XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

100 / 103
記念すべき100回目の投稿です!
そしてほしぐも編はこれにて終了!

最後の最後にいい感じの区切りがついて驚きです笑


別れと始まり。博士の想い

日輪の祭壇。

 

空にある小さな穴を、ククイとバーネットは真剣な眼差しで見つめている。

 

あの穴、ウルトラホールの先へ行ってしまったサトシたち、そしてルザミーネ。今の自分たちではできることはないけれども、せめてここで待つことくらいは、そう思い、彼らはその場を動かずにいた。

 

と、観測用の機械に反応が。

 

「ククイ君、これ!」

「この反応……もしかして」

 

二人が慌てて空を見上げる。小さかった空の穴が徐々に広がっていく。そして人が容易く通ることができるほどの大きさまで広がった穴から、何かが飛び出そうとしている。

 

「あれは?」

 

白い体に雄々しい鬣。

 

走るように空をかけながら、巨大な影がウルトラホールから飛び出して来る。そしてその背中には、見覚えのある彼らの姿も。

 

「みんな!」

「帰ってこれたのね!」

 

「ククイ博士!バーネット博士!」

 

祭壇の中央に降り立った彼らの元へ駆け寄るククイとバーネット。満面の笑みを浮かべながら、サトシたちが手を振っている。彼らのすぐ側でグラジオに支えられているのは、

 

「ルザミーネ!」

「バーネット……あなたにも、心配かけたわね」

「いいのいいの。無事なら良かった」

「ありがとう……」

 

バーネットに肩を貸してもらいながら、ルザミーネがソルガレオから降りる。顔を上げた彼女の目に飛び込んで来たのは、

 

「良かったね、リーリエ!」

「うん」

「はい!マオもスイレンも、ありがとうございました!」

「いいのいいの!あたし達は仲間なんだから」

「助け合い、当然!」

「そうですね。いつか、わたくしもお二人の力になりますから」

「ありがとう、リーリエ」

「頼りにする、絶対ね」

「はい!」

 

「すまなかったな……巻き込んでしまって」

「いや、俺たちがしたくてやったことだ。気にするな」

「僕も貴重な経験ができた、と思うし」

「……すまない」

「違うって、グラジオ」

「?」

「こういう時は、ありがとうでいいんだよ」

「……そうだな……ありがとう」

 

仲間達に囲まれ、楽しげに会話する二人の子供達。いつの間にこんなに大きく、頼もしくなっていたのだろうか。

 

「……気づいていなかったのは、私だけだった、ということね。母親が聞いて呆れるわね」

「大丈夫よ。これからきちんと向き合っていけばいいんだから」

 

俯きかけた顔を隣に向けると笑顔のバーネット。茶目っ気たっぷりのウインクをしてくれる彼女を見て、子供達を見て、

 

「そう、ね……これから先、向き合って行くのよね」

 

久し振りに思えるほど素直な笑みが、ルザミーネの口元に浮かんだ。

 

 

 

「ガルルォォア!」

 

突然聞こえた鳴き声に、サトシ達が驚き、声の下方向を向く。

 

沈みゆく夕日を背に、空に浮かんでいるソルガレオが、サトシ達を見下ろしている。

 

「ソルガレオ、ありがとな!お前が助けてくれたから、リーリエのお母さんを助けられた」

「わたくしからもお礼を言わせてください。本当に、ありがとうございました」

「協力、感謝する……ありがとな」

 

感謝の言葉を伝えながら手を振るサトシ達。その様子をジッと見つめていたソルガレオが小さく頷く。

 

サトシ達から顔を背けるように、ソルガレオが空に吠える。空間に穴が空き、ウルトラホールが広がる。

 

「ソルガレオ?」

 

最後にサトシを見てから、ソルガレオはウルトラホールへと飛び込む。その姿が見えなくなるとともに、ウルトラホールが塞がる。ソルガレオは、完全に何処かへと姿をくらませてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それからの数日間は、色々と慌ただしいの一言だった。

 

ザオボーについての対応を考えなければいけなかったり、ルザミーネさんの精密な検査が行われたり、サトシとシンオウの神々との関係について説明したり……

 

 

