷して立ち上がれないでいた。

 

 

いのり「!ふゅーね…ッ!」

 

「やっと捕まえたぞテロリストが。有名なWebアーティストだか知らんが調子に乗るなよ、小娘風情が…!」スッ

 

 

倒れているふゅーねるに近づこうとするが、その前に黒人の男に腕を掴まれた。

 

 

「やれ」

 

 

近くにいる兵士に合図を送ると、その兵は銃の持ち手の部分でいのりの腹を突こうとする

 

が、それは出来なかったー

 

 

正確に言うなら、いのりにぶつかる寸前で誰かがその行為を止めたからだ。

 

 

 

「なっ!?」

 

いのり「…集?」

 

集「来て早々女の子の腹を殴ろうとするなんて、お前はそれでも本当に軍の人間か?」

 

 

 

助けたのは他でもない、集だった。

 

先程とはうって変わって見る者を竦み上がらせるような冷たく鋭い目をしていた。

その瞳には軽蔑、いや、もっと分かりやすく言うと道端に捨てられたゴミを邪見にしているような、そんな目だった。

 

 

「な、何だ貴様は!学生か!?我々に反抗するならお前もタダでは済まさんぞ!」

 

集「その言葉そっくりそのまま返してやるよ。勝手に人の管轄に入っておいて随分と間抜けた事を抜かすんだな、グエン少佐」

 

グエン「!!?」

 

 

グエンと呼ばれた黒人はその言葉が余程意外だったのか、顔を真っ青にして押し黙った。

 

 

集「大体、お前は昨日の事で"元"中佐(ヤツ)と同じく上から謹慎処分を受けていた筈だ。だから俺が呼ばれた。今更この子に何の用がある?」

 

グエン「キ,キ…」

 

集「命令違反と規律無視、(俺の)公務執行妨害に加えて緊急発令時以外での非戦闘区域への武器の持ち込みと兵の保持、及び一般市民への脅迫未遂…等々。

とても俺だけでは裁き切れないな」ハッ

 

グエン「ききき!」

 

集「今この問題を任せられているのは俺だ。お前を連行する。逆らえばここを出た瞬間"殺す"」

 

グエン「きき貴様はアァァ!!?」

 

集「何だ、証拠が必要か?だったらこれでも見てろ」ポイ

 

 

集が投げたのは軍の身分証だ。そこにはこう書いてある。

 

 

 

桜満集"少佐"

アンチボディズ副局長 及び最高機密保持者。

並びに、貴殿を天王洲第一・第二区間の管轄責任者に任ずる。

 

 

 

 

 

集「これを見て異論が有るなら言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」

 

"その場合は殺すがな"というニュアンスを全開に引き出した状態で言ってきた。

 

 

グエン「ぃ、いぇ…何も無い……です」

 

 

これにはグエンも観念したように頭を下に向けた。

 

その光景を見て、いのりは訳が分からなくなった。

ただ確実に言える事は、自分はGHQに囲まれてしまい、信用に足る人物と思えた桜満集が、この場を取り仕切るリーダーとなった…という事だ。

いのりは集が言う最高機密の在りかを知っている。何とかここから逃げなくては…!

 

 

集「逃げようなんて思わないで。君だって無傷のままが良いだろう?」

 

いのり「…!?」

 

 

集には全てお見通しだ。

ならせめて、ふゅーねるを残して自分を含めた全員がこの場から離れれば、後で誰かが回収してくれると思った。

だが、それも儚く散るのである。

 

 

集「ついでにそこのふゅーねるも持ってきて。中に何か入ってるかもしれないし」

 

「ハッ!」

 

いのり「ッ!?」

 

 

グエンの部下は慣れた手付きで作業に取り掛かる。

 

最早打つ手が無かった。

ここで戦闘して間違って目的のモノを割ってしまう可能性もあるので下手な抵抗も出来ない。

 

 

「捕獲した女とこの物体(ふゅーねる)は如何しましょうか」 

 

集「女は第四隔離施設に収容。ふゅーねるはそこで僕と嘘界少佐で解体に当たる」

 

「分かりました」

 

集「よし、出るぞ」

 

 

ふゅーねるを兵士の一人が持ち、いのりとグエンに手錠が掛けられた。

余程屈辱なのだろう。集といのりの耳に「ウィルス菌が」等と罵倒が聞こえてきたが無視した。

 

 

集「…! チッ,やっぱバレてたか」

 

 

外に出ると数十人を越える生徒が廃校舎の周りを占拠していた。人目に付かないとはいえこれだけGHQが押し掛ければイヤでも目につくだろう。特に昨晩の襲撃の後では。

 

 

集「楪、これ被っとけ」

 

いのり「えっ?」バサッ

 

 

集が渡してきたのは彼の制服だ。

生徒の横を過ぎる際に、集がいのりのため生徒から気付かれないようにするためのモノだろう。でも何故?集はここの生徒なのだから、彼が被った方が良いに決まっている。

実際、集を知っている人間から集の名が飛んできている。この中に彼が軍の人間だと知っている人間は居ないのだろう。

 

 

「ホラ、とっとと歩け!」

 

 

それでもいのりがピンチなのには変わり無く、集に言われるがまま第四隔離施設へと連れて行かれた。

 

 




集のキャラが定まってませんが、常がこれだと思ってください。色々抱えている子なんです(笑)

でも弄らせるのは特定のキャラにしかやらせないつもりです。
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