「ザオボーさんは既に姿をくらましてしまっています。今では何処で何をしているのかも」

「少なくとも、エーテルパラダイスに戻ることは不可能ね」

「あいつは俺が探す。このまま大人しくしているとも思えないからな」

「グラジオ……でも、これは私たちエーテル財団の問題で、」

「ああ……だから俺が動くんだ……次期代表となる者としてな」

「えっ」

「それにどうせ俺は島巡りの途中でもある。自由に動ける俺が動くのが合理的だろう」

 

そうルザミーネを説得したグラジオは、直ぐに旅立つことを決めた。

 

「じゃあな、リーリエ」

「……また会えますよね?」

「……必ず。サトシ」

「ん?」

「次会う時、またお前と全力でバトルがしたい」

「!っへへ、俺もだぜ!」

 

しっかりと握手を交わすサトシとグラジオ。フッと笑みをこぼし、グラジオが背を向け、振り返ることなくてを上げる。簡潔すぎる別れの挨拶に苦笑しながらも、サトシは、そしてリーリエは手を振った。

 

「いってらっしゃい!お兄様!」

 

 

ルザミーネはパラサイトの毒を受けたことから、何かしらの後遺症や副作用が残るのではないかと思われ、しばらく自宅療養して精密な検査を受けることになった。バーネットやジョーイさんの協力を得た検査と療養、その間、リーリエはずっと彼女のそばにいた。

 

ポケモンスクールも休み、博士の家にも戻らず、エーテルパラダイスにある家に滞在し、甲斐甲斐しくルザミーネの看病をした。

 

「出来ました。少し熱いかもしれないですけど」

「ありがとう……いつの間に料理なんて覚えたの?」

「お友達に教わったのです。料理だけじゃなく、ポケモンの世話も、ポケモンとの遊びも、機械の使い方も……それに、自分から一歩を踏み出す勇気も……たくさんのことを教えてもらいました」

「そうなの?……ねぇ、聞かせてくれないかしら、あなたの話を」

「もちろんです!」

 

スクールでみんなと出会ったこと。

 

ポケモンについての授業が楽しかったこと。

 

そして、ある日現れた少年と出会ったこと。

 

そこから始まった驚きの経験の数々を、リーリエは思い出せる限り語って聞かせる。

 

優しそうな微笑みを浮かべながら、その物語を聞くルザミーネの表情は、まさしく母親としてのものだった。

 

 

「で、サトシ説明!」

 

事件が解決した翌日。リーリエ以外の全員が登校しているポケモンスクールでは、サトシがクラスメートに取り囲まれていた。

 

「えっと、説明って?」

「勿論、パルキア達のことだよ!」

 

あの日はリーリエ、グラジオ、ルザミーネさん、それにソルガレオ(ほしぐも)のことで色々あり、聞ける雰囲気ではなかったものの、流石に気になりすぎたマオ達は、翌日の朝に早速サトシに詰め寄った。

 

「ああ。友達だよ」

「とも、だち?」

「まぁある程度予想していたとはいえ……」

「やっぱり驚きだよね……」

「どうやって知り合ったの?」

「え?あー、俺前にシンオウ地方を旅してた時があったんだけどさ、」

 

語られるのは神話の物語。否、現代の人が経験したことを話しているだけのことから神話と言っていいのかは定かではないが、それでもその内容は到底普通とは呼べないものばかりである。

 

まるまる1つの町を巻き込んで繰り広げられた時間と空間の衝突と、誰よりも優しくあった黒い影。

 

世界を支えるもう1つの世界、そこに住まう主と感謝のポケモンとの冒険。

 

神の力を利用しようと企み、新世界の創造を目的に動いた組織との対決。

 

時空を超え、人とポケモンとの絆を証明することができた創造神との絆を結ぶ物語。

 

そして最後に、カロス地方の旅の中で起きた伝説の激闘。

 

あまりにも、あまりにも大きなことすぎて、それらの出来事を全て乗り越えてきた目の前の少年が、もっとずっと大きな存在のように思えてしまう。

 

けど、

 

「旅の中でできた絆が、ずっと残っててくれてるってわかると、やっぱり嬉しくなるよな」

 

なんて、どうってことなかったかのように彼が笑うものだから。それで良いのかもしれない、なんて思えてしまう。

 

 

結局ククイ博士までもが聞き入ってしまっていたために、その日は授業らしい授業は1つも行われることはなかった。

 

 

 

(カプ・コケコ達にソルガレオ。更にはシンオウの神と呼ばれる伝説のポケモン達まで……ハラさんが前にサトシには何かあると言っていたが……本当にすごい子だな、あいつは)

 

彼の語る話は、どれも一度経験するだけでも一生にあるかないかのことばかりだ。研究者からしたら羨ましくて、もっと詳しく聞きたくなってしまう。

 

トレーナーならきっと一生の自慢として知り合いに語り、羨望の眼差しを向けられる。それだけでも一種のステータスとして評価されるだろう。

 

だと言うのに彼は決して自慢しない。いや、そもそも彼にとっては自慢するようなことではないのかもしれない。彼らとの出会いを語る彼の様子からわかる。

 

サトシにとって、シンオウの神たちも、島の守り神も、肩に乗っている相棒も、等しく同じ、ポケモンなのだ。

 

伝説だとか、希少だとか、そんなことは彼にとっては些細なこと。同じ世界に生きる命として、対等に見ているだけなのだ。

 

(でも、それが好かれる要因なのかもしれないな)

 

特別扱いなんかされなくても良い。

 

ただひたすらにひたむきに、自分たちと向き合ってくれる。

 

悪いと思ったら叱ってくれて、困ってると感じたら助けてくれる。

 

共に泣いて、怒って、笑ってくれる。

 

そんな彼だからこそ、ポケモンたちは彼に惹かれるのかもしれない。

 

サトシのことをもっとずっと、見守りたいという思いが、自分の中で大きくなっていくのをククイは感じていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

事件から1週間、

 

「皆さん、お久しぶりです!」

「おかえりリーリエ!」

「お母さん、大丈夫?」

「はい!もうすっかり元気です」

 

ルザミーネの検査が終え、異常なしとのことで自宅療養が昨日終わったため、今日からリーリエがポケモンスクールに復帰したのだ。

 

奇妙なことに、ルザミーネの体内からはパラサイトに受けたはずの毒素が全く見つからなかった。まるで体内から毒が丸ごと取り除かれたかのように。

 

そんなこと、人間やポケモンにはできるはずがない。

 

……普通のポケモンには。

 

「論理的結論として、きっと助けて下されたんです。アルセウスたちが」

 

あの時ウルトラビーストの世界を修復した光は、同時にサトシたちの傷や疲れまでもを癒してくれた。そしてその光が原因で、ルザミーネは毒が綺麗になくなっているのだろう。

 

「いつか、ちゃんとお礼を言いたいです」

「サトシなら呼べば来るんじゃないの?」

「いや……流石にそれはないだろ」

「あの……サトシ?どうかしましたか?」

 

どこか考え事をしている様子のサトシに疑問を覚えるリーリエ。不安げな彼女の様子に慌ててサトシが笑顔を浮かべ首を振る。

 

「いや……お礼でなんとなく思い出しちゃってさ。ソルガレオ、あれからどうしてるのかなってさ」

 

あの日、ウルトラホールの奥へと消えてから、ソルガレオがサトシたちの前に現れることは一度もなかった。

 

今はどこで何をしているのか……ずっと世話をしていたサトシは、ソルガレオの行方が気になって仕方がない。

 

「大丈夫だってば、サトシ」

「また会える、絶対!」

「アルセウスたちともそうだったんだろ?」

「だったら、ソルガレオもまた顔を出しに来るかもしれないよ」

「……そうかな?」

「絶対そうですよ、サトシ」

「……だな!」

 

ニカッといつもの笑顔になるサトシ。そんなサトシを見て、クラスメートを見て……

 

「皆さん……改めて、ありがとうございます。お兄様と二人だけでは、きっと助けられませんでした。皆さんがいてくれたから……それに、」

 

一人一人の顔を見ながら語り、最後にサトシを見つめる。

 

「サトシがいてくれたから……ありがとうございます」

 

「気にすんなって。仲間を助けるのは当たり前だろ?」

「うんうん。あたしたち、いつでも力になるから」

「当然」

「ああ」

「僕だって、やるときはやるんだからね!」

「皆さん……」

「だから、いつでも頼ってくれ」

 

笑顔でサトシの言葉に頷くクラスメイトたち。こんな素敵な仲間たちに出会えたことは、きっとポケモンスクールに来れたから。自分の家族を巻き込んだ事件は、怖いことも辛いこともあったけど、その事件があったから今ここに自分はいる。なんとなくだけど、そんな気がした。

 

「はい!わたくしも、皆さんが困ってたら力になりますね」

「頼りにしてるぜ」

 

 

みんなで集まって絆を確かめ合うサトシたち。その様子を影からククイがそっと見守っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そっか。本当に仲がいいのね、あの子達」

「あれだけのことを経験したんだからな。絆も深まるよな」

「そういえばリーリエはどうするの?住むところ」

「ああ。家族とのいざこざも無くなったから、こっちにある別邸に住むってさ。執事の人が挨拶にしにきたし、今日荷物を移動させているところだと思う」

「そう。寂しくなる?」

「まぁ、ならないと言えば嘘になるな」

「そうね」

 

ポケモンスクールの教室に久しぶりに全員が揃ったその日。授業を全て終え、サトシたちに先に帰らせたククイは、待ち合わせの相手と浜辺を歩いている。

 

「それにしても、サトシは凄いわね。向こうでも大活躍だったみたいだし。それに、いつでも頼ってくれ、だなんて」

「ああ。時々本当にまだ子供なのか、わからなくなるよ。時折歳不相応というか、大人びてる時があるからな」

「そうね。私もそのセリフ言った時のサトシの顔、見てみたかったかも」

 

その時の様子を想像しているのか、ククイの隣の女性、バーネットがくすりと笑う。その表情を横目に見ながら、

 

「俺も……君に見せたいと思ったよ」

「えっ?」

 

ククイの表情を見て、バーネットが一瞬戸惑う。優しげな笑みの中に、優しさ以外の何かが見え隠れしているように見える。決して悪い感情ではないそれは……

 

「……そういえば、まだお礼をちゃんと言っていなかったわね」

「お礼?」

「そう。日輪の祭壇で助けてくれた時のこと」

 

 

サトシたちがソルガレオと出会っていた頃、ククイはバーネットの元へと向かっていた。元々バトルはあまり積極的にして来なかったバーネットは、ジャラコやジャランゴ達に道を塞がれ、先に進むことができずにいた。

 

そんな時、彼女とゴンベを庇うように飛び込んできたのがククイだった。

 

相棒のウォーグルとともに、大勢のジャラコたちとバトルしたククイ。この時、バーネットは守ってもらいながら、ようやく祭壇へとたどり着いた。

 

 

「あ、いや。気にしないでくれ」

「そう言うとは思ってた。でも、助けてもらったのは事実だから。だから、ありがとう」

「あ、ああ」

 

今度はククイが面食らう。バーネットとはそこそこ長い付き合いだが、彼女のそんな表情は初めて見た気がする。沈みゆく夕陽が彼女の表情を照らし、海に反射する光が背後できらめく。まるで1つの芸術のようで、吸い込まれるようで……

 

「ククイくん?」

「あ、いや……それにしても、俺の考えることをよく分かってるな」

「似てるのかもね、私たちの考え」

「そうだなぁ」

 

どちらからともなく足を踏み出し、並んで浜辺を歩き出す。なんだか、まるでその空間だけ切り取られたかのように、誰もいない。人も、ポケモンも。聞こえるのは波の音と風に揺れる木々、そして並んで歩く相手の足音。

 

「ねぇ、今私が何考えているのか、当ててみる?」

「今?」

「そう。わかるかな?」

 

どこかイタズラを思いついたような表情で、バーネットがククイの前に回り込む。

 

「答え合わせ、しよっか」

「えっ、ちょっ」

「せーのっ」

 

バーネットが片手を上げる。同時にククイも手をあげる。バーネットの手がククイへ伸ばされ、その指がククイを指す。

 

「「君に決めた!」……えっ」

 

同時に響いた声に、バーネットが驚きの声を漏らす。今度はククイがイタズラに成功したような笑みを浮かべながら、バーネットに向けられた手を裏返す。

 

その手に握られているのは、モンスターボール……かと思いきや、ボタンを押すとその蓋が開く。

 

きらり、と夕日の光を受けて中に収められていたものが光る。それは決して煌びやかなものではなく、派手な装飾のあるものではない。しかしそれは貰った人にとって、何よりも綺麗で、何よりも貴重、そんなプライスレスな煌き。

 

「ゲット……かな?」

 

ボール型の箱をククイが差し出す。驚いた表情のまま、バーネットが手に取る。箱の中から彼女を見上げるのは、シンプルなシルバーリング。

 

「……されちゃった」

 

なんてことを言いながら、彼女は心から幸せそうな笑顔を見せた。

 

 

 

 

ククイとバーネットがククイの家に着いた時、既に陽は落ち、夜になっていた。前もって遅くなるかもしれないと連絡はしてある。大事な話があるということも。

 

ククイが玄関の扉を開き、バーネットを招き入れる。サトシはリビングでポケモンたちの世話をしていた。リーリエの荷物は既に運び出されたようで、ロフトがやたらと綺麗に見える。

 

「あ、博士……と、バーネット博士も!おかえりなさい」

「ああ、ただいま。悪いなサトシ、遅くなって」

「いや、大丈夫。それで、大事な話って?バーネット博士にも関係あること?」

「ええ」

「驚かせることになると思うけど、聞いてくれ」

「わかった」

 

真剣そうな二人につられ、サトシも表情を引き締める。余程重要なことらしいことはわかった。まさか、またウルトラホール絡みなのかとも思い身構える。

 

「実は……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「「結婚!?」」」

「そうなんだ」

 

翌日、ククイとバーネットから聞いた話をサトシがみんなに伝えると、女子組から黄色い歓声が上がる。無理もない。この年頃の女子にとって、結婚とはある種の憧れなのだ。

 

「けけけけ結婚!?」

「そりゃめでたいな」

 

何やら慌てふためくマーマネと、嬉しそうだが他と比べて冷静なカキ。形は違えど、二人も親しい二人のめでたい出来事を喜んでいるのは確かだ。一方女子組はというと、

 

「やっぱり、結婚式とかやるのかな?」

「バーネット博士のウェディングドレス!」

「きっととても綺麗ですね」

「指輪の交換とか?」

「ブーケトスとか!」

「とても幸せそうにしているお二人が想像できます!」

 

未だ見ぬ結婚式を想像しながら、大いに盛り上がっている。

 

「でもやっぱりあれだよね」

「うん。結婚式の一番は……」

「夫婦になるお二人の」

「「「誓いのキス」」」

 

キス、という単語に思わずサトシがピクリと反応してしまう。反射的に口元に上がっている手に、マーマネが思わず、

 

「そういえばサトシはキスは経験済みだったね」

 

なんて言ってしまうのだった。

 

「あ、うんまぁ……びっくりしてあんましよく覚えてないけどな」

 

照れくさそうに頬をかくサトシ。そんな彼の様子を見て、何やら複雑そうな女子たち。大変だこりゃ、なんて思いながらカキが軌道修正を図る。

 

「で、実際式はいつなんだ?」

「あー、それが……博士たちが式はしないって」

「「「えぇ〜!?」」」

 

明らかに落胆している女子たち。彼女たちを横目に、カキが理由を聞いてみる。

 

「それがさ、ウルトラホールやウルトラビーストのことで大変だったというのと、ここからもっと調査とかでみんな忙しくなると思ってるらしくてさ。だから式はしなくてもいいかなってさ」

「バーネット博士はエーテル財団での仕事もあるしな」

「準備する暇がないのかも……」

 

「あ!なら、あたしたちでプレゼントしようよ!」

「へ?プレゼントって、結婚式を?」

「賛成!」

「とても素敵だと思います!」

 

マオの提案に再び盛り上がり始める女子組。しかしそのアイディアにはサトシたちも乗り気だった。

 

「俺もずっと世話になりっぱなしだしなぁ。お礼ってわけじゃないけど、やりたい!」

「だな。俺も協力するぜ」

「もちろん、僕も手伝うよ」

「それじゃあ、アローラサプライズ第二弾ってことで、やっちゃおう!」

「「「「「おー!」」」」」

 

マオの掛け声に声を揃えるサトシたち。既にワクワクが止まらないらしく、秘密を隠すのに苦労する。その日の授業では、やたらと機嫌が良さそうなサトシたちに、首をかしげるククイだった。

 

 

 

 

放課後、所変わってアイナ食堂。サトシたち6人はサプライズの準備のために集まっていた。

 

「必要なのは参加者のリストにプログラム、料理とケーキにブーケでしょ」

「せっかくなので、アクセサリーとかも新しく用意するのはいかがでしょう?」

「バーネット博士の?いいね」

 

テーブルにつき、相談し合うサトシたち。既に博士たちの様々な知り合いには声をかけてある。

 

「カキ、ライチさんどうだった?」

「絶対来るって言ってたぞ。アクセサリーならライチさんに頼むのもありだな」

「会場の飾り付けなら、アローラサンライズの店長さんが協力してくれるって。ジュンサーさんとジョーイさんも来てくれるみたいだし」

「僕はハラさんのところに行って来たよ。他にもいろんな人に声をかけてくれるって」

「うんうん、順調順調。料理はあたしとお父さんがするし、ケーキはパンケーキ屋さんのノアさんが特別に用意してくれるって」

「お母様たちも参列すると言っていました」

 

当初自分たちが想定していたよりもはるかに大規模なサプライズになりそうではあるが、誰もが博士たちの幸せを一緒に祝福したいと言ってくれることに、サトシたちは喜びを感じている。

 

「ほしぐもにもお祝いに来てもらえたらいいんだけどな」

「サトシが教えてあげたら、きっと来てくれるよ」

「そうかもな……あいつにも来てもらえたら、凄くいい思い出になるかもな……」

 

窓の外に視線をやるサトシ。今もウルトラホールの向こうの世界をかけているのだろうか。そんなあいつにも伝えたくて心の中で語りかける。

 

(ソルガレオ……博士たちが結婚するんだぜ。一緒にいたお前にも……祝ってもらえたらな)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とある日曜日の朝、気持ちよく寝ていたククイを襲ったのは何やら硬いものに突かれる感触だった。

 

「ん……なんだ?」

 

目を開き、ぼんやりとする頭で視界に入る情報を認識する。朝も早くから元気そうなモクローが覗き込んで来ている……

 

「って、モクローが起きてる!?」

 

「おはよう、博士」

 

普段の様子からはとても想像もつかないモクローの様子に、思わずククイが飛び起きる。そんな博士の様子を笑顔でサトシとピカチュウが見ている。

 

「サトシ?どうしたんだ?今日は日曜だから学校はないはずだろ?」

「へへっ。博士にちょっと見てもらいたいものがあるんだ。ついて来てよ!」

 

サトシたちが手招きをしながら先導するように部屋の扉を開ける。首を傾げながら、ククイがその後を追うように部屋を出て、地下から登る階段へと向かう。

 

「なぁ、サトシ。見てもらいたいものって?」

「いいからいいから。見てからのお楽しみ」

 

なんだかウキウキしているサトシの様子に、今日は何か特別なことでもあっただろうか、ともう一度首をかしげる。それでも何も思いつかないまま、ククイが階段を登りきりリビングに入る。

 

「それで、見せたいものってな……えっ?」

 

その時、ククイは思わず言葉を失ってしまった。待っていたのはサトシだけでなく、自分の生徒たち。みんなが笑顔をで出迎えてくれている。

 

しかし何よりククイの視線を引いたのは、その中央に立っている彼女の姿だった。

 

いつもの運動性重視の服装とは一転、長く伸びるスカートは裾の方へと向かうほどにレースが綺麗な模様を描く。健康的な肌色は、そのドレスの純白さをより一層際立たせる。首元にはおそらくライチ作のネックレスに、耳には同じくライチ作のピアス。顔を覆うヴェールには桃色の花が飾られている。

 

思わず惚けてしまっているククイを見て、彼女、バーネットは優しく微笑んだ。

 

 

 

数分後、ビーチに履かず多くの人が集まっていた。サトシたちに渡されたスーツに着替えたククイと、ドレス姿のバーネットが用意された壇上にあがる。

 

「ククイ博士、めでたいですなぁ」

「バーネット博士、とても綺麗よ」

 

「お二人とも、おめでとうございます。使用人一同、この日は精一杯もてなさせていただきますぞ」

 

「おめでとうございます」

「デーカ」

「二人とも、幸せに!」

「キュワワ〜」

 

「バーネット……幸せそうね」

「見ているこっちも嬉しくなりますね〜。ね、代表?」

「そうね」

 

多くの人が口々に祝福の言葉を述べる中、博士たち二人が並ぶ壇上に、立会人のオーキド校長が立つ。

 

「オホン。お二人の門出を祝して、私ナリヤ・オーキドから一言申しアゲハント。二人が出会ったのは、このアローラの青空のもトサキント。ククイくんは……」

 

出だしからいきなりのポケモンギャグも、その日のみんなの幸せな感情をなぜか後押しするかのように聞こえる。

 

どこまでも広がる青空と、陽の光を反射し煌く海。澄み渡る景色は二人の想いを、煌きは二人の未来の幸せを表しているかのようで……

 

「それでは、指輪の交換を」

 

壇上の二人に近づくのはサトシ。手に持ったジュエリートレイの上には、そっくりな2つの指輪。サイズの異なるそれを、二人は1つずつ手に取る。

 

バーネットとククイの2人の左手に、キラリと銀のリングが光る。

 

「私立会いのもと、2人を正式に夫婦としマッスグマ!では、誓いの口づけを」

 

ククイがバーネットのヴェールをあげる。2人の顔が近づく様を、女性陣は目をキラキラさせながら見ている。

 

肩を抱き合う者、指の隙間から覗くように見る者。

 

そんな周りからの視線を集めながら———

 

 

 

 

———2人の距離が、ゼロになった……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

式の後は、誰もが大いに盛り上がっていた。

 

ケーキ入刀、キャンドルライティング、そしてブーケトス。特に女性陣が楽しみにしていたブーケトスで張り切るライチさんに思わずみんな苦笑してしまったのも、パーティとしては盛り上がりに一役を買った。

 

そんな幸せたっぷりの空間で、サトシはふと空を見上げた。

 

「ソルガレオ……」

 

ボソリと今日来ていないあのポケモンの名前を呟く。もしかしたら、なんて少し思っていただけだったため、来ないことに驚きは特にない。ただそれでも、

 

「来てくれたら、良かったのにな……」

 

少しだけ俯き加減にそんなことを願う。届くこと、それこそ難しいのだというのに……

 

 

 

 

「ガルルォォア!」

 

突然聞こえた咆哮に、誰もが驚く。ハッと顔を上げるサトシ。もしや?いやまさかそんな。ぐるぐる回る思考を放置し、空を見渡すと、視界を白い影が駆け抜ける。

 

雲の間を縫うようにかける影は、サトシの真上を通過する。その時に、その瞳と目があった……のは、気のせいではないだろう。

 

そんなサトシへと何かが落とされる。手を差し出して意外と重いそれを受け止める。

 

手の中にあるのは4つの光る玉が添えられた台のようなもの。1つを囲むように、残り3つが飾られている。

 

群青と白と銀色。小さいながらも上品な輝きを見せるそれらは、彼らにちなんだものなのは明白である。

 

そして中央のエメラルドグリーンの光を内包する、他より少し大きめの石。それはかつてサトシが見たことのある、あのポケモンの宝玉によく似ている。

 

どれもこれも特別な力は特に込められてはいない。しかし込められている想いは、なんとなく伝わってくる。何故この日、この時に彼が姿を現して、わざわざこれを届けたのか。

 

「みんな……ありがとな。またな、ソルガレオ。また会える時を、楽しみにしてる」

 

離れていながらも繋がっている、その想いを胸に、サトシは友達からのお祝いの贈り物を、博士たちに差し出すのだった。

 

「ククイ博士、バーネット博士。これ、みんなから。おめでとうってさ」

 

肯定するように、キラリと、4つの石が陽の光を写して煌めいた。

 

幸せな2人に、笑顔が溢れる周囲。

 

その瞬間、誰もが心からの幸せを分かち合っていた。

 

 

「キュイ?キュキュ〜!」

 

流星のような通り道を抜け、小さな影がクスクス笑う。まだ見ぬ土地、まだ見ぬ出会い。期待に胸を膨らませるその紫の子も、また、幸せを感じていたのかもしれない……

 




アローラの森の奥。

迷子の味方のおじいちゃん?

大きなポケモンかぁ……俺も会ってみたいな!

って、マオとスイレンの出会いの話?
聞きたい聞きたい!

次回、XYサトシinアローラ物語
森のおじいちゃん?マオとスイレンと森の出会い
みんなもポケモン、ゲットだぜ!
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